エピソード

不動産業界を強くする“企業ブランディング”の力──集客・採用・満足度すべてを好循環へ導く戦略とは?

記事公開日:2025/05/29

最終更新日:2025/05/28

「集客が伸びない」「良い人材が集まらない」──その悩み、実は“企業ブランディング”で解決できるかもしれません。

株式会社クラスコ代表・小村典弘社長は、不動産業界の本質を「看板ビジネス」と見抜き、視覚と理念を一体化させたブランディング戦略で、業績や採用、社員の意識改革まで成果を上げてきました。

本インタビューでは、企業の価値を社会に「見える化」することで、集客・採用・顧客満足度までつながる“好循環の仕組み”について詳しく伺います。

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小村社長のキャリアとクラスコの軌跡

本日はよろしくお願いいたします。まずは、小村社長のご経歴とクラスコについて教えていただけますか?

よろしくお願いします。
私は1975年に石川県で生まれ、1998年に北陸大学法学部を卒業しました。その後、コンサルティング会社を経て、1999年に当時のタカラ不動産(現・クラスコ)に入社しました。
2012年にはリノベーションブランド「Renotta(リノッタ)」を全国展開、2018年には空室対策支援「満室の窓口」もスタートしました。

ブランディングに注力されるようになった背景には、どんなきっかけがあったのでしょうか?

きっかけは“失敗”でした。看板など諸々4,000万円をかけてブランディンしたのですが、完成したものが青空のようなもので、実際の青空と同じようになってしまい、全然目立ちませんでした。
「これは外注ではなく、自分たちで本質から考えないといけない」と思い、社内にクラスコデザインスタジオを立ち上げました。

※クラスコという社名は、「暮らす×フラスコ」という造語から生まれてきている。

「不動産=看板ビジネス」という発想──ブランディングの考え方

企業ブランディングというと一般企業の話という印象もありますが、不動産業ならではの視点はありますか?

あります。不動産は“看板ビジネス”なんです。
他の業界では、看板を掲げる場所は主に店舗に限られますが、不動産業界では物件看板、のぼり、広告、パンフレットなど、多くの接点が存在します。
つまり、不動産業界は、ブランディングにおいて圧倒的なインパクトを持つ業界だと言えるのです。

確かに、街中でも自然に目に入りますよね。

その通りです。
しかも、デザインやメッセージが一貫している会社は、「信頼できそう」「安心できる」という印象を与えます。今の若い世代はまずWebやSNSで会社をチェックする時代。そこで“どう見せるか”が極めて重要です。

※ブランディング例:店舗看板

社員がブランドを体現する──インナーブランディングの重要性

社外への見せ方だけでなく、社内向けのインナーブランディングも重視されているとお伺いしました。

はい。ブランドをもっとも理解し、体現するのは社員自身です。
社員が理念やビジョンに共感し、それを接客や提案に落とし込める状態を作る。そこにブランディングの本質があります。
そのためには、ビジョンの言語化、オフィス設計、社内教育などを連動させる必要がある。これはクラスコの強みですね。

採用難を乗り越える──企業ブランディングが果たす役割

近年、特に中小の不動産会社では「採用難」が大きな課題だと思いますが、企業ブランディングがその解決策になるというのは本当でしょうか?

間違いないですね。
今は「何をやっている会社なのか」「どんな社会的価値を提供しているのか」を、事前に調べる時代です。
それが言語化されていない、もしくは発信されていないと、そもそも応募に至らないんです。逆に、ブランディングで共感を呼べる会社には、「理念に共感してきました」という応募者が集まります。

明日から実践できる「言語化」と「見える化」

では、不動産会社様が明日からでもできるブランディングの始め方があれば、教えていただけますか?

