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インサイト営業とは?成功ポイントや事例からスキルを磨いて成約率を上げよう!

記事公開日:2022/08/25

最終更新日:2024/01/11

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時代の変化は営業スタイルにも影響をおよぼし、多くの営業担当者は新規顧客の獲得に向けて効果的な方法を模索しています。顧客が自分で情報を集められる現代では「インサイト営業」が注目されていますが、具体的にどんな営業なのかわからないという方も少なくありません。賃貸仲介営業におけるインサイト営業は、顧客アプローチの「考え方」を知っておくことでより有意義なものになります。

今回は、インサイト営業の概要やソリューション営業との違い、実施する前に確認すべき点について解説します。また、成功のポイントや成功事例も紹介していきますので、興味をお持ちの方はぜひチェックしてみてください。

※下記の関連記事では反響営業のコツやマーケティングについて解説しているので、こちらもチェックしてみてください。

目次

インサイト営業とは

インサイトは「洞察」や「発見」と訳されますが、ビジネスにおいては「人を動かす隠れた心理」を意味します。そのため、インサイト営業は顧客自身も意識していない、気づいていない購買意欲を刺激したり、課題や問題を見つけて解決に導いたりする営業手法といわれています。

インサイト営業は、2012年のハーバード・ビジネス・レビューで掲載された「ソリューション営業は終わった」という論文で注目を集めました。これまで主流だったソリューション営業も有効な手段ではありますが、さらなるビジネスチャンスの獲得に向けて、インサイト営業にシフトチェンジする方も徐々に増えてきています。

御用聞き営業との違い

御用聞き営業とは、読んで字のごとく、取引先に「具体的な解決策を提示されたものを提供する」スタイルの営業方法のことです。御用聞き営業では、信頼関係があるところに「何か足りないものはありませんか?」と用事(御用)を伺い、安定した注文を受け続けることが目的として存在しています。もちろん、それだけでは不十分ですので、アップセルやクロスセルを行うことも重要でしょう。課題認識と解決策の両面を取引先から要望される点が、インサイト営業との最も大きな違いであるといえます。

なお、賃貸仲介営業は御用聞き営業と思われがちですが、それは大きな誤りです。もちろん、お客様が明確なニーズを示してくることも、賃貸物件をピンポイントで提示してくることも考えられます。しかし、賃貸仲介営業は提案型の営業スタイルが求められますので、お客様のニーズだけを聞き入れていては、成長が見込みにくいと認識すべきでしょう。

プロダクト営業との違い

プロダクト営業とは、商品やサービスの提案型の営業スタイルをいいます。具体的には、取引先は課題を認識しているものの、解決策を持ちあわせていない状態で、取引先の課題を解決できる商品やサービスを提案するものです。

御用聞き営業と比較すると、より能動的な営業といえるでしょう。インサイト営業との違いは、相手方が課題認識をしている点にあります。課題解決策をこちらから提案する点については、大差がありません。

賃貸仲介営業においては、最低でもプロダクト営業レベルの提案力が必要といえます。御用聞き営業のように、正解を持ちあわせていないお客様が大半だからです。そのためには、賃貸物件知識や賃貸に関する法的知識の習得が必須といえるでしょう。

ソリューション営業との違い

インサイト営業とソリューション営業の違いを以下の表にまとめました。

【インサイト営業とソリューション営業の違い】

 インサイト営業ソリューション営業
顧客の状態気づいていない課題がある課題を認識している
アプローチ顧客を分析・調査してインサイトを見つける課題をヒアリングし、解決に導く商品やサービスを提案する

インサイト営業もソリューション営業も、課題を解決する点は同じです。ただ、インサイト営業は、顧客が気づいていない「潜在的」な課題を先に発見します。一方、ソリューション営業は、顧客が課題を認識している状態のため、明るみに出ている「顕在的」な課題に対して解決策を提案する営業手法です。

また、インサイト営業は商品やサービスを売ることよりも、「顧客自身の利益」について深く考えるスタンスが求められます。顧客すら気づいていない課題に気づくには、顧客の立場になって考える必要があるからです。

インサイト営業が注目されている理由

昨今、インサイト営業がさまざまなシチュエーションで注目されつつあります。なぜ今インサイト営業が耳目を集めているのか、その理由に迫ります。

IT技術の発達

インサイト営業の注目は、IT技術の発達と密接な関係にあります。IT技術の進化により、膨大なデータの収集と解析が可能になり、顧客の行動やニーズを深く理解できるようになりました。AIやビッグデータ分析を駆使したインサイト営業では、顧客のビジネス課題や傾向を把握し、個別の提案を提示することを可能にしたのです。

