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【最新】賃貸物件のエアコン故障時の対応ガイド|賃料減額ガイドラインも徹底解説

記事公開日:2025/06/02

最終更新日:2025/06/02

夏の暑さや冬の寒さが厳しい時期に増える入居者からの問い合わせといえば、「エアコンが動かない」「暖房が効かない」といった設備トラブルではないでしょうか。設備の不具合は入居者の生活に直接影響するだけでなく、対応を誤ると損害賠償などの問題に発展するケースもあります。

本記事では、「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」の重要ポイントからトラブル予防策まで、賃貸営業スタッフが知っておくべき「エアコン故障対応」について解説します。日々の業務で直面するトラブルに対して、自信を持って対応できるようになりましょう!

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「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」の概要

2020年4月の民法改正(第611条)で「賃料減額」のルールが明確化されたのを機に、日本賃貸住宅管理協会は「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しました。

また、2024年10月には賃料減額割合の一部変更を目的としたガイドラインの改訂も行われています。

エアコンの故障トラブルは単なる不便さだけでなく、熱中症や低体温症などの健康リスクにも関わるため、適切な対応が求められます。賃貸営業職として新しいルールを正確に理解し、オーナーや入居者にわかりやすい説明を行えるようにしておきましょう!

2024年10月のガイドライン改訂による変更点

2024年10月4日から運用が開始された改訂版ガイドラインでは、エアコンに関する賃料減額割合について重要な変更がありました。

従来のガイドラインでは、エアコン故障に関する賃料減額の目安が「5,000円」という固定金額で示されていました。しかし、改訂版ガイドラインでは「10%」という割合表示へと変更され、家賃額に応じた基準となっています。

また、発生した季節・地域・間取り・設置台数等を考慮し、必要に応じて賃料減額割合を調整できる旨が明記されたことで、より柔軟な対応が可能になりました。

賃料減額ガイドラインで定められている減額割合の目安

「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」では、不具合の種類と生活への影響度に応じて、「A群」と「B群」に分けて減額割合が定められています。

参考:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン

まず、今の状況がA群に該当するかを確認し、当てはまる場合はA群の賃料減額割合と免責日数を適用します。A群に当てはまらない場合は、B群の項目をチェックし、該当する減額割合と免責日数を適用しましょう。

エアコンの不具合はB群に分類されるため、10%減額・免責日数3日が目安とされています。しかし、猛暑日や極寒日など健康に重大な影響を及ぼす環境下では、状況に応じてより高い減額割合が適用されるケースもあります。

なお、免責日数とは「減額対象とならない期間」のことです。代替品の準備や修理手配などにかかる期間が想定されており、この日数分は減額計算から除外されるという点も併せて理解しておきましょう。

賃料減額の計算例

ガイドラインに基づいたエアコン故障時の減額金額は、以下の計算式で求めることができます。

計算式

減額金額 = 月額賃料 × 減額割合 × (故障日数 – 免責日数) ÷ 月30日

例として、月額家賃80,000円の物件でエアコンが7日間故障したケースを考えてみましょう。

ケーススタディ

月額賃料80,000円 × 賃料減額割合10% × (7日 – 免責日数3日) ÷ 30日 = 1067.666…

この計算に基づくと、当月の賃料から約1,067円の減額が想定されます。ただし、この金額はガイドラインに基づく参考値であり、実際の減額金額については貸主と借主の協議によって最終決定されることになります。

また、すべての故障がガイドラインの対象になるわけではありません。例えば、入居者の故意・過失による故障、適切な管理をしていれば防げた故障、生活への影響が軽微な故障、電気・ガス・水道の供給会社が原因の故障などは対象外となります。

エアコン故障時の修理費用負担区分

エアコンなど賃貸物件の設備故障が発生した場合、修理費用の負担が貸主になるか借主になるかを明確にしなければなりません。

契約内容や故障の原因によって責任の所在が変わるため、判断基準をきちんと理解しておきましょう。

貸主(オーナー)負担となるケース

契約書で付帯設備として明記されているエアコンについては、その維持管理をオーナーが行うのが基本的なルールとなります。そのため、経年劣化や通常の使用による故障は、オーナーが修理・交換費用を負担しなければなりません。

また、台風や落雷など不可抗力による故障についても、原則として貸主負担となります。ただし、火災保険や動産総合保険でカバーされる場合があるため、保険会社に確認を取った上で、適切に請求手続きを進めましょう。

借主(入居者)負担となるケース

入居者の故意または重大な過失によって故障した場合、修理費用は入居者負担となります。

具体的には、取扱説明書に記載された正しい使用方法を守らずに故障させた場合が該当します。例えば、エアコンに物をぶつけて破損させる、内部に異物を入れる、フィルター清掃を長期間怠って故障につながるといったケースです。

また、入居者自身が購入・設置したエアコンも、退去時の原状回復や撤去費用も含めて当然入居者の責任範囲となります。

判断が難しいケース

原因不明の故障については、まず専門業者による原因調査を行い、その結果に基づいて負担区分を決定します。調査費用自体はオーナー負担とするケースが多いですが、入居者の使用方法に問題があったとわかった場合は請求可能です。

また、前入居者が置いていったエアコン(残置物エアコン)の取り扱いは特に注意が必要です。残置物であるエアコンは所有権がオーナーにある一方で、契約時の取り決めにより修理費用は入居者負担となるケースが多いです。また、借主が費用を負担する場合も、修理前には必ずオーナーの承諾を得る必要があります。

