記事公開日:2022/04/21
最終更新日:2023/11/17
商談や打ち合わせの際、相手との距離を縮めたり、打ち解けたりするために欠かせないのがアイスブレイクです。アイスブレイクは緊張した雰囲気をほぐすために行いますが、「何を話していいかわからない」といった悩みをお持ちの営業担当者も多いのではないでしょうか。
特に賃貸仲介営業担当者にとって、賃貸物件や契約の話ばかりでは、対応が業務的になってしまいがちです。内見中の車内やクロージングで沈黙が続いてしまい、気まずい思いをしたことがある人もいるのではないでしょうか。いくら物件提案や知識が優秀な営業担当者であっても、人間関係を構築して信頼を得られないと、成約を続けることは困難でしょう。
今回は、営業中のアイスブレイクの目的や成功させるポイントをご紹介します。また、アイスブレイクにふさわしい話題とタブーな話題についても解説していきますので、日々の営業活動にお役立てください。
※下記2本の関連記事では「会話術を磨くテクニック」や「賃貸営業で成功するためのコツ」などをまとめてますのでこちらもチェックするとスキルアップにつながります。
目次
アイスブレイクとは、雑談によって緊張した場をやわらげるために行うコミュニケーション術のひとつです。氷のような冷たい場を「アイス(氷)」にたとえ、それを「ブレイク(打ち砕く)」することからアイスブレイクと呼ばれています。
特に、初対面の相手とはお互い緊張しているため、コミュニケーションがスムーズに進みません。相手の警戒心を解くためにも、アイスブレイクは大切なスキルなのです。
営業におけるアイスブレイクの目的は、主に以下の4つです。
ひとつずつ見ていきましょう。
初対面の相手との商談は、説明をする営業担当者も、説明を受ける相手も緊張するものです。挨拶後すぐに本題に入ると、相手は話を聞く準備ができておらず、話の内容が頭に入りません。自分だけでなく、相手の緊張をほぐすためにもアイスブレイクは必要なのです。
訪問後にいきなり仕事の話をすると、相手との距離は縮まりません。営業マンに対して警戒心を抱いていることになり、この状況ではたとえ顧客に有利な提案であっても聞く耳を持ってくれない可能性があります。
初対面の営業マンと気心知れた営業マンがいる場合、多くの人は後者の営業マンから商品やサービスを購入したいと考えます。契約はお互いの信頼関係があってこそ成立するものであり、まずは相手との関係性を築く必要があります。
商談の場では、顧客は「聞くだけ」になり、営業担当者の一方通行になることも少なくありません。これでは商談相手から本音を引き出せず、契約が破談になってしまうおそれがあります。
アイスブレイクで相手の緊張を解き、顧客に主体性を持ってもらうことで、会話のキャッチボールが成立します。また、相手からの本音が引き出せればニーズがわかり、商談を有利に運ぶことが可能です。
営業におけるアイスブレイクは、商談成立のために重要な役割を持っています。しかし、実際にどのような話題を振ればいいのでしょうか。
アイスブレイクにふさわしい話題は、「木戸に立てかけし衣食住」を話題にすると、会話がしやすいといわれています。これは、「季節」「道楽」「ニュース」「旅」「天気」「家族」「健康」「仕事」「衣料」「食」「住居」の頭文字を取った語呂合わせです。ここでは特に使いやすい話題である以下の5つをご紹介します。
それぞれの内容について見ていきましょう。
顧客のオフィスや居住エリアなど、地域に関する話題はアイスブレイクにふさわしいといわれています。たとえば、スポーツの話題は幅広く、場合によっては相手が知らない可能性もありますが、エリアに関して知らないという方は少ないからです。
上記のように、立地や周辺情報について褒めたり質問したりして会話を進めてみてください。特に賃貸仲介営業では、賃貸物件だけを紹介しているのではなく、街を紹介しているという自覚を持つと良いでしょう。
業界に関する話題はお客様にとって身近な話題であり、会話も弾みやすいとされています。また、業界について詳しく調べていることをアピールでき、相手に好印象を与えられます。
