記事公開日:2021/12/15
最終更新日:2023/11/16
コロナ禍によって、接客業のスタイルは大きく変わりつつあります。業種によっては、対面接客からオンライン接客が主流になりました。対面とオンラインでは、接客スタイルがまったく異なります。今までよりも売り上げが減少した、カスタマートラブルが増えたなど、悩みを持っている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、オンライン接客で成果を上げるコツや導入のメリット、またオンライン接客を失敗しないための方法・注意点を紹介していきます。
目次
オンライン接客とは、オンライン接客ツールを活用し、チャットやビデオ通話などで接客をするサービスのことです。
コロナ禍以前は、リアル店舗でスタッフが接客をすることが当たり前でした。しかしコロナウイルス感染拡大防止・感染予防の観点から、直接会話をするのではなく、オンラインを使った接客サービスを導入する企業が増えています。
ECサイトでも商品の紹介はできますが、画一的な写真や情報だけでは商品の詳細が分からず、購入までに至らないことも少なくありません。オンライン接客であれば、対面接客と同じように店舗スタッフに対して質問や相談ができます。さらに、画面越しであっても実際の商品を見られるので、顧客の購入意欲がアップする可能性もあるでしょう。
オンライン接客は、会話ができるという点では対面接客と同じですが、オンラインならではのポイントもあります。成果を上げるには、対面接客と異なるポイントを押さえておくことが重要です。以下で詳しく解説していきます。
ECサイトやWebサイトのように、人件費をかけなくてもオンライン販売をすることは可能です。わざわざ人件費をかけてオンライン接客にしなくてもいいのでは、と思う企業もあるかもしれません。
しかし、オンライン接客だからこそのメリットがあります。ここでは、オンライン接客の5つのメリットをご紹介します。必要性に疑問を感じている方はチェックしてみましょう。
オンライン接客は、集客しやすいというメリットがあります。
コロナ禍により、外出を控える人が増えています。商品や製品を購入するために、遠方からリアル店舗へ足を運ぶことにリスクを感じる人も多いでしょう。
オンライン接客であれば、「店舗に足を運ぶ」というハードルが下がります。遠方の顧客でもツールにアクセスするだけでいいため、企業側はオンライン上で集客をしやすくなるはずです。
不動産業界においては、オンラインで物件紹介や内見ができることで、移動のコストを軽減できるメリットがあることも覚えておきましょう。
オンライン接客を導入すると、ECサイトやWebサイトなどユーザー自身で完結するサービスと比べ、購入・成約率が上がりやすいというメリットがあります。
商品や製品に興味を抱いて、ECサイトやWebサイトに顧客を誘導できたとしても、購入や成約を完結させるには、顧客の疑問や不安を取り除かなければなりません。説明文や画像などの情報だけでは、それらを取り除くことは難しいでしょう。
特に不動産など金額の大きな契約は、不安を解消したいというユーザー心理が強く働くため、スタッフとのコミュニケーションが求められます。オンライン接客で店舗スタッフが対応すれば、そういった疑問や不安に対し丁寧に案内をすることが可能です。顧客の信頼や安心感を得られるでしょう。
オンライン接客は、店舗スタッフの接客ノウハウを活かせるというメリットもあります。
ECサイトやWebサイトなどのツールでは、一方的な情報しか提供できず、店舗スタッフが持っている「物を売る力」を発揮できません。購入や成約は、販売スタッフと顧客のコミュニケーションからも生まれるものです。デジタルマーケティングでは、そうしたコミュニケーションによる収益機会を損失してしまうことにもなります。
オンライン接客であれば、ビデオ通話やチャットなどでコミュニケーションが取れます。対面接客と同様に、接客ノウハウを活かした営業活動が可能です。もちろん、ノウハウを活かすことは売り上げにも繋がるので、オンライン接客ツールにコストをかけても十分に元を取れるでしょう。
オンライン接客の導入により、客単価アップが見込めます。オンライン上で買い物をする際、購入の判断基準は各商品ページの写真や説明文章などがメインです。「初めて購入する」「商品の種類が多い」といった場合、顧客はどれが自分にマッチしているか判断できず離脱する可能性があります。
