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賃貸雨漏りのクレームにおける責任はだれ?対処法のコツを実際の声と併せて確認しよう!

記事公開日:2022/04/07

最終更新日:2023/11/17

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賃貸物件に住んでいるときに困ることとして、「雨漏り」が挙げられます。室内が水浸しになるわけですから、被害は相当なものです。

そこで今回は、お部屋をご紹介したお客様から雨漏りの連絡が入ったときの対処方法について解説します。適切な対応を行うことで、入居者はもちろん、大家さんや管理会社との信頼も失わずに済むようになるのでぜひ押さえておくようにしてください。

※下記の関連記事では内見(物件案内)のコツ(内見時に意識すべきポイント、潜在的なニーズを汲み取る方法、クロージングまでにとるべき行動など)をまとめてますのでこちらもチェックしてみてください。

賃貸物件の雨漏りにおける責任はだれ?

賃貸物件が雨漏りした場合、大家さん・入居者のどちらに責任があるのかは、雨漏りの原因によって異なります。大家さんが責任を負う場合と入居者が責任を負う場合、ふたつのケースを見ていきましょう。

基本的には大家さんが責任を負う

賃貸物件に雨漏りや水漏れが発生した場合、例外を除いて責任を負う立場にいるのは大家さんです。なぜなら、賃貸借契約を結んだ大家さんには賃貸マンション・賃貸アパートの修繕義務があるからです。

民法第606条によると、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とされています。賃貸物件に雨漏りなどの不具合が生じた場合は、大家さんが適切な修繕を行うことが法律で定められているのです。なお、大家さんが賃貸管理業務を管理会社に任せている場合や、管理会社がお部屋を借り上げている(サブリース)場合であっても、基本的には大家さんに修繕義務が生じます。

雨漏りの原因が借主の場合は借主自身で責任を負う

一般的に大家さんが対処する賃貸物件の雨漏りですが、雨漏りの原因が入居者にある場合は、入居者自身が責任を負わなければいけません。入居者が雨漏りによる被害を賠償しなければならない事例は以下のとおりです。

  • 入居者が壁や天井に穴を開けて雨漏りが生じた場合

 例)BSアンテナやインターネット配線の設置に伴う外壁のビス穴からの浸水など

  • 入居者がバルコニーの排水口を詰まらせて雨漏りが生じた場合

 例)バルコニーの排水口が落ち葉やゴミで詰まるなど

  • 入居者の怠慢で水が溢れて浸水した場合

 例)窓の開けっぱなしなど

上記のように、入居者の過失で雨漏り・水漏れが発生した場合の責任は入居者にあり、修繕義務も入居者に課せられます。

賃貸借契約内容によっては借主が責任を負う場合がある

入居者に過失があった場合のみ入居者が責任を負いますが、雨漏りの原因が入居者の過失ではなかったとしても、賃貸契約書の内容によっては入居者の責任になる場合があります。

賃貸借契約では、基本的な契約内容に追加して約束できる「特約」を設けることが可能です。契約書に「修繕は賃借人の負担とする」などの記載があれば、賃貸物件の修繕義務は入居者に課せられます。

しかし、すべての特約が有効になるわけではありません。特に、屋根の改修や賃貸物件のリフォームなどの大規模な修繕が必要な場合は、特約があっても大家さんに修繕義務があるとされています。特約があったとしても、大家さんに修繕義務が課せられるケースもあるということを理解しておきましょう。

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賃貸物件の雨漏りに対するクレーム対処のコツ

賃貸物件に雨漏りが発生した場合、入居者からのクレームで発覚するのがほとんどです。入居者は不安に加え、苛立ちを覚えることも多いため、クレームには真摯な対応が求められます。雨漏りのクレームは、以下の3つのポイントを意識して対応しましょう。

まずは相手の話を聞く

クレーム処理で重要なのは、相手の話を最後まで聞くことです。部屋で雨漏りが起こると普段通りの生活ができなくなるため、多くの入居者が切実な気持ちを訴えかけてきます。話を遮るということは、そのような切実な気持ちを遮ることになってしまうため、まずは相手の話に耳を傾けましょう。

また、多くの入居者はクレーム時にイライラしており、その気持ちを吐き出したいとも考えています。途中で話を遮ると相手の怒りが増すおそれがあるため、相手の気持ちに配慮することも重要です。

相手へ誠意を見せた謝罪をする

相手の話を聞いた後は誠意をもって謝罪しましょう。謝罪には相手の怒りを鎮める効果がありますが、「申し訳ございませんでした」など形だけの謝罪ではいけません。

謝罪には非を認めるという意味があり、文言によっては雨漏りの原因は大家さんにあると捉えられてしまうおそれがあります。不快な気持ちをさせたことへの謝罪だとわかってもらうよう、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」など、謝罪の言葉の前にワンクッション置きましょう。原因をはっきりさせないまま謝ってしまうと雨漏りそのものの非を認めたことになり、修繕責任がうやむやになるなどトラブルのもとです。