賃貸仲介業の場合、戸建てやマンションの動向、家賃相場などの話題を振るのがベターです。また、お客様から話を振られる可能性もあるので、新聞やネットニュースで取り上げられているトピックには軽く目を通しておき、話を膨らませましょう。
アイスブレイクの話題でも特に話題にしやすいのが天気のことです。
天気や気温の話は誰とでもしやすいため、会話のきっかけとして使うことができます。
オフィス訪問や内見の移動中に、飲食店や料理を話題にするのもおすすめです。
自身の体験や顧客の出身地に合わせ、話の内容を変えてみるのもおすすめです。顧客の反応が良ければ、さらに深堀して聞くことも可能です。
また、取引先のオフィス周辺でおすすめの飲食店を教えてもらい、次回の打ち合わせまでに実際に食事をして感想を述べると、「自分のおすすめしたお店に行ってくれた」と大いに喜ばれます。
家族の話題は子育てなど話のネタが豊富で、会話が途切れにくい話題のひとつです。不動産営業の場合、一緒に現在の住まいや理想の間取りについて聞いてみるのもおすすめです。
お子さんの話題は空気がなごみやすい話題ですが、相手によっては家族の話題が向いていない場合があります。人によっては「プライベートなことを話したくない」という場合もあるので、相手の反応を見ながら注意して話を進めていきましょう。
アイスブレイクにふさわしい話題がある一方で、避けるべき話題もあります。
デリケートな話題の代表例が政治です。支持している政党は人それぞれのため、たとえ世間的に批判されている政党でも、お客様が応援している政党の可能性があります。
新聞に載っているからと「今の◯◯政党はダメですね」と口に出してしまうと、相手の機嫌を損ねてしまうかもしれません。場の空気を凍らせてしまうため、アイスブレイクとして政治の話題を出すのは避けましょう。
世の中にはさまざまな宗教があり、入る・入らないは個人の自由です。人によっては、何気ない一言で「信仰している宗教を批判された」と感じてしまい、不快に感じる場合があります。こちらもデリケートな話題のため、宗教の話題も口にしないようにしましょう。
応援するチームが同じ場合は話が盛り上がり、短時間でお互いの距離が縮まります。しかし、もし好きな球団が違えば対立関係となり、今後の会話がしづらくなります。
やりがちな失敗は、地元球団が好きだろうと決めつけることです。地元だからといって、必ずしも地元球団を応援しているわけではありません。敵対する球団を応援している場合があるため、相手から話題にしない限り避けるのがベターです。
また、これは野球だけでなくスポーツ全般でいえることです。先入観を捨て、スポーツ以外の話題を選びながら話を進めていきましょう。
給料の話は相手のプライベートな面に踏み込むことになり、アイスブレイクにはふさわしくありません。どちらかが話せば自然と比較する流れになり、少なからず劣等感を抱いてしまいます。万が一お金の話になったとしても、うまく切り抜けて別の話題を提供してみてください。
有名大学ではない、そもそも大学にすら行ってないなど、学歴にコンプレックスを感じている方も少なくありません。また、仮に難関大学出身の方であっても、希望の大学に落ちてそこに入ったという場合、こちらも学歴コンプレックスに繋がります。「出身校をいいたくない」という人もいるため、自分から学歴について聞くのは避けましょう。
芸能ネタは好き嫌いが別れる話題です。好きな芸能人を事前に知っている場合では、「この前の映画で賞を獲っていましたね!」と盛り上がりますが、初対面の場合は好きな芸能人はおろか、そもそも芸能ネタに興味がないかもしれません。そのような相手に芸能関連のネタを話題にしても話は盛り上がらないため、アイスブレイクの話題には向かないといわれています。
では、実際に営業活動を行っているなかで、どのようなタイミングでアイスブレイクをすれば良いのでしょうか。
お客様や取引の相手方と初めてお会いするとき、自己紹介や名刺交換をするタイミングでのアイスブレイクは非常に効果的です。
一般の営業職の方であれば、名刺交換のタイミングでアイスブレイクを活用すれば、うまく相手方との距離を縮められます。たとえば、名刺にはさまざまな情報が記されていますので、そこからアイスブレイクに適した話題を拾い上げるのが良いでしょう。下記のように、いくらでも話題は存在しています。
