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万が一の災害に備える!入居者とオーナーの信頼を守る不動産管理

最終更新日:2025/10/10

記事公開日:2025/10/17

近年では、南海トラフ地震や首都直下地震が発生する確率が、政府の地震調査委員会から公表されており、巨大災害によるリスクは、もはや無視できません。

ひとたび発生すれば、賃貸物件のオーナーは資産に大きな損害を受ける可能性があり、入居者も生活基盤を失う危険にさらされます。

本記事では万が一の災害に備えるために、管理会社が、入居者の安全とオーナーの資産を守るための管理方法について解説します。

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1.予測されている災害に備えてリスクを明確にする

南海トラフ地震や首都直下地震など発生確率の高い巨大災害に備え、管理会社はオーナーとともに物件固有のリスクを明確に把握し、被害を最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。

はじめに、巨大地震の最新情報や災害リスクの洗い出し方などについて解説しましょう。

迫りくるリスク!南海トラフ地震と首都直下地震

政府の地震調査委員会は、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は「60%から90%程度以上」「20%から50%」の2つの確率を新たに予測しました。(2025年9月時点)

そのため、大きな地震が発生する可能性は無視できない状況です。

発生すれば巨大津波や大規模な地盤沈下など、太平洋側の広い範囲に甚大な被害をもたらす恐れがあります。静岡県から宮崎県にかけての一部では最大震度7の激しい揺れが予想され、その周辺の広い範囲でも震度6強から6弱の強い揺れが想定されています。

一方、首都圏に住む人にとっては首都直下地震のリスクも無視できません。

東京や周辺地域では、最大震度が7となる地域があるほか、広い地域で震度6強から6弱の強い揺れの地震が発生する可能性があり、都市機能の麻痺や長期的なライフラインの寸断が懸念されます。

これらの災害は発生時期を特定できないからこそ、最新の科学的予測を知ったうえで、賃貸物件の避難経路や住民の避難方法などを日頃から確認して備えておくことが大切です。

オーナーや入居者と情報を共有し、被害を最小限にする行動計画を立てておきましょう。

管理物件の災害リスクを洗い出す

担当する管理物件がどのような災害リスクを抱えているか把握しておくことも必要です。

建物の築年数や耐震基準、地盤の強さ、周辺環境(河川・斜面・避難経路)を調べましょう。

過去の災害履歴や自治体の防災情報を確認しておくことも有効です。

さらに設備の老朽化や避難動線の確保状況を点検し、写真や図面で記録しておくと被害想定と対策の優先順位が立てやすくなります。

これらを整理して災害時の対応計画に役立てましょう。

災害発生時の被害をシミュレーションする

管理物件では災害発生時の被害を事前にシミュレーションしておくことが重要です。

入居者の安否確認や建物・設備の損壊、電気・水道などライフライン停止など、実際に起こりうる事態を想定します。

非常時における情報の連絡体制を事前に構築しておきましょう。

物件の管理担当者が「災害発生時には具体的に何を行うか」を明確にしておくことで混乱を防ぎ、迅速な初動対応が可能になります。シミュレーションは被害を最小限に抑える実践的な防災対策の第一歩です。

2.災害発生時に管理物件で求められる対応

大地震などの災害が発生すると大抵の人はパニックになりがちですが、物件には入居者が住んでいるため、管理会社は冷静かつ迅速に災害対応をする必要があります。

ここでは、災害発生時に管理物件で求められる対応について解説します。

入居者の安否確認を最優先で行う

災害発生時に、管理物件で最優先すべきは入居者の安否確認です。

まず、被害状況を把握し、ケガや避難の必要がある人がいないかを迅速に確認しましょう。

安否情報は家族や関係機関への連絡の基礎となり、適切な救援やサポートが可能になります。

電話回線がパンクすることも想定し、SNSやメッセージアプリ、安否確認システムなど、複数のツールを駆使した連絡網を事前に構築しておくと安心です。

建物の被害やライフラインの停止状況も確認しますが、入居者の安否確認を第一に優先しなければなりません。日頃から連絡網や安否確認手段を用意しておけば災害時の混乱が減り、迅速に対応できるようになります。

被害状況の把握とオーナーへの報告

入居者の安否確認の次に行わなければならないのが、被害状況の把握とオーナーへの報告です。入居者から建物の損壊や設備の故障(エレベーターの停止、給水管の破裂、窓ガラスの破損など)の報告があった場合、その被害状況を正確に把握します。

