記事公開日:2022/06/16
最終更新日:2024/01/11
ビジネスでは「クレームは宝」といわれているものの、クレームを歓迎しているという方は少数派ではないでしょうか。人の数だけ考え方は異なるため、クレームをゼロにはできません。大切なことは、クレームにどのように対応し、今後どう活用するかです。
特に賃貸仲介営業においては、クレームに対する向き合い方や処理スピードにより、顧客に対するイメージがまったく違ってきます。的確な対応を行えば、逆に「できる賃貸仲介営業マン」と感じてもらうことも可能です。
今回は、クレーム対応の5つの心得とともに、手順や役に立つテクニック、賃貸仲介営業マンが経験するクレーム内容と解決方法についてご紹介します。クレームから学べることも多いので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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目次
クレームは、サービスや商品、接客態度などが顧客の期待を下回ったときに発生します。クレームといっても、商品不良による不満や、言いがかりや脅しのような内容まで、その種類はさまざまです。
クレームの種類は主に3つあります。
クレームを大きくしないよう、それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
一般的なクレームは、顧客が商品やサービスに不満を感じたときに、通常の問合せに近い内容でクレームを入れるものです。業種や業界によってクレームの内容はそれぞれ異なりますが、どのようなクレームにおいても速やかに対応するのがベストとされています。
たとえば、インターネットで商品を購入した場合には、以下のようなクレームが発生します。
また、不動産賃貸営業であれば、「予約来店なのに長時間待たされた」「問合せへの対応が遅かった」といったクレームが考えられます。
これらのクレームは、「頼んだ商品を届けてほしい」「スマートな対応をしてほしい」という顧客の期待が含まれていることがほとんどです。正当な理由で意見を伝えているため、適切な対応をすれば信頼が生まれ、企業のファンになってもらえる場合もあります。
悪意のあるクレームは、土下座などの脅迫や不当な金銭の支払いなどを要求してくるものです。「長時間待たされたから土下座をしろ」「SNSに書き込まれたくないなら誠意を見せろ」など、たとえ企業側に落ち度があったとしても、法的に問題のある要求や度を超えた要求などに対しては、毅然と断ることも大切です。
すべてのクレームに納得して、謝罪をするのは避けましょう。
常識の範囲から外れたようなクレームも少なくありません。「お店の看板を蹴ってけがをしたから治療費を払え」「どうして無料にならないのか」など、的外れや八つ当たりともいえる内容です。
対応が難しいことが多いですが、後述する心得や手順に沿って対応すれば、解決に導くこともできます。顧客からのクレームがどのような種類かを理解し、冷静に対応していきましょう。
クレームは相手が感情的になっており、場合によっては激しい怒りをぶつけられることもあります。怒られて萎縮してしまったり、不機嫌な対応をしたりすると、二次クレームへと発展してしまうおそれがあります。クレームを受ける際には、以下の3つを心得えましょう。
それぞれ詳しく説明していきます。
顧客からクレームを受けた際は、相手の話をさえぎらないようにします。誰しも話の途中でさえぎられるのは不快なものです。
顧客の話に理不尽な点を見つけ、こちら側の言い分が正しいと感じても、「でも」「しかし」など、顧客の話をさえぎってしまうと相手はさらにヒートアップしてしまいます。顧客の不満やクレームの内容などを最後まで吐き出させるためにも、話はさえぎらずに一通り聴きましょう。
クレーム対応は誰でも嫌なものです。早くクレーム処理を終わらせたいからと適当な相づちを打ってしまうと、それが相手に伝わりさらに怒りを広げてしまいます。顧客の意見に耳を傾けながら、誠意を持った対応を心がけることが大切です。
電話で対応する場合は、聴く姿勢として相づちが重要です。黙って聴いたままでは、顧客は「本当に話を聴いているのか」「話を聴いてくれない」と感じてしまいます。相づちや頷きを丁寧に行い、真剣に話を聴いていることを示しましょう。
対面の場合は、メモを取りながら適度に相づちを挟むと、「話を聴いてくれている」「話を理解してくれている」という姿勢が相手に伝わります。内容を問わず、クレームをつける理由に共感することで、心がこもった誠意のある対応へとなるのです。
的外れや八つ当たりのようなクレームは、「本当かな?」と疑ってしまうような内容もあります。しかし、「本当ですか?」「そんなことはありません」と内容を否定するのは避けましょう。
顧客は疑われたことに対して不愉快になり、場合によっては二次クレームに発展するおそれがあります。信じられないようなクレームでもまずは話を受け入れ、その後に事実確認を行いましょう。
