記事公開日:2022/02/24
最終更新日:2022/09/18
「スーツのクリーニング費用を抑えたい」「自宅でスーツをメンテナンスしたい」といった人は、アイロンがけの手順やポイントを押さえておく事が大切です。専門的な知識は必要ないため、アイロンがけが初めての人でも問題ありません。基本的な知識とポイントを理解しながら、自宅でスーツのアイロンがけを実践してみましょう。
今回は、スーツへのアイロンがけに関して、ジャケット・スラックス・スカート別の手順やポイントを解説します。
目次
スーツのアイロンがけをする際は、事前に4つのポイントを押さえておくときれいに仕上がります。
スーツのアイロンがけでは、当て布を使うと生地の傷みやテカリを抑えられます。当て布をするとアイロンから伝わる熱が分散されるため、デリケートな繊維でもアイロンがけしやすくなります。ただし、素材に合わない温度でアイロンがけしてしまうと、当て布をしていても傷む可能性があるので注意が必要です。
アイロンの適切な温度設定は生地の素材によって異なります。素材別の適切な温度設定は以下のとおりです。
温度設定 | 具体的な温度 | 素材の種類 |
低 | 80~120℃ | アクリル・ポリウレタン・アセテート |
中 | 140~160℃ | 毛・絹・ポリエステル・キュプラ・レーヨン・ナイロン |
高 | 180~210℃ | 麻・綿 |
スーツの場合は化学繊維(ポリエステル・ナイロン)やウールなどが使われるため、アイロンがけをする際は140℃が目安です。当て布をして素早くアイロンを動かすことで、素材の傷みやテカリを防げます。
アイロンを強く押し当ててしまうと生地の表面がつぶれてしまいます。平らになった表面で光が均等に反射することで、スーツの「テカリ」が発生してしまうため、スーツのアイロンがけは優しく押し当てるイメージで行いましょう。
スーツのアイロンがけは優しく押し当てつつ、同じところを何度も往復しないことがポイントです。万が一テカリが出てしまった場合は、以下の方法を試してみましょう。
軽度なテカリであれば、ブラッシングによって解消できます。また、お酢には繊維を柔らかくする働きがあり、水と混ぜてテカリ部分を湿らせるとテカリ解消効果に期待できるので、テカリの部分が気になったときはぜひ試してみてください。
スーツのアイロンがけをする際は、スチームアイロン(蒸気が出るスチーム機能搭載のアイロン)がおすすめです。前述のとおり、スチームはテカリ解消に期待できます。さらに、熱による殺菌効果も得られるので、普段着のように洗濯できないスーツに適しています。
手軽さを求める場合は衣類スチーマーでも問題ありません。もし、自宅にスチームアイロンやスチーマーがない場合は、以下の方法で代用できます。
スチームアイロンのようなシワ取り効果は期待できませんが、軽いシワであれば水分を含ませて乾燥させるだけでも取り除けます。乾かすときは直射日光を避け、風通しの良いところを選びましょう。
また、アイロンがけで重要なことは「水分を与えること」です。生地を湿らせると繊維が膨らみ、水分が蒸発する際にシワを伸ばしてくれます。
ここからは、ジャケットをアイロンがけする際の手順とポイントを6つ解説します。
ジャケットのアイロンがけに必要な道具は次のとおりです。
温度設定は140℃を目安に、当て布をしながら優しく押し当てるようなイメージでアイロンをかけましょう。何度も同じ場所にアイロンを当ててしまうと、生地を傷める原因となるので注意してください。
ジャケットの肩・袖はラインが崩れないようにアイロンをかけましょう。ジャケットはアイロン台へ着せるように置き、肩の上部からアイロンをかけていきます。このとき、肩のラインを崩さないよう、優しく丁寧にアイロンをかけるときれいに仕上げられますが、強く押し当ててしまうと肩にパットが入っていても形を崩すおそれがあるので注意してください。
前見頃(ジャケットの前面部分)は左右片方ずつにアイロンをかけていきます。このときもジャケットをアイロン台へ着せるような形で置くと、アイロンをかけやすくなります。
前身頃はボタンやポケット、ラペル(下襟)などがあり、強く押し当てるとシワを作ってしまうので、優しくプレス(押し当てる)するようなイメージでアイロンをかけてください。襟の部分は裏側からアイロンをかけ、形を整えていきましょう。
襟の部分は、芯地を引っ張りながらアイロンをかけるとシワが取れやすくなります。襟は構造が複雑なので、以下の手順に沿ってアイロンがけを行いましょう。
注意点として、アイロンを強く押し付けると襟の立体感が崩れてしまうので、優しく押し当てながらアイロンをかけてください。
