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イノベーター理論とキャズム理論とは?商品普及のカギを説明

記事公開日:2022/08/11

最終更新日:2024/01/11

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自身のキャリアアップのために、「営業の成績をもっと伸ばしたい…」と考えている営業マンも多いのではないでしょうか。自身の目標を達成させるためには、緻密な戦略を立てて顧客にアプローチする必要がありますが、そこにマーケティングの知識を活用して結果を出している方も少なくありません。

今回は、人々の特性を研究したマーケティング理論である「イノベーター理論」と「キャズム理論」について解説します。また、実際の活用例もいくつか紹介していきますので、ロジカルな営業戦略を立てたいと考えている人はぜひチェックしてみてください。

イノベーター理論とは

イノベーター理論とは、新商品やサービスが市場に出回った際の普及率を表す理論のことです。新商品やサービスが市場に出た際、それに対する人々の反応はさまざまですが、これは単に人の趣味・嗜好の結果として片づけられるものではありません。どんな反応をする人が何パーセントいるのか細かく分析し、そこから効果的なアプローチの手法を探っていく必要があります。

イノベーター理論は、1962年にアメリカのエベレット・M・ロジャース教授によって提唱されました。この理論によると、消費者のタイプは5つのカテゴリーに分類できるとされ、商品やサービスが市場に出てからの時間によってどのカテゴリーに入るかが決定します。

普及学ともいわれているイノベーター理論は、新商品やサービスを市場に普及させるためのアプローチとして有効です。消費者層に合わせた適切な対応を取ることで、商品・サービスの普及率を高めることができます。

イノベーター理論におけるタイプと特徴

イノベーター理論が提唱する5つの消費者タイプは以下のとおりです。

  • イノベーター(革新者)
  • アーリーアダプター(初期採用者)
  • アーリーマジョリティ(前期追随者)
  • レイトマジョリティ(後期追随者)
  • ラガード(遅滞者)

上記は、新製品やサービスの購入・導入が早い順に並んでいます。それぞれのタイプについて、詳しく見ていきましょう。

イノベーター理論のタイプ①:イノベーター(革新者)

新商品やサービスに最初に反応するのが革新者と呼ばれるイノベーターです。情報収集能力が高いイノベーターは、市場に普及していない商品やサービスにも興味を持つ傾向があります。リスクを恐れず新しいものにチャレンジする好奇心を持っており、比較的年齢層が若く経済的に余裕のある人が多いのが特徴です。

たとえば、iPhoneが世の中に普及する前に購入した人はイノベーターといえるでしょう。iPhoneの普及前は製品の細かな特徴やメリットは明確になっていませんが、「新しいもの」という点だけに魅力を感じ、購入するかどうかを決めています。

分析結果によると、市場全体の割合に対しておよそ2.5%の人がイノベーターとされています。このタイプにアプローチするには、「最新」や「業界初」などのワードがポイントになるでしょう。

イノベーター理論のタイプ②:アーリーアダプター(初期採用者)

アーリーアダプターは、イノベーターの次に新商品やサービスに目をつけるタイプです。常にトレンドに敏感ともいえるので、創造性に優れる他、新しいものを積極的に取り入れる傾向があります。購買行動を誘導するオピニオンリーダーやインフルエンサーの多くは、このアーリーアダプターに位置することが多いです。

市場全体の割合に対して、アーリーアダプターの割合は約13.5%です。また他の層に与える影響が大きいため、特に意識してアプローチする必要があります。

実際にアプローチをする際には、単に商品・サービスが新しいというだけでなく、他の製品と比較したメリットや流行している理由を訴求することが重要です。顧客によって訴求ポイントは異なるため、顧客層を分析してデータを揃える必要があります。

イノベーター理論のタイプ③:アーリーマジョリティ(前期追随者)

アーリーマジョリティとは、新商品やサービスの情報は知っているものの、導入に対して慎重な層のことを指します。このタイプは市場全体の約34%を占めているため、市場全体に与える影響は大きいです。

