記事公開日:2022/05/19
最終更新日:2023/11/17
商談が苦手で、なかなか契約にいたらないと悩んでいる営業マンも多いのではないでしょうか。結果が出ない理由は人によって異なりますが、もし一方的に商品やサービスの説明をしていた場合、そこが問題かもしれません。
商談では顧客の話を聞く力が重要で、そんな聞く力をより高めるのがSPIN話法というテクニックです。今回は、SPIN話法の特徴や質問のコツについて解説します。一般的なビジネスシーンや賃貸仲介営業の現場で使える具体例を紹介しますので、ノルマが達成できずに困っている方はぜひ参考にしてください。
※下記の関連記事では「会話術を磨くテクニック」「反響営業で求められるスキル・考え方」などをまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。
目次
SPIN話法は、顧客の潜在ニーズを引き出すためのフレームワークです。イギリスの行動心理学者、ニール・ラッカムが提唱したもので、35,000件以上の商談を調査・分析して生まれました。SPIN話法の「SPIN」は、以下の4つの頭文字を取ったものです。
商談を成功に導くために重要となるのが、ヒアリング能力です。顧客のニーズを引き出すためにこのSPIN話法を用いて、自分が聞きたいことを相手に話させることができます。
SPIN話法の特徴は、主に以下の3つです。
次項では、SPIN話法の特徴と具体的な例を「一般的なビジネスシーン」「賃貸仲介営業のシーン」の2つに分けて解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
顧客は、すでに自覚している顕在ニーズならスムーズに話すことができます。しかし、自身も気づいていない潜在ニーズは、営業担当者の質問によって言語化していくことで気づくことがほとんどです。
この潜在ニーズを引き出すのに役立つのがSPIN話法です。先ほど述べた4つの質問をすれば、顧客も自覚していなかった課題を見つけることができます。
・Situation(状況質問):”お仕事ではどのようなツールを使用されていますか?”
・Problem(問題質問):”それに関して、現在何か不便に感じていることはありますか?”
・Implication(示唆質問):”その課題が解決された場合、どのような効果やメリットがありますか?”
・Need-payoff(解決質問):”もし、その課題を解決する方法があるとしたら、関心をお持ちいただけますか?”
・Situation(状況質問):”現在どのような条件でお住まいをお探しですか?”
・Problem(問題質問):”現在のお住まいについて、何か不便に感じていることはありますか?”
・Implication(示唆質問):”その課題が解決された場合、お客様の生活はどのように変わると思いますか?”
・Need-payoff(解決質問):”もし理想的な物件が見つかった場合、引越しを検討されますか?”
SPIN話法は営業担当者ではなく、顧客が中心となって話します。これにより、課題解決を「自分のこと」と意識するようになり、顧客自身の温度感が高まる効果に期待できます。
商談では、営業担当者が中心になって商品やサービスについて説明をすることが多く、なかには一方的なセールストークを繰り広げる方も珍しくありません。顧客が話す機会がなくなり、真のニーズも見つからなくなります。
SPIN話法では、営業担当者が話すことを顧客自身に話させることで、課題や解決策を意識させます。その結果、課題解決のために自社の商品やサービスの導入を前向きに検討するようになり、成約率アップに繋がるという仕組みです。
・Situation(状況質問):”ご利用いただいているサービスに関して、何か改善のご要望はありますか?”
・Problem(問題質問):”それによって現在何か困っていることはありますか?”
・Implication(示唆質問):”その課題が解決された場合、どのような効果やメリットがありますか?”
・Need-payoff(解決質問):”もし、その課題を解決する方法があるとしたら、ご検討いただけますか?”
・Situation(状況質問):”現在お住まいの物件について、何か不満やご要望はありますか?”
・Problem(問題質問):”それによって困っていることがあれば、具体的に教えていただけないでしょうか?”
・Implication(示唆質問):”その課題が解決された場合、どのような生活が送れると思いますか?”
・Need-payoff(解決質問): “もし、より良い物件が見つかった場合、引越しをご検討いただけますか?”
