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【仲介手数料の上限引き上げも!】不動産営業マン必見「空き家対策推進プログラム」の活用術&トーク例

記事公開日:2024/12/12

最終更新日:2024/12/20

不動産業界で新しい動きが始まっているのをご存知ですか?国土交通省は、全国的な空き家増加の問題に対応するため「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました。

この記事では、プログラムの概要から実践的な営業トークまで、現場で即活用できる情報をわかりやすく解説します。空き家オーナーの対応にお悩みの方や営業活動の場を広げたい方は、ぜひ参考にしてください。

「空き家対策推進プログラム」とは

空き家の増加は、今や全国各地で大きな課題となっています。とくに地方部では、人口減少や高齢化により、管理されていない空き家が目立っています。

国土交通省の調査によると、空き家所有者の約6割が65歳以上で、約3割が1時間以上離れた場所に住んでいるという実態が明らかになりました。

このような状況を受けて、国土交通省は2024年6月21日に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました。

参考:国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム(本体)」

「空き家対策推進プログラム」の目的

放置された空き家は、資産価値が下がるだけでなく、周辺環境に様々な問題を引き起こします。

・老朽化による倒壊
・景観の悪化
・犯罪や火災リスクの増加

これらの問題に対し、専門知識を持った不動産業者が空き家の活用方法を提案し、地域の価値向上を目指すことが本プログラムの目的です。

「空き家対策推進プログラム」の概要

「空き家対策推進プログラム」は、2つの大きな柱で構成されています。

流通に適した空き家等の掘り起こし1. 所有者への相談体制の強化
2. 不動産業における空き家対策の担い手育成
3. 地方公共団体との連携による不動産業の活動拡大
4. 官民一体となった情報発信の強化
空き家流通のビジネス化支援1. 空き家等に係る媒介報酬規制の見直し
2. 「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及
3. 媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進
4. 不動産DXにより業務を効率化し、担い手を確保

引用:国土交通省 報道発表資料

本プログラムは、空き家問題を社会全体の課題としてとらえ、行政・地域・不動産業界が連携して取り組む施策となっています。中でも注目すべきは、不動産業者が単なる仲介者としてではなく「空き家対策の重要な担い手」として位置づけられている点です。

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「空き家対策推進プログラム」が不動産業にもたらす影響

では「空き家対策推進プログラム」が私たち不動産業者にどのような影響を及ぼすのか、具体的に見ていきましょう。

前項で紹介した2つの柱のうち、不動産業者に直接関係するのが「空き家流通のビジネス化支援」です。それでは、一つひとつ説明していきます。

1. 空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

空き家の流通を促進するため、賃貸・売買仲介の報酬上限が引き上げられました。ただし、適用には条件があり、賃貸仲介においては国土交通省が定める「長期の空家等」が対象となります。この「長期の空家等」には、以下の2つのケースが該当します。

長期の空家に該当するケース①

「現に長期間にわたって居住・事業等の用途に供されていない」物件です。少なくとも1年を超えて居住者不在の空き家や、分譲マンションの空室が該当します。

長期の空家に該当するケース②

「将来にわたり居住・事業等の用途に供される見込みがない」物件です。例えば、相続により利用されなくなった直後の空き家や分譲マンションの空室など、今後の利用が見込まれない物件が該当します。

また、売買取引においては800万円以下の宅地・建物が報酬引き上げの対象となり、使用の状態は問われません。

媒介報酬の上限
  • 賃貸借取引:長期空き家等の場合、1ヶ月分の家賃の2.2倍が上限
  • 売買取引:800万円以下の低廉な空き家の場合、33万円(税込)が上限

例えば、長期空き家を家賃10万円で賃貸仲介するケースで考えてみましょう。

【例】長期空き家を家賃10万円で賃貸仲介するケース
  • 従来の報酬上限(税込):家賃10万円×1.1倍=11万円
  • 改正後の報酬上限(税込):家賃10万円×2.2倍=22万円

このように、従来のルールでは11万円(税込)が上限だったのに対し、改正後は最大22万円(税込)まで仲介手数料を受け取れるようになりました。

ただし、特例を適用する際は貸主の了承が必要です。これは仲介会社が後から報酬額を変更したり、説明なしに上限額を請求したりすることを防ぐために設けられた重要なルールです。

そのため、特例適用の理由や具体的な報酬額について事前に貸主に説明し、合意を得た上で媒介契約を進めましょう。

出典:国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

また上図にあるように、上乗せできるのは貸主から受け取る報酬に限ります。借主から受け取る報酬上限は従来通りという点にも注意しましょう!

