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「防音」面は物件探しの鉄板のお悩み!?納得の説明をするためのポイントとは

記事公開日:2023/09/23

最終更新日:2023/10/09

防音性が高い賃貸物件

お部屋探しをするうえで、防音性能は見逃せない要素のひとつです。お客様に「防音性はどうなの?」と尋ねられたとき、納得のいく返答ができれば好印象となりますが、そのためには防音について深く知っておく必要があります。

そこで今回は、賃貸物件の「防音」に関する知識を紹介します。どれも日々の業務に役立つものとなっていますので、成績アップを目指している賃貸仲介営業マンはぜひ最後までお読みください。

※下記の関連記事では内見(物件案内)のコツ(内見時に意識すべきポイント、潜在的なニーズを汲み取る方法、クロージングまでにとるべき行動など)をまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。

賃貸仲介営業マンなら知っておくべき!防音性能が高い物件の特徴

まずは、どのような物件や設備が防音性能に優れているかを確認していきましょう。

RC(鉄筋コンクリート造)

防音性能は、建物の構造や種別により差異が発生します。特にわかりやすいのは、鉄筋コンクリート造の防音性能です。

鉄筋やコンクリートは、木と比較して密度が高く、さらに重くて固いという特徴があります。鉄筋コンクリート造のマンションを内見しているときに、話し声が反響した経験はないでしょうか?これは、鉄筋コンクリートの遮音性の高さによるもので、隣接している居室へ音が伝わりにくいということを証明しています。

反響音は、家具などを置くことによってある程度小さくすることができます。家具が音を吸収するため、不安を感じているお客様には「家具を増やしてみてはどうでしょうか?」と提案してみると良いでしょう。

角部屋や最上階など、隣戸に面する数が少ない

マンションやアパートの各階の角部屋や最上階であれば、隣接する住戸がない、あるいは少ないため比較的静かです。賃貸物件の構造によっては、どの部屋が角部屋かわからないときもありますので、平面図を見て事前に間違いがないようにしておきましょう。

また、最上階や上層階のみ部屋数が少なくなっているケースや、4号室だけがないなどの物件ごとの個別的な状況により、全フロアが同じような構造になっていないことも多いため注意が必要です。

戸建て物件

戸建て物件は、そもそも上下左右に接している住居がない独立した建物ですので、騒音問題に巻き込まれる心配はほとんどありません。騒音を気にされる方にとって、戸建て物件を中心に探すという方法は非常に有効です。

なお、戸建て物件に似た言葉で「テラスハウス」というものがあります。これは、一見戸建て物件のように見えますが、戸建て物件が連なった「長屋」のような物件のことをいいます。独立性は高いですが、完全に隣戸との接触がないわけではありませんので注意しましょう。

二重サッシ、インナーサッシなど窓やサッシがしっかりとした造りになっている

外部からの騒音は主として窓から伝わりやすいものです。

外部からの騒音の入口である窓に防音性能が備わっている賃貸物件は、防音性能が高いと判断できます。特に、出窓やサンルームなどで主に利用される二重サッシや、構造上窓を交換できない場合に内窓として設置されるインナーサッシなどは防音性能に優れており、外部からの騒音対策として非常に有効です。

また最近賃貸物件で見られるようになったペアガラスですが、これは通常の1枚窓ガラスと比較して格段に防音性能が高いわけではありません。もちろん1枚ガラスと比較して防音性能が期待できることに違いはありませんが、ガラス自体が防音ガラスになっているものや、ペアガラスの中間層が真空のものでないと、防音性に優れているとはいえないでしょう。さらに、これらを目視で見分けることはほとんど不可能ですので、ペアガラスだからといって防音性能が高いと判断するのは好ましくありません。

一方、窓を閉めたときに窓ガラスのサッシ自体がぐらぐらしないのであれば、防音性能は高いといえます。「サッシのぐらつきが見られない=隙間がほとんどない」ということであり、比較的防音性に優れていると考えてほぼ問題ありません。お客様には、「ペアガラス自体の防音性は1枚ガラスと大きく変わりませんが、サッシにぐらつきが見られないので、気密性が高く防音効果も見込めます」などと説明できるでしょう。

遮音性能のあるフローリング・床材が使われている

賃貸物件などの集合住宅における騒音は、両隣や外部からのものだけでなく、上階の足音もそのひとつです。自宅に居ながら忍者のような生活を送るわけにもいきませんので、床材は大きなチェックポイントといえるでしょう。

