記事公開日:2022/08/11
最終更新日:2023/10/11
多様化が進む現代社会では、考えを伝える力・考えを聞く力・違いを理解する力が必要で、これらの能力はクリティカルシンキング(批判的思考)を通じて鍛えられるといわれています。
そこで今回は、クリティカルシンキングの必要性や導入するメリット、鍛えるポイントなどについて解説します。賃貸仲介営業は、顧客ニーズをもとにしたベストな提案が求められるので、クリティカルシンキングをとおして営業マンとしての能力アップを目指しましょう。
※下記の関連記事では反響営業に求められるスキル・考え方などをまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。
目次
クリティカルシンキングとは、あらゆる角度から問題を提起し、物事の根本を見極める思考法・スキルのことです。主観的に正しいと判断した内容に対し、客観的な課題を見つけてそこに切り込みます。
このクリティカルシンキングは、固定観念の欠点・美点をあらためて観察し、新しいゴールの発見に繋げられるのが特徴です。また、別途必要となるスキルがロジカルシンキングで、こちらは結論にいたるまでの筋道を根拠に基づき形成する思考方法のため、両方を使い分けながら仕事を進める方も少なくありません。
ロジカルシンキングは、論理展開をしてゴールを明確に示したいときに役立ちます。一方、クリティカルシンキングは既存の考えに対して再構築を図りたいときに有効です。
たとえば、ロジカルシンキングを意識すると結論・根拠をわかりやすく説明できるので、スムーズなプレゼンが可能です。ただし、あらかじめ用意したプレゼンのクオリティが低ければ顧客の心は掴めないので、このようなときはクリティカルシンキングを意識してみましょう。新しい発想が生まれたり、誤りに気づけたりなど、プレゼンのアップデートに貢献できます。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングには上記のような違いがありますが、どちらも重要な考え方で、会社や自分自身の成長に必要な思考プロセスといえます。
ニーズの多様化が加速する現代社会に対応するため、クリティカルシンキングで新たな戦略を考える必要があります。主観的な思考を除き、批判的な見方で自問自答してみましょう。たとえ経験豊富な営業マンであっても、新たな問題発見・解決に気づける可能性があります。
特に賃貸仲介の営業マンは、数多くのお客様に対応しなければなりません。時代のニーズにそぐわない物件を紹介しては、顧客離れが進む恐れもあります。
また、新人の方が持つフレッシュな思考により、ベテランの方も思いつかないような解決策を導き出すことも珍しくありません。最も大事なことは、常に好奇心を持って物事の本質を見抜く力を養うことです。
どんなに優れた傾聴力・交渉力・トラブル対応力などを持っていても、まったく手抜かりのない人は存在しません。どこかに抜けや漏れがあるはずなので、柔軟な対応を心がければ小さな見落としもカバーできます。
また、頭をやわらかくする習慣をつければ、先入観にとらわれがちな時代・市場の変化の予兆にも気づきやすくなるでしょう。そして柔軟な思考力が鍛えられると、物事の本質を見抜く力も備わってきます。
大きなビジネスチャンスを掴むためには、物事の本質を見抜くのが近道といえます。本質を見抜くのは、今までの常識を覆し新たな手段を取るために必要な工程です。
先行き不透明な時代では、何が正解で不正解なのかがわかりません。無数の選択肢の中からいくつかピックアップし、限られたリソースの中で行動しなければなりません。「これだ」と思える核心をつくような選択ができれば、成功する可能性も高まります。
クリティカルシンキングの継続は、さまざまなシーンで好影響を与えます。自分の中にある矛盾が減り、事実確認を欠かさなくなるため、躊躇なく行動できるようになるでしょう。ここからは、クリティカルシンキングのメリットの詳細について解説していきます。
クリティカルシンキングを鍛えると、主観的意見と客観的事実に物事を分類できます。たとえば「近頃、担当営業エリアに県外からの移住者が増えたな」と感じるのは主観的意見です。実際に増えたかどうかの事実は、確かな証拠がない限りわかりません。そこで、客観的事実から裏付けとなるデータを収集することで、事実に基づいた判断ができます。
「半年前から都心部の60歳以上の夫婦が多く移住しており、前年比は20%増」というのが客観事実です。「なんとなく移住者が増えたような気がする」という不確実な意見をできるだけ確実な事実に近づけるのが重要。他にも「なぜ移住者が増えたのか?」「若い世代はどうなのか?」など、さまざまな角度から物事を見ることで、意見と事実のズレを発見できます。
