最終更新日:2025/10/10
記事公開日:2025/06/16
駅からの所要時間は、お客様が物件情報で特に注目するポイントです。駅から遠い物件は、それだけで選択肢から外されがちで、経験の浅い営業担当者にとってはこのネガティブなイメージを覆せず、魅力を伝えきれないまま悔しい思いをすることもあるでしょう。
しかし、駅から遠い物件にも、それを補う大きなメリットが隠されていることがあります。この記事では、「駅から遠い」というデメリットを魅力的なメリットに変え、お客様にご納得いただくための視点とトーク術を具体的に解説します。

目次
まず、「駅から遠い物件」という言葉に、明確な定義はありません。
不動産広告の徒歩分数は、規約で「80m=1分(端数切り上げ)」と定められていますが、これはあくまで目安です。坂道や信号、歩く速さで実際の時間は大きく異なり、お客様の感じ方もさまざまだからです。
賃貸仲介の現場では、一般的に徒歩15分を超えると「駅から少し遠い」、20分以上で「駅から遠い」と感じるお客様が増える傾向です。しかし、これはあくまで目安であり、お客様の価値観や物件の他の魅力(家賃、広さ、周辺環境など)、またエリアといった要素によって許容範囲は大きく変わります。
大切なのは、「徒歩15分だから提案しない」といった判断をせず、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングすることです。その上で、駅からの距離が本当にデメリットとなるのか、あるいは他のメリットで十分にカバーできるのかを見極めることが重要です。

駅から遠い物件には、「この距離はちょっと…」というお客様の固定観念を覆す魅力的なメリットが存在します。ここでは、具体的なメリットとそのメリットを効果的に伝えるためのトーク例を、さまざまな角度からご紹介します。
「リモートワーク中心で通勤が少ないなら、お部屋の快適さが大切ですね。駅から少し離れるだけで、同じ予算でより広く、仕事空間もリビングも快適に。おうち時間が充実します。駅からの距離より部屋の質を優先してみてはいかがでしょうか。」
「仕事とプライベートをきっちり分けたいのなら、駅から少し歩く時間が、オンオフの良い切り替え時間になるかもしれません。考え事を整理するなど、少し距離を置くことで、帰宅時の「ホッとする感覚」が一層深まることもあります。」
このように、お客様の「ライフスタイル」や「何を大切にされているか」を明確にすることは非常に重要です。なぜなら、駅からの距離という一見デメリットに思える点が、時には成約の決め手となることもあるからです。
もちろん駅近の便利さも重要です。そのため実際の営業では、お客様の意向を踏まえ、駅近・駅遠双方を提案することも少なくありません。お客様のベストは一つとは限らないためです。
そこで次に、両方の選択肢を視野に入れてご検討いただく際に役立つ、駅近・駅遠物件それぞれのメリット・デメリットをお客様に客観的に把握していただき、納得のいくお部屋選びをサポートする比較トークと、そのポイントをご紹介します。
「駅近の物件Aと駅遠の物件B、どちらも魅力的な点がありますね。経済面では、Bは同じ広さで家賃が月2万円、年間24万円もお得です。その分、暮らしにゆとりが生まれます。住環境では、便利なAは騒音などが気になる一方、Bは駅遠ならではの静けさと良好な日当たりが大きな魅力です。利便性重視か、家賃を抑えつつ静かでゆとりある暮らしを求めるか。お客様の理想にはどちらが近いでしょうか。」
しかし、両者を比較してお客様の優先順位が見えてきても、まだ「駅から遠いのは少し…」というイメージが残ることもあります。そんな時は、「駅から遠い=不便」という固定観念を、新しい価値へと転換させる言葉の力が有効です。
「毎日の通勤・通学で自然と運動不足が解消できるかもしれません。ジムに通う時間がない方でも、日常的に歩く習慣が身につくのは健康的ですよね。デスクワーク中心のお客様には、良いリフレッシュになるのではないでしょうか。」
「駅から少し離れることで、同じご予算でもより広いお部屋、あるいは新しい設備が整ったお部屋を選べる可能性が高まります。例えば、収納スペースが充実していたり、バスルームが広かったり、荷物が多いお客様にも納得していただけそうです。」
「駅周辺の賑やかさから少し離れることで、落ち着いた環境を手に入れることができます。夜も静かで、ゆっくりと休むことができますし、休日は自宅でのんびり過ごしたいというお客様には最適かもしれません。騒音を気にせず、読書や趣味に没頭できる環境は素敵です。」
このように、言葉で視点を変えれば、「駅から遠い=不便」というお客様の固定観念もポジティブな印象に転換できます。
ここからは、お客様のライフスタイルや価値観に響く、駅遠物件ならではの具体的なメリットにスポットを当てます。具体的なメリットを伝えることで、お客様は駅遠物件をより魅力的な選択肢としてイメージできるはずです。

