記事公開日:2024/08/29
最終更新日:2024/09/11
賃貸物件を選ぶ際、LPガスの料金がどれくらいかかるのかを不動産会社から入居者や契約者に説明するケースはあまり見られませんでした。そのため、(入居者が)入居してからそのガス料金に驚くケースも多く、トラブルの原因になるケースもありました。
このような状況を踏まえて、消費者が入居前にLPガス料金を確認できるよう、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」 が改正され、LPガス事業者は問い合わせに対し必ず情報提供を行う義務が生じました。不動産関係者も、事前に料金を提示することが求められます。
本記事では、2024年4月に国土交通省が発表した「LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について」の内容を詳しく解説しています。この記事を読むことで、賃貸住宅に入居する前の消費者へのLPガス料金情報の開示の重要性やその方法等について理解し、またトラブルのない消費者の賃貸物件契約をサポートするヒントとなるでしょう。ぜひ、参考にしてみてください。
目次
国土交通省が発表した「LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について」は、消費者保護を強化するために重要な要請です。消費者が、契約前にLPガス料金の詳細を正確に把握できるようにすることが目的となります。
LPガス業界においては、LPガスの販売契約を獲得するため、LPガス事業者が賃貸物件のオーナーなどにエアコンやガス器具などを無料で提供し、その費用をLPガス料金に上乗せして入居者に代わりに請求する事例が確認されています。
消費者が支払うLPガス料金に設備の費用を含める行為は適切ではなく、不透明な料金設定といえます。消費者が不当な負担を強いる恐れがあるため、透明性のある契約と料金の設定が求められていました。
この状況を改善するために、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」を改正し、LPガス事業者に対して、入居希望者が料金を事前に確認できるように「LPガス料金の事前提示」を義務付けました。
これにより、消費者は不透明なLPガス料金に悩まされることなく、安心して住まいを選ぶことができる環境が整えられるといえます。
参考資料:消費者庁 消費者政策課他|LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について
「LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について」で確認すべきポイントは、以下のとおりです。
①情報の透明性の確保
②不動産会社やオーナーの責任
「LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について」は、賃貸借契約を結ぶ前に、入居希望者がLPガス料金の詳細を把握できるようにすることが主な目的です。
不動産会社や物件オーナーは、消費者が適正な料金情報を事前に知ることができるよう、LPガス事業者と連携し、正確な情報を提供するようにしましょう。
不動産会社は、賃貸借契約を結ぶ前に、入居希望者に対してLPガス料金の詳細を提供することが求められます。消費者が契約前に料金を把握できるようにすることで、契約後に料金に対する不満が生じないようにするためです。
例えば、物件を紹介する際に、不動産営業担当者がLPガス料金の内訳や設定根拠を資料を用いて説明し、消費者が納得した上で契約を進めることが求められます。
また、料金情報があらかじめ提供されていない場合、LPガス事業者の会社名や連絡先を提供し、入居希望者が直接問い合わせできるようにすることが求められており、次善策(最善策が実行できない場合に取られる、次に良いとされる対応や解決策 )として重要視されています。 不動産会社は適切な情報提供を行い、消費者に安心感を与えるようにしましょう。
入居者や契約者などの消費者は、賃貸借契約を結ぶ前にLPガス料金の詳細を確認することが可能となり、金銭面での不満を未然に防止できます。
これまでは、入居後に初めてLPガスの料金を知り、料金に不満があっても受け入れるしかなく、また賃貸集合住宅ではガス供給事業者を選択・変更できないという問題がありました。しかし、今回の要請を実施することにより、消費者は契約前にLPガス料金の詳細な内訳や供給業者の情報を把握することができ、納得のいく選択が可能です。
例えば、賃貸物件の選定時にLPガス料金が明確に提示され、消費者が他の物件と比較しながら選択できます。また、消費者が直接LPガス事業者に問い合わせを行い、料金についての疑問を解消することも可能です。LPガス料金等の情報提供に関する要請により、消費者が不安なく賃貸契約を締結できます。
LPガス料金の情報を賃貸借契約締結前に消費者に伝えることで、納得した上で賃貸借契約を結ぶことができ、後々のトラブルを防ぐことが期待されます。
物件オーナーがLPガス料金を物件情報と一緒に伝えることで、消費者は料金を正確に把握した上で契約を進められます。物件オーナーは、消費者に対する信頼性が高まり、長期的で良好な関係を築くことが可能です。
賃貸借契約時に、消費者が安心して住まい選びができるようにするためには、正確な情報提供が重要です。ここでは、LPガス物件を契約する際の案内のタイミングや例文を紹介します。
物件見学時や初回相談時などの早い段階で、LPガス料金について案内することがおすすめです。賃貸借契約の前に案内することで、消費者があらかじめ料金を把握し、他の物件と比較する時間を持つことが可能です。これにより、後のトラブルを防ぐことができます。
例えば、物件見学時にLPガス料金の内訳や供給業者の連絡先を案内し、その後に質問や疑問点を解決する時間を設けることで、消費者は納得した上で検討を進められます。また、複数の物件を比較検討する際にも、各物件のLPガス料金を事前に把握できるため、消費者からの信頼を獲得できます。契約前に十分な情報提供を行い、消費者が安心して選択できる環境を整えることが重要です。
ここでは、実際に案内する際の例文をケース別で3つ紹介します。参考にしてみてください。
例文1: 初回相談時
現在ご検討中の物件ですが、LPガスを使用しております。LPガスの基本料金は月々3,000円で、従量料金は1立方メートルあたり500円です。こちらの料金に加え、ガス使用量によって毎月のガス代が変動します。詳しい料金内容や契約条件については、こちらの資料をご確認いただくか、直接LPガス事業者にお問い合わせください。 |
例文2: 見学時
この物件はLPガスを使用しており、料金設定は基本料金3,000円と、使用量に応じて追加される従量料金がございます。具体的な料金内訳はこちらの資料に記載されています。契約前にしっかりと料金を把握していただくため、資料を確認しながら質問があればお答えいたしますので、お気軽にお尋ねください。 |
例文3: 契約前の最終確認
「ご契約前にもう一度LPガス料金について確認させていただきます。こちらの物件の基本料金は月3,000円で、従量料金が使用量に応じて追加されます。詳細についてはこちらの料金表をご確認ください。不明な点や追加の質問がございましたら、今一度ご相談いただけますので、安心してご契約いただけるようにサポートいたします。 |
紹介した例文を活用し、ケースに応じて分かりやすく丁寧な説明を心がけましょう。
今回解説した「LPガス料金等の情報提供に関する不動産関係者への要請について」は、消費者や物件オーナーだけでなく不動産会社にとっても重要なポイントです。消費者が納得して住まいを選ぶことで長期入居に繋がり、安定した管理収入を得ることが可能です。
消費者が契約前にLPガスの料金を把握し、安心して契約できるようにすることで、後のトラブルを未然に防げます。物件の紹介と合わせてLPガス料金を知らせることで、顧客満足度を向上させましょう。
参考:国土交通省|LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しについて