最終更新日:2025/12/09
記事公開日:2025/12/11
目次
近年、賃貸住宅の老朽化や空室率の上昇といった全国的な課題に直面する中、断熱性能や省エネ性、耐震性など賃貸住宅にも基本的な性能の向上が求められています。
こうした背景から、物件の価値を維持・向上させることが空室対策そのものとなる時代が到来しました。その対策として注目されているのが補助金制度です。
補助金は単に費用を抑える手段ではなく、オーナーの収益改善につながる有力なツールであり、不動産営業にとっても提案力向上や他社との差別化に直結します。
本記事では他社より一歩リードするために、オーナーに喜ばれる補助金制度について分かりやすく解説します。


はじめに、賃貸オーナーが目的別に活用できる補助金制度についてご紹介します。
省エネ・断熱リフォーム関連で、賃貸物件でも利用できる補助金は以下のとおりです。
| 補助金制度名 | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 子育てグリーン住宅支援事業 (リフォーム) | 開口部(窓・ドア)の断熱改修、その他の省エネ改修など | 最大60万円 | 幅広い改修に対応しており、複数の省エネ改修をまとめて行う場合に有利 |
| 先進的窓リノベ2025事業 | 熱性能の高い窓(ガラス・サッシ)やドアへの交換 | 最大200万円 | 窓の断熱改修に特化し補助率が高い |
| 賃貸集合給湯省エネ2025事業 | 賃貸集合住宅専用の小型の省エネ型給湯器(エコジョーズなど)への交換設置 | 最大7万円/台 | 集合住宅の給湯器交換に特化 |
| 長期優良住宅化リフォーム | 住宅の省エネ性能なの向上 | 原則最大160万円 | 物件の根本的な価値向上を目的とする大規模改修に適用 |
上記の補助金は国が特に力を入れている省エネ・断熱リフォーム分野に該当し、賃貸物件でも幅広く活用できます。
省エネ・断熱リフォームは、賃貸オーナーにとって関心が高く、空室対策・ランニングコストの削減・資産価値の向上という3つの観点から、提案しやすい補助金カテゴリーです。
省エネ・断熱リフォーム関連とあわせてオーナーの関心度が高いのは、耐震補強・防災対策関連の補助金です。
近年では南海トラフ地震をはじめとする大規模地震のリスクが高まる中、入居者の安全確保という観点からも、耐震対策は重要な検討項目です。
特に古い物件を所有するオーナーへの提案をおすすめします。
賃貸物件で利用可能な耐震補強・防災対策関連の主な補助金はこちらです。
| 補助金制度名 | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 長期優良住宅化リフォーム(耐震性向上工事) | 耐力壁の増設、金物補強、屋根の軽量化など | 原則最大160万円 | 旧耐震基準(1981年5月以前)の物件であっても、耐震性能を現行の新耐震基準レベルまで向上させることが可能 |
耐震改修により災害リスクの低減が図れるほか、物件の資産価値向上にもつながるのが大きなメリットです。地震保険料の割引が適用されるため、オーナーのランニングコスト削減にもつながります。
高齢化社会が進む中、賃貸住宅にもバリアフリーなど高齢者対応のリフォームを行うことにより、入居者の幅を広げられます。
賃貸物件でも利用できるバリアフリー・高齢者対応リフォームの補助金はこちらです。
| 補助金制度名 | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 長期優良住宅化リフォーム(高齢者等対策:共同住宅) | 共用廊下の幅の改修など | 原則最大160万円 | 高齢者に配慮した安全・安心な住環境を整備でき、入居ニーズの拡大につながる |
| 子育てグリーン住宅支援事業 | バリアフリー改修(手すり・段差解消など)※断熱等の必須工事とセットで実施が条件 | 最大60万円 | 住宅を所有し、賃貸に供する個人または法人も利用可 |
