記事公開日:2022/10/27
最終更新日:2023/10/10
近年、社内での人間関係の希薄化が問題視されており、これを解決するために「コーチング」を学ぶ方が増えてきています。コーチングは、相手に知識や技術をただ教えるのではなく、信頼関係の構築や自立を促す効果に期待できる手法です。社内全体のスキルアップや部下・後輩への接し方に悩んでいる人は、「コーチング」という手法を学んでみましょう。
今回は、コーチングの定義や基礎的な知識、実践するうえで必要なスキルなどについて解説します。また、コーチングに関する資格やおすすめの書籍のほか、賃貸仲介営業に役立つテクニックなども紹介していきますので、興味をお持ちの方は参考にしてみてください。
※下記の関連記事では人材育成を成功させるためのポイントやアイデアをまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。
目次
ビジネスにおけるコーチングとは、人材育成を目標としたコミュニケーションの手法です。成長へのモチベーションを促し、新人や部下が自ら成長できるようコーチングを活用します。ただし、知識がないままコーチングを行ってしまうとかえって相手を落ち込ませてしまうこともあるため注意が必要です。
コーチングとティーチングには、「指導方法」における明確な違いがあります。以下の表で、具体的な違いを見ていきましょう。
【コーチングとティーチングの違い】
コーチング | ティーチング | |
概要 | 対象(部下や後輩など)への支援によって、さらなる成長を促す | 対象(部下や後輩など)への指示によって、指導者側が主体的に情報・スキルを伝える |
指導方法の軸 | 課題や問題への取り組み方、向き合い方を提案する | 具体的な解決策や達成方法を提示する |
目的 | 対象者の自発的な成長 | 知識・技術の習得による問題解決や目標の達成 |
それぞれ指導の方向性が異なるため、指導方法や目的にも違いがあります。教育の目的を明確にして、適切な能力開発の方法を選びましょう。
コーチングとティーチングは、その指導の方向性や目的において意を異にするものであり、そのためメリットおよび注意点もそれぞれ異なります。メリット・注意点を以下の表でまとめていますので、内容を確認しておきましょう。
コーチング | ティーチング | |
指導面のメリット | 個人の目標や目的に重きを置いた対応を行うため、個別のカスタマイズが可能 | 全体に対してスキルやノウハウを周知する形で行うため、組織全体の底上げが可能 |
期間のメリット | 中長期的な育成に向いている | 対象の意識によっては短期的に結果が出ることもある |
注意点 | 適切なスキルやノウハウを持った指導者が必要 | 全体最適を目指すため、個別対象者の理解度や進捗度に差が出やすい |
コーチングは、一定程度のスキルやノウハウを得た受講者に対して、さらにスキルアップや問題・課題解決を図るために実施するものです。部署のリーダーやマネージャーに特化した研修会の内容をイメージすると良いでしょう。
一方のティーチングは、基本的なスキルやノウハウをチーム全体に対して周知する作業といえます。イメージするならば、新入社員の定期研修のようなものです。このように内容がそれぞれ異なるため、受講対象者の経験や成長度合いなどを考慮し、コーチングが適切なのか、それともティーチングが適切なのかを見極めることが重要といえます。
コーチングの歴史は西暦1500年代まで遡り、コーチ(馬車)という言葉から派生してできた用語です。当時は「大切な人を目的地まで届ける」という意味でしたが、派生後は「目標達成に対する支援」という意味で使われるようになりました。
現在では、ビジネスだけでなく教育やスポーツなどでも使用され、コミュニケーション手法・指導方法のひとつとして確立しています。
コーチングには主に以下のようなメリットがあるといわれているので、1つずつ確認していきましょう。
コーチングは、一定程度のスキルやノウハウを有した受講対象者に対して個別になされることが一般的です。そのため、受講対象者が抱えている課題感や問題点にフォーカスし、受講対象者ごとに異なる対応をすることが可能です。
