記事公開日:2022/06/16
最終更新日:2024/01/11
賃貸物件を建築する場合、周辺環境や立地、利便性なども重要ですが、建物構造も気にする必要があります。物件の構造は、耐久性や耐火性、防音性はもちろん家賃設定や建築費にも関わってきます。どのような構造を選ぶかによって、アパートやマンション経営の収益性も変わってくるので慎重に検討しなければなりません。
今回は、建物構造ごとの特徴や家賃相場などについて解説していきますので、構造を選ぶ際の参考にしてみてください。
目次
賃貸の構造は主に5種類あります。
不動産仲介業者の場合、上記5つの違いについて、お客様に正しく説明できなければなりません。まずは、それぞれの構造の特徴となるメリットやデメリットを見ていきましょう。
木造は、土台や柱など主要部分に木材を使っている建物のことです。木材は吸湿性や吸収性に優れており、季節によって気候が変化する日本の風土に適しています。木造は軽量のため施工性が高いというのが特徴で、地中に杭を打たなくても建築できることも珍しくありません。
木造のメリットは、通気性が良く湿気や熱がこもりにくいことが挙げられます。また、木造の賃貸住宅は建築費が低く、他の構造と比べて家賃が低い傾向にあるのもメリットです。一方、木材を使用しているため音が響きやすく、耐震性に不安があることに注意しなければなりません。
鉄骨造は、建築物の骨組みに鉄骨を使っている建物のことで、この「S」はSteel(鋼)の頭文字からきています。鉄骨造には軽量鉄骨造と重量鉄骨造という2つの種類があり、鋼の厚みが6mm未満は軽量鉄骨造、6mm以上の厚みがあるものが重量鉄骨造です。
鉄骨造のメリットは、鉄骨を使っているので木造よりも耐震性が高く、重量鉄骨造の場合は木造より防音性が高いことが挙げられます。また、鉄筋よりも安価な材料を使っているので、トータルのコストを抑えやすいというのもメリットです。
デメリットは、通気性や断熱性が低く、夏は暑く冬は寒いことが挙げられます。また軽量鉄骨造の場合、音が響きやすいことにも注意が必要です。
鉄筋コンクリート造は、鉄筋をコンクリートに埋め込んだ部材を使っている建物です。鉄筋は引っ張られる力に強く、コンクリートは圧縮への対抗力が強いという特徴があり、この2つを組み合わせることで優れた強度を実現しています。
鉄筋コンクリート造のメリットは、耐震性と耐火性に強いことが挙げられます。また、コンクリートは密度が高いので、音が響きにくく遮音性に優れているのもメリットです。
一方デメリットは、気密性が高いことから湿気が逃げにくい性質があるため、結露が出やすくカビが発生しやすいことが挙げられます。また建築にかかるコストもネックとなり、その分家賃も高めに設定されているところが多くあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨の周りに鉄筋を組み、さらにコンクリートを施工した建物のことです。こちらは他と比較して特に頑丈なので、タワーマンションや高層ビルなど大規模な建築物に使われています。法定耐用年数は47年ですが、適切にメンテナンスを行えば規定の耐用年数を超えても十分に住み続けることが可能とされています。
鉄骨鉄筋コンクリート造のメリットは、鉄筋コンクリート造よりも耐震、耐火性に優れていることです。また、気密性が高いコンクリートで施工しているため音が響きにくいというメリットもあります。
一方、こちらも鉄筋コンクリート造と同様、建築工程が複雑で工事期間が長く、建設費が高くなることに注意しなければなりません。
賃貸物件を見る際の大事なポイントのひとつとして、家賃が挙げられます。家賃はエリアや間取り、立地や築年数でそれぞれ異なりますが、構造によっても家賃相場は変わってきます。ここからは、構造ごとの家賃相場を紹介していくのでぜひ参考にしてみてください。
※記載されている建築費は建ぺい率60%で算出しています
木造の建築費は、建築構造の種類の中でもっとも安く、エリアによる差はあるものの1坪あたり50万円ほどが相場といわれています。たとえば、2階建てアパートを40坪の土地に建てた場合は、建築費が約1,200万円、家賃相場は5万円ほどとされています。
※CHINTAIネット2022年5月18日時点
木造の法定耐用年数は22年ですが、適切なメンテナンスを実施していれば22年以上住むことは十分に可能なため、収益性にも問題はありません。
鉄骨造は、主に3階以上のアパートやマンションに用いられることが多い構造です。工事にかかる期間は物件ごとに異なりますが、事前に工場で建築資材を作ってから現場に運んで組み立てるという工程で行われることが多く、比較的短期間で完成します。
鉄骨造の1坪あたりの単価は約80万円ですが、建築費は坪数や平米数によって違います。そのため一概にいくらとはいえないのですが、仮に100坪の土地に2階建てアパートを建設した場合は約9,000万円が目安です。家賃は、東京の場合の相場は約5万円となっているものの、エリアによっては10万円前後になることもあります。
※CHINTAIネット2022年5月18日時点
なお、重量鉄骨造の法定耐用年数は34年と長めに設定されているので、減価償却期間を長くしたい場合にはこちらの構造を選ぶのがベストです。
