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IT重説とは?今更聞けない概要と対応希望された際の流れについて解説!

記事公開日:2025/02/13

最終更新日:2025/02/03

IT重説とは?

賃貸仲介業務に携わる方の中には、「遠方の顧客への対応に時間がかかる」「忙しい日程の中で重要事項説明の調整が大変」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、そうした課題を解決する「IT重説」の概要やメリット・デメリット、実施の流れを解説します。この記事を読むことで、IT重説の基本を理解し、店舗運営の効率化や顧客対応の改善に役立てるための具体的な知識が得られるでしょう。不動産賃貸業に従事している店舗責任者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

IT重説とは

IT重説とは、重要事項説明(重説)をオンラインで行う方法です。従来は対面で行うことが義務付けられていましたが、2017年10月に賃貸借契約でのIT重説が認められ、2021年には売買契約でも本格運用が開始されました。

これにより、遠隔地に住んでいる顧客や外出が難しい状況の方でも、ビデオ通話を利用して説明を受けることが可能です。オンライン手続きは、契約者にとって利便性が高く、移動の手間を省ける点が特徴です。

不動産業界におけるデジタル化が進む中で、IT重説は効率的かつ柔軟な手続き手段として広がりを見せています。

IT重説が導入された背景

IT重説が導入された背景には、政府が推進するIT化政策があります。

2013年6月に発表された「世界最先端IT国家創造宣言」では、書面交付や対面が前提とされていた手続きをIT化する方針が打ち出されました。

同年10月には「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」が策定され、非対面での重要事項説明の具体的な対応策が検討されました。

その後、2015年8月から2017年1月にかけて国土交通省が社会実験を行い、一定の条件下ではITを活用した重要事項説明が問題なく行えることが確認されました。

これを受け、2017年10月にIT重説が賃貸借契約で本格導入され、遠隔地での手続きが容易になるなど、利便性が大きく向上しました。また、新型コロナウイルス感染拡大により非対面での手続きニーズが高まり、普及がさらに加速しているといえます。

参考:内閣官房|政府CIOポータル|世界最先端IT国家創造宣言
   国土交通省|土地・不動産・建設業|社会実験の概要について

IT重説のメリット

IT重説には、顧客の利便性向上や不動産会社の業務効率化に寄与するさまざまなメリットがあります。この章では、IT重説の主なメリットを詳しく解説します。

オンラインで対応できるため顧客への負担が軽減される

従来の対面型重説では店舗への来店が必要でしたが、IT重説では会議ツールを利用することで自宅や職場など、どこからでも説明を受けることが可能です。

特に遠方に住む顧客にとっては、移動が不要になり、時間や費用の負担を大幅に削減できます。これにより、忙しい方や移動が難しい状況の方にも対応しやすくなります。

不動産会社にとっても、遠方の顧客への提案がスムーズになり、対面を避けたいという要望にも応えられるため、他社との差別化につながるメリットがあります。

IT重説は顧客と不動産会社の双方にとって効率的で柔軟な手続き方法を提供する画期的な仕組みです。

記録に残せるのでトラブル解消につながる

IT重説では、説明内容をデータとして記録に残せるため、トラブル防止に大きな効果を発揮します。

従来の対面型重説では説明内容が記録されないため、契約後に「説明を受けていない」と主張されると、水掛け論に発展する可能性がありました。一方、IT重説では、ビデオ通話の録画やログデータを保存することで、「いつ、誰が、どのような内容を説明したか」を明確に証明できます。

この記録はクレーム対応を迅速化するだけでなく、顧客との信頼関係を築く手段としても有効です。また、説明不足によるトラブルを未然に防ぎ、店舗運営のリスク管理にも役立ちます。

各種感染症対策になる

IT重説は、感染症対策の面で有効な手段です。

新型コロナウイルスなどの感染症が広がる中、非対面で手続きを完了できるIT重説は安全性を確保しながら業務を続けられる方法として注目されています。外出を控えたい顧客にとっても、オンラインで説明を受けられることは安心感につながります。

また、感染症に限らず病気や怪我で外出が難しい場合にも対応可能であり、緊急時の契約手続きをスムーズに進めることが可能です。

IT重説のデメリット

IT重説には多くのメリットがある一方で、導入や運用に際していくつかのデメリットも存在します。この章で詳しく解説します。

カメラやマイクといったIT重説に必要なものを購入しなければならない

IT重説を実施するには、以下のような通信機器が必要です。

・パソコンまたはタブレット端末
・高品質な映像・音声を実現するカメラとマイク
・リモート会話用のアプリケーション(ZoomやGoogle Meetなど)

これらが社内に揃っていない場合、新たに購入する必要があり、導入には一定のコストがかかります。また、既存の機材があったとしても、イヤホンの不調などにより追加購入が必要になる場合があります。さらに、アプリケーションの設定や使用方法を学ぶ時間も必要です。

設備投資や準備は避けられないため、事前にしっかりと計画を立てることが大切です。長期的な業務効率化を考えれば、初期投資は必要なコストといえるでしょう。

対面よりも説明しづらいと感じる場合がある

IT重説では対面と異なり、顧客の表情や反応を細かく読み取ることが難しくなるケースがあります。

直接対面する場合は、声のトーンや表情から理解度を把握しやすい利点がありますが、画面越しでは顧客の表情や雰囲気が伝わりにくいため、内容を正確に理解しているか確認しづらい場面が出てきます。