包括的で網羅性の高いティーチングとは異なり、コーチングは個別の問題点を解決するためになされます。そのため、コーチングによって「課題解決に必要なプロセスや方法を自ら発見し行動する」など自発的な行動を取るようになる方も少なくありません。
コーチングにおいては、高いスキルとノウハウと経験則を有する指導者のもとで、受講対象者がさらなるレベルアップを目指して行われます。ひいては、ハイレベルなスキルとノウハウの承継が行われることにより、受講対象者の責任感が高まることがあります。
コーチングの内容によって異なりますが、「現場とマネジメントの境目にある受講対象者が、現場の課題感をマネジメント側に持ち込む」といった行動を取ることがあります。これにより、マネジメント目線では解決できなかった悩み・課題が解消されることも少なくありません。
コーチングによって部下や後輩のポテンシャルを引き出し、社内全体のスキルの底上げを図りましょう。
ティーチングが基礎的で網羅的な指導である一方、コーチングでは個別具体的な指導を行うため、受講者の理解度によってコーチングの内容や方向性を変える必要があります。基本的に中長期にわたって指導を続けることが求められるので、コーチングを行ったからといって、すぐに結果が出ると考えるのは好ましくありません。
コーチングにおいては、対象者の受講意欲はもちろん、指導者の指導スキルも大きく効果に影響を及ぼします。刻々と変わるビジネスシーンにおいて、昔ながらの成功体験だけを語るのは、良い指導方法とはいえません。指導者になる方も、日々研鑽を怠ってはいけないのです。
コーチングでは、対象者の課題を解決し、組織や会社がさらに高みを目指すことが最終目標です。そのため、対象者が現在抱えている課題は何か、それを解決するにはどうすれば良いのか、それにより会社にどのようなことが起こるかという具体的なビジョンを共有するところから始める必要があります。
コーチングは対象者が過去に得た知識や経験、習得済みのスキルなどをもとに、潜在的な能力を引き出す指導方法です。そのため、対象者に最低限の能力が備わっていなければ、効果が出るまでに時間がかかります。能力次第ではティーチングも併せて行う必要があるため、コーチングの効率にも影響を及ぼすかもしれません。
また、コーチングは1対1での対話・質問などで指導を行います。複数人を同時に指導するのは困難なので、セミナーや勉強会などの形式には不向きです。中長期的なスパンでコーチングを行いつつ、対象者の能力に合わせた指導方法も検討しましょう。
コーチングを行うにはいくつかのスキルが必要なので、実践する前に身に付けておくようにしましょう。コーチングに必要なスキルは主に次の3つです。
・傾聴
・質問
・承認
具体的にどのようなスキルなのか、なぜこのようなスキルが必要なのか見ていきましょう。
傾聴とは、対象者への理解を深めるために、相手の話を「聴く」ことです。会話内容をただ聞くのではなく、相手を許容し会話に共感する必要があります。
「なぜその考えに至ったのか」「どのような思いを抱えているのか」などを理解することで、対象者を適切にフォローできます。対象者への理解が深まれば、お互いの信頼関係を築きやすくなり、コーチングの目的である「自発性や潜在能力などを引き出す」ことも可能です。会話内容はもちろん、表情やしぐさなどから感情面への理解も深めましょう。
質問とは、対象者に「気付き」を与え、自ら考えてもらうための行為です。たとえば、仕事でのミスに対し「なぜミスをしたのか?」ではなく、「ミスの要因は何なのか」と質問します。こうすることで、対象者は客観的に問題や課題の原因を分析し、自ら考える力が育まれます。
注意点として、質問に注力しすぎるあまり対象者を疲弊させてはいけません。質問は、あくまでも気付きを与える役割なので、思考をフォローできる程度に留めましょう。
承認とは、対象者の長所や成果などを伝え、能力を認める行為です。相手を「褒める」行為と似ていますが、承認では「一貫性」と「具体性」を持たせる必要があります。どのように成長し成果が出たのかプロセスも含めて伝えることで、お世辞ではなく本音で対象者を認めていると伝えられます。
