記事公開日:2025/07/03
最終更新日:2025/07/02
賃貸仲介会社で働き始めたばかりの方にとって、不動産業界特有の専門用語や隠語は大きな壁となることがあります。先輩営業スタッフが使う「物確」や「AD」といった言葉の意味が分からず、話についていけなかったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
重要な点として、これらの業界用語は社内でのコミュニケーションや業務効率化のために使用されるものであり、お客様の前では控えるべき隠語も含まれていることを認識しておきましょう。
本記事では、賃貸営業の実務で使われる30の業界用語を、使用場面に分けて解説します。業界経験者に馴染みのある表現から、一般の方には理解しにくい隠語まで幅広く解説していますので、ぜひご覧ください!
目次
まずは、営業活動や顧客対応で日常的に使われる用語について解説します。営業戦略に関わる重要な用語も含まれているため、早めに習得しておきましょう。
物確(物件確認)は、物件の空室状況や条件変更など、最新情報を得るための業務です。電話・FAX・専用システムなど複数の方法で行われますが、確認件数の多さや手作業中心の業務フローにより、多くの営業マンにとって負担の大きい作業となっています。
物出しは、お客様の条件に合致する物件を選び出す作業のことです。お客様のニーズに合った選択肢を提示するための基礎となる作業であり、スピードと正確さが求められます。
現調(現地調査)は、正確な物件情報を収集するために実際に現地に足を運んで行う調査のことです。図面だけでは分からない周辺環境や物件の状態、最寄り駅からの実際の距離など、重要な情報を確認する業務です。
現地対応は、物件の鍵を現地のキーボックスや専用設備等に保管し、仲介会社の担当者が直接鍵の開閉を行う対応方法です。管理会社は内覧予定の連絡を受けるだけで済むため、大幅な業務効率アップが期待できます。
現待ち(現地待ち合わせ)は、店舗を経由せず直接物件の現地でお客様と待ち合わせて内見を行う案内方法のことです。コロナ禍以降に広がりを見せ、現在では対応可能な仲介業者も増えてきています。効率化が図れる一方で、事前準備や接客スキルが求められます。
追客は、検討中のお客様に対して継続的にアプローチすることです。適切なタイミングでのアプローチが成約率アップの鍵で、しつこすぎず、かといって疎遠にならないバランスが重要です。
流れは、契約が不成立になることです。営業成績に直接影響するため、流れを防ぐための丁寧なフォローと事前の契約条件確認が重要になります。
続いては、契約業務でよく使われる用語です。お金に関係する言葉も多く含まれているため、誤解を招かないよう正確に理解しておきましょう!
元付けは、物件オーナーから直接管理や仲介を依頼された業者のことです。物件の詳細情報を最も正確に把握しており、入居審査や契約条件の調整など、他の仲介業者への窓口的存在となります。管理会社と兼務する場合もよく見られます。
客付けは、入居希望者を元付け業者に紹介して契約を成立させる仲介業者のことです。元付け業者から物件情報を受け取り、条件に合うお客様を見つけて案内する役割を担います。成約時には借主から仲介手数料を受け取るのが一般的です。
AD(広告料)は、物件オーナーが仲介業者に支払う成功報酬のことです。通常は家賃の1~2ヶ月分に設定されることが多く、仲介手数料とは別に支払われるため法的な上限が定められていません。ADが高い物件ほど、営業マンのモチベーションが上がるという側面があります。
担ボ(担当ボーナス)は、オーナーが成功報酬として担当の営業マンに支払うお礼金のことです。かつては一部の仲介業者で担当ボーナスの慣行が見られましたが、現在では多くの業者が受け取りを禁止しており、ほとんど見られなくなっています。
仲手(仲介手数料)は、仲介業者への成功報酬として支払われます。賃貸では家賃1ヶ月分+消費税が法定上限となっており、契約成立時に支払います。
両手は、同一の仲介業者が貸主・借主の双方から仲介手数料を受領する取引形態です。業者にとって収益性が高い取引ですが、利益相反の問題にも注意が必要です。
指値は、提示された賃料や条件に対して入居希望者側から希望条件を提示することです。賃貸では、家賃交渉時に使われますが、主に売買での価格交渉で用いられる言葉です。