前述のとおり、雨漏りの原因が入居者にあることも考えられるため、謝罪の際に使う言葉には十分配慮しましょう。

今後の対応方法について丁寧に説明を行う

入居者からのクレームに対し、ただ謝っただけでは解決にならないため、どんな対応方法を取るのかを丁寧に説明する必要があります。雨漏りの対応としては、以下のような順番で行うのが良いとされています。

  • 状況確認
  • 原因の把握
  • 修理業者への連絡
  • 被害状況の把握
  • 修繕工事の実施

入居者の話を聞き適切な謝罪を行った後は、クレームの原因追及に努めましょう。入居者の原因だと考えられた場合は、修繕義務は入居者にあるため、その後の対応を入居者に任せることができるからです。しかし、素人判断では原因の判断が難しいため、入居者と一緒に状況を確認することが重要です。

雨漏りの原因が大家さんにあれば、早急に修理業者を手配します。工事の日時が決まれば入居者にも伝え、原則入居者立ち会いのもと修繕工事を行います。

万が一家具家電などの家財道具に不具合が生じた場合、大家さんが費用を負担しなければいけません。大家さんがスムーズに対応できるよう、被害を受けた家具家電の詳細についてはなるべく把握しておくことをおすすめします。

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これだけは必須!雨漏り発生時に伝えるべきこと

先述したように、雨漏りの連絡を受けたときは、なるべく冷静に話を伺うことが重要です。感情的な部分がなくなってきたところで、冷静に前向きな話を進めましょう。

以下の項目では、賃貸仲介業者の営業担当者が雨漏りの連絡を受けたときに、必ず入居者に伝えるべき内容をピックアップしています。いずれも重要な内容なので、ぜひ押さえておくようにしてください。

①管理会社もしくは大家さんに連絡をする

まずは、管理会社や大家さんに連絡を入れましょう。また、雨漏りの発生時は入居者がパニックに陥っていることも考えられます。ビジネスライクな言動ではなく、入居者の立場になって慎重に言葉を選ぶことが重要になります。

②雨漏りの状態と家具や家電に被害があるときは、写真を撮影する

保険を申請するときには必ず写真が必要になります。そこで、雨漏りの被害状況や罹災した家具や家電の写真を撮影するよう、入居者に伝えてください。枚数については特に決まりはありませんが、多ければ多いほど良いといわれているので、この旨も併せて伝えておくようにしてください。

③バケツや雑巾などを利用して、被害を最小限に留める

責任が入居者にあろうとなかろうと、被害を最小限に食い止める義務が入居者にはあります。バケツや雑巾、なければタオルを床に敷くなどして被害を最小限に留めるよう、指示してください。

④ホテルなどを利用した際は領収書を取っておく

雨漏りの被害状況によっては、お部屋にこれ以上居住することが不可能と判断されることもあります。そのときは、ホテルなどを緊急避難先として利用することも考えられます。

雨漏りを原因としてやむを得ず支出したものについては、すべて領収書を取っておくように伝えてください。特に宿泊費用については、一般的な保険内容であれば臨時費用として補償されています。賃貸仲介営業の配慮によって、入居者の出費を抑えることが可能です。

賃貸仲介営業担当者なら知っておくべき雨漏りに関する契約書内容や法律規定

続いて、賃貸物件で雨漏りが発生したときに必要になる、法的な規定や契約書の文言を確認しましょう。あまり読み込むことのない契約書の内容の理解を深めることで、緊急時の対応がよりスムーズになるでしょう。

雨漏りは原因によって責任負担が異なる

繰り返しになりますが、原則として雨漏りの責任の所在は大家さん側にあります。たとえ雨漏りの原因が過去類を見ない大規模災害であったとしても、この結論に変わりはありません。ただし、「入居者」の過失によって雨漏りが生じている場合、入居者が費用を負担することになります。

雨漏りの法的な立ち位置

雨漏りが発生することは、ある意味ではやむを得ないことと捉えることができます。ここで重要になるポイントは、「雨漏りそのものではなく、雨漏りによって平和に居住できない状況になるのが問題」ということです。

民法第611条には、「設備の故障や、他の何かが原因で目的が達成できなくなった分の家賃は払わなくて良い」といった趣旨の文言が記されています。また、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が規定するガイドラインを見ると、「雨漏りが発生した場合はおおむね1週間程度の免責期間を設けたうえで、それでも補修されなければ家賃の5~50%程度がそれ以降減免されるのが妥当である」と定められています。

このような法律やガイドラインがあるので、入居者は安心して住むことができるのです。

出典:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」

入居者には善管注意義務がある

人からお金を払って物を借りている人には、「自分の所有物と同じ、あるいは自分の所有物よりも大事に扱う義務」が法律的に生じ、これを「善管注意義務」と呼びます。

先述した雨漏り被害を抑えるための措置などは、善管注意義務の最たるものです。大家さんや管理会社への連絡を怠ったり、意図的に窓を開けっぱなしにしたりするなど、入居者がさらなる被害拡大を防止するための措置を講じなかった場合は、入居者自身がその損害の一部を負わなければならないこともあります。