また、承認は「素早さ」も重要なポイントです。時間が経過してから長所や成果を伝えても、相手の印象に残りにくくなります。たとえば、多くの不動産営業担当者をまとめる管理職の方であれば、部下が契約を獲得した直後や商談がまとまった直後などに承認を行うと良いでしょう。
注意点として、承認の頻度を増やす行為は控えてください。コーチングによってポジティブな行動・思考が定着してきた場合、承認の頻度を減らしつつ、ここぞという場面で承認を行います。このように意識することで、モチベーションの維持や向上に期待でき、コーチングの効果をより引き出しやすくなります。
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ビジネスにおけるコーチングでは、「目的の具体化」と「実施方法の策定」に取り組みましょう。具体的な手法について次項から解説するので、コーチングを実践する際は参考にしてみてください。
目的を具体化し指導者・対象者に共有することで、コーチングの指針が決まります。たとえば、「新入社員の積極性や自発的な行動を向上させる」ことが目標の場合、目的は次のように設定します。
・社内の営業力強化(売上20%アップ、商談成功率30%アップなど)のため
・各従業員が持つ情報の共有化を促進させるため
・業務効率化による残業時間削減のため
目的を具体的にさせると、目標達成に向けた原動力を得られます。コーチングで思うような成果が得られない場合、目標・目的を調整しコーチングの手法を変えることを検討してみましょう。
社内にコーチングを導入する際は、以下3つの実施方法を検討してみてください。
・短期集合型のセミナーを実施・スキルを獲得する
・マネジメント層のセミナーを実施・認定資格を取得する
・管理職などにコーチングのプロをつける
短期集中型のセミナーで、コーチとしてのスキルを獲得できます。資格取得まではいかないものの、コーチングに必要な知識やノウハウを得られます。セミナーによって習得できるスキル・ノウハウは異なりますが、以下のような悩みの解消が可能です。
・部下や後輩との接し方が難しい
・従業員のモチベーションを高める方法がわからない
・上司や先輩として、他の従業員との関係性を見直したい
プロ目線でのコーチスキルを習得できればこれまで抱えていた悩みが解消され、社内の人間関係がよりいっそう良くなるかもしれません。
マネジメント層がコーチングの認定資格を取得し、社内でコーチとして活躍する方法もあります。具体的な資格の種類や特徴は「コーチングの資格は5つある」で解説しますが、認定資格の取得によって、コーチに必要な専門的スキル・知識を習得可能です。
たとえば、コーチとしての観察力や信頼関係の築き方、実技を通したコーチングのレッスンなどが受けられます。マネジメント力の向上にもつながるため、社内で役職を持つ人は資格取得も検討してみましょう。
管理職などにコーチングのプロをつけ、実践的なコーチングを学んでもらうという方法もあります。管理職の意識・行動を変化させることで、階層を超えた意思疎通や社内全体のコミュニケーション活性化などに期待できます。さらに、コーチング研修の効果を社内全体に浸透させられれば、新たにプロのコーチを雇ったり、社内でコーチを育てたりする必要もありません。
管理職のスキルアップも見込めるため、企業としての能力を底上げしたい場合はコーチングのプロに依頼してみましょう。
コーチングはさまざまな業種業態で活用が可能で、賃貸仲介営業においても例外ではありません。とりわけ、不動産営業自体が独立商店のように活動している組織が多い中、コーチングを行う意味や意義は非常に大きいものと考えられます。
以下の項目をチェックしつつ、賃貸仲介営業会社がコーチングを行う理由について考えてみましょう。
前提として、コーチングは高いスキルを必要とする指導方法です。特定の部下や後輩において、具体的に何が課題なのかを示すという、コーチングの前提条件の時点でハードルが高いと考えられます。
しかし、各種KPIを定点観測し、数値やデータをもとに課題を抽出することで、質の高いコーチングが実現できます。さまざまな指標から個別具体的な営業課題を見つけ、弱点を補填することでどの程度の営業売り上げが見込まれるのかを明確に示しましょう。なお、他責志向の方や、精神論を重視する方は、まずは自分の思考・価値観から改善を図る必要があります。