しかし、オンライン接客であれば、専門スタッフによるヒアリングや提案が可能なため、顧客の意思決定を促せます。さらに、接客により「複数の商品をセットで購入」「より上位の商品を購入」などにも期待できるため、オンライン接客は客単価アップに期待できる取り組みです。
オンライン接客は顧客との繋がり(ブランドロイヤリティ)の強化にも期待できます。オンラインでの買い物は便利な反面、写真や文章だけでは対面のような丁寧な接客ができません。自社や商品への愛着を持ってもらうには、サービスの質の向上や顧客ニーズの把握などが重要です。
オンライン接客の場合、対面と変わらない接客ができる他、1対1での対応も可能です。購入体験における特別感・付加価値を提供できるので、顧客との繋がりをより強化できます。「あの人に接客してほしい」「あのお店のオンライン接客をまた使いたい」と思ってもらえるようになれば、ブランドロイヤリティ向上が見込めます。
上述のように、オンライン接客にはメリットも多いですが、注意点もあります。オンライン接客の導入に失敗しないように、前もって確認しておきましょう。
当然ですが、オンライン接客ツールの導入にはコストがかかります。
オンライン接客は集客しやすい、購入・成約率がアップするなどのメリットがあるものの、コストを回収できるのかと不安を感じるかもしれません。
ただし、利益を出すには、購入・成約などによる売り上げだけでなく、コスト削減も重要です。その点、オンライン接客の導入にあたってスタッフの移動費や店舗の光熱費などのコストを削減できれば、差し引きゼロになる可能性はあります。
オンライン接客には決して安くはないコストがかかるので、導入の際は採算が取れるのか、しっかりと見極めましょう。
オンライン接客ツールの種類にもよりますが、ユーザーの心理状態が把握しにくいという点にも注意しましょう。
接客では、顧客の表情や声のトーンなどで心理状態を把握し、心理に合わせた対応を取ることが大切です。しかし、オンラインの場合、実際に会って話す場合と比べ、タイムラグがあったり、細かいニュアンスが伝わりづらくなってしまいます。
心理に添えない接客では、売上に繋がらないだけでなく、クレームなどのトラブルが起こる可能性もあります。オンライン接客においては、よりきめ細やかで丁寧な対応を心がけることが重要です。
オンライン接客では、共有できる情報が限られるという点に注意しましょう。画面越しでは、ニオイや色、触り心地や味などを共有できません。
例えば不動産物件のオンライン内見の場合、フローリングの質感や扉の開閉のスムーズさなどは人によって感覚が異なるので、断定的に伝えてしまうとのちのちトラブルになることもあります。オンラインでは、嗅覚や味覚、触覚などは共有できないことを踏まえて、接客をするように心掛けましょう。
ここではオンライン接客で使われるツールの例を紹介します。自社にマッチしたツールを見つけて、オンライン接客の質を向上させましょう。
ビデオ通話ツールであれば、オンライン上で個人~複数名の接客ができます。具体的なビデオ通話ツールのサービス例を挙げていくので、自社に合うツールを見つけましょう。
【ビデオ通話ツールの具体例】
ツール名 | 特徴 |
Zoom | ・スマホやPCなどデバイスを選ばない・100~300名と通話可能・無料プランあり |
Google Meet | ・万全のセキュリティ対策・ソフトウェアのインストール不要・Googleアカウントがあれば誰でも無料 |
skype | ・サイトコンテンツやファイルの共有が可能・会話に字幕をつけられる・サインアップやダウンロード不要 |
上記は無料で利用できるビデオ通話ツールなので、コストを抑えつつオンライン接客を行いたい場合は利用してみてください。
チャットツールはテキストを使い、メールよりも気軽に相手とやり取りできるツールです。以下に具体例を挙げていくので、参考にしてみてください。
【チャットツールの具体例】
ツール名 | 特徴 |
チャネルトーク | ・顧客情報や対応状況などを一元管理できる・問合せ状況の分析機能搭載・オペレーターのシフト管理も可能 |
Zendesk | ・AIを使った365日24時間サポート(有人対応もあり)・顧客情報や会話履歴を一元管理・Webサイトやアプリにチャットを追加 |
チャットプラス | ・AIによる自動応答・顧客のアクションを分析・無人&有人対応を切り替え可能 |
チャットを利用することで、WebサイトやSNSなどからのシームレスな対応も実現できます。有人・無人対応の切り替えにより人的リソースの最適化も図れるため、オンライン接客の対応力向上を狙う場合はチャットツールの利用も検討してみましょう。