駅から遠い物件の最大のメリットの一つが、家賃の安さです。これはお客様にとって非常に分かりやすく、響きやすいポイントです。
「ご希望家賃6万円ですね。こちらの物件なら、同じご予算でグッと広い1LDKも夢じゃありません。寝室とリビングをしっかり分けられ、生活にメリハリが生まれ、より快適な毎日が送れますよ。駅からの距離を少し工夫するだけで、お部屋のグレードが上がるのは大きな魅力だと思いませんか。」
駅周辺は商業施設や交通機関が集中しているため、どうしても騒がしくなりがちです。駅から離れることで得られる静かな環境は、大きな魅力となるでしょう。
「駅前ですと、どうしても電車の音やアナウンス、車の騒音などが気になることがありますが、こちらの物件の周辺は住宅街で、非常に静かです。今も実際に窓を開けていますが、騒音という騒音はほぼ聞こえません。夜もぐっすり眠れそうですし、休日も穏やかに過ごせる環境ですよ。」
「歩く」や「自転車に乗る」という行為をポジティブに捉え直すことで、駅からの距離を健康増進の機会として提案できます。
「毎日の駅までが、気持ちの良い運動時間に変わります。例えば徒歩なら、1日30分ほどで無理なく健康維持に。晴れた日は爽快なウォーキングも楽しめます。自転車なら快適に運動できますし、電動アシストなら坂道も楽々です。日常で無理なく体を動かせるのは、大きな魅力ですね。」
「駅からは遠い」けれど「バス停は近い」というケースは少なくありません。公共交通機関の選択肢を広げることで、利便性の懸念を払拭できる場合があります。
「こちらの物件は、最寄りの〇〇駅までは徒歩20分と少し距離がありますが、実は物件のすぐ近くにバス停があり、そこから駅までバスで約5分なんです。しかも、朝の通勤時間帯は5分おきにバスが出ていますので、雨の日や荷物が多い日も便利ですよ。バスを利用すれば、駅までのアクセスもそれほど不便ではないかと思います。」
このように、駅からの距離という一面だけでなく、家賃、住環境、ライフスタイル、そして代替交通手段といった多角的な視点からアプローチすることで、駅遠物件ならではの価値をお客様に具体的に提案できるはずです。

駅から遠い物件のメリットをお客様に効果的に伝えるには、重要なポイントがいくつかあります。
お客様によって響くメリットは異なります。丁寧なヒアリングで、性格・仕事内容・求める環境(広さ、家賃、静けさ等)を把握しましょう。例えば家賃重視の方には安さを、静かな環境を求める方にはその点を具体的にアピールします。
「駅から遠い」という事実も、捉え方を変える「リフレーミング」でポジティブな価値に転換できます。「駅から遠い」というネガティブに聞こえがちな言葉も「喧騒から離れた静かな環境」「同じ家賃でより広い部屋」というように、視点を変えてプラスの価値として提示してみましょう。ただし、無理な言い換えや誇張は避け、お客様が納得できる範囲に留めておくことが重要です。
駅遠物件は全ての人に合うわけではありません。「こんなライフスタイルの方に特におすすめです」とターゲットを絞ることで提案の説得力が増します。例えば家賃を抑えたい方、リモートワーク中心の方、車や自転車移動がメインだったり広さや静かな環境を重視したりするお客様などです。こうしたタイプのお客様には、自信を持って駅遠物件の魅力を伝えられます。
これらのポイントを意識し、お客様一人ひとりに合わせた提案を心がけることで、一見提案が難しいと感じる駅遠物件も、お客様の満足に繋がる強力な選択肢に変えることができるでしょう。
駅遠物件の提案は、視点と伝え方を工夫することで、お客様の満足度を高め、自身の成長と成約に繋がる絶好の機会です。
本記事で解説したお客様のライフスタイルに合わせたメリットの個別化、固定観念を覆すリフレーミング、そして適切なターゲット設定といったポイントが、そのための具体的な武器となります。
「駅から遠いから」と最初から諦めるのではなく、これらの視点とトーク術を駆使して駅遠物件の隠れた魅力を最大限に引き出しましょう。それがお客様の選択肢を広げ、ひいては営業力の強化と信頼獲得に結び付き、成約率のアップにつながります。
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