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物件の紹介しすぎはNG?提案する物件は3つに絞ろう!【決定回避の法則】

記事公開日:2023/08/22

最終更新日:2023/08/18

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「たくさんの中から、お気に入りで自分に最も合った1つを選びたい」と誰しもがそう考えているはずです。しかし、人間の心理は実はそのように作られていません。

今回は、賃貸仲介営業を行ううえで重要となる、物件提案と内見に役立つ「決定回避の法則」についてご紹介します。とくに、来店誘導はできているのに、接客からの成約率を改善したいという方に必見の内容です。

決定回避の法則とは

たくさんの矢印と、3体の女性の人形の画像

決定(選択)回避の法則とは、選択できる絶対数が多くなると、人は選択すること自体を辞めてしまうという行動心理のことです。冒頭でお伝えしたように、選ぶ自由があることは理想ですが、そこから1つを選択するという意思決定において、選択肢は邪魔になるというなんとも皮肉な状態が起きます。

決定回避の法則は別名「ジャムの理論」とも言う

決定回避の法則は、ジャムの試験販売を実験材料として立証されたため、ジャムの理論とも呼ばれています。

24種類のジャムを陳列した場合と、6種類のジャムを陳列した場合で、お客さまの購買状況がどのように変わるかという実験です。結論として、6種類のジャムを陳列した場合の購買状況は、24種類のジャムを陳列した場合と比較して約10倍となりました。

決定回避の法則が不動産賃貸仲介に与える影響

この決定回避の法則は、さまざまなビジネスシーンで導入されています。不動産賃貸仲介においても、それは例外ではありません。決定回避の法則が導入されているシチュエーションを確認してみましょう。

①提案した物件のすべてを内見しない

無意識にされていると思いますが、接客ベースで提案した物件のすべてを内見することはまず考えられないことです。さらに言えば、提案する物件自体も、条件に該当するものすべてを提案していないですよね。数が質を凌駕することにはなりえないことを、無意識に理解している証拠です。

②複数空いている物件では特徴的なお部屋を紹介する

例えば、新築物件でまだまだ多数の空室が存在している状況をイメージしてみてください。ある1室を内覧し気に入っていただけたら、あとはどの号室にするかを決めるのみです。このとき、角部屋や南向き、眺望を基準にお客さまにおすすめしてはいないでしょうか。

もちろん、角部屋や方位・眺望は、お部屋の良否を左右する要素であることは否定しません。しかし、お客さまに任せると決めきれないことを経験上知っているため、誘導するようなトークを行っているのではないかと著者は考えます。

決定回避の法則を賃貸仲介営業に応用する具体例

女性と話す青シャツを着た男性の画像

決定回避の法則が賃貸仲介営業にも取り入れられていることを理解できたところで、いざ実践です。当たり前のことから、意外なところまでご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

顧客とのヒアリングを徹底してから物件提案を行う

お客さまの満足感を高めたり、他社へ浮気されたりしないような営業をするために、取扱い物件が多いことをアピールする目的で、物件数を提示してしまいたくなる気持ちはよくわかります。しかし、多数の物件を開示することは、成約という意思決定において逆効果になるのです。

では、どうすれば良いかと言うと、答えは簡単でヒアリングに徹底した時間を費やすことにあります。価格帯や主要条件をもとに、おおむね3物件程度を提案して様子をみましょう。さらなる細かい部分をヒアリングしながら、常に机上には3物件程度にとどめておくようにします。これを繰り返すことで、少ない手数でお客さまの満足度を高めながら、成約に持っていくことが可能です。

優先順位を明確にしたうえで、物件の絞り込みを主導的に行う

ヒアリングの結果、条件にそぐわない物件はどんどん机上から排除しましょう。少々ドライなくらいに「じゃあこの物件はナシですね」という感じで進めるのが良いです。

これを繰り返していくと、どこかで行き詰まりが発生することが想定されます。そこで優先順位を整理すると、ナシ物件だったものがランキング上位に浮上するなど、提案物件にアクセントを付けることが可能です。

多くの物件を提案しているように見せかけて、机上で提案物件をリサイクルしていきます。このようなイメージでヒアリングと絞り込みを行うと、スムーズに成約目標物件に誘導することが可能です。

提案する物件数は3件程度にとどめる

ミニチュアのマンション3つと、虫眼鏡を持った手の画像

再三お話をしている内容ですが、あくまでも目安として3件を上限として話を進めるのが良いでしょう。内見件数に関しても同様です。また商談スタートの段階で、目安に提示する物件の中には、必ず成約目標物件を入れるようにしてください。なお、多くの場合、成約目標物件は反響を頂戴した物件であることが多いです。

過去の経験上ですが、1日に5件以上の現地内見をしたとしても、成約率が上がることはありません。むしろ、昨今はお客さまと不動産業者で持っている情報がほぼ変わりませんので、接客で物件を決め、内見は確認という流れが多いように感じられます。

家主さんへの交渉にも決定回避の法則は効果的

専任でお預かりしていたり、一部管理をしていたりする物件があるときは、家主さんへの提案にも決定回避の法則をぜひご活用ください。

いろいろな資料を作りこみ、相場や内装に関するさまざまな提案を行ったところで、えてして家主さんは何もしてくれなかったりします。そのようなときは、家賃なら家賃、内装なら内装とテーマを絞り込んで挑むことで、状況を打破することが可能です。

「お伺いします」と言うと家主さんは構えてしまいがちですが「募集家賃の件で」とテーマを先に言ってしまうことで、深堀した議論ができるようになるものです。

まとめ

決定回避の法則を賃貸仲介営業で活用するには、物件をあまり出さないことですよねと解釈してしまうのは語弊があると言わざるを得ません。

物件を数多く提案しないこと自体は正しいのですが、重要なのはそのプロセスです。このプロセスを大成させるには、熟練したヒアリング能力と物件知識が求められます。

基本に戻って閉店後にロールプレイングをするなど、日々の鍛錬が必要でしょう。また、物件知識も重要になってきます。物件知識は数多く案内することで培われるものですが、著者のおすすめは営業社員によるポータルサイトに掲載されている物件クイズ大会です。

主要となる商圏において、外観や特徴をもとに物件を特定できるレベルに至れば、もう怖いものはないでしょう。こういった地道な努力があってこそ、決定回避の法則を営業に持ち込めるのです。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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