「本当なのか?」と常に問いかける姿勢をキープすれば、矛盾点をスムーズに発見できます。矛盾点をあぶりだすメリットは、自分の考えをはっきり証明できるようになり、正しい目標設定を目指せる点です。
目標を定める際、ゴールばかりに目を向けて途中の矛盾点に気づけないケースも珍しくありません。さまざまな要素が入り交じり、何が正解なのかわからなくなることが多くあります。そういったミスを最小限に抑えられるのも、クリティカルシンキングの大きなメリットです。
クリティカルシンキングの特徴である「問いかけ」を実践すると、「何のために話すのか」という大切なポイントを押さえられます。話す目的がわかると話の結論がまとまり、プレゼンやスピーチの際も困らなくなります。
他にも、「誰が誰にいつどこで話すのか」+「なぜ」という会話の背景について考えるのも大事です。「過去の成功例を使いまわしていないか?」「他に良い選択肢はないのか?」などの疑問をすべて洗い出し、1つずつ解決していけば前向きな気持ちを持って話を進めていくことができます。
クリティカルシンキングは懐疑的な思考であるため、斬新なアイデアを生み出すのにも有効です。「もう何もアイデアが浮かばない」といったところがスタートといっても過言ではありません。すでに出た答えをさまざまな角度から分析するので、意外なゴールの発見に繋がるのです。
たとえば、大きくする・別の物に置き換える・別の物と融合させる・入れ替える・ひっくり返すなど多くのアレンジを加えてみましょう。これらによって、新たな答えを導き出す可能性を高められます。
クリティカルシンキングの実践手順を4つのステップで解説します。個人やチームなど、あらゆるシーンに応用できるので、リスク回避や課題解決の参考にしてみてください。
まずは目標・目的を決めて、モチベーション維持や思考のブレをなくしましょう。目標・目的を決める際は、具体性を持たせることが大切です。
たとえば「半年後までに成約率を1.5倍に伸ばす」など、「何を・いつまでに・どれだけ」達成すべきなのかという具体的な目標を持ちます。さらに「給与アップのため」「将来的に独立するため」など目的を持っていれば、モチベーションを維持しやすくなります。
迷いが生じたときに立ち直って考えをあらためるためにも、目標・目的は明確に定めましょう。
現在の状況を振り返り、目標達成の精度を高めましょう。現状を確認する際は、事実のみをベースに考えることが重要です。
人は知らず知らずのうちに、経験をもとにした偏った考え方に固執するケースがあります。ベストな解決策や提案を出せない恐れがあるため、数値や客観的な目線などから現状把握に努めましょう。
解決すべき事項(現状の課題)を確認して、目標達成に向けたロードマップを完成させましょう。前述した目標・目的と現状把握ができていれば、課題は簡単に見つけられます。
現在と未来(目標)を比較して不足している要素があれば、それが解決すべき課題です。ただし、具体性のある課題でなければ、何から取り組むべきか見えてきません。
「顧客の対応件数が目標の70%しか達していない」など、数字も用いて具体的に課題を書きだしてみましょう。目標までの課題がリストアップできれば、目標達成に向けてロジカルに動けます。
最後は、課題解決に向けた手段・方法を考えましょう。「誰が・どうやって・何をする」など、実践レベルに落とし込んで考えると、明日からすべきことが見えてきます。
ただし、考えた方法が必ずしも正しいとは限りません。「本当に正しいやり方なのか」を常に考えつつ、実施・検証を繰り返しましょう。手段・方法の確度が上がり、目標達成が現実味を帯びてきます。
クリティカルシンキングの必要性やメリットが理解できたら、クリティカルシンキングの力を高めたいと考えるのが心情です。しかし、具体的に何をすれば良いのかわからない方も多いでしょう。クリティカルシンキングを鍛える際には、ここから紹介する6つのポイントを意識してみてください。
「売上が大きく伸びた理由は宣伝費を増やしたからだろう」などの前提を挙げる際、はっきりしない点をピックアップしてみましょう。たとえば、「期間はどれくらいなのか」「具体的にいくらの利益になったのか」などです。
また、不明瞭な言葉を探し出す際は、それが数値化できるかどうかもチェックしてみてください。「宣伝費を先月の倍に増やした結果、今月は売上が30%増加した」という具合に変換すれば、より自信を持って発言できます。
