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「宇宙×不動産カンファレンス 2025」イベントレポート|衛星データとAIが変える不動産営業の未来とは

最終更新日:2026/01/07

記事公開日:2025/12/26

今回は、2025年12月2日に開催された「宇宙×不動産カンファレンス 2025」のイベントレポートをお届けします。

会場には、宇宙・テック・不動産のプロフェッショナルたちが、業界の垣根を超えて集結。AIや衛星データといった最新技術から、業界のあり方を問い直す議論まで、不動産に携わる立場として考えさせられる内容が展開されました。

本記事では、不動産業界の「いま」を見つめ直す視点と、「これからの未来」を考えるヒントが語られた4つのセッションを取り上げ、カンファレンスの流れをレポート形式で紹介します。

この記事で分かること

①「地面師たち」×「正直不動産」原作者が対談!トラブルを回避する「違和感」の正体
② 衛星データ&AI活用で実現する「地主特定・駐車場提案」等の営業効率化事例
③「宇宙ステーションを賃貸する」未来が到来?お客様との会話ネタにもなる、最新テクノロジーと不動産市場の可能性

業界の動きをさまざまな角度から捉えられる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

「宇宙×不動産カンファレンス 2025」が開催

衛星データと不動産ビジネスが交差する、これまでにない試みとして注目を集めた「宇宙×不動産カンファレンス 2025(通称:SRC 2025)」。

まずは、本カンファレンスが開催された目的や背景について見ていきましょう。

「宇宙×不動産カンファレンス 2025」の目的

衛星データやAI技術が身近になりつつある中で、不動産市場においても、その可能性に注目が集まっています。一方で、実際にビジネスや業務にどう結びつけていくかは、まだ手探りの段階にあるのが現状です。

こうした背景を踏まえ、本カンファレンスは、宇宙分野で培われてきた技術と、不動産分野が持つ課題やニーズを重ね合わせながら、新たな市場の広がりや活用イメージを共有することを目的に開催されました。

主催「株式会社WHERE」の概要と事業内容

主催の「株式会社WHERE(ウェア)」は、JAXAの技術や知見を活用して事業を展開するスタートアップ企業です。
衛星データとAIを組み合わせることで、土地や建物に関する情報を効率的に収集・可視化する独自のサービスを開発しています。
従来、不動産情報の取得は現地調査に頼る部分が大きく、時間とコストがかかっていました。こうした課題に対し、WHEREは宇宙から得られるデータを活用することで、誰でも手軽に必要な情報にアクセスできる仕組みを目指しています。

本カンファレンスでは、WHEREの代表である阿久津岳生氏自らが登壇し、衛星データとAIを不動産に活用する社会的意義について語る場面もありました。

注目セッション1. 「地面師たち」VS「正直不動産」

ここからは、カンファレンスで行われたセッションの中から、内容の一部を紹介していきます。

まず取り上げるのは、不動産取引における「信頼」をテーマにしたセッション「『地面師たち』VS『正直不動産』」です。

実在の詐欺事件をもとにした小説「地面師たち」の原作者・新庄耕氏と、不動産業界の裏側を描く漫画「正直不動産」の原案者・夏原武氏が登壇。「嘘」と「正直」という対照的な切り口から、不動産取引の現場について語られました。

「地面師たち」の原作者・新庄耕氏の視点

新庄氏はまず、「地面師による詐欺がなぜ成立してしまうのか」について、取材を通じた実例を交えながら解説しました。

中でも印象的だったのは、「書類上は完璧なのに、ボロボロの財布から出てきた免許証がやけに綺麗だった」というエピソードです。一見すると問題のない状況に潜む「わずかな違和感」。そうした小さな「ズレ」に気づけるかどうかが、詐欺を見抜くポイントになると語られました。

数字や条件だけでなく、「何か引っかかる」と感じた感覚を見過ごさない姿勢の大切さが伝わってきました。

「正直不動産」の原案者・夏原武氏の視点

夏原氏は、不動産営業の現場で起こりがちな判断や対応のあり方についても言及しました。

その中で示されたのが、「デメリットをあえて伝えることが、結果として信頼につながる」という考え方です。同氏は現場での具体的な対応例として、次のような姿勢を紹介しました。

