記事公開日:2022/05/19
最終更新日:2023/11/17
不動産会社を利用して不動産売買や賃貸契約などを行う場合、「仲介手数料(仲介業務に対する手数料)」という費用を支払わなければなりません。この費用は宅建業法と深く関わっており、関係性を理解しておくだけでも不当な費用の請求を防げる可能性があります。
今回は、仲介手数料の具体的な計算方法や上限額などをご紹介します。また、仲介手数料を支払うタイミングや費用を抑える方法についても解説していきますので、「手数料が高すぎる」「どうやって算出された額なのかわからない」といった方はぜひチェックしてみてください。
目次
宅建業法(宅地建物取引業法)とは、不動産取引を行う人(購入者や賃借人)の利益保護を目的とした法律です。不動産業者などが不当な取引を行い、消費者の利益が損なわれないよう定められました。
不動産仲介の場合、宅建業法によって仲介手数料の上限が定められています。上限がなければ仲介手数料を際限なく設定できてしまうため、業者側が不当に利益を得ないよう明確な決まりがあります。
次項から、宅建業法と仲介手数料の関係について見ていきましょう。
宅建業法第四十六条において、仲介業者が受け取る仲介手数料は、国土交通大臣が定めた額が上限とされています。つまり、敷金・礼金などとは異なり、どの地域においても仲介手数料の相場は同じです。
また、仲介手数料は「誰にでも見えやすい場所へ提示しなければならない」という決まりもあるため、不動産会社へ足を運んだときは店先・店内などを確認してみてください。
ここからは、宅建業法における仲介手数料の上限額について、売買・賃貸それぞれのパターンで解説していきます。前述したように、仲介手数料の上限は宅建業法第四十六条(国土交通大臣が定めた額)で規定されているため、これをもとに具体的な額を見ていきましょう。
不動産売買においては、仲介手数料の上限が以下のように定められています。
金額 | 仲介手数料の上限(取引金額に対する割合) |
200万円以下 | 5.5% |
200~400万円以下 | 4.4% |
400万円超 | 3.3% |
※出典:国土交通省 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
ただし、低廉な空家等に関しては上記の限りではありません。低廉な空家等とは、売買代金や交換などにかかる費用が400万円以下の土地・建物を指します。
低廉な空家等の仲介手数料は、上記の計算式で算出された金額+当該現地調査に必要な費用の金額以内(18万円の1.1倍を超えない額)です。具体的な額については不動産会社から事前に提示されるため、契約締結時に確認しておきましょう。
また、調査費用が上乗せされる理由は、次の2つが挙げられます。
空き家の売買では、売買価格の目安を把握するために現地調査を行います。このときの調査費用をそのまま不動産会社が負担してしまっては、売買取引で赤字を出してしまうおそれがあります。
さらに、売買における利益が出ないとなると、空き家の取引は敬遠されるかもしれません。日本では空き家が増加傾向にあるため、その対策として調査費用を補填できるよう仲介手数料が上乗せされています。
賃貸契約の場合、不動産仲介業者は家賃の1.1ヶ月分までしか仲介手数料が受け取れないよう法律で定められています。さらに、入居希望者の承諾が得られない場合は、家賃の0.55ヶ月までしか仲介手数料が受け取れない決まりです。
※参考:国土交通省 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
次に、宅建業法における、仲介手数料の計算方法を見ていきましょう。不動産取引の際、仲介手数料が適正な価格に設定されているかを確認してみてください。
不動産売買における仲介手数料の計算方法について、金額別の上限値をもとに取引金額の例を挙げながら解説します。
取引金額が200万円を超えた場合、取引金額を「200万円以下・200~400万円以下・400万円超」の3段階に分けて計算しなければなりません。しかし、上記の方法では計算が複雑になってしまうため、以下の簡略化された計算式もチェックしておいてください。
※上記は税込で計算
金額(税込) | 計算方法 |
200万円以下 | ○○円×5.5% |
200~400万円以下 | ○○円×4.4%+2.2万円 |
400万円超 | ○○円×3.3%+6.6万円 |
「+2.2万円」「+6.6万円」の理由は、200万円を超えると加算される金額が常に一定となるためです。前述した「200~400万円以下」「400万円超」それぞれの計算式を見てみると、5.5%と4.4%に乗じる金額は常に200万円となるのがわかります。
「4.4% or 3.3%×取引金額」の計算結果に不足する差額を+○○円で埋めることで、仲介手数料を簡単に算出することが叶います。
賃貸契約の場合は、以下のように計算できます。
条件 | 割合 | 仲介手数料 |
入居希望者への承諾なし | 0.55ヶ月分 | 2.75万円 |
入居希望者への承諾あり | 1.1ヶ月分 | 5.5万円 |
※家賃を5万円として計算
※仲介手数料の割合は上限値とする
賃貸契約の場合、定められた上限値内であれば業者側が自由に仲介手数料を設定できます。そのため、入居者として契約を結ぶ際は、上限値に収められているか確認することが大切です。
仲介手数料は成功報酬として支払う費用なので、賃貸・売買どちらにおいても契約締結時に支払います。売買の場合、一括or2回に分割して支払うかは不動産会社によって異なるため、気になる人は契約前に確認しておきましょう。
最後に、宅建業法における、仲介手数料を抑えるための条件について解説します。「少しでも初期費用を抑えて引越しをしたい」と考える人はチェックしてみてください。
引越しにかかる初期費用を抑えられれば、実質的に仲介手数料の削減に繋がります。
不動産購入の場合、十分な頭金を用意して交渉することで購入費を抑えられる可能性があります。司法書士費用に関しても、相場と比較しながら適正価格で依頼できる事務所・司法書士を探すことで初期費用が抑えられます。
賃貸物件の場合、敷金・礼金無料の物件であれば、家賃の1~2ヶ月分程度の費用が抑えられます。さらに、地域によって家賃の相場は変化するため、家賃の安い地域で賃貸物件を探せば前家賃などを抑えることにも繋がります。
これらは仲介手数料を安くする方法ではないものの、総額的に見ると費用を抑えられるため、初期費用の負担を軽くしたい人は参考にしてみてください。
宅建業法は消費者の利益を守る法律です。不動産の売買・賃貸などの取引を行う際は、基本的な知識を持っていると悪徳業者や不当な取引などを未然に防げるかもしれません。
仲介手数料に関しては、宅建業法で上限額が決まっているので、売買・賃貸どちらにおいても把握しておきましょう。
売買においては仲介手数料の計算が複雑なため、今回ご紹介したポイントを参考にし、費用に関するケアレスミスを防ぐようにしましょう。
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