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湿気の少ないお部屋の特徴や対策方法とは?お客様への物件案内方法を学ぼう

記事公開日:2023/09/23

最終更新日:2023/10/09

賃貸湿気対策

賃貸物件に住む際、「湿気」は住み心地に直結する非常に重要な要素のひとつです。さらに、湿気による汚損やカビの発生は、退去時の原状回復費用にも関わってくるので決して甘く考えてはいけません。賃貸仲介業者の方々は、これらの点をお客様に説明する必要があり、もし認識に齟齬があればトラブルに発展しかねないため注意が必要です。

今回は、湿気・結露・カビについて、徹底的に解説します。湿気に関する対策法も紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。

※下記の関連記事では内見(物件案内)のコツ(内見時に意識すべきポイント、潜在的なニーズを汲み取る方法、クロージングまでにとるべき行動など)をまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。

湿気とは?

湿気とは、空気中に含まれる水分のことをいいます。似ている言葉に「湿度」がありますが、湿度とは空気中に含まれる水分量の割合のことです。空気中に水分量を100含ませることができるとしたとき、60の水分量が含まれているときは、湿度が60%と表現することができます。

湿度が少し高いくらいであれば大きな問題はありません。しかし、朝起きた際に窓に結露が付着していれば、湿気対策が必要な状態にあるといえるでしょう。

湿気や結露のメカニズム

空気中には水分が含まれています。そして、空気中に含むことのできる水分量は、空気の温度によって変わります。空気の温度が高いほど多くの水分を含むことができ、空気の温度が低いときはあまり水分を含むことができません。

冬場になると空気の温度が下がりますが、同時に空気中に含むことのできる水分量も減ります。このような特徴を持っている空気が窓ガラスに触れると、含みきれなくなった水分が発生することになり、これが結露発生のメカニズムとされています。

湿度が及ぼす影響

湿気は不快感を覚えるのみならず、人体に悪い影響を及ぼします。湿気による悪影響として考えられるものとして、カビの発生が挙げられます。

カビの生えている環境は、人体にとって好ましいものではありません。アレルギー反応により目のかゆみや鼻水、くしゃみなどの症状が現れる可能性があります。また、呼吸器への影響では、鼻詰まりや喘息なども考えられるでしょう。

賃貸仲介営業マンなら知っておくべき「湿気で悩みにくい物件」の特徴

湿気対策が欠かせない物件がある一方、湿気で悩みにくい物件も存在しています。ここでは、湿気で悩みにくい物件の特徴について解説します。

ペアガラス

ペアガラスは、1つの窓が2枚のガラスで構成されているタイプの窓ガラスで、2枚のガラスの間には空気またはガスが込められています。枠は主にアルミ製ですが、最近は断熱性能に優れた樹脂製の枠も、高品質な賃貸物件では利用されるようになってきました。

またペアガラスは、外気と室内の空気との間にガラス間の空気、もしくはガスの層を挟むことになります。室内の空気が直接冷たいガラスに触れることがないため結露が発生しにくく、湿気で悩むことが少なくなると考えられます。ペアガラスが導入されている物件は、1枚ガラスの物件と比較すると、「湿気や結露に強い物件である」ということができるでしょう。

なお、ペアガラスに似ているものに、二重サッシ(内窓・インナーサッシとも呼ばれている)があります。窓を開けるとそこにはもう一つの窓があるという二重サッシは、独立した2つの窓をイメージするとわかりやすいでしょう。

二重サッシはお部屋の断熱性能を高める効果はありますが、外側の窓自体は外気と室内の空気が接触する場所であることに変わりありません。外側の窓に結露が発生する可能性が高いため、湿気対策として二重サッシが非常に有効と言い切ることはできません。

2方向以上から自然換気ができる

湿気の悩みは冬だけではありません、特に夏場は湿気が原因となってカビが生えることもあるでしょう。カビが発生する要因は、温度・湿度・カビの食事環境の3つといわれています。

まず温度ですが、カビが最も成長するのは25℃で、まさに夏場の室内がそれにあたります。湿度については、約80%が最適な湿度とされており、特に蒸し暑い環境は注意が必要です。

最後にカビの食事環境ですが、これはホコリや食べかす、浴室の壁についたままのシャンプー跡などと考えてください。お風呂にカビが生えやすい原因は、多湿な環境に加え、シャンプーなどの油脂成分が壁や浴槽に付着しているままであることといえます。

