取引先やお客様から約束の期日までに入金がない場合、入金を催促するメールを送る必要があります。とくに賃貸仲介営業の現場では、お客様からの入金がなければ契約破棄のような大きなトラブルにも繋がりかねないので、入金の確認は欠かせない仕事のひとつとされています。しかし、相手を責めるような内容や言葉遣いは失礼にあたり、どんな内容にすればいいのか迷うことも少なくありません。
そこで今回は、一般的なビジネスシーンや、賃貸仲介営業の現場で使える入金催促メールの送り方のマナーについて詳しく解説します。社内向け、社外向け、個人のお客様向けの例文もご紹介するので、丁寧な言葉選びを心掛けて入金催促メールを送りましょう。
※下記の関連記事では状況別のビジネスメール文例(訪問後お礼/返信マナー/催促/謝罪/遅れた時のお詫び/日程調整/新規開拓など)をまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。
入金催促・確認・行き違いメールを送る前に注意したいこと
期日までに入金がない場合、入金の催促メールを送って相手に知らせる必要がありますが、これを送る前には以下の点に注意してください。
- 基本的に相手に悪気はない
- 支払いは済んでいるが、トラブルが発生しているかもしれない
- 行き違いで入金が来るかもしれない
それぞれの注意点を見ていきましょう。
基本的に相手に悪気はない
入金されていない理由は人によってさまざまですが、そのほとんどが「支払いを忘れていた」です。請求メールが迷惑フォルダに入っている、あるいは請求書を確認していないなどの理由も考えられるので、相手の状況をイメージし、一方的に追及するようなことは控えましょう。
支払いは済んでいるが、トラブルが発生しているかもしれない
相手が振込先を間違っているなど、支払いの際に何らかのトラブルが発生しているかもしれません。このような場合、相手は支払いを済ませていても入金されないため、詳しい状況を確認する必要があります。
行き違いで入金が来るかもしれない
相手が期日ギリギリに支払いをした場合、入金催促メールを送った後に入金される可能性があります。送金には時間がかかるため、タイミングによっては行き違いになることも考えられます。支払期日を過ぎたら入金催促メールを速やかに送るようにしますが、行き違いになっている可能性も考え、文末には行き違いがあった際のお詫びの言葉を入れるようにしましょう。
入金催促・確認・行き違いメールを送る際のマナー
入金催促メールは相手に「お金を支払ってください」と促すものであり、相手を不快な気持ちにさせないような配慮が必要です。入金催促メールを送る際は、以下の3つのマナーを心掛けましょう。
- 丁寧な言葉遣いをする
- 金額や入金先などの請求情報を改めて記載する
- 行き違いになった場合のお詫びの一言を入れる
大事なお客様という意識をもって書いてきましょう。対応によっては相手を不快にし、契約キャンセルに繋がるおそれがあります。それではひとつずつ見ていきます。
※下記の関連記事は返信マナーについての記事ですが、ビジネスメールにおける基本的なマナーやコツなども紹介してますので、こちらも一度読んでおくと良いでしょう。
丁寧な言葉遣いをする
代金が支払われていないからといって、相手を責めるような言葉は控えましょう。請求書の確認不足や支払い忘れなど、相手に落ち度がある場合でも、気遣いのあるメール文章にします。入金を忘れている、遅れているなどの直接的な言葉は避け、「入金が確認できておりません」と言い換えるのもポイントです。
また、「お忙しいところ恐れ入りますが」「誠に恐縮ですが」などのクッション言葉を使い、相手への配慮を伝えます。入金催促メールは、あくまで相手に気づいてもらうことが目的なので丁寧な文面を心掛けましょう。
金額や入金先などの請求情報を改めて記載する
請求に関するメールが届いていなかったり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりしていた場合は、入金催促メールに改めて請求情報を記載しておくと親切です。再度「請求情報を教えてほしい」というやり取りをせずに済むほか、メールを探す手間も省けるため、相手はスムーズに入金ができます。
金額や入金先などの請求情報は、以前送ったメールを転送したり内容をコピーして貼り付けたりして送ってかまいません。仮に相手に落ち度があったとしても、相手の貴重な時間を奪わないような配慮がマナーです。
また、請求情報を改めて記載する際には、変更した振込期日も伝えましょう。賃貸仲介営業では、期日を守らないと鍵渡しができないなどの理由も添えてください。このような注意喚起を行うことで、お客様の意識が高まります。
行き違いになった場合のお詫びの一言を入れる
前述のとおり、行き違いで入金催促メールを送った後に入金される場合があります。相手は「支払ったのに催促された」と感じるため、行き違いになった場合のお詫びの一言を文末に入れましょう。
具体的には、「本メールと行き違いでお振込みいただいた際には、何卒ご容赦ください」などの言葉を入れます。
入金催促・確認・行き違いメールのテンプレート
