イケノウハウ

不動産会社が意識すべき「住宅確保要配慮者」への対応と押さえておきたいポイント

記事公開日:2024/12/26

最終更新日:2024/12/26

不動産会社にとって、住宅確保要配慮者への対応は重要である一方で、難しさを感じる場面が少なくありません。例えば「審査に通らない」「大家から入居を拒否される」といった問題は多くの仲介業者が直面している課題です。

しかし、適切な方法を知り実践することで課題を乗り越え、住宅確保要配慮者への対応を業務の強みに変えることができます。

そこで本記事では、住宅確保要配慮者に対応する際に不動産会社が押さえるべきポイントや実践例を詳しく解説します。住宅確保要配慮者への対応に悩んでいる賃貸仲介業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

「住宅確保要配慮者」とは

「住宅確保要配慮者」は、住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)に基づき、住まいを確保することが難しい方のことです。具体的には、以下のような方が該当します。

住宅確保要配慮者とは?

・低額所得者: 経済的な制約により高額な家賃を支払うのが難しい方
・高齢者: 高齢であるがゆえに入居拒否を受けやすい方
・障害者: 心身の害により特別な配慮が必要な方
・その他: DV被害者、外国人、一人親家庭など

現状では、住宅確保要配慮者が住まいを見つけることは容易ではありません。経済的に負担の少ない物件が不足しており、特に低家賃の住宅が十分に供給されていないため、選択肢が限られています。

また民間賃貸住宅では、連帯保証人や生活支援体制の不足を理由に、入居を拒否されるのも実情です。一部の住宅確保要配慮者においては、緊急時の連絡体制の整備や定期的な見守り支援など、生活を支える仕組みが必要といえます。

参考資料:国土交通省|住宅セーフティネット制度

住宅確保要配慮者のお客様が来店された際に賃貸仲介業者が意識すべき事項

住宅確保要配慮者の方々が安心して住まいを見つけられるよう、賃貸仲介業者にはソフト面とハード面の両方からの配慮が求められます。この章では、具体的な対応方法を解説します。

①頼るべき行政の力や窓口などをご紹介する

住宅確保要配慮者への対応では、行政が提供する支援制度や相談窓口を活用するようにしましょう。賃貸仲介業者が単独で対応するのではなく、公的機関の力を借りることで、より適切なサポートが可能です。以下では、具体的に行政の力を借りるための手順と実例を紹介します。

行政の力を借りるための3ステップ

行政の支援を活用することで、住宅確保要配慮者への対応がよりスムーズです。 3つのステップで解説します。

ステップ1:情報収集

まず、お客様が居住する自治体のホームページを確認し、「住宅支援課」や「福祉課」などの関連部署を探します。「セーフティネット住宅情報提供制度」や「家賃補助制度」といったキーワードを活用すると、必要な情報が効率よく見つかります。自治体によっては、支援制度が特設ページでまとめられている場合もありますので、見逃さないようにしましょう。

ステップ2:電話相談

情報を収集したら、該当する部署に電話で問い合わせを行います。担当者と直接話すことで、お客様の状況に合った支援策や手続きについて具体的なアドバイスを受けることができます。この際、以下の情報を整理しておくとスムーズです。

・お客様の属性(年齢、職業、収入など)
・抱えている課題(家賃滞納、連帯保証人不在など)
・希望する住宅の条件(地域、間取り、家賃など)

ステップ3:窓口訪問

電話相談の結果、窓口訪問を案内される場合があります。その際には、申請書類の提出や面談が必要になるため、お客様に同行してサポートするのが望ましいです。特に、行政手続きに不慣れな方にとって、不動産会社のサポートは大きな助けとなります。

行政の支援を活用することで、不動産会社は住宅確保要配慮者の住まい探しを効果的にサポートできます。現場での行動が信頼と成果につながります。

電話相談の事例

ここでは、不動産会社のAさんと住宅支援課のBさんが行った電話相談を例に挙げます。

電話相談の会話イメージ

Aさん:「〇〇市住宅支援課のBさんですか?△△不動産のAと申します。先日、一人親世帯のお客様から賃貸住宅の相談を受けました。保証人がおらず、入居に不安を抱えているご様子なのですが、何かお力添えいただける制度はありますでしょうか?」

Bさん:「はい、Aさん、お問い合わせありがとうございます。一人親世帯の方でしたら、市営住宅への入居申込や、家賃補助制度のご利用が考えられます。お客様の状況を詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?」

Aさん:「もちろんです。お客様は30代女性で、5歳のお子様とご一緒に暮らしていらっしゃいます。(以下、お客様の状況を具体的に説明)」

Bさん:「その状況ですと、〇〇制度の利用条件を満たしている可能性が高いですね。まずは、必要書類を揃えていただき、窓口で申請していただく流れとなります。」

Aさん:「承知いたしました。必要書類は、お客様にもご案内いたします。本日はご丁寧なご対応、ありがとうございました。」

この事例を参考に、まずは行政窓口に相談し、お客様の状況に合った支援を一緒に進めてみましょう。

②安心して相談できる環境を整える

住宅確保要配慮者が安心して相談できる環境を整えるためには、ただ窓口を紹介するだけでは不十分です。不動産会社が直接支援を行う姿勢を示すことで信頼感が生まれ、より円滑な住まい探しが可能になります。具体的には、以下のような取り組みが必要です。

・事前準備と知識を共有する
・書類作成や手続きをサポートする
・定期的にフォローアップする

事前準備と知識の共有では、住宅確保要配慮者に関する行政窓口や支援制度について正確な情報を事前に調査し、把握しておくことが重要です。例えばセーフティネット住宅や家賃補助制度の利用条件、手続きの流れを詳細に理解することで、お客様に迅速かつ的確なアドバイスを行うことができます。