これにより、顧客との関係構築が強化され、顧客の信頼を得られるようになりました。その結果、現代の競争が激化する市場において、インサイト営業は持続的なビジネスの成功を達成する手段として注目されているのです。

しかし、IT技術が発達した現代では、顧客自ら検索して解決方法を知ることができます。解決策をすでに把握し、他社との比較検討が容易にできる現代では、ソリューション営業が通用しなくなってきているのです。ただし、いくら顧客自身が解決策を出せるとはいえ、いくつか注意しなければならないことがあります。

顧客自身に解決策を提供する価値

一方で、IT技術の発達の恩恵は、インサイト営業側にのみもたらされたのではありません。その恩恵は、顧客側にももちろん発生しています。しかし、いくらIT技術が発達してその恩恵を受けるようになったとしても、時々刻々と変化する状況に、最適な解決策を正しく導きだせるかどうかは別の問題です。また、自社が課題だと認識していたとしても、実際の課題を発生させている真因が別にあることも考えられます。そのときは、枝葉の認識課題を解決するだけでは不十分であり、真因を解決させないと、別の形で異なる課題を解決しなければいけません。

顧客は自社のことを俯瞰で見るのは難しく、正確に課題を引き出せていない可能性があるため、営業担当者がヒアリングから課題を見つけることは顧客にとって大きな価値となり得ます。顧客の課題に沿った提案をするソリューション営業ではなく、顧客も気づいていない・言語化できていない課題を先回りして見つけるインサイト営業こそ、これからの時代に必要な営業手法といえるでしょう。

インサイト営業のメリット

ソリューション営業に変わるインサイト営業には主に3つのメリットがあります。

  1. 優良な既存顧客の育成ができる
  2. サービスや商品の受注率が上がる
  3. 効率良くリードの獲得ができる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

優良な既存顧客の育成ができる

インサイト営業は、見込み客や既存顧客との信頼関係構築が重要です。商品やサービスの売り込みではなく、顧客とのコミュニケーションから潜在的な課題を見つけるため、顧客との信頼関係がより深まります。営業をする・されるといった関係よりも、より一歩踏み込んだ関係性となり、優良な既存顧客の育成に繋がるのです。

サービスや商品の受注率が上がる

ソリューション営業は顧客の顕在的課題にアプローチするため、すでに多くの企業が解決策を出しているレッドオーシャンです。しかし、顧客も気づいていなかった不満や欲求への解決策は、まだどこにも出ていません。他社が見抜いていない課題へのサービスや商品を提案できれば、顧客は「価値あるもの」と好意的に受け取ってくれる他、ライバルのいないブルーオーシャンで戦えるため受注率アップに繋がります。

効率良くリードの獲得ができる

3つ目のメリットは、インターネットを利用し、効率良くリードを獲得できる点です。SNSやデジタル広告などを活用し、潜在顧客が検索して自社商品やサービスに辿り着くよう促します。リード獲得を効率良く獲得するためにも、インサイト営業は役立つのです。

インサイト営業のデメリット

インサイト営業には、デメリットや高い障害も存在しています。内容を確認しておきましょう。

高い営業力が必要になる

インサイト営業は、ソリューション営業よりも高い営業力が求められます。前述のとおり、インサイト営業は顧客が自覚していない課題を発見して解決策を提示する営業手法です。そのため、そもそも顧客が抱える本質的な課題を見抜けなければインサイト営業とはいえないのです。

洞察力や傾聴力などのスキルを身に着ける必要がある

営業側には、課題を探り当てる能力や新たな価値が求められます。洞察力や傾聴力など高度な能力が必要となるでしょう。

人材の確保や育成において労力がかかる

また、スキルのみならず、業界動向や業界カオスマップを熟知していなければいけません。関連する法的知識や業界慣例も、押さえておく必要もあります。人材の確保や育成において労力がかかるということを覚えておきましょう。

インサイト営業で成功するためのポイント

インサイト営業は現代に必要な営業手法です。インサイト営業を成功させるために、以下の3つのポイントを押さえましょう。

  1. 自社の商品やサービスの理解を深める
  2. 顧客自身の状況を把握するためにヒアリングを徹底する
  3. 顧客自身が課題を認識できるように質問を投げかける

