記事公開日:2022/03/24
最終更新日:2022/09/18
午後の会議や仕事中に、強い眠気が襲ってくることがあります。ランチ後に眠くなり、「午後は集中力がない」「作業がはかどらない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。今回は、食後の眠気の原因についてお伝えしながら、眠気を抑える方法をご紹介します。
目次
食後に眠気が襲ってくるのは、食事や食べ方による血糖値の急上昇・急降下が原因です。食事で摂取した糖質はブドウ糖に分解され、血液中に送り込まれます。そうすると血糖値が上昇し、糖をエネルギーへと変えるインスリンが、すい臓から分泌されます。通常は、インスリンによって血糖値の変動が保たれているのです。
しかし、糖質を摂取し過ぎると血糖値が急上昇し、インスリンが過剰に分泌されます。インスリンが多く分泌されると、今度は血糖値が急降下し低血糖状態になるため、眠くなってしまうのです。
このように、血糖値がジェットコースターのように急上昇・急降下することを、「血糖値スパイク」と呼びます。「血糖値スパイク」は、強い眠気だけでなく、倦怠感やイライラ、空腹感などを引き起こすものです。食後の眠気だけでなく、普段体の不調を感じている場合は、この血糖値スパイクが原因の可能性があります。
食後の眠気を抑えるためには、血糖値スパイクを起こさないことです。そのためには、血糖値を緩やかにする低GIフードを積極的に選びましょう。
GIは「グリセミック・インデックス(Glycemic Index)」の略で、糖質の吸収度合いを示すものです。GIの数字が高いほど糖の吸収が早いため、血糖値が急上昇します。食品は高GIフード、中GIフード、低GIフードの3つに分けられており、シドニー大学では、70以上のGI値を高GIフード、56〜69を中GIフード、55以下を低GIフードとしています。
高GIフード | 70以上 | 白米/白いパン/もち米/フライドポテト/スコーンなど |
中GIフード | 56〜69 | フランスパン/じゃがいも/パンケーキなど |
低GIフード | 55以下 | 大豆食品/そば/きのこ類/りんご/バナナ/など |
普段の食事が高GIフードばかりの人は、低GIフードの食品を意識して取り入れましょう。続いて、おすすめの料理を3つご紹介します。
ランチにうどんを食べる人も多いですが、そばに変更すると急激な血糖値の上昇を抑えられます。また、そばには食物繊維やビタミンB群が多く含まれているため、腹持ちがよい点もメリットです。
煮物やサラダ、スープなどに大豆を使った料理がおすすめです。豆は畑の肉と言われるほど、たんぱく質や食物繊維など栄養が豊富に含まれています。
また、間食をする際には、デザートを大豆を使ったお菓子や焼き菓子に変えてみましょう。例えば、朝食は白いパン、昼食はラーメンと餃子、デザートに砂糖たっぷりのスイーツを食べると、一日に何度も血糖値スパイクが起きている状態になります。大豆を使った料理やお菓子はコンビニでも売っているので、意識して取り入れてみましょう。
主食の白米を玄米に変えることで、食後の眠気を抑えられます。玄米は食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇を緩やかにし、さらに腹持ちがいいため満足感もあります。パックごはんにも玄米があり、コンビニやスーパーなどで簡単に購入が可能です。おにぎりにしたり、チャーハンにしたりして取り入れましょう。
食後の眠気を抑えるには、食べ物の他に食べ方にも注意が必要です。以下の4つの食べ方を意識してみてください。
それぞれ見ていきましょう。
「腹八分目に医者いらず」という言葉もあるように、お腹いっぱいになるまで食べるのを避けましょう。食べ過ぎると血糖値の上昇につながります。白米や麺など、糖質が多い炭水化物の量を減らしたり、食べる量を決めてそれ以上は食べないようにしたりして、腹八分目に抑えることがポイントです。
食事時間が10分もかからない人は注意が必要です。満腹中枢が刺激されるのは、食事から15分後とされています。15分以内の食事は満腹感を得られず、食べすぎにつながるのです。また、食事時間が短いと、短時間で血糖値が上昇してしまうため眠くなってしまいます。