子育てグリーン住宅支援事業でのバリアフリー改修は、①開口部の断熱改修②躯体の断熱改修③エコ住宅設備の設置のうち、2つ以上のカテゴリーの必須工事を行った上で実施する場合のみ補助対象となります。60代以上の入居者が多いエリアでは空室改善を期待できます。
東京都をはじめとする各自治体では、太陽光発電をはじめとする創エネ設備の導入を促進する助成制度を展開しています。
賃貸物件でも利用できる太陽光発電など創エネ設備などの補助金例はこちらです。
| 補助金制度名(自治体の例) | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 東京都:集合住宅向け太陽光発電システム等普及促進事業 | 太陽光発電システム・蓄電池の設置 | 最大1,500万円 | 東京都が集合住宅への太陽光発電システムと蓄電池導入費用の一部を助成 |
| 神奈川県:共同住宅用自家消費型太陽光発電等導入費補助金 | 太陽光発電システム・蓄電池の設置 | ・太陽光発電設備:発電出力1kWあたり7万円・蓄電システム:1台につき15万円 | 県内の共同住宅に新たに太陽光発電設備等を導入する際の費用の一部を助成 |
蓄電池を併設すると、停電時にも共用部や一部住戸で電力が利用可能になり、入居者の安心感(防災性)が大幅に向上します。
子育て世帯の入居を後押しするため、各自治体では住宅支援や補助制度を充実させています。保育・教育環境が整ったエリアでは、子育て層の流入が進みやすい傾向があります。
賃貸物件でも利用できる子育て世帯の入居促進の補助金例はこちらです。
| 補助金制度名 | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 子育て支援型共同住宅推進事業 | ・浴室扉への外鍵設置や窓からの転落防止・交流場所として利用できる多目的室や、プレイロットを設置 など | ・子どもの安全確保に資する設備の設置:上限100万/戸・居住者等による交流を促す施設の設置:上限500万 | 賃貸住宅の新築・改修、分譲マンションの改修 |
子育て支援型共同住宅推進事業では、子どもの安全対策や地域交流を促進する施設整備に対し、最大500万円の補助が受けられます。子育て世帯が安心して暮らせる住環境づくりを後押しするでしょう。

地方自治体では独自施策として、耐震改修や老朽住宅の建替えなどを支援する独自の補助制度を展開しています。賃貸物件でも地方自治体の独自施策の補助金例はこちらです。
| 補助金制度名 | 補助対象となる改修内容 | 補助上限額の目安(一戸あたり) | 特徴 |
| 東京都:貸主応援事業 | 耐震改修住宅設備改善見守り機器設置など | ・耐震改修:上限250万円・住宅設備改善:上限50万円・見守り機器設置:上限4万円 | パッケージ化した各種補助メニューから必要に応じて自由に選択 |
| 大阪市民間老朽住宅建替支援事業 | 集合住宅への建替え戸建住宅への建替えなど | ・集合住宅への建替え:設計・解体等に要する費用の2/3以内・設計、解体等に要する費用の1/2〜2/3以内 | 老朽化した建物を防災性が高く、資産価値の高い集合住宅や戸建てに建替えるための解体・設計・建設費用を支援する補助金 |
東京都や大阪市などの自治体は、耐震性や防災性を高めるために賃貸物件の改修・建替えを支援する補助制度を実施しています。補助内容は多岐にわたり、耐震改修や見守り機器設置、老朽建物の建替えなどに対応しており、オーナーにとって資産価値向上の好機となります。
ここでは、実際に利用されやすく、費用対効果が高い3制度について解説します。
「先進的窓リノベ事業」は、古い窓を最新の高断熱窓に交換することで、住宅の省エネ性能を大きく向上させる国の補助制度です。窓からの熱の出入りを抑えることで、冷暖房の効率が高まり、光熱費の削減や快適な室内環境の実現につながるため、入居者の満足度が上がるでしょう。
補助額は窓のサイズや性能によって異なりますが、最大で200万円近く支給されるケースもあります。賃貸住宅にも活用可能で、退去時リフォームのタイミングにベストな補助金です。
「賃貸集合給湯省エネ事業」は、集合住宅に設置されている給湯器をエコジョーズなどの高効率な給湯器に交換する費用の一部を国が補助する制度です。賃貸住宅オーナーが対象で、対象機器を導入することで1台あたり最大5~7万円程度の補助が受けられます。
