記事公開日:2022/06/02
最終更新日:2022/09/18
2022年に「民法の一部を改正する法律」により、成人年齢が18歳に引き下げられました。大人として見なされる年齢が20歳から18歳に変わりましたが、この改正は賃貸借契約にも影響します。
そこで今回は、民法改正に伴い賃貸借契約がどのように変更されたのか、18歳でできるようになったことなどにも触れながら解説していきます。
2022年4月1日から民法改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。2016年に、選挙権年齢が18歳に変更になったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。
選挙権年齢の引き下げ理由は、少子高齢化が進む日本において若者の有権者数が減り、若い世代の意見が政治に反映されにくくなったためです。そこで、未来を担う若い人たちに政治に関心を持ってもらうため、選挙権年齢を引き下げて投票できるようにしたのです。
若者が国政に参加できるようになり、民法でも18歳以上を大人とするかどうかの議論がされるようになりました。議論の末、積極的な社会参加を促すためといった理由から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。なお、アメリカやイギリスなど、18歳を成人年齢としている国は数多く見られます。
新成人となる日は、以下のように自身の生年月日によって変わります。
生年月日 | 成人年齢 | 新成人となる日 |
2002年4月1日以前生まれ | 20歳 | 20歳の誕生日 |
2002年4月2日から2003年4月1日生まれ | 19歳 | 2022年4月1日 |
2003年4月2日から2004年4月1日生まれ | 18歳 | 2022年4月1日 |
2004年4月2日以降生まれ | 18歳 | 18歳の誕生日 |
2022年4月1日に18歳、19歳の人は新成人となり、民法改正の影響を強く受ける年齢といわれています。
成人年齢に達すると今までとは違ったことができるようになりますが、具体的にどんなことができるようになるのでしょうか。成人年齢に達すると、「一人で契約ができる」「父母の親権に服さなくなる」と周囲から判断されます。
「一人で契約ができる」というのは、たとえば携帯電話を購入する際、親の同意なくできることを意味します。未成年が契約を結ぶ際には親の同意が必要であり、同意なしの契約は無効となるのが一般的です。しかし成年になった場合、親の同意なく一人で契約が結べます。
「父母の親権に服さなくなる」とは、住む場所や進路を自分で決められることです。成人年齢になるというのは、自分の意思でさまざまな行動・決断ができることを意味します。
以下の表で、18歳からできるようになったことと、従来どおり20歳にならないとできないことを確認していきましょう。
参考:法務省 「民法(成人年齢関係)改正 Q&A」
成人年齢が18歳になったことで、親の同意なしに契約が可能です。また、10年有効パスポートや国家資格の取得も18歳からできます。
結婚について、これまで男性は18歳、女性は16歳にならないと結婚できませんでした。男女で年齢差があるのは、女性の方が心身ともに発達が早いという理由からです。
しかし、時代とともに、社会経験や経済力が重視されるべきという考えに変化しています。社会的・経済的成熟において、男女で差があるのはおかしいということから、女性の結婚年齢が18歳に引き上げられ、男女ともに18歳から結婚できるようになったというわけです。
一方、成人年齢が引き下げられたからといって、20歳にならないとできないことも少なくありません。特に勘違いされやすいのは飲酒と喫煙で、この2つはこれまでどおり20歳と決まっています。これは、健康面への影響、非行防止のためです。
2020年に民法の債権関係の分野で見直しがなされ、賃貸借契約において民法のルールが120年ぶりに改正されました。
2020年の民法改正では、次のような変更がありました。
参考:法務省 「賃貸借契約に関するルールの見直し」
賃貸借継続中のルールでは、修繕や譲渡について明確化されました。修繕については、借主が貸主に修繕の必要を通知したにもかかわらず修繕されなかった場合や、急迫した状況の場合には、借主が修繕をしても貸主から責任を追及されません。また賃借物件を譲渡した場合、借主は新しい所有者に対して家賃を支払うことが明確化されました。
賃貸借終了時のルールでは、原状回復義務の範囲、敷金の返還時期・返還範囲が明確化されました。原状回復や敷金についてはこれまで多くのトラブルが発生していましたが、この改正により、さらなる借主の権利の保護に期待できます。
賃貸借契約から生ずる債務の保証に関するルールでは、保証人の限度額が設けられました。子どもがアパートを借りる際に、親が保証人になるケースが多いですが、家賃滞納などが発生した場合、どれだけの支払いがあるのかは不明です。そのため、保証人が高額な債務を負わないよう、限度額が設けられることになりました。
このように、2020年には賃貸借契約において大幅にルールが見直され、この対応に追われた不動産営業マンも少なくありません。知識不足によるトラブルを防止するためにも、事前に内容をチェックしておく必要があるといえます。
先ほど述べたとおり、2020年の民法改正によって賃貸借契約のルールが変わりました。それでは、2022年の民法改正においては、賃貸借契約においてどのような点が変更になったといえるのでしょうか。
繰り返しお伝えしているように、成人年齢の引き下げにより18歳からアパートやマンションを借りられるようになりました。これにより、未成年者が一人暮らしをする際に必要だった親権同意書の提出や、署名捺印が不要となります。また、親の同意なく契約をすることも可能ですが、これは原則取り消すことができません。
しかし、18歳や19歳が賃貸物件を借りようとした際、チェックされるのは支払い能力です。社会人として収入があったとしても不十分な場合もあり、トラブルを避けるためにも親や親族などへの確認書を求めたり、親や親族が契約をしたりすることが考えられます。家賃滞納などのトラブルを防ぐには、その都度柔軟な対応が必須といえます。
成人年齢の引き下げは、すでに成人を迎えている人には一見無関係のようにも思えるニュースです。しかし不動産仲介業者の場合、18歳や19歳でも親の同意なしで賃貸物件を借りられるため、より慎重に考えて契約の有無を決める必要があります。
また、民法だけでなく今後もさまざまな法改正により従来のルールが変わる可能性があります。世の中の動きを把握し、今後の仕事や生活にどのような影響があるのかを押さえておきましょう。