特約で責任範囲を確認する

住むことを目的とした賃貸借契約において、「外壁や屋根の補修責任を大家さんが負わない」というのは非常にレアなケースです。

このような例が存在する可能性として考えられるのは、主に以下のようなケースです。

  • そもそも取壊しを前提としているところを、入居者の要望で賃貸借契約するに至った
  • 入居者が大規模に改装することを前提とした賃貸借契約である

このような特殊な事例に該当するか否かを確認するには、賃貸借契約書の内容を見る以外に方法はありません。とりわけ、入居者に不利な内容は、契約書末尾の特約事項に記載されていることがほとんどです。困ったときは契約書を確認することを覚えておきましょう。

火災保険の内容を確認する

雨漏り被害が発生したとき、個人の費用負担ですべて解決することはほぼ不可能です。そこで役に立つのは、入居者が加入する保険になります。

昨今は、「火災保険の加入は任意であるため安い共済で十分」などという情報が出回っていますが、これは一時的な出費を抑えることだけを目的としたミスリードといわざるを得ません。賃貸仲介業者は、火災保険の保証範囲や内容を理解し、そして入居者に発生し得るリスクを伝え、入居者の判断を待つのがベストといえます。

実際に聞いてみた!賃貸雨漏りのクレームをどのように対処したの?

ここからは、賃貸仲介業者が受けた実際の雨漏りクレーム例を紹介していきます。賃貸物件で雨漏りのクレームが発生した場合、以下の例を参考に対処しましょう。

なお、どちらの例も専門的な知識をもった方の対応事例ではなく、誠意をもって対応し、良い結果をもたらした事例です。

自然災害により雨漏りが発生したケース

Q:雨漏りのクレームにはどのように対処しましたか?

A:自然災害のせいで滝のような雨漏りが生じ、クレームを受けたことがあります。すぐに現場に向かい、雨漏りの対処として部屋を一緒に拭き、怒りや不安を共有するよう努めました。自然災害であり、入居者も怒りや不安をぶつけることができないため、こちらに非がなくてもその気持ちを受け入れることが重要だと感じました。

誠意をもって対応した結果、大家さん・入居者の方に「ちゃんと対応してくれる担当者」という良いイメージを与えることができ、今もお互い良好な関係を築けています。雨漏りの対応にはできることが限られますが、自分にやれる範囲のことに取り組むことで、大きなトラブルを回避できると感じています。

入居者の過失により雨漏りが発生したケース

Q:入居者が原因による雨漏りの発生事例はありますか?

A:アパートの一室で、バルコニーの排水口に落ち葉が詰まり、バルコニーがプールのような状態になった結果、室内に雨水が入居者の留守中に浸水したことがあります。そのときは被害も大きく、下の階のお部屋の天井からも漏水するほどの被害に至りました。

下の階の方が、私が仲介させていただいた方ということもあり、私が第一報を受け対応しました。当時は知識が不足していたこともあり、何も考えずにお部屋へ訪問し、一緒に拭き掃除や養生のお手伝いしました。その後、私も入居者の方も冷静を取り戻し、管理会社や保険会社に連絡をするなどしているうちに、管理会社の方が到着したため、私はそこで失礼することにしたのです。

知識や経験があればよりスムーズな対応もできたと思いますが、一緒に掃除や養生をしたことで、人間関係が構築されたような気がします。その証拠に、トラブルが起きてからしばらくたった後、入居者の方からお礼のご連絡をいただきました。この経験から、たとえ知識がなかったとしても「自分にできることを実践する」ことが重要だと私は思っています。

賃貸雨漏りのクレームは真摯に対応しよう!

謝罪している画像

賃貸物件で雨漏りが発生した場合、基本的な責任は大家さん、入居者の原因や特約で定められている場合に限り入居者の責任となります。どちらが原因の場合でも、クレームが起きた場合は相手の話を聞き、不快にさせたことへの謝罪が重要です。

雨漏りの原因が大家さんにあれば、工事業者への連絡などすぐに対応を行い入居者へも丁寧に説明しましょう。真摯に対応すればお互いの関係も悪化せずに済み、今後のやり取りもスムーズに進みます。不安になっている入居者の気持ちを考え、感情的にならず冷静に対応してください。

KS

この記事を書いた人

大学卒業後、賃貸仲介業や管理業を約4年間経験したのち、知人の独立を手伝い賃貸仲介会社を2社立ち上げ。後に賃貸管理業のプロパティマネージャーやアセットマネージャー、総合不動産会社での経営企画室室長としてのキャリアを積む。
現在は、賃貸事業、管理事業、注文住宅事業の立て直しのため、店舗店長を兼任し、マネジメントを行っている。

■現在の職業・肩書き・資格など
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士

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