イケノウハウ

不動産賃貸仲介の主な仕事内容と満足度を高める接客ポイントとは?

記事公開日:2023/04/27

最終更新日:2023/05/15

不動産賃貸仲介業は、街のことはもちろん、個別の物件に関する知識が欠かせません。しかし、トップの営業担当者がすべからく知識量もトップかと言われると、そうではないことも多いのではないでしょうか。

不動産賃貸仲介業は、業務全般に関する知識も必要ですが、それだけではお客様を満足させられません。お客様の満足度を向上させ成約に至るためには、不動産賃貸仲介業の専門店としての知識レベルのみならず、サービス業としての側面を向上させることが重要です。

そこで、今回は不動産賃貸仲介業のサービス業としての側面に特化して、お客様満足度を高めるポイントについてご説明します。主要業務ごとの訴求ポイントから、店舗全体として取り組みを行った成約事例まで、盛りだくさんの内容です。ぜひ最後までお読みください。

不動産賃貸仲介における主な業務内容や種類

まずは、不動産賃貸仲介業の主な業務の内容を確認しましょう。そして主要な業務ごとに、店舗として押さえておくべきサービス精神と、その表現方法を解説します。

接客対応

ご来店いただいたお客様の接客対応業務です。お部屋探しにおけるお客様の希望条件をヒアリングし、物件提案を行い、ご案内する物件を選定するフェーズを想定しています。お客様の来店経緯により、気を付けるポイントが異なりますので、細かく見ていきましょう。

飛び込みのお客様

路面店舗では、飛び込みのお客様を対応することも多いのではないでしょうか。飛び込みのお客様はそもそも事前情報がゼロのところから始まりますので、高いヒアリング能力とコミュニケーション能力が求められます。

店舗として重要なことは、お客様に待つストレスを感じさせないことです。物件を検索する時間などがとくに沈黙になりがちで、ストレスが発生しやすいポイントとして考えられます。空き状況の確認や、プリントアウトなどの簡易業務は他の人に任せるなど、目の前のお客様を飽きさせない工夫が店舗として求められるでしょう。

また、飛び込み来店のお客様は、引っ越しに対する温度感がそこまで高くないことも多々あります。必要性に迫られていない場合は、中長期にわたって育成が必要なお客様です。自社のファンになっていただくことに徹しましょう。

強引に申込をさせるような行為は、当然すべきではありません。お客様のタイミングで内覧できることをお伝えする、今後のご提案もメールで受け取れるようにするなどし、主導権をお客様にお渡しして、居心地の良さを演出しましょう。

反響による来店のお客様

ポータルサイトや自社ホームページからの反響を頂戴したお客様のご来店です。昨今は、主にこちらが主流ではないでしょうか。

この場合も、お客様にストレスを感じさせないことが大切です。しかし、反響来店は、お客様の考え方によってストレスを感じるポイントが異なることを前提に、接客することが求められます。

お客様自身が見たい、知りたいことだけに答えてほしいお客様かどうか、良い物件があればどんどん提案がほしいお客様かどうかなどの見極めが重要です。

また、昨今はインターネットにより情報が充実しているため、お客様と不動産業者の知識格差はほとんどないことを大前提として理解しましょう。

温度感が高く、インターネットで事前に勉強をかなりしているお客様に見られる傾向として、勉強しすぎて何が良い物件なのかがわからなくなっているという特徴があります。このような場合は、物件ごとに場所・間取り・家賃などで点数付けをしてみたりすると、客観的に整理できることもあります。物件の見せ方にも、工夫と配慮が必要でしょう。

物件案内

いよいよ、実際のお部屋をお客様に見て確認していただく作業です。

鉄板の案内方法は、3物件程度に絞り、悪いものから順番に見ていただく方法が主流です。しかし、このやり方は使い古されており、お客様にも手の内がばれていることもあります。あえて業界裏話的にこんな案内手法があると会話に出しつつ、一番いいと思う物件から見せる方法も、お客様によっては効果的でしょう。

また、最近のお客様であれば、カウンター接客時に絞り込みを行い、案内は確認作業の位置づけになることもあります。実際の案内件数は、接客時のヒアリングとお客様の納得度合いを見ながら決定していきましょう。

