最終更新日:2025/10/10
記事公開日:2025/05/23
2025年に入ってから、不動産業界ではいくつかの重要な法改正が施行され、新たな時代へのシフトが始まっています。建築基準法やLPガス法、宅地建物取引業法など複数の法令が同時期に見直され、これにより賃貸仲介業界では業務内容に大きな変化が生じています。
現場では新ルールへの対応に追われる日々が続いていますが、この変革期は同時に顧客サービスの質を高め、他社との差別化を図るチャンスでもあるのです。
本記事では、各法改正の内容や不動産業界にもたらされる影響について、わかりやすく解説します。入居者やオーナーからの「何が変わったの?」「なぜ変わったの?」といった質問に的確に答えられるよう、しっかり学んでいきましょう!

目次
2025年4月に改正が施行された建築基準法は「住宅の安全性確保と木材の利用促進」を。建築物省エネ法は「省エネ性能の向上」を主な目的としています。賃貸経営に関わる重要な変更点も含んでいるため、正確に理解しておきましょう。
今回の法改正での変更点は、主に以下の3点です。
①4号特例の縮小
②木造建築物の構造規制の合理化
③省エネ基準適合の義務化
各変更点について、一つひとつ見ていきましょう。
最も注目すべき変更点は、「4号特例」の廃止です。これまで、延床面積500㎡以下・2階建て以下の木造住宅(4号建築物)については、建築確認申請時に構造計算書などの提出が免除される特例がありました。
しかし、今回の法改正によってこの「4号建築物」の区分が廃止され、代わりに「新2号建築物」と「新3号建築物」という2つの区分が新設されています。
・新2号建築物:木造2階建てや延床面積200㎡超の木造平屋建て
・新3号建築物:延床面積200㎡以下の木造平屋建て
これまで審査の一部省略が認められていた多くの木造2階建て住宅やアパートは「新2号建築物」として扱われるため、より厳格な審査プロセスが求められるようになりました。なお、「新3号建築物」については、従来の4号特例と同様に建築確認審査の一部を省略できます。
さらに、本改正は新築だけでなく、既存建物のリフォームにも影響を及ぼしています。2025年4月以降に着工する新2号建築物の大規模リフォームは、全て建築確認申請が必須となりました。
建築確認申請が必要となる大規模リフォームの定義は、以下のとおりです。
建築基準法の大規模の修繕・模様替にあたるもので、建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上について行う過半の改修等
引用:国土交通省「2025年4月から木造戸建ての大規模なリフォームが建築確認手続きの対象になります」
一方で「キッチン、トイレ、浴室等の水回りのみのリフォーム」や、「バリアフリー化のための手すり、スロープの設置工事」については、従来通り建築確認手続きは不要です。しかし、建築確認が不要な場合でも、リフォーム後の建築物は建築基準法の規定に適合している必要があります。
さらに、もう1つの重要な変更点が「省エネ住宅基準適合の義務化」です。省エネ住宅普及を目的とした本改正によって、すべての新築建築物において省エネ基準適合が義務付けられることになりました。具体的には、新築建物は「断熱等性能等級4」以上かつ「一次エネルギー消費量等級4」以上の基準を満たすことが必要となり、建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性検査が行われるようになります。
木造建築物の構造規制にも、大きな変化が訪れています。これまで高さ13m(軒高9m)を超える高層木造建築物を設計するには、詳細な構造計算と一級建築士の関与が必須でした。しかし、近年では断熱性を高めるために階高を上げた木造住宅への需要が高まっており、法改正はこの市場の動きに対応したものといえます。
改正後は「3階以下かつ高さ16m以下」の木造建築物であれば、より簡易な構造計算で建築が可能になりました。また、二級建築士でも設計・工事監理ができるようになったため、木造建築物の設計に携われる専門家の裾野も広がっています。
また、もう1つ重要なポイントとして木造建築物の壁量基準等も見直されています。近年、太陽光パネルやトリプルガラスなど重量の大きい設備を用いた住宅が増えており、従来の「軽い屋根」「重い屋根」という2つの区分に基づいた算定では対応しきれなくなっていました。しかし今回の建築基準法改正により、建物の重量に基づいた適切な壁量設計が可能になったため、省エネと構造安全性を両立させやすくなったのです。
これまで非住宅の中規模・大規模建築物(延べ面積300㎡以上)のみに義務付けられていた省エネ基準への適合が、2025年4月からは原則としてすべての新築住宅・建築物(新3号建築物を除く)に義務付けられました。この建築物省エネ法改正により、多くの賃貸住宅が省エネ基準適合の対象となります。
なお、増改築を行う場合も、該当部分については省エネ基準への適合が必要です。ただし、従来のように増改築後の建築物全体で省エネ基準に適合する必要はなくなりました。これにより、既存の建築物の部分的な改修も実施しやすくなっています。
共同住宅における用途床面積が100㎡を超える物件は、特殊建築物(1号建築物)に分類されるため、「4号特例の縮小」による直接的な影響はありません。