自社の商品やサービスの理解を深める

まずは自社商品・サービスへの理解を深めましょう。自社商品やサービスについて理解がなければ、なぜ顧客が抱える課題に有効なのか説明できません。

インサイト営業は、潜在的な課題を見つけて自社商品やサービスを提案する必要があります。発見したインサイトに対して、自社商品やサービスが解決策に繋がるものだということを顧客に伝えましょう。

顧客自身の状況を把握するためにヒアリングを徹底する

2つ目のポイントは、ヒアリングの徹底です。営業にはヒアリング力が求められるのは当然ですが、顧客とのコミュニケーションを重視するインサイト営業では、特に重要視されるスキルです。

一見、商談と関係のない話でも、顧客の潜在的課題に結びつくヒントが隠れている可能性もあります。不動産営業マンなら、失礼のない範囲で家族構成や将来の展望などを聞いてみると良いでしょう。どのような話にも耳を傾け、あらゆる角度から質問をして顧客のインサイトを見つけ出しましょう。

また、競合や市場状況、社会情勢について把握しておくことも大切です。顧客の業界の状況や動向を知ることで具体的な質問が叶い、相手との距離が縮まります。これによってインサイトがより見つけやすくなる他、説明に説得力が増して信頼も得やすくなります。

賃貸仲介営業におけるヒアリングの重要性

賃貸仲介営業において、ヒアリングは基本中の基本であり、これが不十分な接客が成約に結びつくことはまずありえません。特に賃貸仲介業では、言葉にできない背景やニーズをくみ取ることが重要です。一朝一夕で身につくものではありませんが、お客様にとって最良の賃貸物件を提案するためには、ヒアリングを通じて言語化されない機微や行間を読み取ることを避けては通れません。

ヒアリングは耳からの言葉だけではなく、表情や雰囲気からも行うことが重要です。気になった部分があれば、タイミングや言葉を選び、質問できるようになりましょう。

下記の関連記事でも詳しく解説しているので、こちらも一度読んでおくと良いでしょう。

顧客自身が課題を認識できるように質問を投げかける

3つ目のポイントは、質問をする際には、顧客自身が課題を認識できるように投げかけることです。営業担当者が「必要だから」と商品やサービスを提案しても、顧客が課題を認識していなければ押し売りされていると感じてしまいます。

顧客自ら課題を認識するように質問を投げかけることで課題が言語化され、徐々に課題を解決したいという思考に変化していきます。タイミングを見計らって商品やサービスを提案できれば契約へのハードルが下がり、自身の目標達成に近づくでしょう。

質問には、顧客に話してもらえるオープンクエスチョンと、「YES・NO」で答えられるクローズドクエスチョンの2種類があります。ヒアリングでは顧客の話を聞くためにオープンクエスチョンを使うなど、状況によって使い分けると良いでしょう。

賃貸仲介営業における質問力の重要性

賃貸仲介営業においてお客様のニーズに応えることは重要ですが、それだけでは安定して成約を勝ち取り続けることは困難です。お客様が希望した条件にすべて合致した条件を提示しているにも関わらず、なぜか成約に至らないといった経験はないでしょうか。また、追客の結果、他決した物件を聞いてみたところ、自分がすでに提示している物件だった場合もあるでしょう。

ニーズの範囲内にあるにも関わらず、自分で成約できない原因は質問力にあるかもしれません。お客様が成約に至るためには、提案している賃貸物件がニーズにマッチしているかどうかは確かに重要なことです。しかし、それに加えて、担当している営業担当者が信頼できるかどうかも大きな要素として考えられます。ヒアリング(≒傾聴力)だけでは、ニーズに当てはまる賃貸物件を提示できるものの、潜在的な課題や要望をくみ取り、気づかない潜在的な課題を顕在化させて解決に至らしめることは不可能です。

本人すら気づいていない課題を見つけるためには、ヒアリングで感じた違和感を適切なタイミングや言葉で質問する必要があります。個人情報や個人のバックボーンを誰かが聞こえる場所で聞いてはいけないうえ、直接的な表現で聞くこともNGです。信頼される営業担当者であるためには、インサイト営業の実現が重要です。ヒアリングのみならず、質問力も求められることを理解しましょう。

下記の関連記事もチェックしてみてください

インサイト営業に必要なスキル

インサイト営業では、ヒアリングと質問力以外にも、さまざまなスキルが求められます。一般の営業職の方も、賃貸仲介営業の方にも必要となるスキルですので、細かく確認しておきましょう。