商談を成功させるためには、商品やサービスを説明するだけでなく、顧客の話に耳を傾けるヒアリング能力が求められます。顧客が話さなければ、何が課題なのかがわからず、課題に合った提案ができません。このままでは、商談が失敗に終わってしまうおそれがあります。
顧客の話には、さまざまな情報が隠れています。たとえ雑談中であっても真摯に耳を傾けて、大事なトピックを取りこぼさないように注意しましょう。
・Situation(状況質問): “ご利用いただいているツールについて、現在の使用状況を教えていただけますか?”
・Problem(問題質問): “それによって困っていることや改善したい点はありますか?”
・Implication(示唆質問): “その課題が解決された場合、どのような効果やメリットがありますか?”
・Need-payoff(解決質問): “もし、その課題を解決する方法があるとしたら、お試しいただけますか?”
・Situation(状況質問):”生活にゆとりを持たせたいとのことですが、具体的な条件をお教えてください”
・Problem(問題質問):”家賃をもう少し下げたいとのことですが、目安はありますか?”
・Implication(示唆質問):”その価格帯で物件が見つかった場合、ゆとりある生活は叶いそうですか?”
・Need-payoff(解決質問):”もし、希望の物件が見つかった場合、引越しをご検討いただけますか?”
自社商品・サービスの魅力を伝えるのは大切です。しかし、いきなり商品説明をしても、顧客は興味を持ちません。営業担当者の売り込みが強いと感じ、聞く耳を持たない可能性もあります。
自社に興味を持ってもらうには、顧客自身が潜在ニーズに気づき、潜在ニーズを解決するために必要な商品・サービスであることを認識してもらわなければいけません。
また、営業マンが顧客の潜在ニーズがわからないと、思わぬ取りこぼしをすることもあります。顧客が話す顕在ニーズだけで「自社商品では解決できない」と判断しても、潜在ニーズでは課題解決が可能だったという場合もあるからです。
反対に、顕在ニーズで解決できると思い商談を進めても、根本的なニーズから外れていたため、成約にいたらないこともあります。商談では、潜在ニーズを引き出すことが重要です。顧客が本当に求めているものを明らかにし、適切な提案をして商談を成功させるために、SPIN話法が求められています。
賃貸仲介営業マンこそSPIN話法を取得すべき理由は、主に以下の3つとされています。
不動産業界における賃貸仲介営業マンにとって、お客様の真のニーズを把握することは非常に重要です。顧客が抱える潜在的な課題や要望を的確に理解し、適切な物件を提案することが求められます。
SPIN話法による質問を通じて、お客様が抱える本当のニーズを明らかにすることができます。たとえば、お客様が「家賃が高い」という不満を持っている場合、Implication(示唆質問)を行いましょう。これにより、「家賃が抑えられれば、他の用途に予算を回すことができますよ」という具体的なメリットを提示できるようになります。
通常、賃貸仲介営業では、営業担当者が物件の特徴や利点を説明することが多いです。しかし、これではお客様の真のニーズを把握することは叶いません。
SPIN話法を使い、顧客自身が抱いている悩みや要望を話してもらいましょう。このようにすれば、顧客のニーズに合致した物件を提案しやすくなります。
SPIN話法に基づいたヒアリングは、顧客にとっても有益なものです。心の中で抱いていた気持ちを言語化してもらうことで具体的な解決策が見つかりやすくなるので、より満足度の高い提案を行えるようになります。もし「この人に任せても大丈夫?」と思われていたとしても、最後には安心して任せてもらえるようになるでしょう。
ここではSPIN話法を用いた具体的な例文をご紹介します。顧客との商談中、どのようにSPIN話法を取り入れるかを順番に見ていきましょう。
状況質問は、顧客の現状を把握するための質問です。顧客のことを理解できなければ、今後に行う提案も的外れなものになってしまうおそれがあります。
■現在のお住まいの住心地はどうですか?
■お住まいの家賃はどのくらいですか?