はい。
第一歩は、「ビジョンの言語化」です。
自社が大切にしている価値観、提供したい暮らし、目指す未来──そうした想いや方向性を、社員やお客様に伝わる言葉に落とし込むことが何より重要です。
たとえば、「地域に根ざした安心の暮らしを届けたい」「住まい探しをワクワクする体験にしたい」といった具合ですね。

まずは自社の“核となる言葉”を見つけるんですね。

その通りです。
そして次のステップが「見える化」

言語化したビジョンをもとに、ロゴ・看板・店内デザイン・名刺・Webサイトなど、すべてのタッチポイントに統一感を持たせていきます。色使いやフォント、写真のテイストひとつまで、世界観を整えることが大切です。
たとえば、私たちがブランディングを支援した不動産会社では、まず「住まい探しをもっと楽しく」というコンセプトを明文化しました。
それをもとに、ポップで親しみやすいロゴや、色合い、店舗外観までトータルにデザイン。お客様にも社内にも好評で、「会社の印象がぐっと良くなった」という声を多くいただきました。

なるほど、ブランディングって“オシャレにする”というより、きちんと意味や背景を伝える作業なんですね。

まさにその通りです。
見た目を整えることは、あくまで「手段」。

本当に大切なのは、そこに“共感を呼ぶストーリー”があるかどうか。
今の時代、お客様も求職者も、企業が「どんな価値を届けたいのか」「なぜそれをやっているのか」といった想いに敏感です。だからこそ、社長の“好き嫌い”ではなく、誰に・どんな価値を届けたいかを軸にした表現が求められるんです。

ブランディングは「筋トレ」。継続こそ力なり──CHINTAI JOURNAL読者へメッセージ

最後に、CHINTAI JOURNALの読者である不動産会社の皆様にメッセージをお願いします。

「ブランディングは筋トレ」です。即効性はないかもしれませんが、着実に会社の“体幹”を強くしてくれます。

費用対効果も非常に高く、不動産会社ほど「見た目」と「中身」のギャップを整えるだけで大きな反応が返ってくる業界はありません。看板ひとつ、デザインひとつが、採用・集客・信頼のすべてに波及していきます。

実際に、現在ブランディング支援のご相談は全国から増え続けています。どの地域でも対応可能ですので、少しでもご興味があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。

本日は非常に学びの多いお話をありがとうございました!

プロフィール

【氏名】
小村 典弘
【肩書き】
株式会社クラスコ 代表取締役
【経歴】
1975年石川県生まれ。1998年北陸大学法学部卒業。コンサルティング会社勤務を経て、1999年クラスコ(当時 タカラ不動産)に入社。2012年、賃料下落や空室率悪化など賃貸経営の問題を解決すべく、リノベーションブランド「Renotta(リノッタ)」を全国FCネットワークとしてリリース。2018年には全国の空室増加を解決するためのオーナーコンサルの窓口「満室の窓口」を開設。

【保有資格】
GVP(最上級家賃アップ改善士)/GPP(最上級不動産経営改善士)/CPM(米国不動産経営管理士)/相続アドバイザー/宅地建物取引士/FP技能士/証券外務員/賃貸住宅管理士/少額短期募集人資格/レジデンシャルセキュリティーアドバイザー/など

【著書】
『デザイン経営の実行 ブランド力、イノベーション力を劇的に向上させる源泉とは何か?』(現代書林)など

【各種問い合わせ】
クラスコHP:https://www.crasco.jp/
クラスコデザインスタジオ:https://crascodesignstudio.jp/

松本 千治(CHINTAI)

この記事を書いた人

新卒で入社した自動車ディーラーで営業職を9年、本部人事担当を2年経験したのち、2020年に株式会社CHINTAIへ入社。

CHINTAI入社後、経営管理室で新卒および中途採用・労務管理を経験したのち、現在の営業企画グループへ異動。クライアントである不動産会社様へのフォローやサービスの活用促進を担当しながら、不動産会社様向けの情報発信メディアであるCHINTAI JOURNAL運用も担当。

【編集後記】
小村社長の言葉には、一本の芯と深い共感がありました。その“想い”こそが、クラスコのブランディングの源泉なのではないかと感じました。
同社のミッションは「人生、楽しい人を増やすこと」。このシンプルな言葉が、採用にもお客様にも強く響いているのが印象的でした。
難しい言葉ではなく、誰にでも届く、でも心に残る言葉──それこそが、ブランディングの原点なのかもしれません。

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