また、書類作成や手続きのサポートは、不動産会社が行うべき重要な支援の一つです。住宅確保要配慮者の多くは、行政手続きに不慣れであるため、申請書類の記入補助や必要書類の確認をサポートすることで、お客様の負担を軽減することが可能です。

さらに、契約後のお客様との関係を維持し、支援を継続するために定期的なフォローアップは欠かせません。入居後に行政支援が適切に機能しているか確認するための連絡を行ったり、困りごとが発生した際に迅速に対応する窓口を案内したりすることが重要です。

フォローアップを通じて不動産会社が長期的な安心感を提供できれば、口コミや紹介による新規顧客の獲得にもつながるでしょう。

③住宅確保要配慮者向けの物件を確保するために工夫する

住宅確保要配慮者が住まいを見つける際の最大の課題は、適切な物件が不足していることです。不動産会社が適切な物件を確保する工夫を行うことで、社会的な役割を果たすと同時に業務の幅が広がります。おすすめの取り組みは、以下の3つです。

・セーフティネット住宅の登録拡充
・低家賃住宅の提供
・地域福祉との連携

セーフティネット住宅は、住宅確保要配慮者を受け入れる民間賃貸住宅として、国が推進している制度です。不動産会社は、地域の大家や管理会社にこの制度のメリットを伝え、登録を促進する役割を担います。例えば「空室期間が短縮される」ことや「地域社会への貢献」という点を強調することで、大家の登録意欲を高めることができます。

また、住宅確保要配慮者の多くは経済的に厳しい状況にあるため、不動産会社が低家賃住宅を積極的に確保することが求められます。老朽化した物件をリノベーションし、低価格帯で提供することで、住宅確保要配慮者が選べる物件の幅を広げることができます。

さらに、地域の福祉団体や生活支援センターと協力することで、物件の提供だけでなく、生活支援や見守り活動も含めた包括的なサポートを提供できます。例えば緊急時の対応や、定期的な見守り活動を通じて、住宅確保要配慮者が安心して暮らせる環境を作ることが可能です。

CHINTAI JOURNAL新規会員登録受付中

賃貸仲介業者が住宅確保要配慮者に配慮した事例

この章では、実際に取り組まれた対応事例を紹介します。成功事例を参考にし、自社で工夫を加えることでスムーズな対応が可能です。

大家との信頼関係を構築して入居拒否を防ぐ

住宅確保要配慮者の入居を拒む大家に対して、事前にしっかりと説明を行い、理解を深める取り組みを行っている事例があります。具体的な方法は以下のとおりです。

・制度のメリットを大家にわかりやすく説明
・入居者の家賃支払い能力を第三者保証機関で確認
・入居後のトラブルに備えた定期フォローアップを実施

住宅確保要配慮者向けのセーフティネット住宅制度を活用し、「家賃滞納リスクを補填する仕組み」や「大家にとってのメリット」を丁寧に説明することで、不安を軽減。また、入居後のフォローアップ体制を整えることで、大家が安心して物件を貸し出せる環境を作り上げ、結果的に入居拒否の減少につながっています。

具体的な取り組みは、以下のとおりです。

具体的な取り組み例

・大家説明会の開催
・トラブル解決の実績を共有
・定期報告システムの導入

大家説明会では、制度の仕組みやメリットを簡単に説明し、特に保証範囲やトラブルが起きたときの具体的な対応方法を伝えることで、大家に安心してもらいます。また、実際に起きたトラブルがどのように解決されたかを紹介することで、制度がしっかり機能していることを理解してもらうことが可能です。

加えて、大家には「定期報告システム」を活用して、入居者の支払い状況や物件の管理状況をわかりやすく伝えています。これにより、問題が起きる前に対応できる仕組みを作り、入居後も安心して物件を貸し続けられる環境を整えています。こうした取り組みを続けることで、入居拒否が減り、スムーズな賃貸運営が可能です。

こうした取り組みを通じて、大家が抱える不安を解消し、入居拒否を減少させることに成功しました。不動産会社としては、大家との信頼関係を築くことで、住宅確保要配慮者の受け入れがスムーズに進む体制を整えられます。

まとめ

住宅確保要配慮者への対応は、課題が多いのが実情です。しかし、不動産賃貸仲介業者としての新たな価値を創出できる大きなチャンスでもあります。

行政の支援制度を活用したり、大家と信頼関係を築く工夫をしたりすることで、多くの方に安心して住める住まいを提供することが可能です。また、独自の保証制度や地域福祉との連携を取り入れることで、他社との差別化を図り、社会的意義のあるビジネスを展開できます。

住宅確保要配慮者が安心できる取り組みを行うことで「信頼」と「成果」に繋がるため、自信を持って取り組んでいきましょう。

不動産ライター 岩井 佑樹

合同会社ゆう不動産/岩井 佑樹

この記事を書いた人

これまで不動産関連SEO記事を500本以上作成。
日ごろから心がけていることは、記事を読む人が「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など。不動産業界10年の経験と知識、アパート大家の観点から書く記事で不動産の悩みを解決している。現役で不動産業に携わり、現場の「リアル」に触れているからこそ発信できる記事作成が強みの「不動産特化Webライター」

■現在の職業/肩書き/資格など
不動産会社代表/宅建士資格

記事へのコメント
1
2
3
4
5
送信
     
キャンセル

コメントを書く

CHINTAI JOURNAL
レビュー:  
 0 コメント