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賃貸住宅の火災保険は必須?加入すべき理由や補償外の損害とは?

記事公開日:2022/10/06

最終更新日:2024/01/11

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「火災保険」は、賃貸物件の入居者+大家さんを災害による損害のリスクから守る重要な保険です。入居希望者から「なぜ加入しなければならないのか?」「加入の必要はない」などの質問・要望があった際、リスク予防の観点から丁寧に説明できるよう準備しておきましょう。

今回は、火災保険に加入すべき理由や補償の範囲について解説します。また、火災保険の種類についても解説しているので、理解を深めるためにもチェックしてみてください。

賃貸住宅に住むために火災保険に加入する必要はある?

賃貸物件に住むうえで、火災保険への加入は義務化されていません。ただし、賃貸物件によっては加入が必須条件の場合もあるので、入居希望者には加入の有無についても必ず伝えましょう。

そもそも火災保険とは、火災などの災害による住宅の損害を補償する保険です。火災保険という名称ですが、対象となるのは火災のみではありません。たとえば、以下のような災害による損害も火災保険が適用されます。

<火災保険の対象となる例>
  • 火災:火事による被害
  • 水彩:洪水や高潮、土砂崩れなど
  • 風災:台風や旋風、防風など
  • 雪災:積雪による建物の破損や事故な
  • 落雷:落雷による被害
  • ひょう災:あられ、ひょうなどによる被害
  • 破裂や爆発:カセットコンロやボンベなどが爆発することで受けた被害
  • 水濡れ:給排水設備の故障により受けた被害
  • 盗難:盗難によって住宅や家財などが受けた被害(屋外に家財がある場合は対象外となるおそれがある)
  • 物体の飛来や倒壊:住宅外部からの物体によって受けた被害(自動車事故による住宅の損傷など)

※上記はあくまでも例なので、実際の補償内容は各保険会社の保険商品を確認してください。

賃貸住宅における火災保険へ加入すべき理由

賃貸物件へ入居する際は、火災保険に加入した方が安心です。入居希望者から「火災保険に入りたくない」「保険はいらない」などの要望があった際、具体的になぜ必要か簡潔に説明できるよう、加入すべき理由を押さえておきましょう。

加入すべき理由①:大家さんに対する原状回復義務を負っている

賃貸物件の入居者は、大家さんに対して原状回復義務を負っているため、火災などで損害を出してしまった場合は原状回復費用を支払わなければなりません。法律上(失火責任法)、火災を起こした本人への損害賠償請求はできない(重大な過失を除く)とされていますが、契約書には原状回復に関する記載があります。

原状回復義務とは、入居者の故意・過失・善管注意義務(注意を払って使用する)違反などによって住宅の価値が減少した場合、入居者が復旧しなければならない義務のことです。つまり、火災によって住宅が損害を受けた場合、入居者が損害賠償責任を負います。

※参考 国土交通省住宅局 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

場合によっては多額の賠償金を支払わなければならなくなるため、入居希望者にはこれらの理由も含めて火災保険への加入について説明しましょう。

加入すべき理由②:隣室・隣家からの火災被害に備える

隣室・隣家からの火災で家財への損害が出た場合、火元の住人へ損害賠償請求できないおそれがあります。前述したように、失火責任法によって必ずしも本人への損害賠償請求ができるとは限りません。一般的に、損害賠償請求ができるのは「重大な過失」があった場合のみです。

※参考 徳島市 「失火責任法(失火の責任に関する法律)について」

火災保険には、家財も対象とした保険商品があります。隣室・隣家からの火災被害に備えられるよう、火災保険の重要性を入居希望者に伝えておきましょう。

加入すべき理由③:下の階の居住者に与えた損害に備える

下の階の住人に何らかの損害を与えてしまった場合、損害賠償を請求されるおそれがあります。たとえば、損害の原因が入居者の不注意による漏水(キッチンの詰まりや洗濯ホースの外れなど)だった場合、その入居者が賠償責任を負います。

損害の大きさによって賠償額は変わるものの、保険未加入では全額自己負担となるリスクもあるため、入居希望者にはこうしたリスクも説明しておきましょう。

賃貸住宅における火災保険の種類

火災保険は主に3種の保険で構成されており、それぞれ補償の範囲や内容が異なります。入居希望者から火災保険に関する質問があった際、スムーズに回答できるよう次項から解説する各種保険の特徴を把握しておきましょう。

火災保険の種類①:家財保険

家財保険とは、その名のとおり「家財」の損害に対して補償が受けられる保険です。自然災害や人災などによって家財に損害が生じた際、新規購入するための費用が補償されます。補償額は保険商品によって異なるので、保険加入時は入居者自身に確認してもらいましょう。