部下や後輩の成長が促されKPIが改善された暁には、KGIである会社全体の売上にも貢献されることが予想されます。それまでの停滞感が嘘のように数字が伸び、部下や後輩の成長を売上数字という形で目にするケースも決して少なくありません。
コーチングの成果は、KPI・KGIという数値にのみ現れるものではありません。来店数や成約数が伸びるということは、比例してお客様の要求を満たしていると言い換えることができます。すなわち、お客様の満足度も向上しているといえるでしょう。
ここからは実践編として、賃貸仲介営業現場における具体的なコーチングの進め方について解説していきます。
コーチングをするにあたり、まずすべきことは「反響から成約までの各種KPIを算出すること」です。賃貸仲介営業であれば、以下のようなKPIが考えられます。
・反響コンタクト率
何件の反響を受け、何人とコンタクトが取れたかを表す数値です。また、反響受領からコンタクトまでの時間も調べられるとなお良いです。
・通電率
通電率は、反響に電話番号があるお客様に対して、何件の電話をかけて何件の通電ができたかを表す数字です。メールやLINEでの反響やりとりがメインの状況ではありますが、電話で呼び込むことも重要です。なお、通電率は50%あれば十分といえます。
・反響来店率
反響来店率は、何件の反響のうち、何件を商談に持ち込むことができたかを表す数字です。一般的には20~25%が目標になると考えられます。
・来店成約率
来店成約率は、来店・商談したお客様のうち、何件が成約できたかを表す数字です。一般的には60~80%の成約率が求められます。
賃貸仲介業においては、以下のような計算式を用いて必要なデータをそろえます。
・反響数×来店率=来店数
・成約数×売上成約平均単価=売上
※売上成約平均単価=売上総額÷成約数
なお、指導者の方は、反響数や売上単価という役職のない営業担当者では動かすことのできない数字を増大させるための施策について考える必要があるといえます。
続いて、各営業担当者の長所と短所を見極めます。重要なことは、悪い数値を抽出して「これが課題」と決めつけないことです。
成約数が少なくとも売上が良い場合、ファミリーの成約率が高い可能性が考えられます。また、来店率が高くとも成約率が低いなら、追客に優位性があるものの掲載物件の周辺物件知識が乏しいという可能性が考えられます。
数字は正直で嘘はつきませんが、なぜその数値になっているかをさらに分析することが指導者の仕事です。たとえば反響の場合、反響から来店までに要した時間、架電し通電できた時間帯や回数など、細かく観察することが必要でしょう。細部にわたり分析を行ったうえで、はじめてコーチングの土台ができあがります。
コーチングの際、相手の弱点を伝えるだけでは不十分です。どのように考え、どのように対応し、どのように展開するかという具体性が求められます。マネージャーの方は、以下のポイントを押さえたうえでコーチングを実施するようにしてください。
まず、対象者が抱えている課題と解決に対する認識を同一のものにします。現在数値と目標数値を明確にすることから始めましょう。
数字や言葉で表すことのできない部分についてもコミュニケーションの中で解き明かしていく必要があります。
賃貸仲介業界は、ここ数年でさまざまなシステムやツールを導入することになりました。そのため、お客様が来店されるまでに至るプロセスにも変化が生じていることは明白です。
昨今、伸び悩みが見られる営業担当者の傾向として、過去の栄光や成功体験に引きずられていることも多く見受けられます。そのため、努力の質量のみならず、その方向性についても現在位置と目指すべき方向性を日々調整することが必要です。
今後においても市場や環境の変化に適応できる体質を得るために、視野を広げて対話を進めましょう。
一度のコーチングで結論を出すのではなく、業務にあたる姿勢や目線を変えることで対象者に気付きを促すことが重要です。
たとえば、来店率が良い方がいる場合は、その人がどのような反響対応を行っているかを観察するように指示し、いったんコーチングを終了させてください。その後、メールやLINE文章の変化・頻度・添付ファイルの内容・提案物件の種類など、さまざまな部分の観察を続けさせます。