1.物件の良い面だけでなく、懸念点も正直に説明し、「この条件を受け入れられるか」を確認する

2.お客様から「気にならない」という返答があれば、「この物件はお得ですよ」と伝える

透明性が求められる時代において、「誠実な対応そのものが価値になる」。そんなメッセージが印象に残る内容でした。

セッションを振り返って見えてきたポイント

・わずかな違和感に気づく直感力が、トラブルを防ぐ
・物件のリスクや不確かな情報も「正直」に伝える姿勢が、信頼につながる
・誠実な営業は、結果的に自分自身を守ることにもなる

目の前の利益やその場の流れに流されず、リスクや違和感にしっかりと目を向ける姿勢は、一見シンプルでありながら、実際にはとても難しいことです。

それでも、「正しく伝える」「気づいたことを見過ごさない」といった小さな行動を丁寧に積み重ねていくことが、信頼を築く近道になります。

また、こうした積み重ねは、結果的にお客様との関係悪化を防ぎ、自分の時間や労力を守ることにもつながります。誠実な営業はお客様のためだけでなく、「自分の働き方を守る武器にもなりうる」と、改めて気付かされたセッションでした。

注目セッション2. 宇宙データが動かすリアルな不動産市場

続いて紹介するのは、宇宙データとAIを活用して、不動産の「見えにくかった情報」をどのように可視化できるのかをテーマにしたセッションです。

三井不動産リアルティ株式会社の大桑悠太郎氏、阪急阪神不動産株式会社の阪口祐輔氏、福岡地所株式会社の道脇隆介氏、株式会社WHEREの西村仁氏が登壇し、テクノロジーがもたらす新たな可能性について意見が交わされました。

議論の中では、衛星データとAIを不動産分野にどのように活用できるのか、その具体的な取り組みとして、株式会社WHEREが手がける土地・建物の解析サービスも紹介されました。

同サービスは、上空から取得したデータを活用することで、地形や日照条件、浸水リスク、地盤の状況、空き地・空き家の分布といった情報を、広い範囲で把握できる点が特徴とされています。

これまで現地調査や個別データに頼っていた情報を、ひとつの視点で整理できるようになることで、不動産の見方に新たな切り口が生まれることを感じさせるセッションでした。

実際の導入事例から見えてきた効果

本セッションでは、WHEREのサービスを導入している企業の事例も紹介され、実務の中でどのような変化が生まれているのかについても共有されました。

たとえば、駐車場用地の探索では、建物の解体中であっても、衛星データを使って間口や面積を把握できるようになった事例が紹介されました。これにより、解体終了後すぐに提案へと動けるようになり、収益化までのスピードが大きく向上したといいます。

また、駅周辺のエリアを広く検索した結果、同一名義の土地が多数見つかり、大地主の存在に気づくことができたという事例も挙げられました。人の手による調査では見逃してしまいがちな情報が、データを通じて可視化された好例です。

そのほか、謄本情報の整理や入力作業が効率化され、日々の業務負担が軽減されたという声もあり、実務面での効果も共有されました。

セッションを振り返って見えてきたポイント

・地形や災害リスクといった「見えづらかった情報」を、衛星データで把握できる時代が近づいている
・言葉だけでなく、根拠のあるデータで伝える力が求められるようになる
・新しい技術について知っておくことが、営業の引き出しを広げることにつながる

今はまだ最先端の話に思えるかもしれませんが、「テクノロジーが不動産営業の土台を変えていく未来は、すぐそこまで来ている」と感じさせられる内容でした。

注目セッション3. 「宇宙テクノロジーで創造する10京円の不動産市場」

本セッションは、株式会社アクセルスペースの深澤達彦氏と、東大IPCフェローの水本尚宏氏が登壇し、「宇宙ビジネスの次なる注目領域は不動産である」という視点が示されました。

衛星から観測できる中でも不動産は最も高額な資産であり、その動きをタイムリーに捉えられる衛星データとの親和性は非常に高いとされています。

日本の不動産ストックは約3000〜4000兆円規模、世界全体では10京円規模にのぼるとも試算されており、その市場の大きさが改めて示されました。そこに衛星技術が加われば、新たなビジネス機会が生まれる余地は十分にあるというわけです。