仮説立案力

仮説立案力は、ただアイデアを提示するだけでなく、その背後にある根拠や理由を説明することも含めたスキルです。データや事実に基づいた論理的な説明を通じて、顧客の信頼を得られます。

論理的思考力

論理的思考力は、原因と結果の関係を理解し、説明する能力です。顧客の課題やニーズの背後にある根本的な真因を特定し、それに対する適切な提案をする能力が求められます。同様に、論理的思考力がなければ、顧客に解決策を説明することも困難といえるでしょう。

情報収集力

情報収集力とは、顧客のビジネス課題やニーズを理解し、正確な情報を多角的に収集する力のことです。業界トレンド、競合情報、顧客の行動パターンなど、多様な情報源から得たデータを分析し、顧客に解決策を提示する能力が要求されます。

情報収集が不十分であれば、顧客との信頼関係を築けず、戦略的で実現可能性の高い解決策を提示することはほぼ不可能と考えられます。

質問力

インサイト営業において、質問力は不可欠です。自分が想像する仮説の正誤を認識するための深掘り質問や、顧客のビジョンや課題について掘り下げる質問も重要になります。的確な質問を通じて顧客の潜在的なニーズを明確に把握し、それを基にカスタマイズされた提案を行うためのスキルも、質問力の一部といえるでしょう。

ヒアリング力

インサイト営業において、ヒアリング力は極めて重要です。顧客の声に耳を傾け、深い理解を得ることなく、課題を認識して解決策を提示することは不可能といえます。

的確な質問や傾聴を通じて、顧客のニーズや課題を明確に把握するためには、ヒアリング以外の方法は存在していません。再三ですが、ヒアリングは言葉からだけでは不十分です。表現などからも言葉の意味を読み取り、その要望を正確に捉えることが求められるでしょう。

フィードバック力

フィードバック力も、インサイト営業には欠かせないスキルです。提案した内容を顧客からフィードバックを受け、新たな提案に盛り込み、さらにフィードバックさせるという繰り返しが、課題を解決するために必要な作業になります。

※下記2本の関連記事をチェックするとスキルアップにつながります。

客観的に考える力

インサイト営業として独自のスキルといえるのが、この客観的に見て考える力です。重要なことは、顧客のことを客観的に見ることも必要ですが、自社のサービスや商品をも客観的に捉えることが求められます。

自社の立場に立ちつつ、自社と顧客の継続的な取引を客観的に見据えることで、提案する内容はより価値あるものになるでしょう。

賃貸仲介営業がインサイト営業を活用するタイミング

ここからは、賃貸仲介営業担当者の方に向けて、日々の営業活動の中でインサイト営業を活用するタイミングや方法を解説します。

顧客のヒアリングを行っているタイミング

商談当初のヒアリング時期は、インサイト営業の基本となるお客様の情報収集を行う、非常に重要なタイミングです。ここでは、お客様が言語にできる要望はもちろんのこと、言葉にできない要望がないかどうかについても、目と耳を光らせましょう。

物件提案や内見を行っているタイミング

最初に行ったヒアリングに基づく優先順位と、このタイミングでお客様が優先する要望が合致しているかどうかを答え合わせする良い機会です。実際に物件提案や内見を行ったときに異なっているようであれば、要望のくみ取りが不十分といえるでしょう。

ただし、答え合わせが間違っていたとしても、その中で随時修正すれば良いのです。そこで論理的に詰めるのではなく、不一致のフィードバックを真摯に受け止め、新たな物件提案などを通じて相違を埋めていきましょう。

インサイト営業の成功事例

ここまでインサイト営業について詳しく見てきましたが、実際にどのような効果をもたらしているのでしょうか。ここでは、成功事例を4つご紹介します。

  1. IKEA(イケア)
  2. 「Got Milk?(ミルクある?)」キャンペーン
  3. 大戸屋
  4. コンビニエンスストア

どれもおもしろい事例なので、今後の業務の参考にしてみてください。

IKEA(イケア)

日本でもおなじみのIKEA(イケア)は、スウェーデン発祥の家具・インテリア雑貨店です。IKEAのオーストラリア店では、男性客の不満を解消した「MANLAND」という施策を実施しました。

IKEAのオーストラリア店では、男性客の利用が少ないという課題がありました。女性をターゲットとした商品展開や売場のレイアウトは、男性にとっては退屈な場所であったのです。