SNSはコミュニケーションツールとして利用している顧客も多いため、オンライン接客に対するハードルが下げられます。具体的なツールの種類と特徴について見ていきましょう。
【SNSの具体例】
ツール名 | 特徴 |
・写真や映像などを使い視覚的にわかりやすい商品説明ができる・ライブ機能により、リアルタイムな質疑応答も可能 | |
LINE | ・顧客に対してメッセージや写真などを直接送信できる・顧客と1対1でやり取りできる |
SNSは無料で始められる(プランによっては有料)ため、オンライン接客が初めての企業でも利用しやすいツールです。
VR(仮想現実)を使ったオンライン接客は、不動産業界でも利用されています。例えば、物件の内見でVRを使用すると、遠方に住んでいる顧客がその場にいるような感覚で部屋の中を見て回れます。
VRの具体例を紹介するので、自社にマッチしているかチェックしてみましょう。
【VRの具体例】
ツール名 | 特徴 |
NURVE | ・1クリックで通話できる・専用アプリのダウンロード不要・カスタマーサポートあり |
NODALVIEW | ・360°のパノラマ撮影が可能・撮影はスマホでできる・インフォメーションマーク(動画情報やインテリアのサイズなど)を埋め込める |
VRは、「店舗での接客」のような臨場感を顧客に与えられます。商品・サービスへの理解度を深めてほしい場合、VRの導入を検討してみましょう。
先述したツールを使うことでオンライン接客ができるため、「自分でもできそうだ」と思った方も多いのではないでしょうか。次項から、オンライン接客で成約に繋がるまでの流れについて、賃貸物件仲介を例に解説していきます。
オンライン接客を始める際は、自社HPに問合せフォームを作成し、来店不要で手続きできることをアピールしましょう。顧客側は、オンライン接客を受ける方法やメリットを知っていないことが多いからです。
オンライン接客に誘導するための窓口として、まずは問合せフォームを作成します。このとき、チャットツールやSNSなどを窓口として設置しておけば、より気軽に質問してもらえます。
すでにSNSを運用している場合は、フォロワーへ向けたPRも行いましょう。SNSからオンライン接客へ誘導できれば、よりシームレスな状態を確立できます。
問合せを受理した際は、迅速に返信してアポイント獲得を目指しましょう。問合せフォーム(チャットやSNS)は気軽に使える反面、レスポンスの速さが求められます。問合せフォームから離脱されないよう、返信は迅速に行って専用ツール(オンライン内見やビデオ通話など)へ誘導してください。
ただし、強引な誘導はNGです。あくまでも「オンラインで接客ができる」という選択肢を提示する程度に留めましょう。顧客の望まない方向へ誘導してしまうと、対応を打ち切られる可能性があります。
アポイントを獲得できた場合は、指定ツールを使ったオンライン接客を始めます。始める際は、内見がしたいのか、賃貸物件探しの相談なのか、顧客のニーズを確認しておきましょう。
また、不動産業界では、2021年3月から不動産売買においてもオンライン上で重要事項説明(IT重説)が可能になりました。オンライン接客の際はこの点についても触れ、成約までスムーズに移行しましょう。
※参考 国土交通省
『不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説) の本格運用について」』
オンライン接客後(成約後)はアフターフォローを十分に行って、顧客満足度の向上に努めましょう。オンライン接客に慣れていない従業員は、対面との違いに苦戦するかもしれません。
アンケート調査などを利用して、「適切な対応だったか」「より満足してもらうにはどうすべきか」を確認しましょう。顧客側の意見を取り入れることで、オンライン接客のクオリティや顧客満足度の向上が見込めます。
続いて、オンライン接客で成果を上げるための5つのコツを紹介します。
オンラインでは、どうしてもスタッフ側が一方的に話すことが多くなってしまいます。ユーザーへの問いかけをこまめに行うようにしましょう。「聞きたいことがあるなら聞いてくるだろう」という姿勢では、購入には結びつきません。
積極的に質問ができるユーザーとできないユーザーがいるため、適切なタイミングで問いかけをすることにより、顧客の不安や疑問を解消できます。不動産業界であれば、オンライン内見で「気になる点はありますか?」など、こまめに問いかけをして、顧客の満足度をアップしましょう。
