記事公開日:2022/08/04
最終更新日:2022/09/18
ビジネスシーンにおいて、先人たちが見つけたさまざまな法則が活用される場面が多くあります。正しい活用法を実践することで、マーケティング戦略や営業の成果に大きな影響を与えることをご存じでしょうか。
今回は、マーケティング用語としても使われている「パレートの法則」について解説します。概要や活用例、学べる書籍も紹介していきますので、営業の成績を上げたい営業マンや、企業全体の売上を高めたい経営者の人はぜひ参考にしてください。
目次
パレートの法則とは、結果の80%は全体を構成する要素の20%が生み出していると唱えた法則のことです。イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレートが、「人口の上位20%が富の80%を所有している」ということを発見したことが由来となりました。
別名「2:8の法則」や「ばらつきの法則」とも呼ばれるパレートの法則は、以下のような事実・可能性を導くのに使われています。
上記のように、パレートの法則は由来となった所得分布だけでなく、マーケティングや売上管理、在庫管理や品質管理など多くのビジネスシーンで活用されています。
たとえば1つ目に挙げた具体例を解説すると、すべての顧客を平等に扱うのではなく、80%の売上を維持するためには20%の優良顧客を差別することが重要ということです。このように、パレートの法則をビジネスシーンで意識することでさまざまな効果を得ることができます。
パレートの法則は、ビジネスの現場において以下のような使い方ができます。
それぞれの具体的な内容について見ていきましょう。
前述のとおり、パレートの法則によって「20%の顧客(優良顧客)が全体の売上の80%を作る」ということが予測できます。この優良顧客は、「単価が高い商品を購入している」「自社のサービスを長期間利用している」などの特徴を持っていますが、まずはこの優良顧客が誰なのかを調べなければなりません。
上位20%の優良顧客を見極めるためには、パレート図の作成が有効です。パレート図とは、パレートの法則を図式化したもので、主に顧客や商品の売上を整理して表やグラフにまとめる際に用いられます。パレート図を作成することで顧客の貢献度の大きさや重要度が明らかになり、大切にすべき上位20%の優良顧客を導き出せます。
優良顧客が導き出せたら、ターゲティングよりも細かい人物像の設定ができるペルソナ分析を用いて架空の顧客像を作り上げましょう。実際にペルソナ分析を行う際は、以下のような項目を用いるとスムーズに進みます。
たとえば、「都内の大学に入学する予定の男子高校生」「1歳の子どもを持つ30代女性」など、上記の項目をいくつかピックアップして考えるだけで具体的な人物像ができあがるので、自社の商品・サービスに合わせて設定してみてください。
上位20%の優良顧客がどのような人物像なのかわかれば、その20%の顧客をメインに対応していきましょう。たとえば、経験豊富な担当者をつけて手厚いサポートを行う他、ノベルティグッズをプレゼントして関係性を維持するのも有効です。
このような丁寧なアプローチを続けると、上位20%の優良顧客と長期的な取引を継続させることが可能です。売上に貢献している高い顧客の心を長く引き留め、お互いがWin-Winの関係となるよう努めましょう。
ロイヤルティプログラムとは、優良顧客に対して企業が特典を与えるマーケティング施策のことです。限られた顧客や企業・商品・サービスのファンに対して特別な体験を与えることで、企業に対する愛着や信頼性をさらに高めることができます。
上位20%の優良顧客と関係性を構築した後は、ロイヤルティプログラムを活用してさらなる関係強化を図りましょう。ロイヤルティプログラムの主な具体例は以下のとおりです。
上記のようなものを用意するのが理想ですが、闇雲に取り入れて良いというものではありません。企業に対し、顧客がさらに愛着を持ってくれるようなロイヤルティプログラムを用意する必要があります。
さまざまなビジネスシーンで利用できるパレートの法則ですが、活用する場合は以下の2点に気をつけましょう。
それぞれの内容は以下のとおりです。