賃貸仲介業では、お客様と商談に至るパターンが2つ考えられます。1つは反響を頂戴して、いくつか電話やメールでやりとりをしてからお会いするパターン、もう1つは飛び込みのお客様と商談を行うパターンです。
前者であれば、やっとお会いできましたという感動と感謝の気持ちを添えつつ、過去のやりとりを振り返りアイスブレイクを行うのが良いでしょう。隣人の騒音が気になって引っ越しを検討されている方であれば、「騒音の状況はどうですか?」と聞いてみるのもひとつの手です。人間はネガティブな感情を吐きだすことで、安心感を得られることがわかっています。このような心理効果(カタルシス効果)を利用するきっかけにもなりますので、ぜひ活用してみてください。
一方、後者の飛び込みのお客様に対しては、このタイミングでアイスブレイクを行うのは少しリスクがあります。まだ互いに一切人間関係がない状態でアイスブレイクを行うと、お客様が引いてしまうことも考えられるからです。ただし、ものすごい雨のなかご来店いただいたというような特殊な状況があれば、少し触れてみるのも良いでしょう。
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商談の待ち時間や移動中は、アイスブレイクを取り入れるチャンスです。待ち時間や移動中は、一般的に緊張感が少なく、リラックスした状態が続きやすいといえます。そのため、相手も開放的な態度で、アイスブレイクに応じやすくなるでしょう。
商談では、双方の利害の対立構造があることがほとんどです。しかし、待ち時間や移動中は、その対立構造から離脱してリラックスしていることが、待ち時間や移動中にアイスブレイクを行うことが効果的な理由と考えられます。
賃貸仲介業における待ち時間や移動中は、最もアイスブレイクが効果的に発揮されるタイミングです。店舗内での接客では周りに人もいるため、どこかフランクに話ができないこともあるでしょう。そういうときこそ、外出先で人間関係の距離を詰めることを心がけてください。
今から内見を行う賃貸物件の説明により期待感を高めつつ、営業担当者とお客様が共有している街の景色などをもとに、アイスブレイクを楽しんでください。この場合、おいしい飲食店の紹介でも良いですし、裏道の紹介でも問題ありません。
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昨今は対面ではなく、オンラインでの会議や商談も増加してきました。このオンラインの場であっても、アイスブレイクは有効です。
何度もお会いしている方であれば、フランクに始めることも可能ですが、初対面でオンライン面談となれば、コミュニケーションをとるのに苦労することもあるでしょう。そのようなときこそ、アイスブレイクを活用すべきです。しかし、画面を通してのコミュニケーションでは、相手の表情や機微をうまく読み取ることが難しいため、シンプルなものに終始するのが良いでしょう。
オンライン商談やウェブ会議ツールでは、画面共有機能が備わっています。会議がスタートする自己紹介の段階で、画面共有機能を使い、自己紹介用のプロフィールシートを映して説明するなどの方法が考えられます。
賃貸仲介業者の営業担当者は、あまりウェブ会議に出席することはないと思われますが、オンラインでの内見はよくあるのではないでしょうか。オンライン内見でも、初対面の自己紹介や条件の説明に移行するタイミングで、アイスブレイクは役に立ちます。
オンライン内見でも、自己紹介のプロフィールシートや物件資料、エリアマップなどを画面共有することで、ちょっとしたアイスブレイクになるのです。
アイスブレイクのタイミングや効果的な使いどころがわかれば、後は会話の内容やコツを掴んで、アイスブレイクの成功率を高めましょう。
ここでは、アイスブレイクによってコミュニケーションが円滑となり、営業の目的を達成するためのアイスブレイク攻略法を伝授します。
相手と自分の共通点や類似点を見つけると、「類似性の法則」によってお互いの距離が縮まるとされています。類似性の法則とは、自分と似ている部分が多い人に親近感を覚えるという人が持つ心理作用のひとつです。
