イケノウハウ

【広告審査入門】プロでも迷う!不動産広告表示~間取編~

記事公開日:2024/04/01

最終更新日:2024/03/14

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アパート、マンション、一軒家。単に賃貸物件といっても、消費者にはたくさんの選択肢があります。物件選びをする際に参考にする不動産広告には、正しい情報が載っていることが大前提です。消費者の新生活を、適切な情報発信で支えていきましょう。

ここでは、物件広告審査の門戸を叩いた新人社員が、不当表示にあたるか迷い立ち止まった物件表示例を取り上げて紐解いていきます。消費者に誤解を与えず正しい情報を届けるために、情報発信前の事前準備を行っていきましょう。

CASE1:カウンターキッチンで仕切られている?「1K」「1R」問題

「この間取、1Kかな、1Rかなぁ。」パッと見て分かりやすい間取もあれば、長年のノウハウがあっても迷ってしまう物件に出合うこともあるのではないでしょうか。

居室とキッチンが一体になっていたら「1R」、ドアや引き戸で明確にしきられていて独立性があれば「1K」となります。では、カウンターキッチンは、「1K」と「1R」どちらで表示をするのでしょうか。

間取り図①の画像
キッチンの画像

間取図①を見てみましょう。玄関から上がると右手にキッチンがあり、奥に居室が広がっている間取を検証していきます。キッチンの入り口にドアはありませんが、導線はカウンターの側面からキッチンに入る一か所のみで、居室から見ると別の空間であるようにも思えます。

続いて間取図①に一つ記号を加えた間取図②はいかがでしょうか。カウンターキッチンの左側面の壁を天井まで伸ばすことにより、カウンターキッチンを部屋側面の壁と挟む形にしました。天井まで続く壁によって間取図①より独立性が増しているようにも感じます。

間取り図②の画像
キッチン②の画像

判断のポイントは、ドアや引き戸などで「明確に分かれている」かです。どちらも視覚的に仕切られているだけでは不十分の為、「1R」と表示する必要があります。「1K」という間取を見た時、「居室+キッチンの2部屋」と想定する消費者に、誤認を与えてしまう表示を避けられているか意識することが大切です。

CASE2:「バス・トイレ別」を使用する大前提は?

 みなさんは物件情報を掲載する際、どのような基準で「バス・トイレ別」と表示するでしょうか? CHINTAIでは、「バス・トイレ別とは、浴室(浴槽および洗い場があるもの)とトイレが別室で、それぞれ独立性があるもの。」と定めています。

ただし、次の写真のような場合は「バス・トイレ別」を使用することができません。なぜなら、消費者が期待する「浴槽とは別に洗い場がある」という大前提を備えているとは言い切れないからです。

お風呂の画像
←バスタブの上にガラス製スライドドアが付いていて、流しの手前にトイレがある想定。

ドアを開くと左にトイレ、中央に洗面台、そして右に浴槽がある状態。これだけだと通常の「3点ユニットバス」のようです。悩ましいポイントは、浴槽の上にガラス製スライドドアがついており、トイレとバスの区切りは一応ついていることにありました。それでも洗い場と浴槽を同時に使用することが出来ず、その両方を備えているとは言い切れないため、「バス・トイレ別」を使用することはできないと判断しました。

また、誤りのケースとして意外と多いのが、浴槽のないシャワーだけの浴室、いわゆるシャワールームの表示。そもそもシャワールームは、バスとは言えないですよね。浴槽とシャワールームの間取図記号は異なるため、間取図上で誤っていることは少ないですが、「特徴項目」では「バス・トイレ別」と表示されている広告が散見しています。

大前提を満たしていない物件を「バス・トイレ別」として打ち出すことと引き換えに、結果として誤認を生み、消費者からの期待を裏切ることになってしまいます。「バス・トイレ別」の大前提をきちんと理解した上で、正しい掲載を心がけていきましょう。

CASE3: 意外と気づかない?左右反転間取

隣の部屋の間取を載せてしまっていた…。残念ながら、こちらもよくある誤りのケースです。一見相違ないように見えますが、間取図と画像を見比べてみると、窓やキッチン等が鏡のように反転してしまっている物件情報を見つけてしまうことがあります。

反転しているくらいでは、問題にならないのでは?という意見もあるかもしれません。ですが窓の位置が逆、クローゼットとドアが逆、どちらも適正な表示とは言えません。募集する物件情報は全て誤りがないように表示してください。

では左右反転の間取だと、実際どのような支障があるのでしょうか。二つの左右反転している間取図を用意してみました。左の正しい間取図ではなく、誤って反転させた右の間取図を掲載してしまった場合は、どのような影響が想像できるでしょうか。

間取り比較の画像

まずは、窓に着目していきます。物件の左側にはマンションが隣接しており、右側は隔てるものがなく見晴らしがよいとします。消費者は間取図と掲載されている写真を照らし合わせて、窓から「見晴らしの良い景色」が見えることを想定するでしょう。

実際に物件を見たときに景色が「マンションの壁」であれば、大きなイメージダウンになってしまうかもしれません。窓やバルコニーの外に広がる景色も、消費者にとって物件選びの大切な要素の一つとなりうる為、室内以外の影響にも気を配る必要があります。同じような例として、日の入り方も向きによって変わってくるので、誤解を与える可能性があるでしょう。

続いて想定している家具の配置ができるかを検討していきます。家具の中でもベッドの位置は、睡眠の質等を考慮すると、こだわって決めたい消費者も多いのではないでしょうか。窓やバルコニーを極力避け、壁に対して左向きに寝たいという条件を付けて検証してみたいと思います。

反転してしまった右の物件であれば、クローゼットに頭を向ける方向でベッドを配置すれば、希望の向きを叶えることが出来そうです。一方で正しい左の物件の場合、クローゼットの前に配置したとしても、右向きに寝るか、あるいは頭をバルコニーに向けて寝る体制にしなければ、壁に顔を向けて寝ることが難しいかもしれません。反転しているだけで、想定と反転している配置になりかねないことも考慮する必要がありそうです。

些細なことかもしれませんが、消費者への不都合がこんなにも挙げられます。消費者が物件を選ぶ際に重要視していることが物件内にとどまるとは限りません。アフターコロナの時代、パノラマ写真付き物件情報等のVR内見も発展している中、消費者が物件に足を運んで内見することを前提に判断をすることは危険です。「それだったら入居しなかった」と感じる消費者を一人でも減らせるよう、適正な広告を掲載していきましょう。

広告表示において大切なことは、消費者に誤認を与えないこと。常に立ち返り念頭に置くことによって、消費者誤認は事前に防ぐことができます。適正な広告を掲載し、消費者にとっての当たり前を叶えられる情報提供が常に求められます。知らぬ間に「違反広告」を掲載してしまわぬよう、ポイントを抑えて表示していきましょう。

株式会社CHINTAIは、ポータルサイト広告適正化部会に所属しております。他ポータルサイトと連携し、適正な広告が消費者に届くよう推進していきます。

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CHINTAI JOURNAL編集部

この記事を書いた人

CHINTAI JOURNAL編集部は、営業活動に役立つ情報や業務効率化するための工夫をはじめとして、賃貸仲介業務に「おもしろさ」と「ライフハック」を提供します。