記事公開日:2022/04/28
最終更新日:2024/01/11
営業活動で重要な役割を持つのがヒアリングですが、緊張や話の脱線などで必要な情報を聞きそびれることがあります。そのようなトラブルを防ぐために使われているのがヒアリングシートです。特に賃料仲介営業においてヒアリングは、顧客のニーズを把握するのにとても重要です。ヒアリングした内容に基づいて物件を紹介していくので、きちんと行っていく必要があります。
ヒアリングシートには確認すべき内容がまとめられています。聞きそびれが減り、効果的な提案に繋がるツールですが、どのように作成したらいいのかわからず困ってしまう方も少なくありません。そこで今回は、ヒアリングシートに取り入れるべき項目や、効果を高める5つのポイントについて解説します。また、賃貸仲介営業マン向けの知識やテクニックについてもを紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
※下記の関連記事では「賃貸営業で成功するためのコツ」「反響営業に求められるスキル・考え方」などをまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。
目次
営業用のヒアリングシートとは、顧客から何を聞き出したいかをまとめたチェックシートのことで、顧客へ物件を紹介する前や商材の提案前などで活用されます。顧客の個人情報だけでなく、顧客自身も気づいていないニーズや課題を引き出すことも可能です。
営業用ヒアリングシートを作成する目的は、以下の4つです。
ひとつずつ見ていきましょう。
顧客の希望条件をヒアリング中に関係のない話で盛り上がってしまい、
顧客の希望条件をヒアリング中に商談中に関係のない話で盛り上がってしまい、物件を紹介するときになって「必要な情報を聞くのを忘れた」という失敗事例も少なくありません。ヒアリングシートにあらかじめ必要な情報をまとめておくことで、やりがちな聞き忘れを防止できます。また、会話の内容が逸れても話を戻せるなど、ヒアリングシートはさまざまな面で活用できます。
打ち合わせの早い段階で顧客の希望や条件を把握できれば、的確な物件を紹介できます。限られた時間の中でより顧客の理解を得る時間が取れるため、隠れたニーズを引き出すことができます。
ヒアリングシートをチームで活用すれば、営業担当者によるヒアリングのバラつきを防げます。ヒアリングシートに聞くべき項目を記載すれば、誰が営業をしても精度を一定に保つことが可能です。ヒアリング内容が不十分であれば、その先の提案内容も不十分になり、顧客の課題解決には至りません。
ヒアリングに悩んでいる部下がいる場合には、上司が作成したヒアリングシートを使ってもらうのもひとつの方法です。提案内容の質が向上すれば、チーム全体の営業成績も上がります。
打ち合わせを振り返ったときに、詳細な内容を忘れてしまうことも少なくありません。これでは解決すべき課題がわからず、提案内容の質が下がる可能性があります。
ヒアリングシートを活用すれば、万が一忘れた場合にも後から見返して思い出すことが可能です。また、その場では解決策が思い浮かばなくても、ヒアリングシートを見返したときに良いアイディアが浮かぶこともあります。
商談と直接関係ない内容も、ポイントになりそうな情報があれば書き留めておきましょう。もし時間がない場合、箇条書きでもかまいません。
たとえばペットを飼っているのであれば種類や名前などを聞いておきます。「ペットの話を振ったら会話が弾んだ」という経験は、きっと多くの方がしているのではないでしょうか。お互いの緊張をほぐすこともできるので、試す価値は大いにあります。
他にも、出身地や趣味の話も有効です。次回の打ち合わせで会話の中に取り入れることができれば、「覚えてくれていた」と嬉しく思うでしょう。このように、少しの雑談を交えるだけでも信頼関係は築くことができます。
オウム返し話法とは、相手が話した言葉をそのまま繰り返して会話を進めるテクニックで、ビジネスシーンでよく使われる手法です。相手の言葉を繰り返すことによって、「自分の話をきちんと聞いてくれる人」と認識されやすく、また自分も相手の言葉を整理しながら会話できるというメリットもあります。ただし使い方を間違って多用しすぎると、うっとうしいと思われる可能性があるので注意しましょう。
オウム返し話法を使った例として、以下のようなものが挙げられます。
オウム返し話法を使わない場合は以下のとおりです。
オウム返し話法を使った会話の方が、より深く共感しているように感じるのではないでしょうか。
先述したように、ヒアリングシートは顧客から聞き取りした内容を記録するために使う用紙ですが、追客した履歴も一緒に記録すれば、顧客管理シートにもなります。顧客管理にノートなどを用意している人もいるかもしれませんが、効率的なのはヒアリングシートでの管理です
いつどんな物件を内覧して、どんな返答が返ってきたのか記入しておきます。そして余白が足りなくなったら、2枚目を用意して使いましょう。