ジャケットの背中は、中央から外側に向かって広げるようにアイロンをかけます。この場合も、ジャケットをアイロン台へ着せるように置いておくと、アイロンがかけやすくなります。また、アイロンをもっていない手で背中のシワを伸ばしながらかけると、より効果的にシワが取れるので意識してみてください。
ジャケットの腕は、形やラインが崩れないよう優しくアイロンをかけましょう。腕は立体的な形をしており、強く押し付けてしまうと立体感がなくなるため、他の箇所よりも丁寧かつ優しくアイロンがけを行ってください。また、腕の内側に丸めたタオルなどを詰めると、シワも伸びて立体感が保てます。
ここからはスラックスのアイロンがけについて、手順やポイントを解説します。
スラックスのアイロンをかける際は、以下の道具を用意します。
ジャケット同様、スラックスも140℃を目安に当て布をしながら優しい力加減でアイロンをかけてください。
腰まわりは裏地からプレスするようにアイロンをかけていきます。前・後の面を同時にプレスしないよう、スラックスをアイロン台に履かせるようにして置き、片面ずつアイロンをかけることがポイントです。
また、前面にはファスナーがついているので、アイロンにあたらないように注意してください。アイロンの熱で溶けてしまうおそれがあります。
膝部分は、アイロンを若干浮かせるようにかけていきましょう。浮かせながら蒸気をかけることで、生地のたるみ解消効果が期待できます。
また、縫い目やセンターラインがある場合は、これらに沿ってアイロンをかけることが大切です。適当にアイロンをかけてしまうと、スラックスの折り目が複数できてしまうので注意しましょう。
裾は片手で押さえながら、股下までアイロンをかけます。動かないように固定しておかなければ、たるんだ箇所が新たなシワとなってしまうので注意してください。また、スラックスのセンター(折り目)を意識してアイロンをかけると、次に解説するセンタープレス(折り目付け)がスムーズに行えます。
最後はセンタープレスを行って、スラックスにきれいな折り目をつけていきましょう。裾の折り目に沿って、アイロンを軽くプレスしていきますが、このときアイロンを滑らせてしまうときれいな折り目がつかなくなるので注意してください。また、折り目をつける際は片足ずつアイロンをかけ、仕上がりを確認しながら行いましょう。
最後に、スカートのアイロンがけの手順とポイントをご紹介します。
スカートのアイロンがけを行う際は、以下の道具を用意しましょう。
アイロンの温度設定は他と同じく140℃が目安です。ただし、スカートの裏地には熱に弱い素材が使われていることも珍しくはないため、当て布をしながら温度を下げた状態でアイロンをかけましょう。
まずはスカートを裏返し、腰から裾に向かってアイロンをかけていきます。スカートはアイロン台へ履かせるように置くと、アイロンをかけやすくなります。ただし、アイロン台に入らない場合は無理にスカートを通す必要はありません。
アイロンをかける際は、腰から裾へまっすぐ線を引くようにアイロンを動かします。アイロン台を軸に、スカート自体を回しながらアイロンをかけていきましょう。
また、裏地は透け防止などを目的に、表とは異なる素材の生地が使われていることもあります。熱に弱い可能性があるので、低温からスタートして様子を見ながらアイロンをかけることが大切です。
スカートを表側に戻し、気になるシワをアイロンで取り除いていきますが、表側に戻す際、生地がたるんでいないことを確認してください。仮にたるんでいる場合、アイロンをかけたあとに新たなシワができてしまう可能性があります。また、お尻部分など丸みのある箇所は、そのなかにタオルを入れると立体感を保ったままアイロンがけできるので試してみてください。
スカートの裾は、横方向へ動かすようにアイロンをかけます。このときも、スカートを回転させながらアイロンをかけると効率的です。
また、空いた片手で裾を固定し、生地がたるまないようにしましょう。横方向にアイロンを動かしていると生地がたるみ、アイロンによるシワができる可能性があります。
シワや傷みのないスーツは清潔感があるため、ビジネスシーンでは相手に好印象を与えられます。とくに営業職など人に接する機会の多い人であれば、大事なお客様へのアピールにも繋がります。定期的にスーツのメンテナンスを行うことで蓄積されたダメージが軽減され、きれいな状態を保てるので、スーツへのアイロンがけが初めての人は以下のポイントを押さえておきましょう。
とくに複雑なこともなく、何度か実践して慣れていけば短時間で終えられます。自分自身の清潔感を高めるために、休日などを利用してスーツへのアイロンがけを行ってみてはいかがでしょうか。