2. 「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及

2つ目の取り組みとして、国土交通省は不動産事業者に向けた「空き家管理受託のガイドライン」を策定しました。具体的には、以下の業務について記載されています。

・空き家の状況確認
・管理委託契約の締結
・建物の点検・管理
・作業内容の記録・報告

このガイドラインの策定により、不動産業者は明確な基準に沿って管理サービスを提供できるようになりました。また、所有者も安心して管理を任せられるため、双方にとってメリットのある施策と言えます。

参考:国土交通省「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン

3. 媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進

従来の仲介業務に加えて、以下のようなコンサルティング業務も収益源となります。

・空き家の活用プランの作成
・相続に関する相談対応
・建物の管理や改修に関するアドバイス

これらのサービスは報酬規制の対象外となるため、専門性を活かした質の高いサービスを提供できれば、収益を大きく伸ばすことも可能です!

4. 不動産DXにより業務を効率化し、担い手を確保

さらに、以下のようなIT技術を活用した業務効率化も推進されています。

  • オンラインでの重要事項説明
  • 契約書面の電子化
  • テレワークの活用

IT技術を活用することで、日々の業務の無駄を省き、より多くの案件に対応できる環境が整います。また場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能になるため、新たな人材確保にもつながります。

不動産賃貸業者向け「空き家対策推進プログラム」の3つのポイント

ここからは「空き家対策推進プログラム」に関して、不動産業者が意識すべき3つのポイントを紹介します。

意識すべき3つのポイント

1.空き家活用に要する専門知識の習得
2.委託管理の体制整備
3.物件オーナーとの関係強化

空き家対策ビジネスを成功に導く重要な要素となるので、しっかり押さえておきましょう!

1.空き家活用に要する専門知識の習得

空き家対策には、以下のような幅広い専門知識が求められます。

空き家対策に求められる主な専門知識

・建物の管理や改修に関する知識
・相続に関する法的知識
・補助金や税制優遇等の行政支援策に関する知識

これらの知識を身につけることで、空き家所有者からの様々な相談に対して、的確な解決策を提案できるようになります。また、専門性の高い提案は他社との差別化にもつながるので、ビジネスチャンスの拡大も期待できます!

例えば、「築30年の空き家を相続したものの、遠方に住んでいて管理が難しい」というオーナーに対しては、「補助金を活用した耐震リフォーム」や「バリアフリー改修による高齢者向け賃貸住宅への改装」といった提案が挙げられます。

2.委託管理の体制整備

空き家の管理受託にあたっては、定期的な見回りや修繕など継続的なサービス提供が必要です。

例えば、管理物件の見回り時に写真付きの点検レポートを提供したり、AIカメラによる24時間監視システムを導入したりするといった策が有効です。オーナーからの信頼を得られる上、管理業務の効率化にもつながります。

このような管理体制を整えることで、複数の物件を管理しながら、きめ細かなサービスを提供することが可能になります。

3.空き家オーナーとの関係強化

空き家対策ビジネスを成功に導く重要な鍵は、オーナーとの信頼関係づくりです。オーナーの意向や置かれた状況を十分に理解した上で、適切な提案と継続的なコミュニケーションを重ねましょう。

このような信頼関係は、既存オーナーからの紹介による新規顧客の獲得にもつながります。空き家対策ビジネスの持続的な成長のためにも、オーナーとの関係づくりを重視した営業活動を展開していきましょう!