顧客は「自分の問題が解決される様子を知りたい」と考えています。そのため、もしクレームを受けた後は、顧客に対してこまめに進捗報告や連絡を行うことが重要です。
進捗報告や連絡を通じて、顧客に問題解決に向けた取り組みが進んでいることを伝えることができます。自分の問題に対して真剣に向き合ってもらえていることを感じれば、大きな不満も持たなくなるでしょう。
こまめな連絡は信頼関係の構築にも役立ちます。自分の声が届いていることを実感すれば、「信頼できる不動産会社」と認識をあらためてもらえる可能性が高まります。
クレームの大小にもよりますが、問題が大きくなる可能性のあるクレームの対応には、それなりのテクニックが必要になります。以下の内容を参考に、顧客への進捗報告を行ってみてください。
クレームの解決に向けた目標を明確に設定しましょう。目標は具体的で、なおかつ達成可能なものであることが重要です。
顧客との連絡頻度を確定し、それを守るようにしましょう。具体的な連絡スケジュールを伝えることで、対応の進捗状況を把握してもらえるようになります。
進捗報告は具体的でわかりやすい内容にすることが重要です。問題解決の具体的な手順や取り組み、現在の状況などを適切なタイミングで伝えましょう。
顧客との約束や取り決めは原則守るようにしましょう。もし何らかの事情で難しくなる場合、事前に連絡し、具体的な理由と今後の対応予定を端的に伝えましょう。
進捗報告や連絡の際に、顧客への感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。顧客はクレームを伝えたことで時間やエネルギーを使っていますので、その労力に対して感謝の意を示すことは大切です。
クレーム対応において、思い込みで説明をすることは避けるべきです。思い込みによる説明は、顧客の問題解決に寄与せず、むしろ状況を悪化させる可能性があります。
以下は、思い込みで説明をしないようにするためのポイントです。
問題解決のためには客観的な情報を収集し、事実に基づいた説明を行うことが重要です。顧客の話の内容だけでなく、関係者の話や証拠資料なども考慮して考えましょう。
問題の原因や解決策についての仮説を立て、それを検証することも大切です。思い込みで仮説を説明する前に、客観的なデータや証拠を確認しましょう。
もし思い込みで間違った説明をした場合は、速やかに謝罪し、正しい情報を提供することが求められます。誠意を持って問題解決に向き合い、顧客の信頼を取り戻す努力をしましょう。
単独で判断せず、チーム内の意見交換を行うことも大切です。複数の視点や経験を踏まえた意見を取り入れることで、より客観的な判断を行えます。
クレームの基本的な対処は、以下の手順に沿って行いましょう。
想定外のこともあるかもしれませんが、基本に沿って実践してみてください。
まずは顧客に対して謝罪をします。ただし、クレームだからといって、すぐに「申し訳ございません」と謝罪するのは避けましょう。何に対するクレームなのか詳細がわかっていない中で謝罪をすると、全面的に非を認めたことになります。
上記のように、「不快な思いさせたこと」「手間を取らせてしまったこと」など、何に対してのお詫びなのかがわかるようにします。ただ「申し訳ございません」を繰り返すだけでは誠意が伝わりません。顧客が何に対して怒っているのかを汲み取り、顧客の気持ちに寄り添ったお詫びをすることで、相手の怒りも静まります。
顧客の話を一通り聴き終えたら、質問を重ねながら内容を整理します。たとえば入居手続きの連絡がないことへのクレームには、担当者の連絡ミスなのか、それとも連絡をしたのに顧客に届いていなかったのかなど、どの時点でクレームの原因になったかを確認します。
事実確認をしている間は顧客を待たせることになるため、時間がかかるようであれば折り返し電話をすることを伝え、一度電話を切りましょう。このとき、いつまでに折り返しをするのか、明確な時間を伝えることが大切です。
クレームの事実確認ができ、こちらに非があった場合には、あらためて謝罪をして代替案や解決策を迅速に提示します。解決策は一方的に提案するのではなく、顧客が求めているものや意向を汲み取ることが大切です。
代替案を2つほど用意して、顧客に選んでもらうのも有効です。なお、顧客の勘違いなどでこちら側に非がなく、要望に応えられない場合は、専門用語などを並べずにわかりやすい言葉で伝えるように心がけましょう。さらに、相手の誤りを指摘せずに、共感を持って話すように工夫するのも大切です。
解決策に納得してもらえた場合は、もう一度お詫びをして感謝の気持ちを伝えます。クレームは、商品やサービス、業務などの改善に繋がる顧客からのヒントでもあります。時間を割いて連絡をしてくれたことへ、心を込めて感謝の気持ちを述べましょう。
ここからは、最後に、クレーム対応で役に立つテクニックとポイントをご紹介します。