カビの生育を予防するのに有効な対策は換気です。換気をするときは、1つの窓を開けるよりも、2つの窓を開ける方が効果的です。また、浴槽やクローゼットなど湿気がこもりやすい場所は、定期的に空気を入れ換えるよう、お客様に案内しましょう。

独立した脱衣所に換気扇がついている

室内で湿気がこもりがちなのが、脱衣所です。もし独立した脱衣所に換気扇がついていない場合は、浴室のドアを開放して浴室の換気扇を回しておくことで代用が可能です。また浴室の湿気対策として、シャワー後には冷水で浴室内を冷やし、さらに水切りをしておくことが最良の湿気対策になることを覚えておくと良いでしょう。

南向きに面しているお部屋

南側に面しているお部屋は、一般的に日中ほとんどの時間にわたって日光が差し込みます。室内と外気の温度差が発生しにくいことと、窓を開けての換気を容易に行いやすいという点から湿気がこもりにくくなるというメリットがあります。

ただし、1階のように日当たりが望みづらいお部屋などであれば、たとえ南向きのお部屋であっても多湿な環境になってしまうので、事前の注意喚起が必要です。

エアコンがついているお部屋

元々エアコンが設備としてついているお部屋は、湿気対策を簡単にすることができるでしょう。夏の暑い時期であれば、「冷房」ではなく「ドライ」にすることで、湿度を下げることができます。

冷房とは、室内の温度を下げるための機能であるのに対し、ドライとは室内の湿度を下げるための機能になります。「夏場の冷房は体がだるくなる」というお客様には、ぜひドライ(除湿)運転をするように勧めてみてください。

湿気が気になる北向きのお部屋のメリット3つ

北向きのお部屋は、「日当たりが悪い」「湿気が気になる」などの理由から敬遠されがちです。しかし、そのような不人気な北向きのお部屋にも実は多くのメリットが存在しています。以下の項目で、北向きのお部屋のメリットについて確認しておきましょう。

南向きと比べて家賃が安く設定されている

南向きのお部屋と比較して、北向きのお部屋は不人気であることが多いため、家賃が安く設定されることが一般的です。そのため、家賃を重視される方にとっては大きなメリットといえるでしょう。

エアコンや暖房器具で温度や湿気問題はカバーできる

北向きのお部屋は南向きのお部屋と比べ、寒々しく感じるものです。しかし、夏場の暑さは北向きのお部屋の方が抑えられるため、その点はメリットということができます。これはどの向きのお部屋にもいえることですが、ある程度建物がしっかりしていれば、方位に関する湿度の差は、エアコンや暖房器具でカバーすることができます。

直射日光を避けることができる

最近は在宅で仕事をすることも増えてきました。オフィスにいるとあまり気がつきませんが、お部屋は外からの光を取り入れるように作られているため、直射日光が気になるものです。

その点、北向きのお部屋は直射日光が差し込むことが少ないので、照り返しやテレビ・パソコンの画面の反射が気になることは少ないでしょう。日中、在宅されることが多い方には、北向きのお部屋が合っているといえます。

湿気対策方法も併せて紹介できる賃貸仲介営業マンを目指そう

湿気はどのようなお部屋であっても発生するものであり、程度の差はあるにせよ、何かしらの対策が必要です。お部屋探しでお客様を接客しているとき、「湿気がひどくて大変だった」というお話を聞くことも少なくないでしょう。

そのようなとき、湿気に関する正しい知識と対策方法を知っていれば、お部屋探しをお手伝いするにあたって役立つことは間違いありません。以下の内容をチェックし、湿気が発生する原因・場所・対策をワンセットで理解しておきましょう。

こまめな換気を行う

湿気は外から発生するものではなく、室内で発生するものがほとんどです。そのため、空気の循環を促す換気が特に有効な湿気対策といえるでしょう。

換気の目安は1時間に1回、5分くらい行うのが理想とされています。先述したとおり2方向の窓を開けることで、空気の通り道ができ、効果的に換気をすることができます。

24時間換気を常時稼働させる

「日中は仕事があるので定期的に換気なんてできないよ」というお客様には、24時間換気を稼働させることを勧めてください。24時間換気とは、お部屋の窓横あたりにある20cm角の白い正方形の換気口から外気を吸い込み、換気扇などを経由して室内の空気を外に排出する自然換気システムのことです。24時間換気を常時稼働させることで、1時間におおむね室内の空気の半分程度を入れ換えることができるといわれています。