相手の立場になって物事を考えるクセはすでに多くのビジネスパーソンが持っているでしょう。上司・取引先などの立場になるのはもちろん、まったく関係のない人の立場になるのも有益です。
たとえば不動産営業マンの場合、持ち家があり賃貸物件に住む予定がない人・日本に住む予定がない観光客・契約対象外の小さな子どもなど、業務中あまり関わりのない方々の立場になってみてください。より視野が広がり、思いがけない発見があるかもしれません。
曖昧な情報を放置しては、クリティカルシンキングは成り立ちません。物事の本質を見抜き、悔いのない選択を選び続けるには正しい情報が必須です。
有名人の発言だからといって鵜呑みにする方も多いのですが、必ずしもそれが正しいとはいえません。自分の判断基準を見つけ、それに沿って行動することが求められます。また、正しさは時代や国によっても変わるので、今自分が立たされている場所や周囲との関係性も考慮し、正しい情報を集めていきましょう。
偏見や思い込みがないかを確認して、事実と客観性を軸に判断できるようになりましょう。人は自分の経験や価値観から、偏見・思い込みで判断することもあります。
たとえば「女性ならセキュリティが強固で、繁華街から離れた物件を提案しよう」と考えていても、顧客の潜在的な要望は異なるかもしれません。偏見・思い込みを捨てるには、仮説を立てて実証することが大切です。結果をもとに手段・方法が正しいとわかれば、物事の本質に近づきます。
事実やデータを用いて発言する習慣を身につけることで、クリティカルシンキングをより鍛えられます。個人の主観や好みは客観性に乏しく、周囲からも受け入れてもらえない恐れがあります。
日常的に公的な情報をインプットするよう心がけ、ファクトベースのアウトプットを意識しましょう。クリティカルシンキングには、考えや意見へ疑問を持ち、正しい判断を行うための客観的な事実が欠かせません。
事実やデータを用いることで、「お客様への物件提案」「物件オーナーとの交渉」などにおいて、説得力が向上します。
クリティカルシンキングでは、第三者視点を意識して客観的な思考を習慣化させましょう。主観と第三者視点では、成果物への評価が異なります。
自分は100点の完成度だと思っていても、第三者視点では工夫すべき箇所が見つかることも多いです。「上司ならどう判断するか」「お客様から見るとどのような印象か」などを常に意識して、仕事のクオリティをブラッシュアップさせましょう。
賃貸仲介営業マンが、クリティカルシンキングを学ぶ方法について解説します。社内や個人それぞれにマッチする方法を解説するので、クリティカルシンキングを身につける際は参考にしてみてください。
外部の講師や業者を招いて、社内研修を開きます。研修内容やカリキュラムは、講師・業者が提供してくれるので、社内で調整する必要はありません。
クリティカルシンキングについて詳しい人材がいない場合、研修を受けることも検討してみましょう。
グループワークは、一方的に知識・ノウハウを提供されるのではなく、従業員同士で客観的な視点を学ぶことが可能です。「なぜ・どのように・結果的にどうなるのか」などをお互いに質問できるため、自分では気が付けない主観・偏見などが見つかります。
座学よりも、実践的なクリティカルシンキングを身につけられる方法です。
より実践的なクリティカルシンキングを身につけるには、アウトプットの場を設けて、具体的なイメージを身体に定着させる必要があります。たとえば、社内で実際に起こっている問題を取り上げて、その問題に対し「本当の原因は何か」「解決方法の仮説を立てる」など、実践的に取り組みます。
特に賃貸仲介営業は顧客対応が多いため、アウトプット+フィードバックによる使えるノウハウを身につけることが大切です。
本を読むことで、クリティカルシンキングの基本を個人で学べます。実践的ではありませんが、クリティカルシンキングの考え方や目的、メリットなどを学ぶのであれば、自由に学びやすい本も選択肢に加えてみましょう。
「社内で研修をしてもらえない」「グループワークできる環境にない」といった場合は、本で知識を得てから自分が講師となり、社内にも広められます。
クリティカルシンキングは物事を多角的な方向から考えて解決策を導く思考法のため、奥が深くすぐには身につきません。そのため子どものような好奇心を持ち、不確実要素を探してその都度考えるクセをつける必要があります。
これまでわからなかった思考の曖昧さに気づくだけでも、クリティカルシンキングの力が高まったといえます。クリティカルシンキングによって発見した新たな課題に立ち向かい、修正を重ねてより良い結果を残していきましょう。