小規模工事でも対象になるため提案しやすく、入居者の光熱費が下がるため選ばれる物件になることを期待できます。給湯器の交換タイミングで営業が声をかけると高確率で決まる可能性があります。
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、築年数の経過した住宅を耐震性・省エネ性・劣化対策などの観点から性能向上させ、長く快適に住める住宅へとリフォームするための国の補助制度です。
補助額は最大160万円で、耐震・断熱・劣化対策・バリアフリーなどにかかるリフォーム費用が対象です。賃貸物件でも活用可能で、古い住宅の資産価値を高め、入居者ニーズに応える改修が可能となります。アパート・戸建賃貸の中長期保有オーナーに刺さる提案になるでしょう。
次に、若手営業担当者でも安心して使える、賃貸物件オーナーとの信頼関係を築くための実践的な補助金提案の会話例をご紹介します。
空室対策に悩むオーナーに対しては、入居者が入りやすくなりそうな提案をする必要があります。例えば、以下のようなご提案をしてみましょう。
「断熱窓の補助金が使える可能性があります。 夏と冬の光熱費が下がるので、入居者さんの満足度が上がります。 補助金でリフォーム費用を抑えられる今がチャンスです。」
先進的窓リノベ事業の補助金を提案してみると喜ばれる可能性があります。「年間〇〇円の光熱費削減効果が見込めます」といった、シミュレーション結果を提示すると、オーナーの判断を後押しできます。
給湯器などの設備が古くなり、設備更新に迷っているオーナーには以下の提案も効果的です。
「給湯器の交換に補助金が使えれば、費用を3〜5万円抑えられます。 補助金が出ている今のタイミングで更新される方が増えています。」
故障前は、計画的な高効率機種への交換(入居者の満足度向上)を提案できます。故障時は緊急の出費に直面しているオーナーに対して、補助金によるコスト軽減策を提示することで、頼りになる営業担当者であると思われるでしょう。強い信頼感につながります。
近年、各自治体では独自に賃貸物件でも利用できる補助金制度を打ち出しています。
オーナーの物件が所在する地域の自治体の補助金制度を調べるのもよいでしょう。
たとえば、太陽光や省エネ設備の補助金が賃貸物件でも利用可能な制度があれば、以下のように提案します。
「〇〇市は太陽光や省エネ設備の補助金が手厚いエリアです。 物件価値を維持しながら、ランニングコストの削減にもつながります。」
多くの自治体の補助金は、国の補助金(例:窓リノベ、給湯省エネ)と併用が可能な制度が多いため、他のリフォームとあわせて利用できる場合があります。

賃貸オーナーは入居促進や資産価値維持につながるリフォームを行う場合、コストを抑えることを切実に望んでいます。補助金はそんなオーナーの悩みを解決する制度です。
賃貸物件のリフォームで利用できる補助金情報をいち早く提供し、具体的なメリットを伝えられる営業担当者はオーナーから喜ばれます。
オーナーにとって嬉しい提案のコツは以下のとおりです。
・オーナーの悩み(空室・老朽化など)と補助金をセットで提案する
・手続き、予算、スケジュールを簡潔に説明する
この2つを意識することで、オーナーの経営課題を解決するパートナーとして信頼を築けるでしょう。
オーナーは賃貸物件のリフォームをする場合、コストを抑えることを望んでおり、補助金はオーナーの経営をサポートする強力な支援金です。営業担当者は、オーナーに有益な補助金情報をいち早く把握して伝えることにより、担当者として高い評価を得られるようになります。特に省エネ、耐震、設備更新の最新情報を提供すると喜ばれるでしょう。
補助金の提案は、オーナーが所有する物件の資産価値を向上させるだけでなく、入居促進へとつながります。結果、オーナーの満足度アップという好循環を生み出し、これからも物件を任せられる可能性が広がります。
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