入金催促メールを送る際、テンプレートを活用して文章を考える方も少なくありません。細かいルールもありますが、一般的には以下の順序で書いていきます。
- 件名
- 宛先
- 挨拶
- 本文
- 結び
1.件名
「【ご確認】○○のお支払いについて」「代金お支払いのお願い」など、件名を見てメールの内容が一目でわかるようにします。
2.宛先
会社名・部署名・氏名を記載し、普段やり取りをしている担当者に送りましょう。担当者が不明の場合は、「株式会社○○ 経理課御中」と記載します。なお、個人のお客様は、ご自身の氏名をフルネームで記載します。その際には、漢字に間違いがないかきちんと確認しましょう。
3.挨拶
下記のように、通常のビジネスメールと同様に挨拶文を記載します。
- 「いつもお世話になっております。株式会社○○の△△でございます。」
- 「平素はお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。株式会社〇〇の△△でございます。」
4.本文
本文に記載するのは、以下の5つです。
- 請求書の送付日
- 請求書番号や内容
- 金額
- 支払期日
- 状況
どの案件に、いつ請求書を送ったのかを記載します。支払い期限とそれに対して「入金が確認できていない」旨を伝え、入金を促しましょう。
5.結び
すでに入金している可能性もあるため、最後は「ご確認をお願いいたします」と記載します。続いて、行き違いがあった場合のお詫びの一言を記載しましょう。
入金催促・確認・行き違いメールの文例9パターン
入金催促メールの文例を、以下の3パターンに分けてご紹介します。
- 社内の人・部署に向けて送るパターン
- 社外の人・取引先に向けて送るパターン
- お客様(個人)に向けて送るパターン
なお、お客様(個人)向けのパターンは、賃貸仲介営業で使える文例を紹介しています。自分の仕事で使える内容かどうか、日々の実務をイメージしながら読み進めてみてください。まずは場面やシチュエーション別で異なる定型文を紹介します。
※下記の関連記事ではビジネス向け催促・確認・リマインドメールの例文をまとめているのでこちらもチェックしてみてください。
まずは場面やシチュエーション別で異なる定型文を確認しよう
文例を確認する前に、まずは場面やシチュエーション別で異なる定型文を確認します。主に3点あるので、ひとつずつ押さえましょう。
冒頭の挨拶
社内に向けたメールなのか、社外やお客様に向けたメールなのかで冒頭の挨拶文が異なります。間違えても、社外・お客様に「お疲れ様です。」と送らないように気を付けましょう。
<社内の場合>
・お疲れ様です。
<社外・お客様の場合>
・お世話になっております。
商品やサービスの利用などに対する感謝の言葉の有無
冒頭の挨拶が済んだら、弊社の商品やサービスの利用などに対して感謝の言葉を投げかけます。
商品やサービスの利用をしている人は、お取り引きのある会社(社外)やお客様が多いため、基本的には社外・お客様宛のメールのみに挿入します。
<社外・お客様の場合>
・先日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。【お打ち合わせのお時間を頂戴した場合】
・先日は、弊社商品◯◯をご購入いただきありがとうございました。【商品をご購入いただいた場合】
社内宛で送るメールでも、もし直近で何かしらお世話になった人に送信をする場合は、その時に対するお礼の言葉を挿入すると印象が良くなるでしょう。
<社内宛の場合>
・先日は◯◯に関するご相談にのっていただきありがとうございました。
メール末尾に記載する自分の宛先
メール末尾に挿入する自分の宛先にも、大きな違いがあります。主な違いを、下記の表にまとめました。
| 社内宛 | 社外・お客様宛 |
会社名の有無 | × | ◯ |
部署 | ◯ | ◯ |
名前 | △(※) | ◯ |
会社所在地 | × | ◯ |
電話番号(会社) | × | ◯ |
電話番号(社用の携帯) | ◯ | ◯ |
電話番号(内線) | ◯ | × |
メールアドレス | ◯ | ◯ |
※記載しなくても問題ないが、ある方が望ましい
社外・お客様宛では、内線番号以外の全てを記載するように心掛けましょう。一方で、社内宛では、自分直通で繋がる内線番号や携帯番号などを記載するように心掛けます。
次項から場面・シチュエーション別で使える入金催促・確認・行き違いメールを9つ紹介していきます。
【一般営業】社内の人・部署に向けて入金催促を送るパターン
【一般営業】社外の人・取引先に向けて入金催促を送るパターン
【賃貸仲介営業】お客様(個人)に向けて入金催促を送るパターン
【一般営業】社内の人・部署に向けて入金確認を送るパターン
【一般営業】社外の人・取引先に向けて入金確認を送るパターン
【賃貸仲介営業】お客様(個人)に向けて入金確認を送るパターン
【一般営業】社内の人・部署に向けて行き違いメールを送るパターン
【一般営業】社外の人・取引先に向けて行き違いメールを送るパターン
【賃貸仲介営業】お客様(個人)に向けて行き違いメールを送るパターン
入金の催促をしても支払われなかったらどうする?
