エピソード

福祉支援と人に優しい社会を創る、賃貸仲介業の新しい可能性とは

記事公開日:2023/09/08

最終更新日:2024/01/11

福祉支援と人に優しい社会を創る、賃貸仲介業の新しい可能性とはのアイキャッチ画像

「人に優しい社会」を賃貸仲介業を通じて目指す理由

一般社団法人ささえる手 代表理事 古園さん / 創業者・現顧問 原 翔大さん

賃貸仲介業を通じ福祉支援を行う、国土交通省指定の法人団体「ささえる手」。 生活保護相談が可能な大家さんであっても、入居までのプロセスで問題が生じることがあるという現状に着目し、 懸念点を払拭するシステムを構築し、スムーズな入居を実現しています。具体的にお話を聞いていきましょう。

原さん、古園さん、本日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします!

よろしくお願いします!

お二人がささえる手、そして賃貸仲介業を始めた理由とは

独立の経緯

さっそく、インタビューを始めていきたいと思います!
まずは、お二人のご経歴をお伺いさせてください。

はい。僕が25歳の時に、今ある「一般社団法人ささえる手」を立ち上げました。最初は障害者のグループホームや、訪問介護などの事業から始めていき、株式会社に変えて今も継続してやっています。
 
もともと僕は、中学高校時代ほとんど友達がいなかったんです。そんな経験から、同じような状況にいる人々を支援したいと考えるようになりました。
 
心理学を学び、カウンセラーになることを夢見ていましたが、実際には臨床心理士としての資格を取得するためには大学院まで進む必要があるんですよね。そのため、そのステップには到達できなかったんです(笑)。

 精神保健福祉士っていう、大卒で資格が取れるものがあったので取得して、精神病院の現場で働き始めたんですよ。ですが中学高校時代ほと
んど友達がいなかったとお伝えした通り、団体行動が辛く、うまく社会に馴染めなくて…その流れで思い切って独立しました。

国の対策事業がきっかけで始まった賃貸仲介事業

当時は、障害に対する偏見が今よりもっと強く、障害があるというだけで家を借りる選択肢がほぼ存在しない状況でした。特に私たちが取り組んでいたのは精神障害の分野であり、それによる偏見もすごくあったと思います。
 
こうした時代の背景を考慮し、5~6年前ぐらいに、国土交通省の空き家対策事業を利用し、障害者や高齢者の方々に家を貸す取り組みを始めました。

障害を持つ方々に部屋を貸す上で課題なのは、オーナー様がそういった方々に対して持つイメージの悪さが挙げられます。もちろん、中には本当に困難を抱える方もいらっしゃいますが、軽度な障害を持つ方が多数です。
 
私たちはこの点を丁寧に説明し、さらにそれでも心配な場合に備え、訪問看護ステーションを運営しています。看護師さんを派遣したり、見守りを行うことで、リスクを最小限に抑えて精神障害者の方々にお部屋を貸し出すことが可能だと考えました。

 ありがとうございます。古園様もお話お聞きしてもよろしいでしょうか?

原と同じ中学で出会ったんですけど、共に学生生活を送った後に、携帯電話の代理店や空調設備の取り付けなど色々なことをしていました。
 
働いているところを辞めたいなと思っているタイミングで原から誘いを受けて、今に至るという形です。なので、この業界に入った理由は「タイミングが合ったから」です(笑)。

幼馴染二人で始めた「ささえる手」

お二人のは学生時代からのご友人なんですね!
 

そうです。僕、転勤族で友達がほとんどいなかったんですけど、唯一友達だったのが彼です。
 
大人になってから事業を立ち上げた時、採用にコストをかけられる状態じゃないんですよね。その時、フェイスブックで友達一覧に残っている人たちにとりあえず、「一緒に働かないか?」という内容のDMを送りまくっていました(笑)。それをやると意外と効果があったんです。

SNSで求人始めたんですね!それでも親しくない友達に送るのは勇気がいりそうですね。

そうですね。でも、やるしかないと思っていました。

ほとんど会話したことがない人々に対して、積極的にDMを送っていた時期もありました。その結果、9割の方からは無視されましたが、1割の方からは返信があり、業務内容の話までできました。

すごいですね!
何が原様をここまで動かすのでしょうか?

会社経営って僕はすごく楽しくて、「人生すべてこれに注いでいいな」って、「楽しいものに出会えたな」って思っています。
 
最初はお金を稼ぎたいという気持ちもあったんですけど、今は社会に貢献したいという気持ちが大きいです。「お金なんていくら持ってても死ぬしな」と思っています。フェーズが上がってきたのかなと思います。

ささえる手の取り組み・特色とは?

「住宅要配慮者」の方々の入居サポート

貴社の取り組み・特色を、さらに具体的にお教えください。

僕たちの取り組みは、「住宅要配慮者」と呼ばれる、精神障害を抱え生活保護を必要とする方々や、高齢者の方々を支援しています。具体的には、このような方々のための適切な住宅探しを行い、オーナー様との交渉・契約、部屋が決まった後のサポートも提供しています。

練馬区と西東京市において、この支援の窓口を委託されており、問い合わせだけで200件程度の連絡が寄せられます。また、テレアポや飛び込み訪問などの活動も行っています。

オーナー様の反応、対応はどのような感じでしょうか?

不動産業の営業マンがオーナー様を訪れるほとんどの理由が、「土地を売って欲しい」とかが多いみたいなんですね。

そんな中、僕らの取り組みの説明をすると、話を聞いてくれて、意外と風当りは強くないです。ただ、話は聞いてくれるが、契約までは到達しないことも多いです。

そういう時の、オーナー様の懸念点はなんでしょうか?