特に初対面の場合、血液型や同じ誕生月といった些細な共通点でも親近感を覚えるといわれています。同じ出身地や趣味などの共通点を探し出し、アイスブレイクを成功に導きましょう。
賃貸仲介業者は、商談においてアイスブレイクを活用しやすい業種であるといえます。なぜなら、来店時にアンケートを記載いただいたり、お客様の属性やニーズをヒアリングしたりする過程で、お客様情報が手に入りやすいため、共通点を見つけやすいのです。
また、賃貸仲介業者が取り扱う商材は賃貸物件であり、衣食住という人生に関連したものです。誰しもが体験・経験したものであるほか、他の営業職よりも会話を派生させやすいという優位性を存分に発揮させましょう。
具体的な共通点の見つけ方はずばり、ヒアリング時のメモを活用しましょう。会話に困ったらメモを見返して、共通点を見出すのです。慣れてくると、このポイントはお客様とのアイスブレイクに使えそうだなと、わかるようになってきます。
下記の関連記事ではヒアリングシートに取り入れるべき項目や、効果を高めるポイントついて解説してますので、こちらもチェックしてみてください。
顧客によって趣味や興味のある分野は異なるため、相手との距離を縮めるには幅広い話題に対応する必要があります。そのためには、自分が好きな分野以外の情報も日々チェックしなければなりません。
日頃から新聞やネットニュース、プレスリリースなどをチェックしておき、話題の引き出しをたくさん用意しておきましょう。性別・年齢問わず、どんな話題でも深堀りできる知識を身につければ、アイスブレイクはもちろん実際の商談でも役立ちます。
賃貸仲介営業に従事している営業担当者の方々には、幅広い情報収集が求められます。なぜなら、お客様の職業や年齢、性別、属性はすべて異なるからです。日々のニュースは当然のこと、賃貸物件に関する市場の動向や商圏である街の情報、賃貸物件に関する設備や建築知識など多岐にわたります。
著者がおすすめする情報収集の方法は、情報を配信しているサイトを定期的にチェックする方法です。参考に、いくつか情報サイトをご紹介します。
①開店・閉店情報(エリアを設定して開店・閉店情報をチェックできます)
②最新不動産情報サイト R.E.port(不動産関連ニュースを項目ごとに読めます)
③日本不動産研究所(不動産に関する指標やレポートが充実)
④マーケティング情報データベース Choicely(各種システムなどマーケティングに必要な情報が集約)
下記の関連記事も一度読んでおくと良いでしょう。
アイスブレイクは、商談相手に会ってからすぐに行うと成功しやすいです。出会ってすぐは場の空気が作られておらず、アイスブレイクがしやすくなります。一方、商談が終わってからアイスブレイクが始まり、お互いの関係が深まったというケースも少なくありません。顧客から出身地や仕事に対する考え方などを聞かれ、それらに対して誠実に答えれば、相手に自分のことをより深く知ってもらうことができます。
アイスブレイクのベストタイミングは、状況によってそれぞれ異なります。いずれにしても、緊張した雰囲気が続いたままでは商談が破談になってしまうおそれがあるため、アイスブレイクを挟むタイミングを見計らいながら会話を進めてみてください。
先ほどは大まかなアイスブレイクポイントをご紹介しましたが、もう少し具体的にポイントを解説します。会話が途切れがちなときを狙って、アイスブレイクを入れることを心がけてください。主に、以下のようなタイミングが考えられます。
アイスブレイクは場の緊張感をほぐし、商談をスムーズに進めるために行うコミュニケーション術のひとつです。顧客の本音を引き出せれば、課題解決に向けてさらに良い提案ができる可能性が高まります。
しかし、話題選びやタイミングを誤ると、相手の機嫌を損ねるおそれがあるため注意が必要です。良好な関係を築き、商談を円滑に進めるためにもアイスブレイクについて一度考えてみてはいかがでしょうか。
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