記事公開日:2025/05/22
最終更新日:2025/05/22
「ポータルサイトだけでは集客が補いきれない場面もある」。
そんな気づきから、近年では賃貸仲介会社にとって、ポータルサイトを軸にしつつSNSを組み合わせた集客戦略が注目を集めています。とはいえ、いざ運用を始めてみると「投稿を続けているのに反響がこない」「手応えがわからない」といった悩みも多く聞かれます。
今回CHINTAI JOURNALでは、不動産会社のSNSコンサルティングに特化し、数多くの成功事例を手がけてきた株式会社LightDoor代表・澤井慎二さんにインタビュー。不動産業界の集客構造を深く理解する澤井さんだからこそ語れる、ポータルサイトと相乗効果を生むSNS活用の極意を伺いました。今ある集客の仕組みにひと工夫を加えたい不動産会社の皆様、必読です。
目次
まずは澤井さんのご経歴と、LightDoorについて教えてください。
新卒でリクルートに入社し、不動産会社への広告営業を担当していました。当時、自分自身が物件探しに苦戦し、結果的に納得のいかない選択をしてしまった経験から、「住まい探しをサポートする立場にいる自分ですらうまくいかないのは、この仕組みにどこか課題があるのでは?」という疑問を持つようになりました。
これが、起業を志すきっかけになりました。その後、不動産エージェントとユーザーをマッチングする「EGENT」というサービスを立ち上げましたが、うまくいかず撤退。ただ、この経験が今の事業に活かされています。
2020年に株式会社LightDoorを設立し、不動産会社向けのSNS運用支援に特化したコンサルティングを開始しました。リクルートやスタートアップでの経験を活かし、「不動産業界に特化した支援」が私たちの強みです。その経験を認められて、ARUHI様からお声がけいただき、子会社の代表を務めた経験もあります。
SNSコンサルティングという形で不動産業界の支援をされるようになった背景を教えてください。
リクルート時代、住まいを探す多くの人がポータルサイトに集まる中で、物件紹介だけでなく、不動産会社が持つ「想い」や「強み」をエンドユーザーに届けることに、私は大きなやりがいを感じていました。この経験は、現在取り組んでいるSNSコンサルティングにも繋がっていると感じています。
一方で当時から、「ポータルサイトで集客できているから安心」という意識が、不動産会社の皆さまの間で別の手段を深く検討する機会を減らしてしまっているのではないかーーそんな懸念を私は抱いていました。
確かにポータルサイトには多くのユーザーが集まりますが、個々の不動産会社の想いや独自性がユーザーに届きにくい側面もあるのは否めません。だからこそ、SNSは「想い」を届けるための有効な手段だと考えています。
しかし、不動産業界では「とりあえず集客のためにSNSを始める」というケースが多く、運用設計が不十分なまま進められているのが現状です。
私たちはまず、「どんな集客を実現したいのか?」という目的を明確に言語化し、そのうえでSNSのアルゴリズムと掛け合わせて戦略を立てていくことを大切にしています。
不動産業界におけるSNS運用の課題は何ですか?
多くの不動産会社が、SNSを「何のために活用するのか」という目的を明確にしないまま、なんとなく運用しているケースが多いと感じています。
ですが、SNSで成果を出すには、まず自社の集客目的をしっかりと言語化し、それに合った戦略を立てることが欠かせません。とはいえ、不動産会社の皆さんが日々、物件の撮影やお客様対応、契約書類の作成などに忙殺される中で、SNSにしっかり向き合うのは難しいというのもよく分かります。
ポータルサイトは、アルゴリズムや仕組みがブラックボックスですが、SNSはアルゴリズムが比較的公開されています。ただし、それらは日々アップデートされており、常に追いかけていくには知識と継続的な研究が必要です。だからこそ、私たちのようなコンサルティング会社がサポートする価値があるのだと考えています。
SNSで反響を獲得することに関心のある賃貸仲介会社は多いと思います。そうした中で、御社が支援して成果につながった要因は、どのような点にあるのでしょうか?
一番の強みは、「不動産会社のやりたいこと」と「SNSのアルゴリズム」をうまく融合させている点です。不動産業界の事情もSNSの仕組みも理解しているからこそ、弊社は集客につながる仕組みを構築できます。
もう一つの強みは、【コンセプト設計】⇒【数値の振り返り(PDCA)】⇒【反響を生む導線づくり】⇒【SNSの“ポータルサイト化”】という一連の流れを重視していること。ただ「バズればいい」という運用はしておらず、そこが他社との大きな違いです。
冒頭でもお話があったとおり、ただSNS運用を支援するのではなく、「不動産会社に特化した支援」ができるのは御社の強みですね。不動産会社さんがお願いしたくなる気持ちもよくわかります。実際に、不動産会社がSNSを活用して反響を得るには、どういった点が重要ですか?
まず大事なのは、「ユーザープール(ターゲット)を明確にすること」です。不動産をSNSで積極的に探す人は多くないため、「誰に届けたいのか」をはっきりさせ、その層に向けた情報発信を徹底する必要があります。
例えば、「大阪で一人暮らしを始めたい20代女性」をターゲットにするなら、投稿内容・ビジュアル・トーンすべてをその層に合わせて設計します。
具体的には、どんな投稿をされているんですか?