なお、24時間換気を効率的に稼働させるコツは2つあります。トイレや浴室の換気扇と併用することと、換気口をきれいに維持することなので、これらもお客様に伝えておくと良いでしょう。

結露対策として専用のシールテープを活用する

冬の朝に窓に付着する結露は気づいたら拭き取ることが重要ですが、結露の発生を防ぐ方法はないのでしょうか。おすすめなのは、窓ガラスにシールを貼付する方法です。窓ガラスに結露防止シールを貼ることで、結露の発生や液だれを防ぐことができます。

また、結露防止シールは大きく2種類に分かれます。1つは断熱シートと呼ばれており、結露の発生そのものを防止するシートです。もう1つは吸水シートといい、発生した結露を吸ってくれるシートです。

断熱シートは、大きなプチプチシートのようなものを窓ガラスに貼ることで、温度差を緩和させ、結露の発生を防止します。一方、吸水シートは不織布やフェルト地のシートを窓ガラス全面もしくは窓ガラスの下面に貼ることで、そのシートが発生した結露を吸い取ってくれるため、毎朝の拭き取り作業が不要になります。

最近ではデザイン性の高いものも販売されていますので、店舗に1つサンプルなどがあれば日々の営業に役立つでしょう。

ミスト式の結露防止スプレーをかける

結露対策のシールテープの使用は有効ですが、見た目や手間の問題を避けることができないのも事実です。そのようなときは、結露防止スプレーをおすすめしてみましょう。

スプレーを噴霧した箇所には目には見えないくらいの薄い膜ができ、水分を吸収・撥水することで結露を防止してくれます。また、結露防止スプレーは窓ガラスのみならず結露が発生しやすい玄関ドアや、曇りが気になる浴室の鏡にも使用することもできますので、便利グッズのひとつとしてぜひ紹介してみてください。

除湿機や加湿器を活用する

湿度の調整に際し、除湿機・加湿器を利用するのも有効です。どうしても部屋干しがメインになるという場合には、送風機能がついた除湿機を活用するように勧めると良いでしょう。

また、空気を循環させるサーキュレーターを活用するのもひとつの手です。空気のこもりがちなクローゼットやシューズクロークにも使えますし、エアコンの空気を循環させることで省エネにも役立ちます。また、梅雨の時期には開けた窓に向けてサーキュレーターを作動させることで、一気に室内の空気を換気させることも可能です。

※下記2本の関連記事も内見(物件案内)時に役立つ情報なのでチェックしてみてください。

内見時には、必ず換気してからお部屋を案内しよう

内見の際にはお客様より先に入室し、換気やゴミや虫がいないかをチェックしてからお客様を案内しましょう。封水(排水口に臭いや虫が上がってこないようにするために溜まっている水のこと)がなくなっていたりすると、どうしても嫌な臭いが室内にはこもってしまうものです。

案内するお部屋のポテンシャルを少しでもアップさせるのも、賃貸仲介営業マンの仕事のひとつです。そして、案内をした際にお部屋で気づいたことがあれば、家主さんや管理会社と情報を共有することも忘れないようにしましょう。

また、お部屋をご覧頂いているとき、リビングの窓だけではなく玄関のドアも一緒に開放してみてください。いかに室内に風が通るかがよくわかります。この「風を通す」ということがそもそも湿気対策における基本であり、「風が通る」という感覚こそお客様に伝えるべき環境です。

このような体験に加えて上述した湿気対策の話を盛り込んでいくことで、お客様が湿気対策に自信を持っていただき、ひいては成約に繋がるといえるのではないでしょうか。

まとめ

賃貸物件に住む際、湿気の問題はほぼ必ず発生するといわれています。しかし、安易に南向き・新築・鉄筋コンクリートなどの物件を勧めるのも好ましくなく、お客様のニーズを把握したうえで案内することが重要です。ホスピタリティの高い仕事ができるよう、本記事の内容をおさらいしつつ、物件の湿気対策について考えてみてはいかがでしょうか。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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