いきなり質問を始めると尋問のようになってしまい、顧客は口を閉ざしてしまうので、質問をする前には「今からいくつか質問をさせていただきたいのですが」と前置きします。また、質問の数が多すぎると顧客も疲れてしまうため、事前に質問する数を絞り、前置きをしてから質問を始めましょう。
商談相手が企業の場合、従業員の数など企業のホームページに掲載されているようなことを質問すると、「リサーチ不足」と判断されるおそれがあるため注意してください。
現状を理解したら、顧客の悩みを聞く質問を投げかけます。質問をしていくと、顧客が認識していない課題、つまり潜在ニーズが明確になっていきます。
■お子様が大きくなることを考えると、今のお住まいはどうですか?
■毎月の支出のうち家賃が多くを占めているようですが、今後も続けられる予定ですか?
状況質問で把握した情報から問題質問を導きます。状況を把握しても、「ここが問題ではないですか?」と営業側から指摘するのではなく、顧客が自ら気づいていくことが大切です。
質問には「YES・NO」で答えられるクローズドクエスチョンと、自由に答えてもらうオープンクエスチョンの2つがあります。状況によって使い分けるのが理想ですが、問題質問ではクローズドクエスチョンを多く用いると、顧客への負担が軽くなります。
示唆質問は、SPIN話法で特に重要な質問です。顧客が課題に気づき始めたら、課題の深刻さを認識してもらいます。
■お子様が中学生、高校生になったときにどのような環境が理想ですか?
■これから10年、20年と家賃を払っていくのは大きな負担ではないですか?
顧客が思い描く理想に向けて、直視しなければいけない現実や、そのままにすることで起こり得るリスクを自覚してもらう質問です。示唆質問によって、顧客に「問題を解決する必要がある」と感じてもらいます。
また、下記ワードを含めて深堀っていくのも有効です。
時間:迷惑をかける、納期に間に合わない
労力:人材の流出、人材不足、非効率、無駄な業務
経費:無駄な出費
責任:会社、担当者
信頼:顧客との信頼、契約
状況、問題、示唆で浮き彫りになった課題が解決した場合の、理想の姿をイメージしてもらう質問です。ここまでの「SPI」の質問を通じて、顧客は課題そのものと課題を放置したことによるリスクを認識します。何らかの解決策が必要と感じ、具体的なアクションプランを模索します。
■今よりも部屋が広くなり、周辺環境が良いエリアがあるとしたらいかがですか?
■もし今の家賃と同じ額でマイホームが手に入るならどう思いますか?
ポイントは、顧客自らが解決策を導くまで、自社商品やサービスを提案しないことです。特に不動産営業の場合、おすすめのマンションや戸建て、賃貸物件などを顧客に紹介しがちですが、場合によっては強引な営業と取られてしまうおそれがあります。自身が解決策を出し、理想をイメージした状態になるまで提案するのは控えるようにしてください。
SPIN話法を活用した営業ヒアリングのコツは以下のとおりです。
上記4つのコツについて、それぞれ詳しく解説していきます。
商談の際には、事前に顧客の情報を調べておきます。企業であれば、ホームページやSNSから情報を得たり、業界について調べたりしておくと、商談を成功させるための作戦を立てることが可能です。また、初歩的な質問をして、顧客に不信感を抱かせることもありません。
事前準備のひとつとして、ヒアリングシートがあります。あらかじめ質問することをリストアップしておけば、聞き忘れも防ぐことができます。
ただし、ヒアリングシートを見ながら顧客に質問すると、場合によっては尋問のようになってしまうため気をつけましょう。あらかじめ質問事項を頭の中に入れておき、できる限り世間話などを入れながらヒアリングすることが重要です。
賃貸仲介営業マンが準備するヒアリングシートは、顧客から情報を引き出すための質問項目をリストアップするためのツールです。以下に、一般的なヒアリングシートの項目例をいくつか挙げますが、特定の業務や会社によって異なる場合もあります。自社の業務や目的に合わせてカスタマイズしてください。
下記の関連記事でも詳しく解説しているので、こちらも一度読んでおくと良いでしょう。