賃発(賃料発生日)は、実際に家賃の支払いが始まる日のことです。契約日と異なる場合が多く、特に店舗・事務所では調整によって初期費用を抑えることができる重要な要素です。
賃契(賃貸借契約書)は、貸主と借主の間で結ばれる正式な契約書のことです。賃料や契約期間、敷金・礼金などの詳細条件のほか、双方の権利義務が明記された書類で法的拘束力を持ちます。
重説(重要事項説明)は、宅建業法第35条に基づいて宅建士が契約前に行う法定説明のことです。物件や契約条件の重要事項を詳しく説明する、不動産取引の根幹となる手続きです。
前家賃は、契約時に翌月分の家賃を先払いする制度のことです。多くの賃貸契約で採用されており、初期費用の一部として計算されます。物件によっては日割り計算で、当月分と合わせて支払う場合もあります。
フリーレントは、入居後の一定期間(通常1~3ヶ月)の家賃が無料になる契約形態です。初期費用を抑えたいお客様にとって魅力的なサービスですが、短期解約時に違約金が設定されている場合もあるため、契約前に条件をよく確認する必要があります。
敷引きは、退去時に敷金から一定額が差し引かれる契約形態のことです。関西地方で多く見られる制度で、通常の原状回復費用とは別に設定される固定費用です。入居者にとって退去時の負担が明確になる一方で、敷金の一部が確実に返還されないという側面があります。
保証会社は、入居者の家賃支払いを保証する第三者機関のことです。連帯保証人の代わりとして機能し、滞納リスクを軽減する役割を果たします。保証料は入居者が負担し、初回保証料と年間更新料が一般的です。
物件の構造や設備、立地特性を表す専門用語です。お客様からの問い合わせや内見対応時に適切な説明ができるよう、きちんと頭に入れておきましょう。
メゾネットは、2層以上にわたって専有部分が構成されている住戸のことです。戸建て感覚で住めることが特徴で、上下階の騒音問題が軽減される一方、階段の上り下りや冷暖房効率の面でデメリットもあります。
げたばき(下駄履きマンション)は、1階に店舗などがあり、上階が住居になっている建物構造のことです。利便性が高い反面、住居部分で騒音や臭いの問題が生じることもあります。
スケルトンは、内装や設備が一切ない建物の骨組みのみの状態のことです。主に店舗や事務所で多く使われる用語で、テナントが自由に内装設計できる反面、内装工事が必要となるため、初期費用が高額になります。
どんつきは、道路の突き当たりにある物件のことです。関西弁が由来の業界用語で、環境としては静かである一方、車両の出入りなど難しいケースがあります。
旗竿地は、接道部分から細い通路を通って奥の建物に至る、旗竿のような形状の敷地のことです。賃料が安く設定されることが多い一方で、緊急時の避難や搬入作業の面でデメリットもあります。
MB(メーターボックス)は、電気・水道・ガスのメーターが収納されている箱のことです。間取り図にはよく表記されていますが、お客様には説明が必要な設備の一つです。
PS(パイプスペース)は、給排水管や排気ダクトなどが通っている配管スペースです。寝室の近くにある場合は、水の流れる音が気になることがあるので事前に説明しておくことが大切です。
FIX窓は、開閉できない固定式の窓のことです。採光は確保できますが、換気ができないため室内環境に影響することがあります。デザイン性が高く断熱性能に優れている一方で、掃除が困難な場合もあるため、お客様への説明が必要な設備です。
賃貸管理仲介業界の専門用語は、単なる業界の慣習ではなく、日々の業務を効率的に進めるための重要なコミュニケーションツールです。
これらの用語を正しく理解することで、営業担当者との会話がスムーズになり、物件探しや契約手続きにおいて的確に判断できるようになります。ただし、業界特有の略語や隠語は、お客様との会話では避け、正式名称や分かりやすい表現を使用することが重要です。
明日からの実務では、これらの用語を適切に活用して、専門的かつ効率的なコミュニケーションを実現していきましょう。
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新入社員や業界未経験者向けに、これだけは知っておいた方がよい「業界用語」「隠語」を大募集!エリアや経験によっても、思わぬ差があるかもしれないですね!