営業用ヒアリングシートを作成する際には、どのような項目を記載すべきなのでしょうか。ここでは、ヒアリングシートに取り入れるべき必要最低限の項目を5つご紹介します。
なお、6~7番は賃貸仲介営業マン向けの内容となるので、自分の仕事内容をイメージしながらチェックしてみてください。
顧客が現在住んでいる物件がどのような間取りなのか、それに対してどのような悩みを抱えているか、また改善したいポイントを聞き出します。最初のうちは、顧客自身も具体的なニーズを理解していないことが多いため、ヒアリングにより顧客の規模や条件、改善したいポイントを整理してニーズを確認しましょう。
賃貸仲介営業の場合は、顧客の希望する物件条件だけが本当のニーズではない可能性があります。「動線や間取りの使い勝手はどうか」「今のアパートで気になるところはないか」といった質問を投げかけ、顧客の本当の課題やニーズを探りましょう。これにより、顧客の潜在的ニーズに訴えられる魅力的な提案ができる可能性が高まります。
予算や希望価格がどのくらいかを把握することも重要です。顧客の収入を把握できれば、現実的な金額で予算内の物件を紹介できます。予算の範囲内から顧客に見合う物件を提案できれば商談もスムーズに進みます。
最終的な決定権を持っている人は誰なのかを確認します。たとえば賃貸仲介営業の場合、ご夫婦に物件を紹介する際、どちらに決定権があるかを把握せずに説明を続けていると、最終的な決定の段階で成約に至らないことがあるからです。
親子の場合は親が決定権を持っているため、子の希望ばかり聞いていると決まるものも決まらなくなります。親の希望をよく把握するようにしましょう。決裁者が誰なのかを把握できれば、提案内容もキーマンに合わせたものに変えられます。
また、企業にサービスを導入する場合、どのような決済フローがあるかを知ることも大切です。多くの企業では、候補選定→絞り込み→選考→決裁者による最終決定という流れで導入に至ります。ただし、企業によっては決裁フローまでに関わる部門が多いこともあり、状況に応じて上長の方の同席を依頼しなければなりません。
決裁フローを事前に確認し、現在がどの段階かをヒアリングしましょう。
顧客が商品やサービスに対してどのような印象を持ったのか、どのような反応をしたかを記載します。顧客が感じた印象を考慮せず、自分の印象だけで商談を進めると、相手は商品やサービスに対して違和感を覚えてしまうので、相手が持った印象や反応に合わせて商談を進めることが大切です。
例えば賃貸仲介営業の場合、内覧した物件に対する印象を聞いてヒアリングシートにメモし、その後の物件紹介の際に役立てましょう。また印象をヒアリングできなかった場合は、その反応だけでもメモしておくと、後で役立ちます。
商品やサービスの提案後に、相手が抱いた疑問点を聞き出します。相手から質問が多ければ多いほど、商品・サービスに対して興味を持っていると判断できます。疑問点があれば解消し、顧客が抱くイメージを具体的なものにしていきましょう。
ここで注意したいのは、顧客からの質問に即答しないことです。今後のトラブルに発展する恐れがあるため、わからない点は持ち帰り回答をします。返答に時間をかけすぎると「この人に任せて大丈夫か」と不信感を持たれてしまうため、予想できる質問ならあらかじめ回答できるように準備しておきましょう。
賃貸仲介営業の場合、顧客からの質問はそのままにせず、なるべく早く調べて回答するようにしましょう。疑問や不安を解消できれば、成約に繋がる可能性があります。丁寧に対応するようにしましょう。
希望エリア以外にも、よく足を運ぶエリアや地域をヒアリングしておきましょう。そして賃貸物件を紹介するときは、顧客が希望するエリアだけでなく、よく足を運ぶエリアや地域へアクセスの良い物件も併せて紹介します。このようにすることで、もし希望エリアで気に入る物件がない場合に範囲を広げられるほか、潜在的なニーズを掘り起こすことも可能になります。
もし退去日が迫っているのであれば、現在空室がある物件を案内する必要があります。逆に、日程にゆとりがあれば、急いで探す必要はないのかもしれません。また、「資料だけ欲しい」と思って来店している可能性もあるので、日程については最初の段階で確認することをおすすめします。
項目に沿って営業用ヒアリングシートを作成した後は、その効果を高める工夫を行いましょう。
質の高いヒアリングにするために、6つのポイントを押さえてヒアリングシートを活用してみてください。
ヒアリングシートで顧客の基本情報を把握できますが、これだけでは曖昧な部分もあり不十分です。追加の情報を聞き出したり、顧客の業界の状況などを把握したりするなど情報収集に努めれば、提案内容も顧客にとってより良いものになります。
情報収集をする際には、「4W2H」を意識して行いましょう。「4W2H」とは、質の高い提案内容にするために必要な質問事項の頭文字を取って構成された造語で、以下のような意味があります。
基本項目と併せて「4W2H」を意識した質問をすれば、顧客のニーズを叶える提案が叶います。