例えば、「大阪のワンルームを探している人」向けに、新着物件を毎日ストーリーズで紹介したり、「5万円台で住めるおしゃれ物件特集」のルームツアー動画を作ったりしています。街紹介も人気ですね。物件だけでなく、その街での暮らしをイメージできるようにしています。
暮らしのリアルを伝えられるのはSNSならではですよね。反響につなげるための導線設計も意識されていますか?
はい、かなり意識しています。
特に重要なのは「反響導線の設計」です。プロフィールの文章や、リンクの付け方一つで反響数が変わります。成功している会社はLINEを活用しているケースも多く、弊社ではLINEの構築をサポートしたり、SNS上からワンクリックで問い合わせできるように設計しています。インスタからブラウザに飛ばすのはユーザーにとって結構手間なんです。
SNSを“ポータルサイト化”してる感じですね。
まさにその通りです。ポータルサイトで鳴らない物件でも、SNSでターゲットに刺されば反響が鳴ります。実際、防音マンションの事例では、ポータルではまったく反響がなかったのに、SNSでは「音楽好き」層に刺さって問い合わせが入ることもよくあります。SNSはニッチな層にもダイレクトに届くんです。
SNSでの反響獲得で成功された会社さんの事例があれば教えてください。
例えば「松崎ハウジング」さん(@nakano_fudousan)は、当初は“映え物件”を多数投稿していたものの、実際は管理物件に映え要素が少なかったんです。そこで背伸びせず、地に足の着いた運用に切り替えたところ、反響が安定して増えていきました。
成功する会社さんの多くは、最初からポータルサイトありきではなく、SNSのコンセプトをしっかり考えるところから、入り始めています。逆に、「いつかポータルを脱却したいからとりあえずSNSを始めてみた」というケースでは、戦略が曖昧になり、結果につながらないことが多いですね。
先ほどお話があったユーザープールを明確にすることは大事なんですね。
本当に大切です。
あと、松崎ハウジングさんの強みはプロフィールリンクをLINEに設定しているところです。熱量の高いユーザー(ファン)はDMで直接問い合わせてきますが、そうでないユーザーはまずLINEを通じて情報収集する傾向があります。すぐに返信が来ない場合でも、LINE登録してもらえれば、後の追客も可能です。
まさに「導線の最適化」という感じですね。他にも印象的な事例はありますか?
防音マンションの事例も印象的です。家賃が高く、ポータルでは全く反響がなかった物件でしたが、「楽器可」「防音」に絞った発信で、音楽好きの層にしっかり刺さり、反響が獲得できました。これは「ユーザープール設計」と「SNS向き物件の選定」が成功した好例です。
出典:株式会社松崎ハウジング(Instagramアカウントより)
逆に、SNS運用で陥りがちな失敗事例などはありますか?
はい。大きく2つの失敗パターンがあると思っています。
ひとつ目は、「ユーザープールが存在しない」または「設計が誤っている」ケースです。たとえば、女性向けのワンルーム物件をたくさん発信していても、その女性が新大学生だとすると、中々集客が難しいです。
なぜなら、本来のターゲットは学生の親になるはずなので、ルームツアーだけでは、中々学生の親御さんの信頼は獲得できません。
ふたつ目は、「投稿内容がターゲットに合っていない」こと。たとえば社宅ニーズを狙って社宅に住みたい人向けに発信しても、そもそもSNSを使って物件を探す習慣がその層にないなら意味がないんです。社宅系の発信をするのであれば、社宅に住む人ではなく、社宅斡旋をする人事担当者に向けて、社宅専門だからこそのプロフィールや発信をする必要があります。
また、バズっている投稿を単に真似しても、そのユーザー層に合っていなければ効果はありません。やはり、「自社のターゲット顧客をユーザープール化するために、そのターゲット顧客が見たいと思う内容」を届けることが重要です。
最後に、CHINTAI JOURNALの読者、特に賃貸仲介会社の経営層の皆さまへメッセージをお願いします。
ぜひ、不動産会社として「何を成し遂げたいのか」「どんなワクワクする未来を描いているのか」というビジョンを、私たちに聞かせてください!
その想いをSNSというツールを使って、一緒に描き、ユーザーへ届けていきたいと思っています。LightDoorは単なるSNS運用代行会社ではなく、「不動産会社の課題解決パートナー」でありたいと考えています。
不動産という仕事を通じて、その街にどんな価値を生み出せるのか――そう真剣に考えている会社様とは、きっとよい形で伴走できると信じています。
【氏名】
澤井 慎二
【肩書き】
株式会社LightDoor 代表取締役
【経歴】
新卒で株式会社リクルートに入社、6年間SUUMOに従事し、不動産会社へ広告営業を経験。2018年に不動産テック企業を共同創業し、EGENTをサービス提供。その後、2020年にLightDoorを設立。2021年には住宅ローン専門金融機関ARUHIの子会社の代表も経験。
(三重県出身・立命館大学卒業)
【各種問い合わせ・SNSなど】
自社HP:https://lightdoor.jp/
お問い合わせ:https://lightdoor.jp/contact
X(旧Twitter):https://x.com/sawai_lightdoor
Youtube:東京不動産マニア
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