応急処置で対応できるケースと専門業者を呼ぶべきケースを迅速に判断し、被害状況は写真や動画で記録しておきましょう。これらの記録は後日オーナーへの報告や保険金の請求に必要です。

2011年3月に発生した東日本大震災では、筆者の家族が所有する埼玉県にあるマンションも一部被害を受けました。地震保険に加入していたので保険金が下り、修繕費用に充てられ大変助かっています。保険金請求には写真の提供が付きものなので、必ず建物の被害状況を撮影してください。

大きな災害が発生した際には、オーナーは大切な資産がどうなっているか大きな不安を抱きます。そのため、入居者の安否や物件の被害状況について、オーナーへ正確かつ早めに報告することが重要です。

発生後も継続的なコミュニケーションをすることでオーナーに安心感を与え、管理解約を防げるようになります。

修繕・保険対応や外部機関との連携

災害発生後、管理会社はスピーディーな修繕手配と保険対応、外部機関との連携を行います。まず、建物の安全確認を行い、工務店や専門業者へ修繕を依頼しましょう。被害状況を写真などで記録し、保険会社への保険金申請もサポートします。

水道・電気などの復旧情報や避難支援は自治体の情報を入居者へ伝えると安心です。

初動対応が速いとオーナーや入居者の不安を和らげ、管理に対する満足度の向上につながります。

3. 災害に強い管理体制の構築と実践

大規模災害はいつ起こるか予測できませんが、発生すれば入居者の安全やオーナーの資産に大きな影響を及ぼします。

そのため、平時から災害に強い管理体制を構築し、実践しておくことが重要です。

ここでは、災害に強い管理体制の構築と実践について解説します。

災害対応マニュアルの策定と共有

管理物件を災害から守るには、災害対応マニュアルを整備し、スタッフ全員で共有しておくことが欠かせません。

マニュアルに記載する主な内容は以下のとおりです。

・入居者の安否確認方法
・被害状況の記録方法
・オーナーへの連絡方法
・関係各所(業者、保険会社)への連絡体制
・ライフラインの復旧方法 など

上記の内容をマニュアル化しておくと、いざという時に慌てず対応できます。

定期的な訓練と役割分担

定期的な訓練と役割分担も欠かせない要素です。

災害発生時に備えて事前に連絡体制を構築し、避難訓練を定期的に実施することで、スタッフ全体の対応力が向上します。

訓練を繰り返す中で、非常時の連絡手段や避難経路に関する予想外の問題点や盲点を発見できることもあるでしょう。

スタッフ間で災害時の管理体制をしっかり共有し、内容を定期的に見直すことで、入居者の安全を確実に守り、被害を最小限に抑えられます。

災害に備えた日々の営業活動

管理物件を災害から守るには、日々の営業活動の中で災害時に対応できる体制を整えることが重要です。物件ごとにリスクを調べ、耐震性を確認し、必要な修繕は早めに実施します。

地震保険の提案や耐震補強の相談をオーナーと行い、備えを強化しておくと安心です。

工務店と普段からつながりを持っておけば、被災時も迅速な修繕が可能になります。

こうした継続的な取り組みがオーナーからの信頼を高め、長期的なパートナー関係を築けるようになるでしょう。

まとめ:災害対応はオーナーからの信頼を守るための最重要業務

管理会社にとって災害対応は、オーナーからの信頼と入居者の安全を守るための最重要業務です。災害が発生した際は被害状況を早めに把握し、入居者の安否確認を第一に行います。

建物の被害状況も気になるところですが、まずは人命を優先しましょう。

建物に被害が出た場合は入居者の安全性を保つため、工務店と連携して早期に修繕を依頼することも必要です。対応が早いほどオーナーや入居者は心から安心できます。

なお、被害を最小限に抑えるには、平時から災害対応マニュアルをしっかり整備しておくことも欠かせません。オーナーに対しては、地震保険への加入や耐震補強工事など、大切な資産を守るために具体的な提案をしておきます。

「備えあれば憂いなし」ということわざがあるように、前もって準備をしっかりしておけば、万が一の事態が起こってもうろたえずに落ち着いて対応できます。

災害が発生する前から確かな対応力を持つ管理会社は、オーナーの大切な資産を守れるため、長期的な信頼を得られるようになるでしょう。

矢口 美加子

この記事を書いた人

宅地建物取引士・整理収納アドバイザー1級・福祉住環境コーディネーター2級。
不動産売買やリフォーム、不動産投資など不動産全般に関する記事を複数のメディアで執筆。家族が経営する投資用物件の入居者管理をしているため、オーナー目線での記事も得意とする。

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