そこから一定期間経った後、どのような点に気づきがあったのかをコーチングの場で確認してください。再度コミュニケーションを取り、意見交換を行うことで、新たな視点で物事を捉えられるようになるでしょう。
対象者が自ら得た気づきによる改善ポイントと、対象者自身では気付くことのできない客観的な改善ポイントを踏まえ、改善行動として定着させます。
この改善行動を定着させ、数値改善が見られるまでこれを繰り返します。新たな行動が定着して当たり前になれば、新たな目標設定を行い、課題が現れたらすぐにコーチングを再開しましょう。
ここまでコーチングについて詳しく説明してきましたが、コーチングを実施している会社は非常に少ないように思われます。しかし、実際にコーチングを実施して成果を得ている会社があることも事実です。ここでは、コーチングにより得られた成果や副産物をご紹介いたします。
コーチングを受けた方は、自発的に物事を考えるようになる傾向にあります。また、「せっかく決めたルールやワークフローがいつの間にかなくなっている」ということもほとんどなく、自走性のある集団に生まれ変わることが期待されます。
賃貸仲介営業に限らず、営業活動で成果を出した人がある日突然現場を離れてマネージャーとして就任することも少なくありません。このようなとき、マネジメントスキルの欠如によるトラブルが多発することも少なくありません。
しかし、事前にコーチングを繰り返すことで客観的な視点が養われ、マネジメントスキルの向上が叶います。自分がマネージャーになったとき、慌てることなく対応できるようになるのもコーチングのメリットのひとつといえるでしょう。
昨今は多様な働き方が可能になっており、そのため社員一人ひとりが抱える課題も個人により異なる傾向があります。その点において、コーチングは個人により異なる課題を見つけ出し解決するスタイルであるため、対象者における課題の解決感は非常に大きなものになります。特に賃貸仲介営業は離職率が高い職種であるため、コーチングは離職防止という点においても役立つことでしょう。
コーチングにおいては、指導者・対象者の双方が協力し、課題解決に向けて意見交換・気付きの促進・行動の定着化・新たな課題の発見というサイクルを回すことになります。つまり、仕事において重要な「PDCAサイクルを回す」ことと同義といえます。
「PDCAサイクルを回して営業成果を高めろ」という抽象的な指示では、部下や後輩は動きません。コーチングという指導方法を用いることで、結果的に営業成果につながることは明白です。賃貸仲介営業では、営業指導がOJTとロープレに依存している傾向にあるため、他社との差別化を図るためにもコーチングは欠かせない指導法といえるでしょう。
コーチングの資格は主に5種類あり、目的に合わせて取得する資格を選べます。ここからは、各資格の概要や特徴について解説していきますので、コーチングを社内に導入する際はチェックしてみてください。
一般社団法人日本コーチ連盟が認定する「コーチング資格」は、コーチング初心者から経験者までがスキルを習得できる資格です。コーチ資格とインストラクター資格の2種類があり、目的に合わせて選べます。
以下に、資格の特徴と取得をおすすめする人について解説します。
・コーチング技能の基本から高度なスキルまで習得できる
・コーチ資格は基本的な学識や実践的な技能を学び、プロのコーチとして活躍できる
・インストラクター資格は連盟規定の学識と技術を習得し、コーチングのインストラクターとして活躍できる
・コーチングが未経験で一から学びたいと考えている人
・連盟が認める水準の技能を習得して、社内にコーチングの知識やノウハウを浸透させたいと思っている人
・プロコーチとして社会的、経済的地位の向上に努めたいと考えている人
コーチ・エィの「(一財)生涯学習開発財団認定コーチ資格」は管理職向けの資格で、取得によりコーチング型マネージャーとして活躍できます。コーチング型マネージャーとは、マネジメントの中にコーチングを取り入れて部下の主体性を引き出したり、目標達成を実現に導いたりする役割のことを指します。