一般的な女性は、ショッピングそのものを楽しんだりゆっくりと商品を見たりします。一方、男性は必要なものを効率良く見て購入するスタイルです。IKEAのような大型店舗では、女性が買い物を楽しんでいる間、男性が何もせずにただ座っているだけという姿が多く、一緒に買い物に行きたがらないことから男性客が少ないことがわかりました。

そこでIKEAは、テレビゲームや雑誌、無料のホットドッグなどを用意した、男性客向けの「MANLAND」を設置しました。女性が買い物をしている間、男性は「MANLAND」で時間を過ごせます。男性の買い物中の「つまらない」という不満を解消し、来店数アップに繋げたのです。

「Got Milk?(ミルクある?)」キャンペーン

カリフォルニア州の牛乳消費量をアップした事例です。カリフォルニア州では、1980年から1992年まで牛乳消費量が落ち込んでいました。「牛乳は健康に良い」とアピールしても効果がなかったため、牛乳が好きな方々に一週間牛乳を飲むのをやめてもらい、どのような場面で牛乳を飲みたくなったかを調査しました。

消費者たちからは、「クッキーやシリアルを前にすると飲みたくなる」という回答が多かったため、CMではクッキーにかぶりつく映像に「Got Milk?(ミルクある?)」とキャッチコピーをかぶせたり、スーパーマーケットのクッキー売場にポップを設置したりして訴求したのです。

牛乳そのものの魅力をアピールするのではなく、牛乳が飲みたくなるインサイトを見つけ出したことで牛乳の消費量は増加し、Got Milk?キャンペーンはアメリカで大成功を収めたキャンペーンのひとつとして語られています。

大戸屋

和食を中心としたチェーン店の大戸屋は、全国展開を始めた当初は男性客がメインでした。女性客の集客のため調査をしたところ、「一人で定食屋に入るのを誰かに見られたくない」というインサイトを見つけたのです。

そこで大戸屋は、女性が一人でも来店しやすいように、建物の地下や2階に店舗を構え、女性客の取り込みに成功しました。インサイトにより、飲食業界では異例の目立ちにくい場所に店舗を構えるというアイデアが生まれた事例です。

コンビニエンスストア

会社帰りに何気なく立ち寄っているコンビニエンスストアでもインサイト営業の成功事例があります。それは、買い物かごの設置です。

コンビニエンスストアのPOSデータを分析したところ、多くの客が1〜2点だけ購入しており、商品数が増えるほど客数が減っていることがわかりました。店舗で調査したところ、手に取った商品で両手がふさがり、それ以上は購入できないことが判明したのです。

そこで、大型のスーパーマーケットのように買い物かごを設置しました。その結果、購入点数が増えて売上アップに成功したというわけです。

インサイト営業には「CRM・SFAツール」の導入が有効的

インサイト営業には、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業活動自動化)などのツール導入がおすすめです。CRMは顧客情報を管理するツールで、購買履歴や問合せ履歴などをデータとして管理します。一方SFAは、案件の進捗状況や顧客とのやり取りなど、営業プロセスを可視化して管理するものです。

CRMやSFAを取り入れれば顧客情報が一元化され、大事なデータが自動的に蓄積されます。ノンコア業務にかける時間が減ってより顧客に注力できるなど、効率良く顧客との関係を構築できるため、インサイトも発見しやすくなるでしょう。

賃貸仲介営業でも、昨今はこういったツールの導入が一般化してきています。しかし、導入はゴールではなく、スタートに過ぎません。競合他社も同じようなツールを導入している以上、他社以上に使いこなさなければ差別化は難しいと認識すべきです。ツール導入後は、定期的にカスタマーサクセスとの定例会議を行ったり、未活用領域を活用できるようなサポートを積極的に受けたりするように心がけてください。

インサイト営業はこれからの時代に欠かせない営業手法

男性営業マンの画像

顧客自身が気づいていない課題を発見し、そこに具体的な解決策を提案するインサイト営業は、顧客が大量かつ正確な情報を得やすくなった現代では特に重宝する営業手法です。問題解決の点ではソリューション営業と同じですが、顧客が意識していない課題を見つけて新たな価値を提供できれば、他社との差別化が図れます。

顧客が企業に求めるのは、課題解決を一緒にしてくれるパートナーです。契約に時間がかかっても、顧客と信頼関係を構築しながら問題の本質を解決することで、継続的な取引が成立します。「インサイト営業に興味がある」「自社の仕事に合うかもしれない」と考えている方は、CRMやSFAを活用しながらインサイト営業に取り組んでみてはいかがでしょうか。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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