オンラインでは、視認性の高い資料を用いることも、成果を上げる必須要素です。ビデオ通話などで、細かい文字や複数枚に分かれている資料を出されても、見づらいと感じるでしょう。顧客は疲れてしまい、興味をなくしてしまう可能性があります。
例えば不動産業界の場合は、紹介する賃貸物件の数を絞り視認性を高めることで、顧客に分かりやすい接客ができ、成果に繋がりやすくなります。
オンラインでは、ユーザーが疲れてしまわないようにスピーディーな接客を心がけましょう。
パソコンでもスマホでも、画面を長時間見ることはとても疲れます。どんなに興味があるものでも、欲しいと思っているものでも、疲れてしまうと購入意欲は減少します。
もちろん、商品や製品のメリット、特徴などの魅力はしっかり伝えることが大切です。だらだらと長くならないように簡潔に伝え、スピーディーな接客を心がけましょう。
間接的に成果に繋がるのが、ツールの操作案内をできるようにしておくことです。
オンラインの操作に慣れていないユーザーにとっては、オンライン上の操作はわかりづらいものです。
専門的な用語で使い方を説明しても、理解することは難しいでしょう。慣れていないユーザー向けにしっかりと案内することで、間接的な成果アップに繋がります。
通信回線トラブル時に対応できるように、マニュアルなど対応策を用意しておくことも成果に繋がるポイントです。
どんなに通信環境を整えていても、ユーザー側の通信環境が不安定だった場合、いきなり通信が切れたり画面が固まったりする可能性があります。購入や成約まであと一歩、というところで通信トラブルが起こり、改善に時間がかかるとユーザーの購入意欲は冷めてしまいます。トラブル発生時はすぐに対応できるように準備しておきましょう。
オンライン接客というと、美容系やアパレル系、百貨店など「物」を取り扱う業界で使われているというイメージがあるかもしれません。しかし、今やオンライン接客はあらゆる業界に導入されています。
次項では、オンライン接客で業務を効率化している業界を紹介するので、同じ業界の方は参考にしてみましょう。
不動産業界のオンライン接客の特徴は、内見やモデルルームの見学、契約後の重要事項説明など、本来であれば現地もしくは会社に足を運ぶ必要がある内容をオンラインで完結していることです。
内見や見学、重要事項説明などは、顧客と営業マンのスケジュール調整をしなくてはなりません。これらをオンラインで完結できるのは、双方にとって大きなメリットです。
顧客にとっては、家や部屋の雰囲気が体感できないというデメリットもありますが、休日を内見で潰すこともなく、移動にかかる時間や交通費を節約できます。特に遠方への引越しの場合に利便性が高いといえます。不動産業界のオンライン接客は、メリットのほうが大きいと言えるでしょう。
アパレル業界でのオンライン接客は、希望するデザインやカラーの服を対面接客と同じように紹介できることが特徴です。
ECでのショッピングと異なり、オンライン接客であれば、スタッフが手触りや質感など写真ではわからない点を伝えられるうえに、顧客が希望する角度に服を見せることも可能です。
また、チャットツールやZoomなどビデオ通話ツールを活用することで、「洋服を買う際にアドバイスが欲しい」という顧客ニーズを満たせるので、対面接客のクオリティを保つこともできます。
旅行業界でのオンライン接客は、ツアーの予約だけでなく、希望する観光地と交通手段をカスタマイズしてもらう旅行相談が可能です。
専用アプリを導入している旅行会社も多く、コードの発行やパスワードの入力など、面倒なステップがありません。スマートフォンでもパソコンでもシームレスにアクセスできます。
しかし、オンライン接客は日時を選択して予約をしなければならないのがデメリットです。お盆やゴールデンウィーク前などは混み合ってしまい、しっかりと対応するスタッフを確保できない可能性もあります。
とはいえ、旅行相談をオンラインにすることで、いつでも気軽に相談ができるため、集客率は確実にアップします。
オンライン接客は、単にコロナウイルス感染のリスクを減らせるだけでなく、「集客しやすい」「成約率が高くなる」など、さまざまなメリットがあります。今や小売業界やデパート業界だけでなく、不動産業界でも導入する企業が増えているのが実情です。
スタッフにとって、オンライン接客という新しいチャレンジは、いい刺激になります。また、「対面で話すのが苦手」という方でも、オンラインであれば気軽に相談ができるということもあります。メリットが多いオンライン接客の導入をを、是非前向きに検討してみましょう。
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