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【フォーマットあり】覚書作成で盛り込むべき内容やポイントについて徹底解説!

記事公開日:2022/06/23

最終更新日:2022/09/18

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契約業務では「覚書」の書類を作成し、当事者間で管理しなければなりません。各書類との違いを把握しなければ、書類作成の目的や役割が不明なまま業務を進めてしまうおそれがあります。曖昧な知識ではトラブル発展のリスクがあるため、事前に基礎知識を頭に入れておきましょう。

今回は覚書とはどのような書類なのか、他の書類との違いや盛り込む内容などについて解説します。実際に覚書を書く際のポイントについても触れているので、実際の契約シーンをイメージしながらチェックしてみてください。

そもそも覚書とは?

覚書とは、「契約内容について双方で合意した」ことを証明する書類です。覚書を契約者間で保管することにより、認識の齟齬や契約上のトラブルを防げます。

さらに、契約内容に変更があった場合も、覚書に変更内容や変更期日を記します。安易な契約変更を防げる他、変更のたびに新たな契約書を用意する手間もかかりません。また、覚書には法的効力があるため、遵守されない場合は契約不履行となる可能性があります。

覚書と契約書の違い

覚書と契約書の違いについて、以下の表で見ていきましょう。

【覚書と契約書の違いについて】

覚書契約書
記載内容契約へ合意する旨具体的な契約内容(支払い条件や引渡し時期など)
役割と特徴・契約意思の確認
・契約不履行や契約内容の強引な変更を防ぐ
・契約の変更内容を記す
・取引の円滑化
・契約不履行などのトラブルを防ぐ
・裁判へ発展した際の証拠書類
法的効力ありあり

契約書は契約内容を明確に記す書類なので、契約時に提示しておけば後に起こりうるトラブル(契約不履行や紛争)を防げます。一方、覚書は契約書を補佐する役割があり、互いの意思が合致したことを示すための書類です。定義と役割がそれぞれ異なるため、各書類の違いを理解したうえで利用しましょう。

覚書と念書の違い

覚書と念書の違いは次のとおりです。

【覚書と念書の違い】

覚書念書
記載内容契約へ合意する旨契約内容の確認事項
役割と特徴・契約意思の確認
・契約不履行や契約内容の強引な変更を防ぐ
・契約の変更内容を記す
・契約締結を証明する
・一方からのみ差し入れる
法的効力ありなし

念書は「契約締結を証明」するための書類であり、確約を目的としています。送られた相手は契約を守る義務があるものの、念書そのものに法的効力はありません。

見やすい&読みやすい覚書を書くポイント

ここでは見やすい&読みやすい覚書を書くポイントを3つ解説します。以下のポイントを押さえて、双方が扱いやすい覚書を作成しましょう。

<覚書を書く際に押さえておくポイント>
  • 当事者の「甲」「乙」を間違えない
  • 変更内容がある場合は正しく記載、明示する
  • 当事者間で決めた合意事項を確認する文書を意識する

当事者の「甲」「乙」を間違えない

覚書を書く際は、当事者を指す「甲」「乙」の略称を間違えてはいけません。契約書類では、当事者の名称を甲、乙などの略称で記載します。

以下のように、当事者を甲・乙に当てはめて書類上の登場人物を明確にしましょう。

<略称を当てはめる例>
  • 株式会社〇〇(以下、甲という)
  • 〇〇株式会社(以下、乙という)

以降の文章では、当事者の名称を甲・乙で記載します。新たに覚書を作成する場合も、当てはめた略称はそのまま使用しましょう。誰が見ても書類上の登場人物を把握できるよう配慮することが大切です。

変更内容がある場合は正しく記載・明示する

契約内容に変更がある場合は、その旨を記載・明示しなければなりません。具体的な変更内容と期日を記載して、「どの部分に双方が同意したのか」を明確化しましょう。

また、一方的に契約を変更して覚書を作成したとしても、相手の同意が得られていなければ法的効力はありません。事前に話し合いの場を設け、相手方の同意を得てから契約内容の変更を行う必要があります。

当事者間で決めた合意事項を確認する文言を入れる

覚書を作成する際は、当事者間で決めた合意事項を確認する文言を入れましょう。契約内容や変更箇所を記載しただけでは、「契約へ合意した」という旨が証明できません。

誰が・何を確認して合意したのかを明記することで、トラブル発生の際は証拠書類としても活用できます。契約不履行への抑止力としても働くため、覚書作成時は「今回の覚書にある○○という内容について相違はありません」などの文言を記載しておきましょう。