案内自体はさりとて、著者は物件へのルートも大きなセールスポイントであると考えます。街のことをよく知っているお客様であれば裏道や近道を紹介し、街のことを知らないお客様の場合は、大通りやシンボルを経由して物件に向かいます。ストレスを軽減させることと、満足感を向上させることの両面で、確実にポイントを重ねていきましょう。

クロージング

お客様をご案内し、この物件にしますと言われてからがクロージングの始まりです。管理会社や家主さんによって異なりますが、電話で部屋止めができるならすぐに止めましょう。この場合、お客様の目の前で管理会社や家主さんに電話することが効果的です。

電子申込の場合は、手続き完了順になることがほとんどですので、早く手続きをする必要性をきちんと説明し、早々と手続きを進められるようにしましょう。少なくとも、このあたりまでは、ご案内帰りの車中で完了させることが重要です。

店舗に戻ったら、申込手続きに入ります。このとき、他の店舗スタッフや店長を巻き込んでクロージングを行いましょう。「その物件、僕のお客様にご紹介しようと思っていたのに」や「久しぶりに退去がありましたよね」などの希少性をアピールするコメントで、場をうまく盛り上げていくのです。少しわざとらしいくらいでも良いと考えます。

不動産賃貸仲介の接客でお客様満足度を高めるポイント

お客様満足度を高めることやストレスを感じさせないことが、成約いただく可能性を高め、そのお客様からさらなるご紹介をいただくことにつながります。どのようなポイントに気を付けることで、お客様の満足度を上げられるのでしょうか。

お客様と営業マンの相性が「合う」「合わない」をいち早く察知する

お客様と営業担当者も人間です。人間には相性があり、この相性が合うか合わないかという抽象的な事実は、お客様が成約するかしないかという決定要素に大きく影響します。お客様と営業担当者との相性があまり良くないなと感じたら、すぐに別の営業担当者にチェンジするのがおすすめです。

とはいえ、急に「ここからは私が」となると、お客様は違和感を覚えることでしょう。そのため、営業担当者への質問に別の営業担当者が答える、別の営業担当者から物件を提案するなど、少しずつ関わっていきます。お客様の反応や顔つきなどの機微や雰囲気から、どちらの営業担当者が向いているかを感じ取り、お客様に最もマッチする営業担当者を判断するのです。

お客様に主導権がある営業を心がける

先ほど申し上げたとおり、昨今はインターネットによる情報取得が容易になっているため、お客様側に主導権があることも珍しくありません。すべて言いなりになることが成功法則だとは思いませんが、お客様に主導権があると思い込ませるというテクニックも、ときには有効です。

例として、物件の検索画面をあえてお客様に見せる方法などが挙げられます。業者間サイトのIDやパスワードを入力する画面からお客様に見せるだけでも、お客様が不動産業者に来店された意味や意義を感じられるでしょう。

そして、その検索結果を一緒に確認してもらい、物件の絞り込みや選定を行うことで、お客様には納得感が芽生えます。

再三ですが、手元にある情報量はお客様と不動産業社で大きな差はないと認識すべきです。そのうえで、適切な知識とアドバイスでお客様の意思決定のお手伝いをする必要があり、ゴリゴリの営業トークはもはや時代遅れと言えます。

友人のお部屋探しにアドバイスをする、力加減としてはこのくらいの強さの押し具合こそが、不動産業者に求められていると理解しましょう。

不動産賃貸仲介の接客における課題と解決策

ここまでは、お客様の満足度向上と、ストレスフリーな店舗共有の営業手法をご紹介しました。さらに深堀りを行い、ここからは具体的によくある課題に対する解決事例をご紹介します。

来店数や成約数がある店舗とお客様に認知させたい

よく、お客様の来店予約時間一覧を、A型看板で店舗前に設置しているのを見られたことはないでしょうか。これは、暗に「他のお客様もけっこう来店しているんだ」と安心感をお持ちいただくことにあると思われます。今回ご紹介するのは、来店数に伸び悩んでいた店舗での取り組み事例です。