鉄筋コンクリート造は、中層もしくは高層マンションに用いられることが多い構造で、2階建てアパートなど低層の建築物にはほとんど使われません。工事にかかる期間は、建築物のもろもろの条件を勘案しなかった場合、5階建てで約8~10ヶ月かかるといわれています。
鉄筋コンクリート造の1坪単価は80万円から90万円が相場で、鉄骨造とあまり変わりません。しかし、鉄骨造より規模が大きい建物に用いられることから建築面積が広いという違いがあり、建築費は鉄骨造より高額になりがちです。また、建築費が高くなるので、家賃相場は鉄骨造より1万円高い約6万円を目安にしてください。
※CHINTAIネット2022年5月18日時点
法定耐用年数は47年ですが、寿命は1988年の税制改正前に設定されていた60年ともいわれているので、長期的な運営を検討している場合はこの鉄筋コンクリート造(RC造)がおすすめです。
鉄骨鉄筋コンクリート造は、タワーマンションや大型のオフィスビル、商業施設などに用いられる構造ですが、主に20階建て以上の物件はこの構造で建設されています。鉄骨鉄筋コンクリート造は、強い地盤を作るための基礎工事に時間がかかるうえに、鉄骨造や鉄筋コンクリート造にはない躯体工事という工程がプラスされ、工事の期間はどの構造よりも長くなりがちです。
建築費用は、建物の規模や建築エリア、坪単価によってまったく変わってきますが、仮に50坪の土地に5階建てのビルを建設した場合は約2億円かかるといわれています。建築費だけ見ると高額ですが、狭い土地に鉄骨鉄筋コンクリート造で建築をする場合、狭い間取りで部屋数を確保しているため、家賃相場は約6万円と鉄筋コンクリート造と同じ数字となるのが特徴です。
鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は、鉄筋コンクリート造と同じく47年です。ただし耐用年数は同じでも、こちらの構造は鉄筋だけでなく鉄骨も使っているため耐久性が高いとされています。
構造によって特徴がそれぞれ異なるので、どの構造を選べば良いか迷ってしまうかもしれません。ここからは各条件ごとのおすすめの賃貸構造を紹介していきますので、迷ったときの参考にしてみてください。
賃貸経営では、入居者からクレームや苦情が来ることがありますが、その中のひとつに「騒音」が挙げられます。
たとえば、音が響きやすい木造では「隣から聞こえてくる音楽が気になる」「上の階から耳障りな足音が聞こえる」などのクレームが来ることもあります。音に対する感覚は人によって異なる他、ライフスタイルや節度も人それぞれなので、騒音トラブルは解決が難しいのが実情です。
このようなトラブルを避けるには、防音性にこだわった構造にするのがおすすめです。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のように、気密性の高いコンクリートが使われていれば、日常生活の中で生じる生活音も隣や階下の部屋に響きづらくなります。
「防音性が高い」というのは物件のアピールポイントにもなるので、「生活音を周りに聞かれたくない」「自分の部屋では静かに過ごしたい」という方からの需要も見込めます。
大学や専門学校が近い、または駅からのアクセスが良い立地にある賃貸物件は、一人暮らしの需要が見込めます。ただし、頑丈な建物は鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造を採用するため、場合によっては家賃を上げざるを得なくなることも珍しくありません。
もし、賃貸物件の建築を予定している土地が、一人暮らしの需要が高いエリアの場合は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造よりも低コストかつ木造よりも耐震性が高い鉄骨造にするのがおすすめです。鉄骨造は、建築費用がそれほどかからず家賃も低めに設定できることから一人暮らしを希望する方の入居率のアップが狙えます。
防音性は鉄筋コンクリート造などより劣ってしまいますが、重量鉄骨造であれば木造よりは音も響かないため女性の入居者にも喜ばれます。
家賃を抑えたいという需要に応えたい場合は、木造がおすすめです。木造は建設が簡単なので、他の構造に比べて建築コストがかかりません。建築費を抑えることができれば、家賃も低く設定することが可能です。
音が響きやすい、耐震性に弱いなどのデメリットはあるものの、木造建築は昔から使われている構造なので、必要以上に気にする必要はありません。また湿度の高い日本において、通気性が良いというメリットは入居者に喜ばれる他、退居後の原状回復のコストを抑える効果にも期待できるので、家賃のことが気になる場合、木造を検討してみることをおすすめします。
使っていない土地の有効活用方法や節税対策として、アパートやマンションの建築を考える場合、ターゲット設定や収益性の計算など綿密な計画を立てる必要があります。そのため、構造に関することは施工会社任せになってしまうこともあるかもしれません。
もちろん、プロに任せておけば安心ですが、ターゲットに合っていない構造だったり、建築費が予算オーバーだったりすると計画を再度練り直さなければなりません。構造にはそれぞれにメリットやデメリットがあり、場合によっては賃貸経営にも関わってくるので、構造の特徴を理解して選びましょう。
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