一般的に賃貸物件の床材はフローリングですが、フローリングにもさまざまな種類があります。フローリングの遮音性能を見極める指標として、LL-45等級(数字が小さいほど遮音性が高い)や、△LL-4(数字が高いほど遮音性が高い)と呼ばれるものがあります。民間の賃貸マンションなどでは難しいかもしれませんが、分譲マンションや新築マンションであれば仕様書から確認をすることが可能です。

床材による防音は完全ではありませんが、1つの基準としてフローリングの仕様を確認することは重要といえるでしょう。実務的には、新築情報の段階で仕様書を確認し、防音性能の高い床材を利用していることを社内全体で共有しておくことをおすすめします。

ソフトクローズ付きの建具になっている

ソフトクローズとは、ドアや引き違い戸を閉めるとき、閉まる際にストッパーがかかりゆっくり閉まる機能のことです。この機能があることで、ドアを閉めるときの「バタン」という音が軽減されるため、余計な騒音トラブルを回避することができます。

ドアや引き違い戸を閉めるときの音は、生活騒音としてよく問題になるポイントです。内見の際はドアや引き違い戸を一度すべて開閉することで、このような機能に気づくことができるでしょう。

お客様のよくある悩み「騒音」の種類

騒音にもさまざまな種類があり、その騒音が気になるか否かに個人差があることも事実です。ここでは、騒音の種類について解説します。

空気音

空気音とは、音が空気を伝わってくる現象のことです。一般的に私たちが日常で耳にする多くの音は、空気中を伝わっているということができます。

空気音は、直線的に広がる特徴があります。つまり、音源からの距離が遠くなったり音源と耳の間に障害物があると、音が聞こえにくくなったり、聞こえなくなったりするのです。空気音による騒音にお悩みの方は、「音源と自分の部屋の間の防音が重要」ということになります。

代表的な空気音の騒音

空気を伝わるほとんどの音が空気音になります。テレビから聞こえてくる音、子どもの泣き声などが空気音の代表的なものです。

固体音

固体音とは、音が固体を通じて伝わってくる現象のことです。物体が振動したり、衝撃を受けたりすることで発生します。固体音の特徴として、音源と耳との間の距離が遠くなっても、音が低減しにくいというものがあります。

たとえば、糸電話を想像してみてください。普通では聞こえないくらい小声で話をしていても、糸電話ならはっきり聞こえます。糸電話で聞こえる声は、糸を通じて伝わってくる固体音であることの証明といえるでしょう。

固体音による騒音にお悩みの方は、「振動している壁や床と距離を置くことが重要」ということを押さえておきましょう。

代表的な固体音の騒音

振動を伴う音のほとんどは固体音ということができます。どこかで壁を打ち付けているような音、上階で子どもがジャンプしたときの振動音などが固体音の代表例です。

防音性能を気にするお客様にできること

お部屋探しをする理由が、現在のお住まいでの騒音問題であることは少なくありません。防音性能を重視するお客様に対して賃貸仲介業者にできることは、どのようなことがあるのでしょうか。実際の営業手順を踏まえて、詳しく確認していきましょう。

なぜ防音性能を気にするのかを聞いてみる

まずは、防音を重視する理由を細かくヒアリングすることから始めましょう。「隣人の話し声がうるさい」「近くで大規模な工事をしている」など、何か理由があるはずです。物件の防音性能で対処できるのか、判断の基準を持つためにも時間をかけてヒアリングするようにしてください。

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防音性能と他の条件の優先度をお客様と擦り合わせる

前述のとおり、最上階は防音性が高い居室になります。しかし、10階建てのマンションであれば、1階もしくは2階と最上階である10階とを比較すると5,000~8,000円程度の家賃差額が発生することもあります。

年間で数万円というお金を支払ってでも、防音性能を得たいかどうかの擦り合わせを行いましょう。同一の賃貸物件内のみならず、状況によっては戸建てに住むといった選択肢も検討する必要があります。防音性をどの程度重視するのかは、お部屋探しの非常に重要なポイントになりますので、机上の説明で終わるのではなく、実際に内見してもらったうえで意見を聞いてみてください。

