記事公開日:2022/04/07
最終更新日:2022/09/18
管理している賃貸物件にクレームが起こった場合、まず確認すべきポイントは大家さん・入居者のどちらに責任があるかです。クレームにはさまざまな内容がありますが、賃貸物件に雨漏りが発生した場合は、どちらの責任になるかの判断は難しいとされています。今回は、賃貸物件における雨漏りのクレームの責任所在や、対応のコツを解説していきます。
目次
賃貸物件が雨漏りした場合、大家さん・入居者のどちらに責任があるのかは、雨漏りの原因によって異なります。大家さんが責任を負う場合と入居者が責任を負う場合、ふたつのケースを見ていきましょう。
賃貸物件に雨漏りや水漏れが発生した場合、例外を除いて責任を負う立場にいるのは大家さんです。なぜなら、賃貸借契約を結んだ大家さんには賃貸マンション・賃貸アパートの修繕義務があるからです。
民法第606条によると、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とされています。賃貸物件に雨漏りなどの不具合が生じた場合は、大家さんが適切な修繕を行うことが法律で定められているのです。なお、大家さんが賃貸管理を管理会社に任せている場合は、その管理会社に修繕義務が発生します。
一般的に大家さんが対処する賃貸物件の雨漏りですが、雨漏りの原因が入居者にある場合は、入居者自身が責任を負わなければいけません。入居者に雨漏りの費用を請求できる事例は以下のとおりです。
上記のように、入居者の過失で雨漏り・水漏れが発生した場合の責任は入居者にあり、修繕義務も入居者に課せられます。
入居者に過失があった場合のみ入居者が責任を負いますが、雨漏りの原因が入居者の過失ではなかったとしても、賃貸契約書の内容によっては入居者の責任になる場合があります。
賃貸借契約では、基本的な契約内容に追加して約束できる「特約」を設けることが可能です。契約書に「修繕は賃借人の負担とする」などの記載があれば、賃貸物件の修繕義務は入居者に課せられます。
しかし、すべての特約が有効になるわけではありません。特に、屋根の改修や賃貸物件のリフォームなどの大規模な修繕が必要な場合は、特約があっても大家さんに修繕義務があるとされています。特約があったとしても、大家さんに修繕義務が課せられるケースもあるということを理解しておきましょう。
賃貸物件に雨漏りが発生した場合、入居者からのクレームで発覚するのがほとんどです。入居者は不安に加え、苛立ちを覚えることも多いため、クレームには真摯な対応が求められます。雨漏りのクレームは、以下の3つのポイントを意識して対応しましょう。
クレーム処理で重要なのは、相手の話を最後まで聞くことです。部屋で雨漏りが起こると普段通りの生活ができなくなるため、多くの入居者が切実な気持ちを訴えかけてきます。話を遮るということは、そのような切実な気持ちを遮ることになってしまうため、まずは相手の話に耳を傾けましょう。
また、多くの入居者はクレーム時にイライラしており、その気持ちを吐き出したいとも考えています。途中で話を遮ると相手の怒りが増すおそれもあるため、相手の気持ちに配慮することも重要です。
相手の話を聞いた後は誠意をもって謝罪しましょう。謝罪には相手の怒りを鎮める効果がありますが、「申し訳ございませんでした」など形だけの謝罪ではいけません。
謝罪には非を認めるという意味があり、文言によっては雨漏りの原因は大家さんにあると捉えられてしまうおそれがあります。不快な気持ちをさせたことへの謝罪だとわかってもらうよう、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」など、謝罪の言葉の前にワンクッション置きましょう。原因をはっきりさせないまま謝ってしまうと雨漏りそのものの非を認めたことになり、修繕責任がうやむやになるなどトラブルのもとです。
前述のとおり、雨漏りの原因が入居者にあることも考えられるため、謝罪の際に使う言葉には十分配慮しましょう。
入居者からのクレームに対し、ただ謝っただけでは解決にならないため、どんな対応方法を取るのかを丁寧に説明する必要があります。雨漏りの対応としては、以下のような順番で行うのが良いとされています。
入居者の話を聞き適切な謝罪を行った後は、クレームの原因追及に努めましょう。入居者の原因だと考えられた場合は、修繕義務は入居者にあるため、その後の対応を入居者に任せることができるからです。しかし、素人判断では原因の判断が難しいため、入居者と一緒に状況を確認することが重要です。
雨漏りの原因が大家さんにあれば、早急に修理業者を手配します。工事の日時が決まれば入居者にも伝え、原則入居者立ち会いのもと修繕工事を行います。
万が一家具家電などの家財道具に不具合が生じた場合、大家さんが費用を負担しなければいけません。そのため、被害を受けた家具家電の購入金額・時期を事前に確認しておきましょう。多くの場合、現在加入している火災保険で補償されるため、どのくらいの範囲が保証されるのかをチェックしてください。
ここからは、実際の雨漏りクレーム例を紹介していきます。賃貸物件で雨漏りのクレームが発生した場合、以下の例を参考に対処しましょう。
Q:雨漏りのクレームにはどのように対処しましたか?
A:自然災害のせいで滝のような雨漏りが生じ、クレームを受けたことがあります。すぐに現場に向かい、雨漏りの対処として部屋を一緒に拭き、怒りや不安を共有するよう努めました。自然災害であり、入居者も怒りや不安をぶつけることができないため、こちらに非がなくてもその気持ちを受け入れることが重要だと感じました。
誠意をもって対応した結果、大家さん・入居者の方に「ちゃんと対応してくれる担当者」という良いイメージを与えることができ、今もお互い良好な関係を築けています。雨漏りの対応にはできることが限られますが、自分にやれる範囲のことに取り組むことで、大きなトラブルを回避できると感じています。
賃貸物件で雨漏りが発生した場合、基本的な責任は大家さん、入居者の原因や特約で定められている場合に限り入居者の責任となります。どちらが原因の場合でも、クレームが起きた場合は相手の話を聞き、不快にさせたことへの謝罪が重要です。
雨漏りの原因が大家さんにあれば、工事業者への連絡などすぐに対応を行い入居者へも丁寧に説明しましょう。真摯に対応すればお互いの関係も悪化せずに済み、今後のやり取りもスムーズに進みます。不安になっている入居者の気持ちを考え、感情的にならず冷静に対応してください。