覚書作成で盛り込むべき内容

次に、覚書作成時に盛り込むべき内容を4つ解説します。法的効力の有無に関わる要素も含まれているので、作成の際は参考にしてみてください。

表題

覚書には表題を記載して、何の契約に関する書類なのか明確にしましょう。表題はあくまでもタイトルのような扱いなので、以下のような簡潔な書き方でも問題ありません。

<表題の記載イメージ>
  • 〇〇の契約に関する覚書
  • 覚書

表題そのものに法的効力は働かないものの、内容とかけ離れた表題は避けましょう。覚書を確認する際、表題と内容が異なると誤解や混乱を招くおそれがあります。

前文

前文は、本文(合意内容)の概要や覚書の目的などを明確化するために記載します。以下のポイントを押さえて、前文を作成しましょう。

<前文を記載するポイント>
  • 当事者を明確にする(当事者の名称を甲、乙とする)
  • 契約や取引内容を簡潔かつ明確に記載する
  • 覚書作成へ至った経緯も含める

前文に決まった様式はありませんが、書き方は慣行化されています。書き方の例については後述するので、覚書作成時は参考にしてみてください。

合意内容

合意内容では、「何の契約に対し、誰が・いつ合意したのか」を明記します。以下のポイントを押さえて、合意内容を記載しましょう。

<合意内容を記載するポイント>
  • 内容に具体性を持たせる(甲、乙は○○へ同意したなど)
  • 誰が読んでも理解できる内容にする(後に確認しても齟齬がない)
  • 契約内容を変更する際は変更箇所と変更日を明記する

合意内容が明確でない場合、トラブル発生時は法的効力のある書類として認められないリスクがあります。合意内容は法的効力の有無に関わる重要な要素なので、曖昧な解釈が成立する内容は避けましょう。

日付・署名・捺印

覚書には日付と署名・捺印も記載して、法的効力を担保します。各項目を設ける際の注意点は次のとおりです。

<日付・署名・捺印を設ける際の注意点>
  • 日付:署名と捺印を行う日付を記載する
  • 署名+捺印:契約の当事者が署名+捺印する項目を設ける

覚書は契約へ合意したことを示す書類なので、契約締結日ではなく覚書にサイン(署名+捺印)した日付を記載しなければなりません。たとえば不動産仲介業者の場合、マンションの売買契約日をそのまま記載してしまうといったケアレスミスも少なくありません。また、署名と捺印がなければ双方で契約内容に合意したことを示せないおそれがあるため注意しましょう。

覚書を書くうえで参考にしたいフォーマット

家賃の改定を例に覚書のフォーマットを紹介するので、作成時は参考にしてみてください。

【覚書のフォーマット】

表題賃料改定に関する覚書
前文賃貸人〇〇(以下、甲という)と賃借人〇〇(以下、乙という)、乙の連帯保証人〇〇(以下、丙という)は、 〇年〇月〇日付け(アパート賃貸借)契約書 第〇条(賃料) に関して以下のとおり、改定することに合意する。
合意内容(変更内容)第〇条(改定の内容) 賃 料 金〇〇〇〇円/月と改定する。
第〇条(改定の期日)〇年〇月〇日より、第〇条の賃料に改定する。〇年〇月末日を期限とする〇月分の賃料支払いから上記金額が適用される。
以上、甲乙丙の間で賃料改定へ合意する証として、 本書3通を作成し、甲乙丙それぞれ署名捺印のうえ各1通を保有する。
日付〇年〇月〇日

賃貸人(甲)住 所
会社名              社印
氏 名        印(自署又は記名/捺印)
賃借人(乙)住 所
氏 名        印(自署又は記名/捺印)
連帯保証人(丙)住 所
氏 名        印(自署又は記名/捺印)

各項目を設ける際は先述した盛り込むべき内容をチェックして、当事者が理解しやすく法的効力のある覚書を作成しましょう。書式や様式は具体的に定められていませんが、社内で決められたフォーマットがある場合はそちらを参照してください。

覚書の書き方を押さえて余計なトラブルを防ごう

覚書は、契約上のトラブル回避や契約上の法的効力を高めるために作成する書類です。書き方を十分に理解しなければ法的効力が損なわれるおそれがある他、意図しない契約内容へ変更されるリスクもあります。

書き方のポイントを押さえて、契約上のリスクを軽減させましょう。

<覚書を書く際のポイント>
  • 当事者の「甲」「乙」を間違えない
  • 変更内容がある場合は正しく記載、明示する
  • 当事者間で決めた合意事項を確認する文書を意識する

覚書作成の際は合意内容や日付・署名(捺印)に注意が必要です。これらは法的効力の有無に影響するため、一つひとつ確認しながら覚書を作成してみてください。

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この記事を書いた人

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