記事公開日:2022/08/25
最終更新日:2022/09/18
賃貸と持ち家の違いについて、これは基礎的な内容ではありますが、知識を持っていないと自信を持って商談に臨めません。顧客からの質問・悩みなどへ正確に回答できるよう、賃貸・持ち家に関する理解を深めていきましょう。
今回は不動産従事者として働き始めた人や、顧客との商談が不安な人に向けて、賃貸と持ち家、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
目次
賃貸と持ち家の主な違いは「支出の種類」です。具体的にどのような支出があるのか、以下の比較表から見ていきましょう。
【賃貸と持ち家の支出比較】
【賃貸物件】 | 【持ち家】 | |
初期費用 | ・敷金・礼金 ・仲介手数料 ・前家賃・保険料 (火災保険など) ・その他 (鍵の交換費や消毒費など) | ・頭金・手付金 ・仲介手数料 ・登記費用・保険料 (火災保険や団体信用生命保険など) ・税金 (印紙税や登録免許税など) |
ランニングコスト | ・家賃・共益費 ・駐車場料金 (借りる場合) ・契約更新料・保険料 | ・住宅ローン ・保険料・税金 (固定資産税や都市計画税など) ・修繕費 (メンテナンスやリフォームで必要な場合) |
特に大きな違いは住宅ローンの有無です。賃貸物件の場合、ランニングコストとして家賃を支払い続けなければなりません。一方、持ち家は住宅ローンを完済すると、支払い続けるのは税金や保険料のみです。
最終的なゴールの有無は、顧客のライフステージにも影響するポイントなので、商談の際はそれぞれの特徴を踏まえて話しましょう。具体的な金額については、「持ち家と賃貸の生涯コストはどのくらい?」で解説しています。
賃貸物件のメリット・デメリット・おすすめの人について解説します。顧客を案内するシーンを想像しながら見ていきましょう。
賃貸物件は自身の所有物ではないため、引越しや費用面における以下のメリットがあります。
賃貸物件は住宅ローンの支払いがなく、特定の物件へ住み続ける必要もありません。そのため、借主の状況に合わせて手軽に住み替えられます。
初期費用の面においても、持ち家のように高額な費用(頭金や手付金、仲介手数料など)の支払いがありません。敷金・礼金(家賃の1ヶ月分が目安)や前家賃などで済むため、コストを抑えられます。
※参考 国土交通省 住宅局 「平成30年度住宅市場動向調査報告書」
また、賃貸物件は設備や建物が古くなると、大家さんがリフォーム工事を行います。借主も修繕費を支払いますが、持ち家のように個人で全額支払うような多額の費用にはなりません。上記のように、賃貸物件は借主の状況に合わせた柔軟な対応が可能です。
賃貸物件では、設備・間取り・資産の面でのデメリットがあります。
賃貸物件は借り物なので、借主の希望に沿った設備・間取りを揃えることが難しいです。持ち家に比べて自由度が低く、希望条件の緩和を提案しなければならない可能性があります。
さらに、賃貸物件は借主の資産にはなりません。生涯にわたって家賃を支払い続けても、賃貸物件は大家さんの所有物件です。そのため、子どもへの相続や売買による資金づくりなどができないといったデメリットもあります。
また、将来的に家賃の支払いが滞るリスクがある場合、引越しを余儀なくされるおそれもあります。これらのデメリットも伝えたうえで、顧客との商談を進めましょう。
賃貸物件のメリット・デメリットを踏まえたうえで、おすすめの人について解説します。
賃貸物件であれば毎月の支出を抑えられる他、最低限の荷物さえあれば引越しもかんたんに済みます。また、賃貸物件には短期賃貸マンションなど短期間の居住を想定した物件もあるので、顧客への提案の幅も広がります。
また、賃貸物件の場合は自宅の設備を自ら修繕する必要がありません。手間や時間、コストをかけて自宅のメンテナンスをしたくないと考えている人にも賃貸物件をおすすめしてみましょう。さらに、賃貸物件は収入の状況に合わせて家賃の安い物件に住み替えることも可能です。
続いて、持ち家のメリット・デメリット・おすすめの人について解説します。持ち家は人生の中でも特に大きな買い物なので、顧客に適切な提案ができるよう基本的な知識を頭に入れておきましょう。
