記事公開日:2023/08/22
最終更新日:2023/08/18
お部屋探しは、人生で何十回も経験するものではありません。お客さまごとに異なる趣味や嗜好を理解し、最良のお部屋を誠実にご紹介したからと言って、必ず成約に結びつくわけではないのです。
あるデータによれば、お客さまのお部屋を決定した要因には、営業担当者が信頼できるという要因が深く関係していることがわかっています。
お客さまに信頼される営業担当者になるためには、誠実さも重要ですが、ほんの少しのテクニックも必要です。今回は、ミラーリング効果という心理効果を題材に、お客さまとの信頼関係の築き方をご紹介します。
とくに、接客が苦手な営業担当者におすすめのコラムとなっていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
人間は、好意をもっている人のマネをしてしまう傾向にあります。この好意をもっている人のマネをすることを「ミラーリング」と言うのです。
この好意をもっている人のマネをしてしまうことを逆手に取り、自ら相手のマネをすることで相手方の好意を引き出すことを「ミラーリング効果」と呼びます。ビジネスシーンのみならず、恋愛シーンなどでも好意を引き出すテクニックとして利用されるものです。
では、さっそくお客さまのマネをしていきましょうと言っても、何をどうして良いのかわかりませんよね。ミラーリング効果を使った接客活用方法をご紹介します。
語尾や仕草のマネをしていても、ミラーリング効果は得られません。ミラーリング効果を無意識に活用している事例として、話すスピードが挙げられるでしょう。
ご高齢の方とお話をする際に、無意識にゆっくりと相手のペースに合わせた話し方になっていることはありませんか?これこそが、ミラーリング効果の無意識の実践と言えるでしょう。
お客さまとの接客中に何か共通点が見つかって、そこから会話が一気に弾むようになったことはありませんか?共通の趣味だったり、地元が一緒だったり、何でも良いので共通点を見つけましょう。共通点を起点とする会話をすることで、お客さまとの距離をぐっと詰めることが可能です。
マネをすると言っても、露骨に仕草をマネしているだけでは相手方にそれが伝わってしまい、不信感につながりかねません。相手方のマネをするときは、仕草を露骨にマネするのではなく、感情や共感のところにフォーカスすると良いでしょう。
一緒に喜ぶ、一緒に感激する、感情を理解し共有することは、接客に関わらず、友人関係やパートナーとの関係においても重要なことだと考えます。
ここからは、さらに再現性の高い実践編に入っていきます。ミラーリングの内容、方法について理解できたところで、営業に活用する具体例を確認していきましょう。
ミラーリングは仕草などの目に見えている部分ではなく、目に見えない感情の共感をミラーリングすべきだと考えます。具体的には、お客さまが無意識に気にしているポイントに注意してみましょう。
・接客時には何も条件が出てこなかったのに、内見するとやたらと収納にこだわる。
・日中家にいないのでと言っていたのに、バルコニーに出たり景観を気にしたりしている。
こういったお客さまの無意識や潜在意識に訴えかけるような、営業トークを心がけると良いでしょう。
お客さまの無意識ポイントが理解できたら、提案物件の条件に盛り込んだり、セールスポイントとしてプッシュしたりしてみると、反応が変わってくるのではないでしょうか。
お客さまに同調したり、共感したりすることは、ミラーリングの基本と言えます。しかし、単純に「そうですね」だけでは、ミラーリングとして不十分です。会話がオウム返しになってしまうと、お客さまに不快感を与えかねません。
そうならないためにも、理解し共感していることをお客さまに伝える必要があります。具体的な良い方法としては、お客さまのご要望やご意見を承ったら、自分の言葉にかみ砕いてお客さまに説明してみましょう。
たとえば、料理をする、広いリビングが良い、収納がほしいという希望条件がお客さまより提示されたとしましょう。そのときに条件を反復するだけでは、共感が伝わりません。
「お料理をすると臭いが部屋にこもりがちですよね。とくに服や小物に臭いがつくことを嫌がる方も多いですから、収納が大きい物件をご紹介するようにします。リビングが広いと換気が追いつかなくなることもありますので、窓を開けても差支えない上層階や見晴らしの良いお部屋も重要になってくるかと思います。」
上記のようなところまで落とし込めれば、お客さまの共感を得られるほか、さらにライフスタイルを具体的に実現するための間取りや階層を表現できているため、ミラーリング効果は抜群ではないでしょうか。
あと一歩で成約という段階で、お客さまが2つの物件で悩まれることがよくあります。そんなとき、ミラーリングを使わない手はありません。
純粋かつ客観的におすすめする物件をプッシュすれば良いのですが、重要なことはプッシュする方法にあります。単純に「こちらの方が良いと思います」では、説得力に欠けるのです。
お客さまの感情と理論をなぞるように回答することを心がけましょう。「お客さまがこのお部屋に入られたときの感動した顔を思い出すと、この物件が良いと思います。当初から条件として挙げられていた収納や眺望もすべて叶えられていますし、ほかにこれ以上の物件を提示できるかと言われると現段階では不可能です。」といった具合に、ミラーリング効果を意識したコメントを添えることが重要です。
お客さまから信頼を得られていると感じられる一つのポイントとして「どちらが良いと思いますか?決めてください。」と言われるようになれば、ほぼミラーリング効果で重要となる人間関係の構築は完成したと言って良いでしょう。
便利なミラーリング効果ですが、くれぐれも乱用してはいけません。あくまでもさりげなく、ポイントで使うのが良いでしょう。
もちろん、何分に1回と決められるようなものではありません。著者がおすすめするのは、明らかに誰が見てもプラスの感情が働いているとわかるときに、思い出したようにする程度で良いと考えます。
マネばかりしているとやはり不快感を与えかねませんし、マネすることに意識が向いてしまい、肝心の営業に意識が向いていないとなるともはや本末転倒です。さりげなくお客さまのプラスの感情に共感することが、ミラーリング効果を賃貸仲介営業で得る最大の方法ではないでしょうか。
また、見た目をマネすることも一つの方法ではありますが、お客さまの深層心理にある無意識さをミラーリングすることこそ真髄だと考えます。ちょっとした表情や感情の機微を汲み取り、ここぞというところで一緒に喜んであげましょう。
ミラーリング効果について調べてみると、一緒のタイミングで飲み物を口にしたり、同じものを注文したりするなどの方法が記載されていますが、どれもビジネスシーンにはなかなか使わないものばかりです。また、著者の経験上、見た目のマネをして良い結果になるとは、にわかに考えにくいと言えます。
どちらかと言えば、やはり無意識にあふれ出る感情に寄り添うことが、ミラーリング効果が最も発揮されますし、賃貸仲介営業に最もマッチする方法ではないでしょうか。
共に喜びを分かち合うことを忘れずにいるだけで、ミラーリングマスターに近づけます。言葉に惑わされるのではなく、シンプルに考えるだけで具体的に見えてくるものもあるはずです。
お客さまの感情に寄り添ったミラーリング営業を行い、接客の品質が向上し、お客さまからの信頼を得られるようにがんばりましょう。
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