早食いが癖になっている人は、一口ごとに箸を置いたり時間を計ったりして、よく噛んでゆっくり食事をすることを心がけましょう。なお、スマホやテレビを見ながら食べる「ながら食べ」も注意してください。食事に集中しないため、噛む回数が減ったり食事時間が早くなったりして、血糖値スパイクが起こります。
食べる順番も意識しましょう。最初に野菜やきのこ類など、食物繊維を多く含む食品から食べます。食物繊維は糖の吸収を抑える働きがあるため、血糖値の上昇を緩やかにするからです。
理想の順番は、野菜・きのこ類→肉・魚などのおかず→ごはんやパンなどの主食です。ランチに牛丼やカレーライスなどの単品ものをよく食べる人は、主菜や副菜のある和食の定食を意識して選ぶようにしましょう。
食後に運動をすると、ブドウ糖が筋肉に消費されるため血糖値が下がります。運動は激しいものではなく、ウォーキングを20分するだけでも効果的です。
また、会社や自宅周辺の散歩に加え、筋トレも一緒にするのがおすすめです。筋肉量が増えてから有酸素運動をすると、多くの糖が使われます。軽い運動に慣れたらスクワットもするなど、筋トレと有酸素運動を組み合わせてみましょう。
食事や食べ方を意識しても、ときには血糖値の急上昇を引き起こす食事になることもありますよね。どうしても眠気が襲ってくる場合は、以下の3つの方法で対処しましょう。
対処方法をひとつずつ見ていきます。
コーヒーやお茶などには、カフェインが含まれています。カフェインには興奮作用があるため、眠気を覚ます効果があるのです。
なお、眠気対策にコーヒーを飲むときは、ホットコーヒーを選択するとより効果的です。人は体温が下がると眠くなり、体温が上がると覚醒するため、温かいコーヒーを飲むことでより眠気対策になります。
ただし、眠いからとカフェイン入りのコーヒーやドリンクの飲みすぎは控えましょう。カフェインを過剰摂取すると、神経が過剰に刺激され、めまいや震え、不眠などの影響があります。米国では健康な大人の場合、1日400mg(コーヒーカップ4〜5杯程度)であれば悪影響はないとしています。適切な量のコーヒーやカフェイン入りドリンクを飲み、眠気を覚ましましょう。
ペパーミントの成分であるメントールの香りが中枢神経を刺激し、眠気を覚ます効果があります。ミント系にはタブレットや鼻から吸うタイプの製品がありますが、おすすめはガムです。
脳の血液量が減ると眠くなりますが、ガムを噛む行為により脳が刺激され脳の血液量が増えます。ミント系のガムは「香り」と「噛む」2つの刺激により、眠気覚ましに効果的なのです。
どうしても眠い場合は、思い切って仮眠を取るのもひとつの方法です。会社の昼休みや在宅勤務の合間など、約20分ほど仮眠を取ります。これは「パワーナップ」と呼ばれているもので、昼の12時〜15時の間に約20分の仮眠を取ると、脳の疲労が回復され午後のパフォーマンスが向上します。ただし、20分以上寝ると頭が働かなくなるため注意してください。
また、そもそも夜間の睡眠時間が少ないことが、食後に眠くなる理由とも考えられます。厚生労働省の2019年『国民栄養・健康調査』によると、平均睡眠時間は1日6時間以上7時間未満の割合が多いことがわかりました。最適な睡眠時間は6〜8時間と言われていますが、個人差があるため、日中眠くならないくらいの時間を確保することが大切です。
睡眠時間の確保はもちろんのこと、睡眠の質にも目を向けましょう。睡眠の質が悪いと寝つきが悪く、途中で目覚めてしまいます。不眠が続くと、日中の眠気や集中力の低下、心身の不調につながってしまうのです。
睡眠の質を上げるためには、毎朝同じ時刻に起床しましょう。日光を浴びると体内時計をリセットされ、快適な睡眠につながります。その他にも、以下のような方法が睡眠の質を高める方法です。
眠ろうとすると、かえって寝つきが悪くなるため、ストレッチや読書などをしてリラックスし、自然と眠くなってからベッドに入るようにしましょう。
食後の眠気は、食事内容や食べ方により、血糖値がジェットコースターのように急上昇・急降下する、血糖値スパイクが原因であることがほとんどです。血糖値を緩やかに上昇させる低GIフードを積極的に選んだり、食物繊維が多い野菜から食べたりして、血糖値の急上昇を抑えましょう。食後の軽い運動や20分ほどの仮眠も効果的です。
また、睡眠時間や睡眠の質が影響している場合があります。毎日の食生活や睡眠を見直して食後の眠気を撃退し、すっきりとした頭で効率よく午後の作業に取り組みましょう。