ここまで紹介してきたパレートの法則は、短期間で利益を出す20%の顧客や商品に着目することが重要だと唱えています。しかし、短期間で利益を出さない80%の商品や顧客であっても、数が集まれば全体の売上に貢献することもあり、これはロングテールの法則に起因しているといわれています。
ロングテールの法則は、主にインターネット上で販売されている商品に対して活用される法則です。インターネット上での販売では物理的な制限があまりなく、実店舗では売れにくい商品をたくさん売ることができるからです。
Amazonのような大手のネット通販サイトでは、実際にこのロングテールの法則を使って大きな実績を挙げています。ダイレクトマーケティングや広告の分野においても、80%の商品を大切に扱うロングテールの考え方が注目されつつあります。
パレートの法則のメインターゲットは上位20%の優良顧客ですが、そればかりに注目することは避けましょう。たとえ全体の貢献度が20%しかなくても、0%になれば全体の売上が低下してしまうからです。
たとえば不動産営業マンの場合、契約に前向きな顧客やリピートしてくれる顧客だけでなく、多少クセのある顧客にも真摯に対応しなければなりません。気持ちが乗らないかもしれませんが、状況によってはそのような顧客が大口の契約を結んでくれることもあるからです。
20%の優良顧客を大切にしつつ、残り80%の顧客も無視しないようなマーケティング施策を行いましょう。
パレートの法則をビジネスシーンに取り入れるには、実践だけではなく本から学ぶことも重要です。ここからは、パレートの法則が学べる書籍を4つ紹介していきます。
どのような本なのか、詳しく見ていきましょう。
著者のリチャード・コッチは、アメリカの起業家・投資家・経営コンサルタントです。この本ではパレート法則の概要や具体例、ビジネスシーンへの応用法などが20の章にわたって詳しく解説されており、最小限の努力で最大限の成果を出す方法を学ぶことができます。
「人生を変える80対20の法則」の初版が刊行されて以来、数百万人に読まれてきた世界的ベストセラーであるこの本は、刊行20年を記念して内容がアップデートされ新版としてリニューアルされました。パレート法則の基本を知りたい人は、まずはこの本から読んでみてはいかがでしょうか。
マッキンゼーのコンサルタントであるポール・マクナーニが書いたこの本には、パレートの法則をビジネスで役立てる方法が惜しみなく紹介されています。レビューの中には「パレートの法則に特化した書籍の中では一番読みやすい」という声もあるため、パレートの法則に興味があるけど難しさを感じている人には特におすすめしたい一冊です。
パレートの法則の逆説である、ロングテールの法則について詳しく解説した書籍です。20%の顧客を切り捨てるパレートの法則に対し、すべての顧客を対象にするロングテールの法則を解説しながら、この法則を活用したマーケティング戦略の数々を紹介しています。
ロングテールの法則と戦略に関して4章にわたって説明されており、ロングテールの法則を活用している企業の事例インタビューも掲載されています。ロングテールの法則だけでなく、それ以外のビジネス上のヒントを数多く得られるでしょう。
この本は、戦略の立案や問題解決、マーケティングやマネジメントなど、ビジネスの場で活用できる69項目200種類以上のフレームワークを紹介しています。基本の形だけでなく応用のヒントも解説されているので、新人ビジネスマンから熟練のビジネスマンまで参考になる本です。
パレートの法則はもちろん、別の理論や法則も載っているので、ビジネスシーンのお守りとしても活用できるでしょう。
パレートの法則とは、結果の80%は全体を構成する要素の20%が生み出しているという法則です。パレートの法則をビジネスシーンで活用する際は上位20%の顧客・商品にフォーカスする必要がありますが、全体の売上を考えると残りの80%要素にも気を配る必要があるとされています。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、今回ご紹介した4つの書籍を読んでパレートの法則の全体像を掴み、日々の仕事に活かしてみてはいかがでしょうか。