SPIN話法は、「S→P→I→N」の順番で質問をすることが大切です。最初に顧客の状況を理解し、課題や悩みを聞き出します。顧客自身に問題の重要性を認識させ、課題解決に導いていきます。もし順番通りに質問できなければ、せっかくの商談がスムーズに進まなくなるおそれがあるため注意が必要です。
たとえば、お客様の要望を十分に把握せずに物件の提案を行うと、顧客のニーズに合わない賃貸物件を紹介してしまう可能性があります。顧客は自身のニーズが理解されないと感じ、信頼関係が損なわれ、契約の話がストップしてしまうおそれがあるため注意が必要です。
SPIN話法は、顧客に話させるための営業手法です。SPIN話法を使う際には、顧客自らが課題に気づけるような質問をする必要があります。他社の話を例に出すなど、現状や課題を認識しやすい質問をしましょう。
例:「現在のお住まいで不満を感じていることはありますか?」
この質問は、顧客が現在の住まいに関して何か不満や課題を抱えているかを探るためのものです。この質問を投げかけることで、新たな物件への関心や必要性が生まれる可能性があります。
例:「将来の住まいについて何かお考えはありますか?具体的に何を優先したいですか?」
この質問は、顧客が将来の住まいについてどのような要素や条件を重視しているのかを探るためのものです。顧客の優先順位や関心事を把握することで、より具体的な物件の提案が可能になります。
ヒアリングが終わったら、ヒアリングの内容をまとめて送ります。このとき、訪問のお礼と一緒に送るのがおすすめです。
また契約にいたった後も、アフターフォローは必ず行うようにしてください。「契約が取れたからこれで終わり」ではなく、自社商品やサービスを長く使ってもらえるよう、アフターフォローを大切にしましょう。継続率のアップに繋がるほか、新規顧客の紹介を受ける可能性も高まるためおすすめです。
SPIN話法を活用したヒアリングは、以下の流れで行います。
おおよその流れを把握して、顧客に良い印象を持ってもらいましょう。
アプローチは、顧客に興味や関心を持ってもらい、「話を聞いてみようかな」と思ってもらえるようにする取り組みです。相手に好印象を与えられるよう身だしなみに気を配り、「安心して任せられる担当者」を演出します。また、挨拶やアイスブレイクなども大事な要素です。緊張をやわらげ、話しやすい雰囲気を作っていきます。
<具体例>
ファクトファインディングは「真実を見つけ出す・つかみ取る」を意味し、SPIN話法ではSituation(状況質問)の部分にあたります。すでに認識している情報が多ければ多いほど問題を把握しやすくなり、顧客の本当の課題を引き出すことが容易になります。思い込みや先入観は持たず、正しい事実を引き出すための質問を投げかけましょう。
<具体例>
顧客の課題に対して自社商品・サービスができることを説明し、今後の提案に繋げます。このプレゼンテーションは、SPIN話法のImplication(示唆質問)・Need-payoff(解決質問)にあたる部分です。
<具体例>
このとき、自社の商品・サービスの必要性が伝わるように説明するのが重要です。顧客が自社商品に対して疑問などを残さないよう、質疑応答の時間も設けるようにしてください。
顧客に契約してもらうため、営業活動の終盤にクロージングを行います。このとき、正しいクロージングができていなければ「検討する」と回答され、場合によっては契約のチャンスを逃してしまうおそれがあります。
<具体例>
また、無事に契約にいたった場合も使用状況を確認するなどして、アフターフォローを怠らないようにしましょう。
<具体例>
営業パーソンは自らベラベラと話すのではなく、顧客から話してもらうように導くことが大切です。そのために必要なのがヒアリング力ですが、SPIN話法を用いれば、より質の高いヒアリングができます。
顧客自ら課題に気づき、問題解決の方法として自社商品やサービスが必要だと認識してもらうよう、SPIN話法を活用しましょう。最初は難しいかもしれませんが、まずは自分にできる部分から実践してみてください。
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