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賃貸仲介業から視るざっくり民法 (1) 民法ってそもそも何?

記事公開日:2023/03/31

最終更新日:2023/03/27

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本企画は、賃貸仲介業の視点からざっくりと分かりやすく民法の各項目を解説する試みです。賃貸仲介の営業をしていると、必ず勉強をする必要のある民法。今回は、民法とは一体どのようなもので、賃貸仲介業とどのような関係があるのかについて、解説していきます。

民法の位置づけ

民法って、何だか難しそうな印象がありませんか?

民法は、賃貸仲介業や不動産業全体と切っても切れない関係にあります。なぜなら、民法は、市民生活におけるさまざまな法律の基本となっており、人や財産に関する法律の基礎になるものだからです。

民法の全体像

民法の条文は1,050条まであり、日本国内に存在する法律の中でもボリュームの大きい法律です。民法は、大きく5つのジャンルに分かれています。民法を構成する5つのジャンルを理解することで、民法の全体像を掴めるようになりますよ。

総則

民法の大前提となるグランドルールのことを「総則」といいます。(民法1条~174条)

この「総則」で定められているグランドルールは、その後に出てくるすべてのジャンルに適用されます。民法はルールを最初に記載し、個別の規定をその後に記載するという体系で作られていることから、「パンデクテン方式」と呼ばれるようになりました。

物権

物権とは、文字通り「物」を支配する「権利」のことを指します。(民法175条~398条の22)

いつも乗っている自転車を、「これは私の自転車です」と、世界中の人たちに声高らかに宣言する権利、これこそが物権です。自分の物に対して誰にも邪魔されない権利、と理解しましょう。

債権

債権とは、「人」に対して何かを請求・要求する権利のことをいいます。(民法399条~724条の2)

賃貸仲介業者が仲介し締結する「賃貸借契約」は、債権に定められる契約の1つです。貸主は「借主という人」に対して「家賃を払うことを請求」することができ、借主は「貸主という人」に対して「借りている部屋を使用収益することを請求」することができます。

親族

家族関係を定義している部分です。主に、親族の範囲や結婚・離婚、親子関係に関するルールが定められています。(民法725条~881条)

相続

ある人が死亡したときに発生する「相続」に関するルールが記載されています。主に、相続に関するルール、遺言に関することの定めが中心です。(民法882条~1,050条)

図1

賃貸仲介と民法の切っても切れない関係

賃貸仲介業と民法は深く密接に関係しています。ここからは、どのようなシチュエーションで賃貸仲介業と民法が関係してくるのか、具体的に確認していきましょう。

民法はさまざまな契約における「基本的なルール」を定めている

お部屋探しにはさまざまなお客様が来店されます。どのようなお客様であっても「借主」になれるかといえば、その答えは「NO」です。

  • 13歳の男の子が一人で部屋を借りたいとき
  • 認知症の方が単独で部屋を借りたいとき
  • 忙しいからと部屋を借りることを一任された方が来店したとき

これらのケースでは、お部屋探しを行い、賃貸借契約の仲介をするとトラブルになることが予想されます。

まず、未成年は一人で契約を締結することができません。(民法5条)また、認知症などの判断能力が乏しい方が一人で締結した契約は、後から取り消されることがあります。(民法9条 成年被後見人該当の場合)誰かの代わりに契約をするときは、誰が誰のために何を任されているかを明示しないといけません。これらはすべて、民法の総則にある「基本的なルール」に該当します。

このように、民法を理解せずに賃貸仲介業をまっとうすることはできません。

図2

賃貸借契約は民法に規定がある契約

世の中にはさまざまな形の「契約」が存在しています。同じ契約は1つとして存在しませんが、似た種類の契約を体系化することは可能です。民法では、債権としてさまざまな契約を一定の種類に基づいて分類しています。

民法に定められている契約のことを「典型契約」といい、13種類が規定されています。(民法549条~696条)賃貸借契約は典型契約の中の1つです(民法601条~622条の2)。なお、賃貸借契約の定義は、諾成・双務・有償契約であることとされています。

子どもの頃に、友達とゲームのソフトを貸し借りした経験はありませんか?「ゲームのソフトを借りて、その対価としてジュースをおごってあげる」というシチュエーションを例に考えてみましょう。

このとき、わざわざ契約書を作成したかというと、おそらく作成していないでしょう。ソフトを借りることとジュースをおごることを「口約束」で成立させていたはずです。この「口約束」で成立する契約のことを「諾成契約」といいます。(民法522条1項)

ソフトの所有者はソフトを貸さないといけませんし、ソフトを借りる人はジュースをおごらないといけません。このとき、お互いに「義務」が発生しています。お互いに義務が発生する契約のことを「双務契約」といいます。

今回のケースでは、お互いに何かを相手方に「提供」しました。ソフトをタダで借りるのではなく、ジュースを対価に差し出していることになります。このように、お互いにタダではない契約のことを「有償契約」といいます。

図3

部屋を借りるときの「保証人」も民法にルールが定められている

最近では、保証会社が増えたため、少なくなっている保証人のルールも民法に定められています。(民法446条~665条の10)

保証人の種類は、「保証人」「連帯保証人」に分けられており、賃貸借契約では「連帯保証人」になるのが一般的です。保証人と連帯保証人では、請求されたときにできることが違います。保証人にのみ、以下の2つの権利が約束されています。

1つ目は「催告の抗弁権」です。(民法452条)保証人の場合は、請求されたときに「本人に請求してからにしてくださいよ」と言い返すことができます。2つ目は「検索の抗弁権」といわれ、保証人は本人に隠し財産があるときは、「本人が実はお金を持っているから、そちらを調べてからにしてくださいよ」と言い返すことができる権利です。(民法453条)

逆にいえば、「連帯保証人」には何の権利もなく、請求されるがまま支払に応じなければいけません。

図4

部屋を借りるときに関係するいろいろな法律

賃貸仲介業に従事するには、民法は外せない法律であることはご理解いただけたと思います。しかし、民法以外にも関連する重要な法律がありますので、代表的なものを解説いたします。

宅地建物取引業法

略して「宅建業法」は、賃貸や売買物件の具体的な手続きを定めた法律です。民法の規定に基づけば賃貸借契約は「書面なくして口頭で成立」しますが、宅地建物取引業法の規定によって、「重要事項説明書と契約書」の説明および作成が仲介業者に求められます。

民法はあくまでも「考え方」を規定した法律(実体法といいます)となっており、それだけでは実生活に不十分なので、専門的な手続きに関する法律(手続法といいます)が作られ、補っているのです。

借地借家法

借地借家法とは、主に借主の保護を目的として定められたこの法律、ルーツは大正時代に遡ります。戦争により帰国時に「家がない」ということを避けるために、借主を手厚く保護したことが、現在の借地借家法の基礎的な考え方となっています。

民法を知ることのメリット

民法は賃貸仲介業を行ううえで不可欠な知識となりますので、知っておかなくてはいけない法律と理解しましょう。事実、宅地建物取引主任者の資格試験では、民法が50問中14問ほど出題されます。民法をよく理解し、賃貸仲介業をトラブルなくこなせるようになってくださいね。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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