しかし、テラスハウスや戸建て賃貸物件については、今回の法改正によって新たに構造計算書類や省エネ性能証明書などの追加書類の提出が必要となりました。設計事務所や建築会社の業務量が増加することで、費用面や納期への影響が予想されますので、あらかじめオーナーへの説明準備をしておくことが重要です。
既存物件の管理においては、「壁、柱、床、はり、屋根、階段」といった主要構造部の過半を改修する場合にのみ確認申請が必要となります。日常の営業活動では、「内装リフォームや水回りの設備交換については申請が不要です」というように、改正法に基づいた具体的な説明を行うことで、オーナーの不安解消につながります。
なお、2024年2月には「屋根ふき材のみの改修」や「壁の内側からの断熱改修」も確認申請不要と緩和されるなど、法改正に関する情報は随時更新されています。国土交通省や業界団体の最新情報を常にチェックし、正確な情報提供ができるよう心がけましょう。
経済産業省は、2024年4月2日、LPガスに関する法改正の省令(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令)を公布しました。
公布から3ヶ月後の2024年7月2日には「過大な営業行為の制限」と「LPガス料金等の情報提供」が先立って施行され、2025年4月2日からは「三部料金制の徹底」もスタートしています。
昨年から段階的に進められているLPガスに関する法改正は、入居者の権利を守り、LPガス料金の透明性を高めることを目的としています。特に、2025年4月に施行された「三部料金制の徹底」は法改正の仕上げとも言える重要な制度ですので、賃貸物件を管理・仲介する不動産事業者として、しっかり理解しておきましょう。
LPガスの取引適正化を目指して施行された「三部料金制の徹底」について、詳しい内容を確認していきましょう。今回の改正のポイントは、以下の3点です。
①基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)の徹底
②電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器など、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上禁止
③賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用についても計上禁止
※上記①は、新規契約・既存契約ともに適用。2、3は新規契約のみ適用。(既存契約は早期移行の努力義務あり)
従来のLPガス料金は、「基本料金」と「従量料金」の二部制が一般的でした。しかし、今回の法改正によって、「基本料金」「従量料金」「設備料金」と3つに分けて明示する料金形態が徹底されるようになりました。
これまでわかりにくかったLPガス料金の内訳が、明確に分かるようになるのは、利用者にとって大きなメリットです。
また、設備料金の対象が「ガス消費に関連する配管やガス器具のみに限定される」という点も併せて押さえておきましょう。
これまでの問題点として、LPガス事業者がガスの配管工事費用だけでなく、エアコンやインターホンなどの設備を無償貸与し、その費用をガス料金に上乗せするケースが見られました。これにより、「入居者が知らないうちに高額なガス料金を負担していた」という実態があります。
しかし、今回の制度改正により設備料金は「ガス消費に直接関連する配管や器具等のみ」が対象となり、その他の設備費用の計上が禁止されるようになりました。これによって料金の透明性が確保され、入居者にとって公平な料金体系の実現が期待されています。
さらに、賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具などの消費設備費用も含めず、設備料金の項目は「該当なし」と記載されることになりました。
賃貸住宅では、「室内設備は建物の一部として、オーナーが所有・管理すべきもの」と考えられています。そのため、「ガス器具等の設備費用を入居者のガス料金に上乗せして徴収することは不適切である」という明確な判断が、今回の法改正で示されたことになります。
賃貸仲介業者は、LPガス制度改正の内容を正確に把握し、入居希望者とオーナー双方に対して透明性のある説明を行うことが重要です。
例えば、入居希望者への物件紹介時は、以下のような説明を行うことで不安解消につながります。
「こちらのお部屋はLPガスを使用していますが、2025年に施行された改正法により料金の透明性が高まりました。賃貸住宅の場合設備料金は発生せず、基本料金と使用量に応じた従量料金のみのお支払いとなりますので、安心してご利用いただけますよ。」
一方、オーナーサポートも重要な役割です。「これまでLPガス事業者に頼っていた設備導入コストを、今後どのような形で負担していくか」という課題に向き合わなければなりません。「自己負担」もしくは「月々の賃料への上乗せ」など、オーナーの意向を踏まえながら経営戦略の見直しを図りましょう。
特に家賃を値上げする場合は、退去リスクも想定しなければなりません。書面や口頭による段階的な説明を重ねながら、状況に応じて設備のグレードアップを組み合わせるといったように、入居者の理解を得やすい提案が求められます。
国土交通省のHPでは、LPガスに関する資料がまとめて掲載されています。
参考:国土交通省「LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しについて」
