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家賃のクレジットカード払い対応で顧客満足度アップ!貸主・借主のメリット・デメリットとは?

記事公開日:2024/02/11

最終更新日:2024/02/11

家賃のクレカ払いのメリット・デメリット
専門家_田井様

田井能久

この記事を書いた人

株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/不動産鑑定士

国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務後、米国系不動産投資ファンドに転職。2006年に独立して株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズを設立。25年以上の評価実績を有し、特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。元愛知大学非常勤講師で現在はセミナー活動のほか各種WEBメディアに記事提供も行う。

今ではほとんどの人が、日常の買い物や電車賃の支払いにおいて〇〇ペイといったタッチ式決済・QRコード式決済、SuicaやPASMOなどの交通系ICの電子マネー決済を利用しているでしょう。そして、お店で洋服を購入するときや高級レストランで食事をするときなど、数万円単位の支払いをする場合にはクレジットカードやデビットカードで支払うという人が多いのではないでしょうか?

もちろん、日常的な数百円をはじめ何十万円であっても財布から出して支払う現金主義の人もいますが、もはやまれなケースといえます。また、お店や飲食店側も、電子マネーのみで支払いを行うことを求め、「現金禁止」を謳う例がみられるようになっています。

このように世間では電子化したマネーのやりとりが進んでいますが、不動産の世界はそれとはやや異なる動きをしており、その歩みはゆるやかです。とはいえ、商取引において電子マネーを活用する場面はもはや主流になりつつあることから、家賃をクレジットカードで支払えるように対応している物件も増えています。

そこで今回は、家賃の支払いをクレジットカード対応にすることで、顧客満足を高めることができる方法についてお伝えします。

家賃の支払い方の変遷について

もともと家賃とは、自分の住んでいる家の中で空いたひと部屋を貸し、その対価を得ることから始まりました。それゆえ、長らくは大家さんと店子は物理的にも近い距離にあり、月末に顔を合わせたときに現金で払ってもらうようなものでした。

一方、地代は借地人が土地を利用していることから、地主さんもたまに顔を出すぐらいだったのか、なんとなく年払いが通常となり、そこから民法上にも定められたようです。

しかし、こと家賃については、自分が住むのでなく、はじめから貸す目的で建物を建てる賃貸経営目的の物件が増えたことにより、所有と経営の分離が起こりました。そこでオーナーは、お金を出して不動産会社や管理会社に経営を任せるようになったのです。そのようなタイミングと、銀行の振込制度の普及が一致した影響もあってか、家賃の支払いは銀行振り込みが“当たり前”になりました。

銀行振り込みはひと昔前なら現金の受け渡しより安全で、記録にもちゃんと残り、口座を持っている点で信用力を担保する機能もありました。しかし、時代の変化によりその意義は薄れ、さらにITの進化が多様な支払い方法を生み出し、キャッシュレス化が進みました。その流れは不動産の世界にも浸透しつつあります。

キャッシュレス化が不動産にもたらすもの

新たな設備を付けるといくらかかる、リフォームするといくらかかるなど、物理的な管理とそのコストには関心が高いオーナーは多いです。

しかし、より効率的に賃料を集める方法や、集まった賃料の運用方法など、金融的な側面から不動産をみるオーナーはまだまだ少ないです。たとえば、昨今の銀行の各種手数料の値上げは「出納管理費」のコストの増大に他なりません。なんとなく物的管理も金銭管理もまとめて管理費として支払っていたオーナーは、その内訳を見直し、コストの削減に努める必要があります。

すなわち、現在は不動産≒金融資産の時代といえるので、家賃のキャッシュレス化はその意識を変えるきっかけになるのです。

クレジットカード対応のメリット

オーナーの不動産に対する意識を変える効果があるクレジットカード対応ですが、それ以外にも以下のようなメリットが期待できます。

お金の流れが見える化できる

家賃の入金の流れは、従来どおりの銀行振り込みでも把握が可能です。大切なのは入金だけでなく、賃貸経営に関する「出金」もなるべくクレジットカードを使うことです。

確定申告時に領収書の仕分けにひと苦労する不動産オーナーは多いですが、出金をクレジットカード支払いで統一するとかなり省力化できます。すべてではないものの、賃貸経営に必要な物品の購入、水道代や電気代の支払い、固定資産税などの経費もクレジットカードで支払うことで、収入と支出が明確になり、賃貸経営に関するお金の見える化が可能になります。

クレジットカード対応は、一見不動産を利用する側にメリットがあると思われるかもしれませんが、実はオーナー側のメリットも大きいです。

審査業務の一部がアウトソースされる

借主がクレジットカード支払いをするということは、クレジットカードを保有するための審査に通らなければなりません。クレジットカードには誰でも作れる流通系のカードから、一部の富裕層が持つゴールドカードやブラックカードなども存在し、ステイタスに幅があります。従って、貸主であるオーナー側としては、そのステイタスを参考に自分の賃貸物件に住んでほしい層を選ぶことができます。