さらに、「地球上の変化をすべて記録できるようになれば、未来を予測することも可能になる」という話題も印象的でした。衛星による観測データが精緻化すれば、将来的には金融や都市開発など幅広い分野に波及していく可能性が見込まれます。

セッションを振り返って見えてきたポイント

・衛星データを使った不動産サービスはすでに実用段階に入っている
・土地や物件の動きを衛星データで把握できる時代になりつつある

今のうちから「衛星データで何ができるのか」というアンテナを張っておくだけでも、将来の武器になるはずです。技術の進化を「自分には関係ない」と思わず、積極的に情報を取りにいく姿勢が求められます。

注目セッション4. 「宇宙の空間を賃貸する時代が到来!」

カンファレンスの締めくくりとなった本セッションでは、株式会社CHINTAIの奥田倫也氏と、株式会社Digital Blastの堀口真吾氏が登壇。「宇宙空間を賃貸する」という一見SFのようなテーマが、リアルなビジネスとして語られました。

国際宇宙ステーション(ISS)では、一定の条件を満たせば民間による商業利用が可能になってきており、企業や団体が宇宙空間を活用する道が徐々に開かれつつあります。

特に注目を集めたのが、「多人数でシェアすれば意外と手が届く」という試算です。たとえば、東京のシェアオフィスにISSの利用権を付けた場合、月額1.5万円程度の上乗せで提供可能という例や、学生数が2万人規模の大学であれば、1人あたり月1,400円で利用できるという試算も紹介されました。

もちろんこれは理論上の計算に過ぎませんが、宇宙空間の利用が「特別な存在」から「現実的な選択肢」へと変わりつつあることを感じさせる内容でした。

さらに、「宇宙空間を教育機関に貸す」という構想も共有され、大学や研究機関が宇宙での実験を通じて次世代の人材を育成することで、新たな産業につながる兆しがあると語られました。

セッションを振り返って見えてきたポイント

・「どんな空間を、どんな人に、どう使ってもらうか」という発想は、宇宙でも地上でも変わらない
・需要を先読みし、活用イメージを具体化できる営業は、どんな時代でも求められる

不動産営業は、空間の価値を伝えるだけでなく「どう使われるか」を共に想像する仕事でもあります。そうした視点で見れば、宇宙のように遠い話も、自分たちの営業スタイルを見直すヒントになるでしょう。

「宇宙×不動産カンファレンス 2025」を総括

今回の「宇宙×不動産カンファレンス 2025」は、宇宙という一見遠いテーマを通じて、不動産業界の「いま」と「これから」を見つめ直すきっかけとなるイベントでした。

カンファレンスで語られた内容は多岐にわたりましたが、共通していたのは「情報とどう向き合い、どう伝えていくか」という視点です。

不動産取引における信頼性を問い直す議論では、デメリットも正直に伝える姿勢が、結果として信頼につながるという考え方が示されました。一方で、衛星データやAIを活用し、これまで見えにくかった情報をどのように扱っていくかといった、新たな可能性についても語られました。

また、宇宙空間の賃貸や「月の土地を1万円で購入した」といったエピソードも飛び出すなど、宇宙が身近な存在として語られていた点も印象的でした。

今回のイベントレポートをきっかけに、少し立ち止まって業界の動きや変化に目を向けてみてください。これからの不動産業界を担う一人として、技術の進化を味方につけながら、一歩ずつ成長を目指していきましょう。

宇宙×不動産カンファレンス 2025

日時2025年12月2日(火)13:00〜(開場12:00〜)
会場時事通信ホール(東京都中央区銀座5-15-8)
主催株式会社WHERE
共催株式会社sorano me
後援国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
公式HPhttps://srconf.com/

泉 正孝

この記事を書いた人

ウェブスタジオイズミ代表。宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者・相続マイスター。東京都在住。大学卒業後、電鉄系総合不動産会社に入社し、不動産仲介事業部に所属。

不動産業界歴10年以上、ライター歴7年以上、サイト運営歴9年以上の経験を活かし、ライター兼ディレクター、SEOコンサルタントとして活動中。「住宅ローン・相続・税金・保険・資産運用」など、実体験に基づく記事を1900本以上執筆。SEO上位獲得多数。専門家として1次情報とエビデンスを重視し、読者目線の執筆を心がけている。

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