なお、残置物であるエアコンについては、「修理・交換費用は入居者負担」とすることを重要事項説明書や契約書への記載することで、後のトラブルを防ぎましょう。さらに、入居前に口頭でも説明し、修理費用の負担区分について事前に理解を得ておくことが重要です。

エアコントラブルを未然に防ぐための予防策

日頃からの予防対策で、エアコンのトラブルは大幅に減らすことができます。営業担当者として、オーナーと入居者の双方に予防の重要性を伝え、具体的な対策を提案しましょう。

貸主(オーナー)に向けた予防策

家庭用エアコンの寿命は、一般的に10年ほどと言われています。設置年数や使用頻度を考慮しながら、適切なタイミングでオーナーにメンテナンスや交換を提案しましょう。

また、入居者が退去したタイミングでエアコンクリーニングを実施することで、故障のリスクを低減できます。さらに、長期入居者に対しては契約更新時にエアコンクリーニングを実施するといったサービスを付けるのも効果的です。エアコンの故障リスクを抑えつつ、入居者の満足度アップといった相乗効果も期待できます。

借主(入居者)に向けた予防策

入居者には、日常的なメンテナンスの重要性について事前に説明しておきましょう。とくに、フィルター清掃を怠ったことによる不具合や故障は借主の責任範囲となるため、定期的なお手入れ方法を具体的に伝えることで、トラブル予防につながります。

また、故障時の連絡方法と対応フローも事前に説明しておくとスムーズです。緊急連絡先やウェブからの問い合わせ方法、24時間対応の有無などを明記した書面を入居時に渡しておくと、混乱が少なくなります。

賃貸物件のエアコン故障に関するQ&A

Q1. エアコン故障の連絡を受けた際、どんな初期対応をすべき?

回答

エアコンの故障連絡を受けた際には、まず入居者から具体的な症状や状況を詳しく聞き取ることが重要です。例えば、「電源は入るが冷風が出ない」「異音がする」「水漏れがある」など、症状を明確に把握することで、故障の原因を特定しやすくなります。

また、リモコンの電池切れやブレーカーの確認など、簡単なチェック項目を入居者に案内し、故障かどうかの判断を行います。その上で、必要に応じて専門業者の手配を行い、修理や交換の対応を進めます。

修理日程や立ち会いの有無、費用負担など段階的に確認すべき事項が多いため、入居者に不安を与えないよう、こまめに連絡を行いましょう。

Q2. 家賃減額請求があった場合の適切な対応方法は?

回答

「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」に基づいて算出された金額は、あくまでも減額の目安であり、法的拘束力を持つものではありません。

最終的には貸主と借主の協議によって決定されるものであるため、スムーズな合意のための参考資料として活用するのが本来の趣旨と言えます。

この点を踏まえた上で、交渉を進める際にとくに意識したいポイントが、以下の2点です。

ポイント

・オーナーに早期解決の重要性を説く
・協議後に覚書を作成する

オーナーへの説明で強調したいのは、「減額に応じないことで入居者との関係が悪化し、最終的に不払いや明渡訴訟に発展した場合のコストと時間的リスク」についてです。適正な減額で早期解決を図ることで、長期的な利益につながりやすいという点を理解してもらいましょう。

また、賃料減額交渉がまとまった場合は、覚書を作成し内容を正確に記録しておくことが重要です。具体的な金額と日付を記載し、双方が署名・押印することで後のトラブル防止につながります。

Q3. ホテル代など宿泊費の請求があった場合の対応は?

回答

エアコンが故障した場合でも、オーナーが入居者のホテル代を負担する法的義務は定められていません。賃料減額ガイドラインでも、「エアコンが作動しない場合の賃料減額割合」は明記されていますが、ホテル代の負担については言及されていません。

したがって、入居者から「エアコン故障中にホテルに滞在したため、その費用を支払ってほしい」と請求されても、オーナーはその請求に応じる法的義務はないことを理解しておきましょう。

ただし、対応によっては退去リスクにつながる可能性があるので、賃貸仲介営業職として角が立たない断り方を心がけましょう。

例えば、「ご不便をおかけし、申し訳ありません。残念ながら契約上はホテル代のお支払いは想定されておりませんが、その代わりとして修理期間中の賃料減額(○○円)でご対応させていただけないでしょうか。また、今後はこのようなご不便をおかけしないよう、設備の定期点検を強化してまいります。」といったように、丁寧な説明と代替案を示すと効果的ですよ。

新ガイドラインに沿った適切な対応を心がけよう

夏を迎える前に、エアコントラブルへの対応体制を整えることは、賃貸営業担当者にとって重要な準備の一つです。特に2024年10月の賃料減額ガイドライン改訂により、エアコン故障時の賃料減額算出方法が固定金額から割合表示へと変更されていることは重要なポイントです。新しいルールについて社内で共有するなど、改訂ガイドラインの内容を改めて確認しておきましょう。

本記事で解説した賃料減額の計算方法や費用負担区分を参考に、入居者とオーナー双方が納得できる適切な対応を心がけていきましょう!

泉 正孝

この記事を書いた人

ウェブスタジオイズミ代表。宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者・相続マイスター。東京都在住。大学卒業後、電鉄系総合不動産会社に入社し、不動産仲介事業部に所属。

不動産業界歴10年以上、ライター歴7年以上、サイト運営歴9年以上の経験を活かし、ライター兼ディレクター、SEOコンサルタントとして活動中。「住宅ローン・相続・税金・保険・資産運用」など、実体験に基づく記事を1900本以上執筆。SEO上位獲得多数。専門家として1次情報とエビデンスを重視し、読者目線の執筆を心がけている。

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