持ち家は、自由度の高さや資産形成・費用面に関するメリットがあります。
新築マンション(例外あり)と中古の木造住宅を除き、持ち家は、設備・間取りを自由にカスタマイズできます。たとえマンションであっても専有部分であれば問題ありません。持ち家には、家族構成やライフスタイルに合わせられるメリットがあります。
また、持ち家は購入者の所有物件なので、資産形成も可能です。子どもへの相続や融資の担保、万が一のときは現金化もできます。
住宅ローンの支払いという負担はあるものの、完済できれば老後の負担は軽くなります。老後の資産計画を立てやすく、将来的なお金のリスクを軽減できることも持ち家ならではのメリットです。
さまざまなメリットがある持ち家ですが、引越しや費用面に関するデメリットがあることを忘れてはなりません。
持ち家の場合、住宅ローンの返済が残っているため、賃貸物件ほど気軽に引越しできません。転勤の多い人は、家族を残して単身赴任しなければならない可能性もあります。
また、持ち家は住宅ローンだけでなく、毎年課税される固定資産税・都市計画税などの税金も支払わなければなりません。これらの費用は毎年一定額を支払う必要があるため、居住にかかる費用の調整は難しいです。今後数十年にわたって支払い続けられるかどうか、事前にシミュレーションすることも顧客に提案しましょう。
さらに、建物が老朽化・破損した場合はメンテナンス・修繕の必要もあります。自然災害での破損であれば、火災保険によって修繕費用が補償されます。しかし、老朽化に対するメンテナンスは実費で行わなければなりません。
数十年のスパンでまとまった費用や手間がかかることも、顧客へ説明しておきましょう。
持ち家のメリット・デメリットを踏まえたうえで、おすすめの人について解説します。
持ち家は、住宅ローンや各種税金の支払いが数十年にわたって続くことを頭に入れておかなければなりません。そのため収入が安定し、継続的な支払いでも家計を圧迫しないといった人にならおすすめできるといえます。
契約者に万が一のことがあり住宅ローンが支払えなくなったとしても、団体信用生命保険へ加入しておけば補償が受けられます。補償内容が保険商品により異なることも含め、持ち家を希望する顧客には保険に関しても触れて説明しましょう。
さらに、持ち家は資産として幅広い活用方法があります。持ち家は家族の財産として残せる他、社会的信用としても活用可能です。住宅ローンの完済後は誰かに貸し出せば、家賃収入を得られる資産としても活躍します。
また、持ち家の場合は子どもの成長に伴い、部屋の拡張や改装などもできます。老後はバリアフリー用にリフォームも可能なので、これらの点も含めて顧客へ説明できるよう資料などを準備しておきましょう。
持ち家と賃貸物件の生涯コストを比較すると、エリアや物件によりますが、およそ2~3割ほど、賃貸物件の方がかかると言われています。※同エリア、同期間、同物件で住み続けた場合
持ち家の場合、多額の初期費用がかかるものの、住宅ローンの支払いを終えればランニングコストが抑えられます。一方、賃貸物件は家賃や管理費などの支払いが継続するため、同期間で比較すると賃貸物件の方が生涯コストが高くなります。
ただし、だからと言って持ち家が絶対にお得とは言い切れず、少子化による人口減少や、災害によるリスクも全て自身に降りかかってくる事を考えると、資産ではなく負債の側面も持ち合わせているからです。
上記の比較はあくまでも目安ですが、顧客を案内する際はおおよそのボリュームを把握して説明できる準備をしておくと良いかもしれません。
賃貸物件と持ち家は費用面に大きな違いがあります。生涯コストはもちろん、支出の種類も異なるので、これらの違いを理解したうえで顧客に説明しましょう。費用については、それぞれの生涯コストをシミュレーションしておくと、おおよそのボリューム感をイメージしながら説明できます。
また、賃貸物件と持ち家にはそれぞれメリットとデメリットがあります。顧客のライフプランにも関わるポイントなので、今回ご紹介した内容を参考に基本的な部分を把握しておきましょう。