入金の催促をしても支払いに応じない場合、どのように対応すればいいのでしょうか。入金催促をしても支払われなかった場合、以下の方法で相手に支払いを求めます。
- 督促メール、督促状を送る
- 法的措置を執る
賃貸仲介営業の現場ではあまり使うことはありませんが、賃料支払いを遅滞されている方に支払いを求める際にも役に立つ場合があります。どちらもあまり行いたくはないものではありますが、万が一のときに備えて覚えておくようにしましょう。それぞれの対応の仕方について、詳しく解説していきます。
督促メール・督促状を送る
催促メールを送っても支払いがない場合は、督促メールを送ります。内容自体に大きな違いはありませんが、「督促」にするとより強いニュアンスになるため、催促メールに記載した内容を督促メールに記載して送信しましょう。
賃貸仲介営業では、入居日が迫っているにもかかわらず入金確認ができない場合などに有効です。
督促メールに記載した期日までにも支払いがされない場合は、督促状を作成します。督促状を送る際には、普通郵便ではなく内容証明郵便がおすすめです。
内容証明郵便とは、郵便物の差出日付・差出人・宛先・文書の内容を日本郵便が証明するサービス、あるいはそれらが証明された郵便物のことを指す言葉です。内容証明郵便を送ると、相手は「届いていないから知らない」という言い訳ができません。また内容証明郵便は、相手に対し法的手段も辞さない意思表示ともいわれています。
法的措置を執る
猶予を設け何度注意したのにもかかわらず、支払いに応じない場合は法的措置を検討します。しかし、法的措置を執った場合、たとえ長年の取引先であっても関係が悪化して取引自体がなくなってしまう可能性があります。そのため社内でも慎重に検討し、あくまで最終手段として法的措置に移行しましょう。
また、代金未納の法的措置には主に4つの手段があります。
①支払督促
支払督促とは、書類審査のみで裁判所が取引先に督促状を送る手続きのことです。通常の訴訟のように、審理のために裁判所へ赴く必要がなく、費用も訴訟の半額で済みます。
また、相手が2週間以内に異議申し立てをしない場合、強制執行も可能です。一方、2週間以内に異議申し立てがあれば通常の訴訟へ移行します。
②民事調停
裁判ではなく話し合いで合意し、円満にトラブル解決を図る手続きが民事調停で、裁判官と一般市民から選出された調停委員が間に入り、和解を目指します。こちらは費用が少額で、さらに争う姿勢ではないため精神的にも楽な点がメリットです。ただし、合意にいたらなければ調停不成立となり、別の手段を講じなければなりません。
③少額訴訟
60万円以下の支払いを求める場合に利用できる訴訟です。1回の審理で判決もその日のうちに出るため、通常の訴訟よりも迅速に未払金を回収できます。しかし、相手が異議を申し立てた場合は通常訴訟に移行します。
④通常訴訟
請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、請求額が140万円以上の場合は地方裁判所にて裁判が行われます。通常訴訟は複雑な手続きや専門的な判断が必要となるため、弁護士に相談をしてから実施するかどうかを決めるようにしてください。
入金催促メールを送る際も丁寧な言葉選びを心掛けよう
代金が支払われないと資金繰りに困るため、つい感情的になって入金催促メールを送ってしまうかもしれません。しかし、単に相手が忘れていたり、行き違いになったりしている可能性も考えられます。入金催促メールを送る際には丁寧な言葉遣いを心掛け、相手を混乱させないよう簡潔にまとめてみてください。