大事なポイントを押さえて、より顧客に寄り添った対応を行いましょう。
クッション言葉は、相手に断りや依頼、質問などをする際に、こちらの言葉を受け入れやすくしてもらう前置きのことです。クッション言葉を挟むことで、会話にやわらかい印象を与えられます。クレーム対応中では、顧客の情報を引き出すために使われます。
他にも、以下のようなクッション言葉があるので、会話に合わせて活用しましょう。
いくら言葉でお詫びや共感を示しても、声や表情、態度などが伴っていなければ、相手に誠意は伝わりません。声のトーンを落とし、聞き取りやすいテンポでゆっくりと話しましょう。このとき、萎縮して小声で話してしまうと顧客は余計に苛立ってしまうため注意が必要です。
また、表情や態度にも意識しましょう。表情は、無表情になったり微笑んだりせず、神妙な顔つきを保つのがベターです。座る場合はいすに背中をつけず、猫背にならないよう意識します。
電話でクレーム対応する場合、相手に表情や態度が見えないからといって、他の仕事をしながら片手間に話を聴くのはNGです。意外にも、このような態度・状況は電話越しでも相手に伝わります。対面・電話問わず、声や表情、態度まで意識して対応しましょう。
クレームの経緯を記録に残す際は、誰が見てもわかるように工夫することが重要です。記録の内容がバラバラだったり、要点をつかめていなかったりすると、原因や状況が正しく伝わらなくなってしまう可能性があります。原因や状況を間違って把握してしまうと、「そんなことは言っていない」とよりクレームが大きくなってしまうかもしれません。
メモを取る際には、5W1Hに沿って書くと整理された記録内容になるのでおすすめです。また、メモを取ることが難しい場合、スマホに録音して後で文字に起こしましょう。
先述のとおり、クレーム対応には謝罪とともに感謝も行うことが大切です。たとえば、商品の使用中に故障があった場合には、製造過程で問題が発生しているかもしれません。また、想定外の使い方によって発生したものであれば、注意を呼びかけることができます。
これらの気づきを与えてくれたことと、指摘の手間をかけたことに感謝を伝えてください。クレームを入れた顧客にとっては、企業に対して信頼が落ちている状態です。信頼回復に繋げられるよう、最後まで真摯に対応をすることが重要です。
最後に、入居候補者や入居者から出される主なクレームに対する解決方法を解説します。
店頭での物件紹介に関するクレームは、紹介する物件に対して、お客様が不満を感じた場合に起こります。クレームへの適切な対応によって、お客様の信頼を得ることができます。
お客様がクレームを伝えたら、まずは丁寧に聴く姿勢を示しましょう。相手の話を遮ることなく、何が問題であるのかをしっかりと把握します。そもそもお客様から物件に対する要望をヒアリングする段階で、誤った認識をしてしまったことが主な原因となります。
お客様からのクレーム内容を元に、具体的な問題点を特定します。
クレームの内容に対して適切な対応を行い、お客様の要望に合う物件の提示を行います。
物件見学(内見)に関するクレームは、お客様が物件を見学した際に不満を抱えた場合に起こります。内見は入居者の決定に影響を与える重要な段階であり、クレームへの適切な対応が求められます。以下は解決方法の手順です。
内見中にお客様が何を求めているのかを理解し、その意見を尊重します。物件に対する希望や不満をしっかり把握することで、適切な対応が可能となります。
内見の際には、物件に関する正確な情報を提供することが重要です。
お客様が物件見学に関してクレームを伝えた場合、その問題点を具体的に把握し、解決策や改善策を提案します。
お客様の要望に応えることができるよう、柔軟な対応が求められます。
クレームを受けた後は、必要に応じて追加の案内やフォローアップを行います。お客様の不安や疑問を解消し、納得してもらえるようサポートすることが大切です。
騒音に関するクレームは非常に多くあります。入居者からの騒音に関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
入居者が騒音を訴えた場合、まずは入居者の話をじっくりと聴きましょう。騒音がどのような状況で発生しているのか、具体的な状況を把握することが重要です。
続いて、騒音の原因を特定し、解決策を提案します。たとえば、隣人の騒音であれば、丁寧に注意を促すことや、建物管理会社に連絡して対応してもらうことが考えられます。適切な解決策を入居者に伝え、問題解決に向けた行動を取りましょう。
入居者へのルールの周知や注意喚起、隣人間の配慮を促すなど、継続的な騒音管理を行うことで、クレームの発生を減らすことができます。
水漏れは、生活環境に大きな影響を与える問題です。水漏れに関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