また、アーリーマジョリティはアーリーアダプターから強い影響を受けて購入を決めることが少なくありません。数の多いアーリーマジョリティの購買行動が市場の普及に影響するため、橋渡しの意味を込めてブリッジピープルとも呼ばれます。

そのため、商品やサービスのヒットは、アーリーマジョリティに気に入られるかどうかがかかっています。このタイプの人は「トレンドに乗り遅れたくない」という気持ちが強いため、今話題になっていることや、インフルエンサーや芸能人が使っていることを訴求することで強いアプローチに繋がるでしょう。

イノベーター理論のタイプ④:レイトマジョリティ(後期追随者)

レイトマジョリティは、新商品やサービスに積極性が見られない層のことです。新商品・サービスに懐疑的なため、納得いく理由がない限り導入にいたらない人がほとんどです。上記で紹介した3つのタイプと異なり、商品やサービスのメリットよりもリスクや変化を避ける傾向にあります。

レイトマジョリティは、アーリーマジョリティと同様に市場全体の約34%を占めます。もし顧客がレイトマジョリティだった場合、商品の普及率を高めてリスクよりもメリットが上回るような実績を増やすのが先決です。

イノベーター理論のタイプ⑤:ラガード(遅滞者)

遅滞者とも呼ばれるラガードは、市場の中でも保守的な層といわれています。ラガードの層の方は、新商品やサービスが普及しても、「持っているのが当たり前」のレベルに達するまで導入をすることはありません。新しいものを受け入れたくないと感じる人も多く、ラガードに新商品やサービスを提供するのは難しいといえるでしょう。

ラガードは、市場全体の約16%を占めるといわれています。ラガードにアプローチする際は、商品やサービスの新しさをアピールするのはかえって逆効果です。商品が定番になっていることや長い歴史を持っていること、他の新しい製品として安心感が高いことなどがキーワードになるでしょう。

「アーリーアダプター」が商品普及のカギを握る

商品普及のカギは、新商品やサービスに興味を持つ感度が2番目に高い「アーリーアダプター」が握っています。アーリーアダプターは市場に約16%と少なめですが、インフルエンサーなど影響力の強い人がアーリーアダプターの層であることが多く、そこからの宣伝効果も見込めるからです。

特に、アーリーマジョリティ・レイトマジョリティの購入を導くのがアーリーアダプターの存在ともいわれています。これらの層を合計すると市場全体の半数以上になるため、アーリーアダプターは無視できない存在といわれているのです。

アーリーアダプターはトレンドに対する情報感度が高く、Webや書籍などを活用して多くの情報を収集する傾向が強いです。たとえば不動産の情報を集める場合、不動産ポータルサイトをくまなくチェックするため、営業マンはそれらの情報を充実させなければなりません。また、新築の物件や最新の設備にも興味を示すことが多いため、アーリーアダプターを攻略するには幅広い情報を集める必要があるといえます。

イノベーター理論とキャズム理論の関係

ここまで解説してきたとおり、イノベーター理論ではアーリーアダプターが商品普及の大事なポイントになりますが、そこに異論を唱えたのがアメリカのジェフリー・ムーアです。ここからは、イノベーター理論に一石を投じているキャズム理論について解説していきます。

キャズム理論とは

アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にはキャズムと呼ばれる深い溝があり、市場開拓のためにはその溝を越える必要があるということを唱えたのがキャズム理論です。新商品やサービスがすぐに消費者全体から受け入れられないのもこのキャズムが原因とされています。

キャズムを乗り越えるためには、主に3つの解決方法があるといわれています。

  • アーリーマジョリティを中心にアプローチする
  • 使いやすさに重点視する
  • 市場を狭くする

先述したように、市場全体の約34 %を占めるアーリーマジョリティは、市場全体に与える影響が大きい存在です。そのため、市場開拓を狙うにはアーリーマジョリティへのアプローチが効果的です。