明日から使える!管理仲介業務で活用できる取り組み

ここからは、現場で即実践できるアプローチ方法について、具体的に説明します。空き家オーナーに対応する際の注意点やトーク例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

空き家オーナーに対応する際の注意点

空き家オーナーに対応する際は、以下の3つのポイントについて意識するとよいでしょう。

意識する3つのポイント

1.オーナーの意向や状況を理解する
2.具体的な数字を示し、メリットを明確にする
3.段階的な提案を心がける

これらのポイントを押さえることで、オーナーとの良好な関係を構築し、持続的なビジネスにつなげることができます。

1.オーナーの意向や状況を理解する

空き家のオーナーは高齢者が多く、物件から離れた場所に住んでいるケースも珍しくありません。そのため、オーナーの年齢や健康状態、物件までの距離など、個々の状況に応じた対応が求められます。

また、相続や権利関係の問題を抱えているケースもあるため、司法書士や税理士、建築士などの専門家との連携を密に取ることが重要です。

2.具体的な数字を示し、メリットを明確にする

空き家の管理や活用による具体的な収支予測、価値の維持効果など、数値を用いた分かりやすい説明を行います。「空き家を放置した場合のリスク」と「管理を委託した場合のメリット」を数字を用いて比較することで、オーナーの理解を深めることができます。

たとえば、放置による資産価値の低下率についてのデータ収集や、賃貸活用した場合の収支シミュレーションの作成等が有効でしょう。

3.段階的な提案を心がける

初期投資に対して慎重な姿勢を示すオーナーに対しては、まずは月1回程度の見回りサービスなど、低コストで始められるプランからスタートするのが有効です。直接の収益は小さいものの、物件の状態を継続的に把握でき、報告を通じてオーナーとの信頼関係を築く重要な機会となります。

その上で、必要に応じた小規模修繕や価値向上のための改修など、段階を追って提案することで、オーナーは次のステップを検討できるようになります。

空き家オーナーの対応時のトーク例3選

最後に、空き家オーナーの対応時に活用できるトーク例を紹介します。オーナーの状況に応じた3つのアプローチ方法を用意しましたので、参考にしてみてください。

トーク例1:遠方在住のオーナー向け

弊社では24時間365日の常時監視システムを導入しており、台風や地震などの緊急時には、1時間以内で対応できる体制を整えております。まずは無料で現地調査を実施し、物件状況に合わせた最適な管理プランをご提案させていただきます。

トーク例2:相続について悩むオーナー向け

弊社では、税理士や司法書士との連携により、相続税評価額の試算から資産活用方法まで、ワンストップでサポートいたします。まずは無料相談で、お客様の課題について整理させていただけませんか?

トーク例3:コストを抑えたいオーナー向け

月額4,000円からの見回りサービスで、郵便物の確認や庭木の管理まで行うプランをご用意しております。3ヶ月の試用期間で、弊社のサービス品質をご確認いただけますが、いかがでしょうか?

このように、各オーナーの状況に寄り添った丁寧な提案を行うことで、長期的な信頼関係を築くことができます。自社のサービス内容に合わせて、ぜひご活用ください。

「空き家対策推進プログラム」はビジネス拡大のチャンス

「空き家対策推進プログラム」は、不動産業界に新たな可能性をもたらしています。報酬規制の見直しによる収益機会の拡大や、管理受託のガイドライン整備により、より充実したサービス提供が可能になりました。

これからの不動産業には、従来の仲介業務にとどまらない、幅広い専門知識とサービスが求められています。本記事で紹介した内容を参考に、空き家対策という社会的課題の解決と自社のビジネス発展の両立に向けて取り組んでいきましょう!

泉 正孝

この記事を書いた人

ウェブスタジオイズミ代表。宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者・相続マイスター。東京都在住。大学卒業後、電鉄系総合不動産会社に入社し、不動産仲介事業部に所属。

不動産業界歴10年以上、ライター歴7年以上、サイト運営歴9年以上の経験を活かし、ライター兼ディレクター、SEOコンサルタントとして活動中。「住宅ローン・相続・税金・保険・資産運用」など、実体験に基づく記事を1900本以上執筆。SEO上位獲得多数。専門家として1次情報とエビデンスを重視し、読者目線の執筆を心がけている。

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