では、資格の特徴や取得をおすすめする人について見ていきましょう。
・初心者から上級者までの資格が用意されている
・社内のマネジメントはもちろん、自身のキャリア形成にも活かせる
・国際的な機関に認められた資格なため、国際コーチング連盟の資格取得も目指せる
・管理職を目指している人
・世界基準で通用するコーチングスキルが欲しいと思っている人
・コーチング未経験で体系的な学習をしたいと考えている人
国際コーチング連盟の「アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)」は、コーチング経験者向けの資格です。資格取得には条件(専門トレーニングの受講や実績の提示など)があり、クリアした人のみが取得申請を行えます。
必要な条件も含め、ACCの特徴や取得がおすすめの人について見ていきましょう。ただし、各種条件は細かく設定されているため、不安な方は公式サイトの方もチェックするようにしてください。
・取得申請には専門トレーニングの修了認定(ACTP、ACSTH)か、連盟が認める水準をクリアしたコーチング経験の証明書類を提出しなければならない
・取得に必要な能力水準が比較的高く、プロのコーチとして活躍できる
・専門トレーニングには実技も含まれており、より実践的なレベルでコーチングスキルが身に付く
【申請取得の条件について】
申請条件の種類 | 詳細 |
ACC ACTP Path ACC専門トレーニング申請 | ・国際コーチング連盟が認定するトレーニングプログラム(ACTP)を修了 ・8人以上のクライアントと100時間以上のコーチングを記録したログ ・コーチングの知識を問うテスト(CKA)の受験 |
ACC ACSTH Path ACC専門トレーニング申請 | ・国際コーチング連盟が認定するトレーニングプログラム(ACTP、ACSTH)の受講(60時間以上) ・オンライン出願フォームへの記述(10時間のメンターコーチング) ・8人以上のクライアントと100時間以上のコーチングを記録したログ ・実技試験・コーチングの知識を問うテスト(CKA)の受験 |
ACC Portfolio Path ACC証明書類提出申請(コーチング経験の証明書類) | ・60時間以上のコーチ専門プログラムを受講(証明書類の提出必須) ・オンライン出願フォームへの記述(10時間のメンターコーチング) ・8人以上のクライアントと100時間以上のコーチングを記録したログ ・実技審査・コーチングの知識を問うテスト(CKA)の受験 |
・経験を積みつつコーチング資格の取得を目指したいと考えている人
・将来的なキャリアにプロコーチが含まれている人
・コーチングの基盤を固めたいと思っている人
国際コーチング連盟の「プロフェショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)」とは、国際的に認められた確かな実績のあるコーチング資格です。前述したACCよりも取得難易度が高く、より高いレベルでコーチングのスキルや知識を習得できます。
では、資格取得に必要な条件や特徴、取得がおすすめの人について見ていきましょう。
・取得申請には専門トレーニングの修了認定(ACTP、ACSTH)か、連盟が認める水準をクリアしたコーチング経験の証明書類を提出しなければならない
・ACCよりも高いレベルでコーチングのスキルや知識を習得できる
【申請取得の条件について】
申請条件の種類 | 詳細 |
PCC ACTP Path PCC専門トレーニング申請 | ・国際コーチング連盟が認定するトレーニングプログラム(ACTP)を修了 ・25人以上のクライアントと500時間以上のコーチングを記録したログ ・コーチングの知識を問うテスト(CKA)の受験 |
PCC ACSTH Path PCC専門トレーニング申請 | ・国際コーチング連盟が認定するトレーニングプログラム(ACTP、ACSTH)の受講(125時間以上) ・オンライン出願フォームへの記述(10時間のメンターコーチング) ・25人以上のクライアントと500時間以上のコーチングを記録したログ・実技試験 |