ご高齢の方々については、年齢や身内の不在から緊急時の連絡先の有無が、障害者の方々は、症状の度合がどの程度なのか?が、そのまま懸念点になります。

「障害を持っている方でも構いません」とおっしゃっていただいた場合でも、定期的な見守りの体制をしっかり整えることや、緊急時にどこに電話すればよいかなど、役所や私たちの機関を一覧にして提出を求められる場面が多々ありますね。

なるほど。見守りなどの制度も入れていらっしゃるとのことなんですけど、実際に、オーナー様から貴社に直接連絡が来たりすることもあるんですか?

オーナー様から連絡が来るというよりは、入居者様本人から「体調悪くなったから来てほしい」というのが多いです。実際には敬遠されるほどの問題はなく、安心して入居いただいています。

一般的な賃貸仲介との違いとは

家が決まってからがゴールじゃないんですね!
決まった後も、お客様と密にお付き合いしていくことが多いのでしょうか?

その通りです。

先ほどお話したように、ナースステーションから看護師が定期的に見守りを行ったり、市と定期的に連絡を取り合ったりと、お部屋が決まった後も手厚く継続して関わっていくような形になります。

アフターフォローも充実されているんですね!
他にも、心掛けていることはございますか?

入居審査の際に、精神障害を持ってることを隠さないってことですかね。実際、隠して入居させることはできるんですね。ですが、それをやってこなかったから今があるのかなっていうのは結構感じています。
 
これまで100名以上仲介してきましたけど、事件事故は起きてないんです。「ささえる手の紹介だったら、これまで問題がないから入居してもいいよ」という声も、ありがたいことに増えてきています。

その「隠さない」っていうことがポイントだと思うんですけど、古園様はどうお考えでしょうか?

原が最初に言っていた言葉を今も大事にしてます。申込書などの紙切れ1枚だけで、その人を判断するのはなかなか難しい。例えば申請書が1枚送られてきて、そこに統合失調症とだけそこに書かれていたら、やっぱりオーナー様もちょっと不安になると思うんです。
 
そこを書面だけじゃなくて、しっかり面談できる機会を作り、ご本人とオーナー様で会っていただく機会を出来るだけ作る事が大事だと思います。

なるほど。最初に心配を払拭して関係性を構築しているのですね!

それでも一般的な不動産業より、難しいこともあると思うんです。オーナー様への交渉のコツなどはございますか?

そうですね。オーナー様にとって必要な情報を無駄なくお伝え、分からないところをなくし、コミュニケーションのズレがないようにしています。

また、オーナー様の人柄に合わせた話し方や、雰囲気作りを心掛けています。

ささえる手の考える「人に優しい社会」とは

皆がWin-Winになるように

ホームページに記載があったのですが、ささえる手様が考える“人に優しい社会”とは、どのような意味で、そのために何を目指しているのでしょうか? 

事業のオーナー様、入居者様、私たちの三者が損をしないという状況を作りたいと思っています。福祉の観点からのみ見てしまうと、障害者の方々の立場のみが、社会的に守られていることが多々あると感じているんです。

例えばひとつ事例をあげると、実際に賃貸仲介業者が、障害者であることを隠して入居させ、トラブルが起こることがあります。普通はトラブルの原因がどちらか一方にあれば、注意をしたうえで解決へ…という流れですが、その相手が障害を持つ方だとなかなかそうはいきません。障害を持つ方を責めるということが倫理上正しいと見られない風潮があるからです。

その場合、オーナー様は入居者が障害者であることを隠されたにも関わらず、世間一般には「障害者=守られる権利がある」という認識が強く、何もできないことになってしまいます。

そういったアンバランスな状態を、社会では「優しい社会」と呼ぶ傾向があり、そこに違和感を感じるんです。

それはフェアじゃないかもしれませんね。

そうなんです。ですので登場人物すべてがWin-Winになれるようにしたいと考えています。

オーナー様との情報の齟齬がないようにすること、その上で家賃収入を担保し、安定的な収入を得て頂けるようにすること。 障害のある方々には、入居にあたってのルールを順守していたき快適に過ごしていただくこと。 私たちもビジネスとしてきちんと成り立つようにすること。

これらのバランスが大事だと思っています。

ささえる手が見据えている未来とは

エリア拡大と売買事業

貴社の今後のビジョンをお教えください。

はい。1つ目はエリアを広げていきたいです。都内全域まで広げていけたらと思っています。どこの区も、全然うまくいってないところがたくさんあります。
 
今までやってきたノウハウを活かし、賃貸仲介業を通して、優しい社会作りに貢献できたらと思います。
 
2つ目は売買事業をやっていきたいなと思っています。

具体的に教えて頂けますでしょうか!

オーナー様が最も怖いのは、空室のリスクだと考えています。物件を購入した際、私たちに任せてもらえれば、空室のリスクをなくすことが出来ます。

私たちは障害者の方が退去した場合でも、次の入居者をすぐに見つけることができるため、空室リスクが非常に低い状態で不動産投資を行うことが可能です。このようなスキームに取り組んでいきたいと考えています。

ありがとうございます!
古園さんはなにかございますか?

僕は特にないです。
原から命じられたことを愚直にこなすだけです!

なんだか、とてもいい関係ですね。
貴重なお話ありがとうございました!

■一般社団法人ささえる手■

〒177-0044
東京都練馬区上石神井1-12-7
TEL:03-5991-6050
営業日:月~金
営業時間:9~18時(祝日は除く)

記事へのコメント
1
2
3
4
5
送信
     
キャンセル

コメントを書く

CHINTAI JOURNAL
レビュー:  
 0 コメント