特に、高齢者やIT操作に慣れていない方には、より丁寧で慎重な対応が求められます。そのため、説明を細かく区切り、各段階で理解度を確認するなど、対面以上の工夫が必要です。

会社側・顧客側の通信環境に左右される

IT重説をスムーズに進めるためには、安定した通信環境が不可欠です。

インターネット接続が不安定な場合、映像や音声が途切れ、説明が円滑に進まないリスクがあります。特に山間部や地下室などの通信状況が悪い地域では、この問題が発生しやすくなるでしょう。

通信トラブルは、顧客の信頼を損ねる可能性があります。事前に顧客の通信環境を確認し、不安定な場合には補足資料を郵送するなどの対応が必要です。

ただし、国土交通省の社会実験では大きな問題は報告されていないため、過度に心配する必要はありません。適切な対策を講じれば、多くのケースで問題なく対応できます。

書類の郵送が必要になる

IT重説では、重要事項説明書や添付書類を事前に顧客へ送付する必要があります。これらの書類は紙媒体で作成されることが多く、発送費用や手間が発生します。また、説明後の契約書類も郵送でやり取りする場合があるため、完全にオンラインで完結するわけではありません。

ただし、電子契約を活用する場合、これらの書類を電子データでやり取りできるため、郵送が不要になるケースがあります。電子契約では、以下の手順を踏むことで手続きを完了させることが可能です。

■ 電子データの送付
重要事項説明書や契約書を電子データで作成し、安全な方法で顧客に送付します。データの閲覧や署名に必要な操作方法を事前に案内することが重要です。

■ 電子署名の利用
契約書への署名は、電子署名や認証システムを利用して行います。これにより、郵送の手間や時間を大幅に削減できます。電子契約を導入することで、時間的・金銭的負担を軽減し、業務効率化が期待できます。一方で、電子契約に不慣れなお客様への丁寧な案内や、システム導入コストの検討も必要です。

IT重説の流れ

IT重説をスムーズに進めるためには、以下の手順を正確に把握し、順序立てて対応することが重要です。

1. 事前準備
2. 日程調整と案内
3. IT重説の実施
4. 記録と契約書類の対応
5. 事後対応

1. 事前準備

■ 機材と通信環境の確認
パソコン、カメラ、マイクなどの動作を確認し、安定したインターネット接続を確保します。顧客にも必要な通信環境と機材を案内します。

■ 書類の準備と送付
重要事項説明書や契約書を事前に用意し、郵送または電子データで送付。顧客が事前に内容を確認できるよう手配します。

■ 承諾取得の手順
書面電子化を行う際は、定められたフォーマットを活用して、電子データの利用について顧客の同意を取得します。この手順は法令を遵守して進めることが求められます。

2. 日程調整と案内

■ 日程調整
顧客の都合を聞き、IT重説の実施日時を決定します。

■ 操作方法の案内
使用するアプリケーション(Zoom、Google Meetなど)の操作方法を説明します。初めての方には簡単な操作マニュアルを用意するとよいでしょう。

3. IT重説の実施

■ 接続確認と本人確認
IT重説の開始時には、音声や映像の接続確認を行い、トラブルがないことを確認します。その後、取引士証や顧客の身分証を画面で提示し、本人確認を行います。

■ 説明と質疑応答
画面共有で書類を提示しながら説明を進め、理解度を確認しつつ質問に回答します。

4. 記録と契約書類の対応

■ 録画の保存
IT重説中のやり取りを録画し、安全な場所に保管。トラブル時の証拠として活用します。

■ 契約書類の回収
契約書の内容を確認後、署名・押印を依頼。郵送や電子署名で回収し、不備があれば迅速に対応します。

5. 事後対応

■ データの保管
書類や録画データを法定期間保管し、社内で共有します。

■ フォローアップ
手続き後に顧客へ連絡し、不明点や懸念がないか確認します。

この流れを押さえることで、IT重説を確実に進められます。従業員全員が手順を把握し、スムーズな対応を心掛けましょう。

参考:国土交通省|土地・不動産・建設業|ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について

IT重説についてまとめ

IT重説は、不動産業務の効率化と顧客の利便性向上を同時に実現する画期的な仕組みです。

導入には準備やコストが伴いますが、正しく運用することで顧客満足度の向上やトラブル防止に大きく貢献します。不動産業界のIT化が進む中、店舗責任者としてこの仕組みを活用し、他社との差別化を図ることが重要です。

新たな知識を積極的に取り入れ、顧客に信頼される対応を目指していきましょう。

不動産ライター 岩井 佑樹

合同会社ゆう不動産/岩井 佑樹

この記事を書いた人

これまで不動産関連SEO記事を500本以上作成。
日ごろから心がけていることは、記事を読む人が「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など。不動産業界10年の経験と知識、アパート大家の観点から書く記事で不動産の悩みを解決している。現役で不動産業に携わり、現場の「リアル」に触れているからこそ発信できる記事作成が強みの「不動産特化Webライター」

■現在の職業/肩書き/資格など
不動産会社代表/宅建士資格

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