PCC Portfolio Path PCC証明書類提出申請 | ・125時間以上のコーチ専門プログラムを受講(証明書類の提出必須) ・オンライン出願フォームへの記述(10時間のメンターコーチング) ・25人以上のクライアントと500時間以上のコーチングを記録したログ ・実技審査 |
・熟練したコーチとしてのスキルアップを目指している人
・国際レベルで活躍できるコーチを目指している人
国際コーチング連盟の「マスター認定コーチ(MCC)」とは、熟練したプロフェッショナルのコーチとして活躍できる資格です。前述したACC・PCCよりも取得難易度が高く、まさにコーチングのプロといえるようなスキルを獲得できます。
では、資格取得に必要な条件や特徴、取得がおすすめの人について見ていきましょう。
・国際コーチング連盟認定のコーチング資格におけるトップレベルにあたる資格
・資格取得に必要な申請条件は1種のみ
・200時間以上のトレーニングを積み、より熟練したコーチングスキルが手に入る
【申請取得の条件について】
申請条件の種類 | 詳細 |
MCC資格認定の出願 | ・200時間の専門トレーニングを修了 ・10時間のメンターコーチング ・35人以上のクライアントと2500時間以上のコーチングを記録したログ ・実技審査・コーチングの知識を問うテスト(CKA)の受験(ACCやPCCなどで一度でも合格していれば不要) |
・熟練したコーチとして、社内外での活躍を目指している人
・実績やキャリアを重ね、国際的に信頼されるコーチを目指している人
最後に、コーチングの手法が学べるおすすめの本を3冊紹介しますので、コーチングの基礎から学んでみたいと考えている人は参考にしてみてください。
鈴木義幸氏が執筆した「この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本」は、コーチングの入門書としておすすめです。以下の主な特徴から、自分に合っているかどうか判断してみてください。
・コーチングの全体像が理解できる
・コーチングの実践的な内容が初心者向けにわかりやすく記載されている
・事例も含めて解説され、コーチングに関するノウハウがイメージしやすい
コーチングの定義やコーチに必要な視点など、基礎的な内容を学べる一冊なので、体系的にコーチングへの理解を深めたい人はチェックしてみてください。
宮越大樹氏が執筆した「人生を変える!「コーチング脳」のつくり方」では、コーチングの根本的な考え方や基本的なスキルを学べます。以下の主な特徴から、自分の目的や学びたい要素が含まれているかどうか確認してみてください。
・コーチングの基礎から応用までが丁寧に書かれている
・アドラー心理学をベースとした内容で、日常にも応用できるノウハウが習得できる
・著者の経験談も含めて執筆されており、飽きずに読み進められる
本の中では宮越大樹氏が経験したエピソードについても語られており、読者がイメージしやすい内容です。コーチングに関して基礎的な内容から解説されているため、初心者の人は一度手に取ってみることをおすすめします。
鈴木義幸氏が執筆した「新 コーチングが人を活かす」は、ビジネスだけでなく日常生活や他分野においても応用できるコーチングスキルが学べます。次の特徴から、自分の学びにマッチしているかどうかチェックしてみてください。
・コーチング手法が図解で解説され、内容の理解が捗る
・各パートが短くまとめられているほか、具体的なストーリー仕立ての解説もあるためわかりやすい
・著者の経験も交えながら解説されている
コーチングスキルやノウハウがイラストを用いて解説されているので、比較的短時間で読み終えることができます。さらに、著者の経験も含めた解説によって、コーチング経験者であっても新たな学びを得られる本です。
コーチングは、部下や後輩などに自発的な思考や行動を促し、モチベーション維持にも効果を発揮する指導方法です。従業員同士の良好な関係構築にも期待できるため、社内のスキルアップや風土改善などに課題を抱えている方は実践してみましょう。
ただし、事前に傾聴力や質問力などのスキルを高めておく必要があるので、不安な方は今回ご紹介した書籍をチェックし、コーチングの基礎や具体的なやり方について一度体系的に学んでみてはいかがでしょうか。