以下は、家財保険の対象・対象外となるものの例です。

【家財保険の対象・対象外となるものの例】

対象・家具(ベッドやテーブルなど)
・家電製品(洗濯機や冷蔵庫、テレビなど)
・キッチン用品(調理器具や食器類など)
・PC
・書籍
・自転車
・生活用品
対象外・自動車
・有価証券
・動植物(ペットや観葉植物など)
・通貨
・カード類(クレジットカードやプリペイドカードなど)
・無体物(PCデータやプログラムなど)

上記以外に、生活上必要のないもの(骨董品やコレクターアイテムなど)は別途申告が必要です。申告していないと補償対象外となるリスクがあるので、入居希望者から説明を求められる場合はこうした注意点についても触れておきましょう。

火災保険の種類②:借家人賠償責任保険

借家人賠償責任保険とは、大家さんに対しての賠償責任が発生した際に補償される保険です。これによって、先述した「火災による損害に対し、原状回復費が請求される」などのリスクを予防できます。

以下に、借家人賠償責任保険の対象者と、補償を受けられるケース・受けられないケースをまとめましたので、こちらも参考にしてみてください。

<借家人賠償責任保険の補償対象者>
  • 被保険者本人
  • 被保険者の同居人
  • 賃貸借契約書で借主と記載された人
<補償を受けられるケースの例>
  • 寝タバコによって火災が発生した
  • 洗濯機の排水ホースが外れ、浴室や廊下に水漏れが発生した
<補償を受けられないケースの例>
  • 子どもの不注意による壁の破損
  • 部屋の模様替えで床や壁が破損

借家人賠償責任保険の補償範囲は、火災や破裂・爆発、漏水などによる損害がメインです。同居人が起因する損害、空き巣などによる損害は対象外であることを理解しておきましょう。

火災保険の種類③:個人賠償責任保険

個人賠償責任保険とは、日常生活で他人に損害を与えた際の損害賠償が補償される保険です。補償対象者は被保険者本人だけでなく、同居する親族も含まれます。

では、具体的にどのようなケースで補償が受けられるのか、補償対象となるケース・ならないケースを見ていきましょう。

<補償対象となるケース
  • 飼っているペットが他人にケガを負わせた
  • 子どもが遊んでいる最中に他人の車に傷をつけた
  • 自転車での走行中に他人にぶつかってケガを負わせた
<補償対象とならないケース>
  • 自然災害による損害賠償
  • 同居する親族への損害賠償
  • 心神喪失が起因する損害賠償

補償対象となるのは、あくまでも身体・財物などへの損害に対してのみです。そのため、名誉棄損・プライバシーの侵害などは補償対象となりません。

また、個人賠償責任保険は自動車保険などの特約として付帯できるので、他の保険と重複しないよう入居希望者には注意を呼びかけましょう。

賃貸住宅における火災保険で補償されない損害

賃貸物件における火災保険で補償されない損害は次のとおりです。

<火災保険で補償されない損害>
  • 経年劣化が原因で起こる損害
  • 地震による損害
  • 故意または重大な過失による損害
  • 免責金額未満の損害

火災保険は自然災害による損害を想定した保険です。そのため、経年劣化や故意による過失などは対象外と判断されます。

また、地震に関しては被害規模が大きすぎるため、火災保険では賄いきれません。もしこれらの被害に備えようとするなら、地震や噴火による損害を補償できる保険商品へ加入しなければなりません。

さらに、被害状況の査定を行った際、免責金額(自己負担しなければならない額)を超えていなければ保険金が下りないことにも注意が必要です。免責金額は保険商品により異なるため、入居希望者には事前に確認してもらうよう注意を促しましょう。

火災保険は必ず大家さんが指定する必要がある?

火災保険は、必ずしも大家さんが指定する必要はありません。また、入居者自身が希望する保険会社の商品を選んでもらうこともできます。

ただし、火災保険は種類によって補償範囲や内容が異なります。災害などで建物に損害が発生した際、加入した保険の内容によっては、大家さん・入居者が十分な補償を受けられない可能性も否定できません。

そのため、大家さんが希望する保険の条件を事前にヒアリングするか、入居希望者に加入してほしい保険商品をピックアップしておくと安心です。入居希望者から「保険を自分で選びたい」と要望があったとしても、大家さんの提示する条件とマッチしていれば特に問題なく許可を出せます。

火災保険への加入はメリットが多い

スーツ姿の男性の画像

火災保険への加入は義務ではないものの、大家さんと入居者のリスクを抑えるためには加入はほぼ必須といえます。もし入居希望者から加入を拒否されたとしても、未加入で起こりうるデメリットを説明し、慎重に判断してもらうようにしましょう。また実際に話し合う際には、火災保険で補償される損害・されない損害についても説明し、納得してもらうことが大切です。

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CHINTAI JOURNAL編集部は、営業活動に役立つ情報や業務効率化するための工夫をはじめとして、賃貸仲介業務に「おもしろさ」と「ライフハック」を提供します。

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