まずは原因を特定し、必要な修理や補修の方法について検討しましょう。水漏れが建物の設備や配管に起因する場合は、建物のオーナーや管理会社との調整を行いながら専門業者に依頼してください。
水漏れによって、入居者の生活が著しく不便になる場合は、代替住居の提供や生活環境の保全を考えましょう。一時的な宿泊施設の手配や、必要な家具や生活用品の提供など、入居者が快適に暮らせる環境を整えることが大切です。
水漏れの再発を防ぐために、予防策の提案を行いましょう。たとえば、適切な定期点検やメンテナンスの実施、水回りへの注意喚起などです。
ゴミ出しに関するクレームは、生活環境や衛生面に関わる重要な問題です。ゴミ出しに関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
まずは、入居者に対してゴミ出しのルールを明確に伝えましょう。ゴミ出しの日や時間、分別方法などを入居者に周知し、遵守してもらうよう促すことが求められます。
ゴミ出しの問題が、特定の入居者からのものである場合は、その入居者に対して直接的に指導やアドバイスを行います。適切なゴミ出し方法やルールを再確認し、改善を促すことが重要です。
共有スペースや廊下などで、ゴミが放置されるなどの問題がある場合は、入居者全体への注意喚起や清掃の強化を行いましょう。定期的な清掃やゴミ箱の設置など、共有スペースの管理を徹底することで、ゴミ出しの問題を改善できます。
設備の不良は、入居者の生活の快適さに大きな影響を与える問題です。設備不良に関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
設備の不良に関するクレームがあった場合は、建物のオーナーや管理会社と調整を図りながら、専門業者に修理や点検を依頼しましょう。また、入居者に修理の進捗状況を適宜報告し、安心感を与えることも重要です。
設備の修理に時間がかかる場合や、一時的な対応が必要な場合は、入居者に代替手段を提案しましょう。「同等の設備を提供する」「近隣の施設を利用できるよう案内する」など、入居者の生活のためにできることは多々あります。
設備の不良を予防するために、建物のオーナーや管理会社と相談し、定期的なメンテナンスや点検を実施してもらいしょう。また、入居者に対しても設備の適切な使用方法や注意事項を提供し、トラブルを未然に防ぐよう促すことも必要です。
異臭は、入居者の快適な生活を妨げる問題です。異臭に関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
異臭の原因を特定し、対策を実施しましょう。たとえば、「排水管の詰まり」「生ゴミの放置」などが考えられます。原因に応じて適切な措置を講じ、異臭の解消を図りましょう。
異臭の問題が、特定の入居者に関連している場合は、その入居者に対して注意喚起や協力の要請を行います。たとえば、生ゴミの適切な処理方法の説明や、排水溝の清掃に関するアドバイスなどです。入居者の協力が必要な場合は、高圧的な態度にならず、問題解決に向けて協力を呼びかけるようにすると良いでしょう。
異臭の問題が、建物全体に関連している場合は、建物のオーナーや管理会社に環境改善についての提案を行います。具体的には、換気の強化や生ゴミの専用容器の設置などが挙げられます。
退去時の敷金に関するクレームは、入居者との間でよく起こります。退去時の敷金に関するクレームには、以下の解決方法を試してみましょう。
まずは、賃貸仲介会社と入居者との間で取り交わした媒介契約書(一般・専任・専属専任)や、オーナーと入居者との間で取り交わした賃貸借契約書を確認しましょう。その後、敷金の返還条件や差し引き項目などを契約書と照らし合わせ、明確な根拠に基づいて対応します。
次に、入居時の部屋の状態と退去時の状態を比較検討しましょう。入居時の写真やチェックリストなどを活用して損傷や汚損の有無を確認し、相場に合った修繕費を計算します。
公正な評価を行った後は、入居者に対して適切な説明を行います。入居者に納得してもらえるよう、敷金の差し引き項目や修繕費の内容をわかりやすく説明してください。
どんなクレームにも、顧客には「クレームをつける理由」があります。なかには、まったく関係のない内容でクレームを受けてしまうこともありますが、じっくりと話を聴いて相手に共感をすれば、ほとんどのクレームは解決します。
また、誠意を持ってクレーム対応をすることで、クレーマーからファンに変えることも可能です。クレームはネガティブな印象がありますが、企業の成長や改善に直結する財産でもあります。クレームをポジティブなものと意識を変えれば、ただ謝罪をするだけの対応から脱け出せるかもしれませんので、今回ご紹介した心得やテクニックなどを参考にし、クレームをチャンスと捉えてみるようにしてください。
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