ヒアリングの際には、現在→過去→未来の順に聞きましょう。もし最初の段階で、「商品・サービスを導入することで将来的に〜」といった未来の話から始めてしまうと顧客もイメージしづらく、質問にうまく答えられなくなります。
「現在」についての質問は答えやすく、「現在」から離れれば離れるほど答えるのが難しいとされています。顧客の目線に立ち、現在→過去→未来の順にヒアリングをしてください。
ヒアリングに必要なのは、仮説を立てて検証をすることです。仮説のないヒアリングは、質問をして情報を得るだけであり、貴重な時間が無駄になる恐れがあります。「本当は別の原因で悩んでいるのではないか」など、ありとあらゆる仮説を立てて検証を繰り返すことで、顧客のニーズの解像度が上がっていきます。
賃貸仲介営業の場合で、いくら紹介しても決まらない場合は、本当のニーズについて仮説を立てて賃貸物件を紹介してみましょう。家賃を安く抑えたいと言っていたとしても、立地や築年数が新しい物件を希望している可能性があります。結局は高い家賃で成約することがありますので、本当のニーズを探りましょう。
ヒアリング項目はすべて網羅するのがポイントです。たとえば、顧客が「家賃の予算を決めていない」といった場合でも、提案できる物件には幅があります。顧客がイメージしていた予算から大きく離れた物件を紹介してしまうと、困惑して商談が進まなくなるかもしれません。
ヒアリングシートを白紙の状態で提出されないよう、ヒアリング項目はこまかく設定しておく必要があります。また、仮に具体的な内容がわからない場合でも、商談を進めながら顧客が持つ要望を引き出しましょう。
「SPIN話法」は、顧客の潜在ニーズを引き出すための、ヒアリングの代表的なフレームワークのひとつです。また「SPIN」は、以下の4つの頭文字から構成されています。
上記4つの内容は以下のとおりです。
「SPIN話法」は「S」の状況質問から順番に行い、徐々に顧客の本音を引き出していくのが特徴です。不動産営業の場合、「現在の住まいで不安に感じていることはありますか?」など、現在の状況を把握できる質問をしましょう。次に問題質問を投げかけ、多くの潜在ニーズを見つけてみてください。
そして示唆質問を行い、潜在ニーズを顕在ニーズに変えていき、顧客に納得感を持ってもらいます。最後に解決質問を投げかけ、顧客側から答えを出してもらうように促しましょう。顧客に課題や解決策を自覚してもらえれば商談に前向きになり、成約に繋がりやすくなります。
下記の関連記事でも詳しく解説しているので、こちらも一度読んでおくと良いでしょう。
ヒアリングシートはなるべくきれいに書くようにします。もしヒアリングシートの書き方が乱雑だった場合、顧客は「私の希望をきちんと把握してくれているのだろうか」と心配になるでしょう。
最後に、日々目標達成に励む賃貸仲介営業マンに向けて、ヒアリングシートを最大限活用する4つの方法を紹介します。ヒアリングシートに書くのは、顧客の希望や条件だけではありません。上手に活用して効率的に追客しましょう。
文字だとイメージしにくい内容は、図や写真を挿入して記録しましょう。たとえば、顧客が「今住んでいる部屋の間取りに問題があって引越しを考えている」のであれば、その間取りを記入してください。このようにすることで、紹介する物件を選ぶ際に具体的なイメージが湧きやすくなり、的外れな提案をせずに済むようになります。
ほかにも、バルコニーとベランダはよく似ており、人によってはイメージが混同してしまうケースも少なくありません。顧客に対して不明瞭な説明をしてしまう可能性もあるので、情報を整理するためにも図や写真の挿入は重要といえます。
手元にあるヒアリングシートに、内覧した日付や物件を紹介した日付を記録しておきましょう。手帳やメールを確認すればわかることですが、ヒアリングシートに記録しておけば一目で確認できます。また、前回連絡を取った日付を確認し、あまり期間が空かないよう、追客するのも重要です。
物件を紹介して返答が返ってきたら、その内容も記入しておきましょう。どのような理由で内覧に至らなかったのか、うっかり忘れてしまうことも少なくないからです。
たとえば、「西向きの物件は候補から外してほしい」といわれたのにもかかわらず、これを忘れて紹介してしまった場合、顧客の信用を損ねてしまうため注意が必要です。
接客中、顧客に「今まで内覧した物件はございますか?」などヒアリングするケースがあります。もし聞き取りができるのであれば、わかる範囲で物件名を書き留めておきましょう。このようにすることで、「その物件はすでに候補から外したよ」などといわれずに済み、無駄のない営業活動が叶います。
営業用ヒアリングシートは、顧客のニーズを引き出すために必要な大事なツールのひとつです。顧客の基本情報や潜在的ニーズが把握できなければ質の良い提案も叶わず、商談もうまく進みません。
顧客の全体像を把握して商談の成功率を上げるためにも、営業用ヒアリングシートをうまく活用しましょう。
記事へのコメント | |