来店予約一覧の掲示は非常に効果的な施策ですが、どこか信憑性に欠ける印象は否めず、さらにお客様が来店された際の安心感を向上させる取り組みが必要でした。そこで行ったことは、成約したお客様へ鍵をお渡しするにあたり、ノベルティやアメニティ、付帯商品をお渡しする紙袋の「成約セット」を店内に飾ることです。

この成約セットの陳列により、成約したお客様数を常に店内で告知できるようになり、お客様の安心感は目に見えて改善されました。安心感は可視化できませんが、お客様から「あれだけのお客様が成約したのですか?」と聞かれることが多くなり、安心感が増えていることが実感できるようになったのです。

また、成約セットの陳列は思わぬところにも効果が現れました。それは付帯商品の販売です。

賃貸仲介業者では、お客様の安全や利便性のために、簡易消火器や追加補助鍵、殺虫作業をご提案することがあります。そのご提案の際に「成約セット」から取り出すことで、他のお客様も追加購入しているという安心感から、付帯商品の販売件数も増加することとなりました。

来店いただけるが、成約まで至らない

お客様にご来店いただけるものの、成約まで至らず、他決が圧倒的に多いという店舗の接客改善事例です。

この店舗では、他決物件もヒアリングするなど改善に注力していましたが、自店舗で提案している物件で他決していることもあり、具体的な課題解決するための問題点を見つけ出せずにいました。

そこで行ったことは、接客スタイルの自由化です。カウンター接客が主流ですが、店舗レイアウトを一新し、複数スタイルでの接客方法を行えるように再設計を図りました。カウンターは一部残しつつ、カフェスタイルでのソファ接客や、ブース風のラウンドベンチ接客などで、お客様の居心地を改善したのです。

お客様によっては、他のお客様に個人情報が聞こえることが嫌忌されることもありますし、長時間の接客に疲れてしまうことも考えられます。

お客様目線で最も接客に適した雰囲気を導入することで、成約いただける件数が増加したという改善事例です。

ファミリーのお客様の満足度向上

ファミリーのお客様のお部屋探しは、ご家族の皆様が満足する必要があるため、非常に時間がかかる傾向にあります。また、お子さま連れの場合は、お子さまに手を取られてしまい集中してお話ができず、時間切れを迎えて他決という結果を迎えることも少なくありません。

ファミリーのお客様のご成約件数に課題を抱えていた店舗で施したのは、お子さま連れのお客様への満足度向上施策です。

キッズスペースでは、お子さまの相手を手の空いている社員が必ずつきっきりで行うようにしました。DVDを見ていただくときでも、誰かが必ず横にいるようにします。またDVDのみならず、最近の子どもは2歳から動画サイトを観ることもありますので、その環境も整備しました。

お子さまに提供するジュースやお菓子の数も増やしました。また、紙パックのジュースは、子どもが強く持つことで吹き出させてしまうこともあります。ストロー付きのこぼれない容器への移し替えや、吹き出しを防止する紙パック専用のケースで提供するなど、実際に子どもがいる社員の声を多数取り入れ改善を行ったのです。

その結果、商談終了時にお子さまがキッズスペースから「帰りたくない」と泣き出すくらい、お子さまにとって居心地の良い店舗へと変貌を遂げました。お子さまの満足度が高いことは、当然ご両親の満足度も向上し、ファミリーの成約件数も大きく伸びることになりました。

キッズスペースの充実は、他社と比べても差別化が図りやすいポイントです。キッズスペースはどこの店舗でもおそらくあるでしょう。さらに、どのようなキッズスペースであるかを訴求できれば、ファミリーのお客様に刺さる店舗づくりはほぼ完成です。

まとめ

お客様の満足度を上げるポイントは、他にもたくさんあります。しかし、意外と安価で対応できるにも関わらず、やっていないことが多数あるのが現実ではないでしょうか。

どのようなお客様に対しても満足度を上げられるスーパー営業担当者に頼っていては、店舗はいつまでも成長しません。営業担当者の能力は当然高くあるべきですが、店舗としてお客様の満足度を上げる施策が必要であることを理解しておきましょう。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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