また、資源エネルギー庁(経済産業省)が策定した「LPガス料金の表示・計上方法に関する新しいルールの概要」では、LPガスを巡る課題や新ルールの趣旨までわかりやすくまとめられています。
これらの資料を活用しながら、営業スタッフ一人ひとりが法改正内容を正しく理解し、統一した説明ができるよう、情報共有の場を設けましょう。
なお、2024年4月に施行されたLPガスの改正法についておさらいしたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
2025年1月1日と4月1日の二度に渡って、宅地建物取引業法施行規則が改正されました。この改正は、主に不動産売買仲介における取引の透明性向上とデジタル化推進を目的としています。
今回の改正による主な変更点は、以下のとおりです。
| 2025年1月1日施行 | 「囲い込み」防止のためのレインズ登録事項の追加 |
| 2025年4月1日施行 | 宅地建物取引業免許申請における添付書類の変更宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更従業者名簿の記載事項変更宅地建物取引業者票の様式変更 など |
2025年1月に施行された「レインズ登録事項の追加」は売買仲介業向けの規制ですが、4月1日施行の改正点には賃貸仲介業にも直接関係する内容が含まれています。
特に重要なのが、「従業者名簿の記載事項変更」と「宅地建物取引業者票の様式変更」です。従業者名簿については、従来記載が求められていた「生年月日」が削除され、様式から「住所」と「性別」の記載も削除されました。
また、事務所に掲示する宅地建物取引業者票についても、「専任の宅地建物取引士の氏名」が「専任の宅地建物取引士の数」に変更され、新たに「代表者氏名」の記載が必要となりました。
従業者名簿の様式変更により、住所・生年月日・性別などの個人情報が削除されたことで、従業者名簿の閲覧請求があった際も、従業員のプライバシーを保護できるようになりました。
また、宅地建物取引業者票の記載項目変更は、専任の宅地建物取引士個人のプライバシー保護と、事務所の責任の所在の明確化を目的とした重要な変更点ですので、改正内容に沿った形式で速やかに更新しましょう。
出典:「住宅セーフティネット法が改正されます」
住宅セーフティネット法は、高齢者や障害者、低所得者など住宅の確保に特に配慮を必要とする「住宅確保要配慮者」に対して、民間賃貸住宅への入居支援を目的とした法律です。2024年の通常国会で改正法が可決され、2025年10月頃の施行が予定されています。
この法改正は、要配慮者が安心して生活を送るための基盤となる住まいを確保できるよう、賃貸住宅に円滑に入居できる環境の整備を進めることを目的としています。
改正法では、賃借人の死亡時に契約が終了する「終身建物賃貸借」の認可手続きが簡素化され、住宅ごとではなく事業者単位での認可が可能になります。入居者が亡くなった場合の残置物処理については、居住支援法人が入居者からの委託に基づいて実施できるようになるため、オーナーの負担は大幅に軽減されるでしょう。
家賃滞納への対策としては、「家賃債務保証業者」を国土交通大臣が認定する新たな仕組みが導入されます。この制度によって、入居者側は一定の基準を満たす業者による保証サービスを受けられ、大家側は家賃滞納リスクを抑えられるという双方にメリットのある仕組みとなっています。
また、重要な変更点として、市区町村長が認定する「居住サポート住宅の創設」も見逃せません。この制度では、居住支援法人が安否確認や見守りサービスを提供し、入居者の状況に応じて適切な福祉サービスへのつなぎ役も担います。
さらに、生活保護受給者については、住宅扶助費の「代理納付」が原則化されることになります。大家にとっても安心して物件を提供できる環境が整うため、要配慮者の住まい確保がより進みやすくなるでしょう。
住宅セーフティネット法改正により、高齢者など入居を敬遠されがちだった要配慮者の受け入れに、オーナーが前向きになるケースが増えると予想されます。
国土交通省が公表する資料を参考に、残置物処理の制度化や家賃債務保証の仕組みを物件オーナーに説明できるよう準備しておきましょう。
参考:国土交通省「住宅セーフティネット制度」
少子高齢化が進む中で、高齢者の賃貸需要は今後さらに高まると予想されます。この法改正を単なる規制強化ではなく新たな市場開拓のチャンスと捉え、入居者とオーナーの橋渡し役となれるよう親身なサポートを心がけましょう。
2025年の一連の法改正により、賃貸仲介業務は大きな転換期を迎えています。改正建築基準法によって住宅の安全性が強化され、LPガス法の見直しでは料金体系の透明化が図られました。また、宅地建物取引業法の改正によって、個人情報保護や取引の円滑化も進められています。
相次ぐ法改正への対応は、一見すると業務負担の増加に思えるかもしれません。しかし、この変革期は顧客サービスを根本から見直す絶好の機会でもあります。複雑な法律知識を分かりやすく伝え、入居者とオーナー双方の不安を解消することで、他社との差別化や長期的な売上アップにもつながるでしょう。
本記事で紹介した法改正のポイントや対応策を参考に、お客様からの信頼を高めていきましょう。
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