たとえば学生向けの物件なら流通系の極めて一般的なカードにして、高額物件なら年会費がかかるような富裕層向けのカードで支払ってもらうようにできるでしょう。加えて、カード払いにするさらなるメリットとしては、賃料が不払いになっても、カード会社が補填するなどして、債権の回収がアウトソースされることです。

これらの機能はオーナーにとって看過できないメリットといえます。

家賃の受け取りに加え、経費の支払いに活用することでポイントを得られる  

上記のようにお金の入出金をクレジットカード経由にし、そのクレジットカードと提携した銀行口座などを利用することにより、かなりのポイントを貯めることができます。ポイントを得られることは貸主のみならず、借主にとってもメリットです。

借主にとって、一般的に家賃は生活費の3分の1程度が適正といわれているので、毎月の生活費が15万円ならば、日々の生活に必要なモノを買う際などに10万円が使われます。つまり、この場合だと10万円分については生活必需品の購入などでポイントを得ることができる一方で、5万円ほどの家賃に関しての支出ではポイントを貯めることができていないということです。それが家賃の支払いでポイントを貯められるようになれば、毎月少なくない支出分のポイントが溜まるようになり、「家賃を支払うメリット」を借主に提供できます。

また、同様の効果は貸主であるオーナー側にもあらわれ、賃貸物件の補修繕などもカード支払いにすればポイントを貯められるので、積極的な維持管理に寄与することになります。

クレジットカード対応のデメリット

クレジット対応にはメリットがあれば、当然デメリットもあります。今度はこれらについて説明します。

カード支払いの手数料がかかる

クレジットカード支払いの導入が進まない最大の理由が、この手数料の問題です。

現在は各クレジットカード会社が、シェア拡大のためにサービスを提供し、定期的にキャンペーンを実施していますが、概ね3%の手数料が継続して取られます。手数料が継続して発生するということは、収益が明らかに3%減少することになるので、これを嫌がるオーナーは多いです。

しかしこの3%のコストは、メリットの部分で説明したように単なる出費の増加ではありません。ポイントの獲得や審査業務、債権回収のアウトソース分も含まれているので、決して高くないと考えられます。

入金が遅くなる

銀行振り込みでは、管理会社が経由することもありますが、基本的に即日でオーナーの口座に入金されます。賃貸経営においては、水道代や電気代などがかかり、なにより融資の返済が滞るのは怖いので、支払いのためにも現金がちゃんと口座にプールできていることは大事です。

一方、クレジット会社経由で家賃が入金されると、その入金の期間が早くて1カ月、場合によっては数カ月遅れます。製造業などとは違い、不動産賃貸業で常に小口の融資が必要なほどキャッシュが足りず、不安定な経営状況になることは考えにくいでしょう。とはいえ、毎年納税の時期があることに加えて、想定してない大きな修繕費が発生する例もあるので、急にキャッシュが必要になる可能性もゼロではありません。

クレジットカード対応の場合、そのような場合の自由度は銀行振り込みよりもやや劣ると言わざるを得ません。

まとめ

不動産を管理するというと、壊れた外壁や設備を直すような物理的な管理、すなわちプロパティマネジメントが必要ですが、オーナーのほとんどは管理会社などを通じて工務店や建設会社にお願いしているケースが多いです。

しかし、不動産はこのような物理的な管理のみならず、金融資産、すなわち株や債券や金などに比較される資産としての側面があるため、それを管理するアセットマネマネジメントが必要です。このアセットマネジメントも外注できますが、これこそ不動産オーナーとして主体的に行わなければなりません。たとえば株に関してネット証券会社のサービスを比較して決めるように、不動産についても、それにかかわる金融サービスを比較検討する必要があります。

これからの不動産オーナーにとっては、金融サービスをうまく選べるかが大事になってきます。それゆえ、オーナーをサポートする不動産管理会社や不動産仲介会社も、よりいっそうの勉強が必要になります。もはや〇〇ペイを知らない、利用していないという人はいないといっていい昨今、「家賃=銀行引き落とし」という固定概念では、近い将来、借主に見向きもされなくなるでしょう。

家賃のクレジットカード対応サービスの提供が少ない今こそ、スタートのチャンスです。ぜひ本記事を参考に、オーナーさんにご提案してみてください。

出典:

クレジットカードで家賃は支払える?カード払いのメリットや注意点もご紹介!|みんなでつくる!暮らしのマネーメディアRみんなのマネ活R(rakuten-card.co.jp)

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