アーリーマジョリティの特徴のひとつとして、イノベーターやアーリーアダプターのようにサービスや商品に対する知識が多くありません。そのため、アーリーマジョリティが求めるのは「使いやすさ」といわれています。アーリーマジョリティへのアプローチをメインに行いたい場合は、使いやすさを前面に押し出す工夫をしてみましょう。

また、キャズムを超えるためには市場の大きさを見直す必要もあります。たとえば、市場を狭くすればその中で多くのシェアを取ることができます。狭い市場のシェアを獲得したら隣の市場に乗り込むことなどの施策を進めれば、結果的に大きな市場のシェア獲得に繋げることができるのです。

キャズムが発生する主な原因

キャズムが発生する主な原因には、アーリーアダプターとアーリーマジョリティのギャップにあるといえます。誰も使っていない製品を先んじて使いたいアーリーアダプターと、多くの人が使っていて信頼度の高い製品を使いたいアーリーマジョリティでは判断材料がそれぞれ異なります。お互いの価値観が違うため、同じやり方でアプローチしても大きな効果は得られないのです。

キャズムを超えるにはアーリーアダプターとアーリーマジョリティの双方に刺さる戦略を練る必要があるといえるでしょう。

イノベーター理論の活用方法

顧客の特徴を把握した後は、実際にどのようなアプローチをするのかを考えましょう。ここからは、イノベーター理論の活用方法や考える際のコツを紹介していきますので、気になるものがあればぜひ取り入れてみてください。

■イノベーター

誰よりも先に新しいものを使いたいと考えているイノベーターは、まだ市場に出ていない商品やサービスに関する情報をよくチェックしているといえます。イノベーターへアプローチするには、このような情報を発信している媒体を活用するのがおすすめです。プレスリリースを提供することで、直接的な訴求が叶います。

■アーリーアダプター

多くのアーリーアダプターは、他の消費者に対してレビューを行うことで、オピニオンリーダーやインフルエンサーになりたいと考える傾向にあります。そんなアーリーアダプターへ有効的なアプローチ方法は、訴求力の高いレビューをしてもらう工夫をすることです。使い方をまとめたコンテンツなどを用意すると、レビューをしてもらいやすくなるでしょう。

■アーリーマジョリティ

アーリーマジョリティの多くはアーリーアダプターの意見を参考にして購入するかどうか決めているため、アピールの場面ではインフルエンサーを活用すると良いでしょう。アーリーマジョリティに効果的な訴求ができれば、キャズムを超えてメインの市場に入っていくことができます。

■レイトマジョリティ

レイトマジョリティを攻略するには、商品やサービスの普及率や信頼性が重要です。実際の顧客の声や専門家の評価などを活用し、「これほど多くの人が商品・サービスを利用している」という事実を明らかにしましょう。

■ラガード

新しいものに興味がないラガードへは、新商品やサービスのアプローチをしてもあまり効果が出ない傾向が強いです。コストのかかるマーケティングをしても無駄になってしまう可能性が高いため、どこまでアプローチするかを見極めなければいけません。場合によっては、早い段階で見切りをつけて他の層にアプローチすることも検討しましょう。

商品・サービスの普及にはイノベーター理論が重要

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新商品やサービスの普及率を表すイノベーター理論において、消費者のタイプは以下の5つに分類されます。

  • イノベーター
  • アーリーアダプター
  • アーリーマジョリティ
  • レイトマジョリティ
  • ラガード

特にアーリーアダプターが商品普及のカギを握るといわれていますが、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には大きな溝があるというキャズム理論も存在します。営業戦略を立てる際、この理論も考えないと失敗してしまうおそれがあるため、それぞれの特徴を理解したうえで今後の仕事に活かしていきましょう。

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この記事を書いた人

CHINTAI JOURNAL編集部は、営業活動に役立つ情報や業務効率化するための工夫をはじめとして、賃貸仲介業務に「おもしろさ」と「ライフハック」を提供します。

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