紹介したい物件の部屋スペックだけでなく、周りの環境も併せて紹介できるように知見を深める

騒音は、賃貸物件内で起こることもあれば、外部で発生することも当然考えられます。電車や幹線道路、空港が近くにあるときは、当然のことながら騒音問題を避けて通ることはできません。また、病院・警察署・消防署などが近くにあると、サイレンの音などで夜間も騒音に悩まされる可能性もあるので、気になる点があればお客様と現地に赴いて確認をするようにしてください。

また、お客様から「新しいビルが建築されるかもしれないから調べてほしい」と言われたときは、可能な限り調査しましょう。建築工事が始まるのであれば、現地に所有者や管理者名が書かれた看板が設置されますので、そこに書かれている企業に連絡をして確認を取りましょう。ほかにも、更地でどうやら建物が建築されそうなときは、行政の建築指導課に連絡をすれば確認できます。

お客様が賃貸物件でもできる騒音対策を紹介する

賃貸物件であっても、少しの工夫で騒音性能を高めることができます。詳しくは後述しますが、比較的簡単にできる騒音対策を紹介するという選択肢も覚えておくようにしてください。

お客様に紹介したい、臨機応変に防音するための方法

最後に、お客様にぜひ紹介してほしい、賃貸物件で簡単にできる防音性能をアップさせる騒音対策について解説します。いずれも簡単にできるものなので、ぜひ覚えて今後の接客に活かしてください。

家具の配置による隣戸への防音と配慮

空気音は直線的に広がるため、障害物を設置することである程度緩和できます。音源側に背の高いタンスなどを設置し、空気音を遮断するという方法です。

横方向からの振動音に悩まされている方は、家具を壁から少し離して設置し、「振動の伝わり」を減少させましょう。家具を壁から少し開けて設置することは、湿気カビ対策にもなりますので一石二鳥です。

カーペットによる階下への防音

騒音問題は、自分が被害者になるとは限りません。知らない間に自分の生活音が加害者となっていることも考えられます。特に足音などは、お子様がいらっしゃるお部屋ではやむを得ない一面があるものの、悩みの種でもあります。

階下への騒音対策としては、カーペットやラグを床面に敷き詰めるのが有効です。全面敷き詰めることが困難である場合は、「部分的に貼り合わせるタイプのものも販売されています」とお客様に教えてみてください。

カーテンによる窓からの防音

外部からの騒音は、窓面の防音が重要です。根本的な解決は困難ではありますが、防音カーテンを設置することで、ある程度空気音を減少させることができます。

防音カーテンとは、通常のカーテンと比較して密な縫い方をして隙間をなくし、音を遮断できるカーテンのことです。防音カーテンによる遮音は、主に話し声やペットの鳴き声など、空気音の中でもやや高い音に効果があるとされているので、ヒアリングした情報をもとにアドバイスをすると良いでしょう。

吸音ボードなどの騒音対策グッズによる、隣戸への防音と配慮

吸音ボードや遮音ボードを壁に貼るのもひとつの手です。さまざまな大きさや種類のものが販売されていますので、用途に応じて使い分けると良いでしょう。

ただし賃貸物件の場合、テープ痕や設置痕が残ると退去時に原状回復の費用が発生するおそれがあるので注意が必要です。養生を十分に行い、原状回復の請求対象にならないよう、事前にアナウンスすることも覚えておいてください。

ドアや窓の隙間を埋める

ドアや窓に隙間があると、その隙間から音が出入りしてしまいます。特に築年数が経過している賃貸物件の場合、ドアや窓を閉めても隙間が発生し、それによってぐらつきが見られることが多々あります。

ドアや窓の隙間を埋めるには、シーリングテープ・隙間テープの活用がおすすめです。テープをドア枠などに貼ることで、隙間を埋めることができ、防音対策となるのです。比較的安価で対策ができますので、築年数が古い物件の内見の際はぜひアドバイスしてみてください。

まとめ

防音に対するリクエストには、ある程度の知識と提案力が求められます。お客様にヒアリングし、賃貸物件の構造やお部屋の位置で解決できるものか、少しの工夫で解決できるものかを見極め、最適な提案をしないと解決にはいたりません。「お客様からに信用してもらえる営業マンになりたい」と考えている方は、きちんとした根拠に基づく説明ができるよう、あらためて防音について勉強してみてはいかがでしょうか。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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