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不動産賃貸仲介のAD(広告料)とは?相場や確認事項をわかりやすく解説

記事公開日:2022/09/08

最終更新日:2024/01/11

不動産賃貸仲介のAD(広告料)とは

不動産の空室対策には、ADが便利と言われていて、多くの法人のオーナーさんから、個人の大家さんまで活用しています。しかし、はじめて申し込む方は相場料金や設定期間など不明な点も多いでしょう。

今回は、これからADを申し込む大家さんが知っておくべき、ADのメリット・効果的な使い方・注意点などをわかりやすく紹介します。

AD「advertisement(アドヴァタイズメント)」とは、大家さんが不動産会社に支払う広告費のことです。もっと具体的に言うと、仲介手数料のみでは広告費が補いきれない場合に、大家や賃貸管理会社が仲介業者に対して支払う費用のことを指します。

また、長期間空室が続いてしまい、少しでも早く入居者を決定したいときなどに活用されることが多く、大家さんがADを申し込むと、所有する賃貸物件を不動産会社の担当者がユーザーに広く知らせるなど、特別に扱ってくれます。

都市部から離れた郊外など、入居者が決まりにくいエリアではADが欠かせません。反対に、借主を見つけやすい都市部では、ADが不要もしくは少額のADでまかなえるケースもあります。必要に応じて利用するのもポイントです。

仲介手数料との違い

ADと仲介手数料の違いは、支払うタイミングです。仲介手数料は借主が見つかった際に、不動産会社に対して成功報酬として支払うもので、ADは入居者を募集する段階で支払います。また、金額の上限にも違いがあり、仲介手数料の上限は家賃の1ヶ月分、ADは上限がありません。 仲介手数料は成約したら必ず支払う必要がありますが、支払いは大家さんだけでなく、借主にも負担してもらえます。一方、ADの支払いは大家さんの負担です。しかし、ADの利用は任意なので、活用するしないは大家さんの自由といえます。

ADを支払うメリット

空室期間が長いときやスピーディーに成約が欲しいときなど、ADを申し込むことで成約に結び付きやすくなります。ADがついている賃貸物件は、営業マンが積極的にユーザーへ紹介してくれるので、人の目によく付くようになるのです。

支払ったADの金額によっては、登録した賃貸物件が広く知られるだけではありません。見込み客が出す値引き交渉などに営業マンが柔軟に対応してくれるケースもあり、スムーズな成約が期待できます。紹介頻度が上がり成約に結び付きやすくなる点が大きなメリットです。ここからは、それぞれのメリットについてさらに詳しく解説します。

紹介頻度が上がる

ADの申し出があった賃貸物件は、成約が決まればADが営業マンのインセンティブとなる場合もあるため、優先的に紹介される事が多いです。ADに充てる広告費が高ければ高いほど、紹介率も比例して伸びていき、より多くのユーザーに物件を見てもらう可能です。

「所有する賃貸物件の価値に自信はあるけど、競合が多すぎてユーザーに見てもらえない」などの状況では、ADを利用するメリットが十分あるといえます。競合がADをあまり利用していなければチャンスです。自分の所有する賃貸物件が融通されるので、少ない金額で紹介率を伸ばせます。

成約に結び付きやすい

紹介頻度が上がれば、成約に繋がる可能性も高まります。多くのユーザーにアプローチできるだけでなく、ユーザーの値引き交渉に営業マンが柔軟に対応できるからです。通常、仲介手数料などは、営業マンや不動産会社の判断では値下げしません。

しかし、ADを多くもらっている場合は例外です。仲介手数料を安くしてもADによる利益が高ければ、ユーザーの「仲介手数料を値引きして欲しい」という希望に答えても、不動産会社は損をしないため成約に結び付きやすくなります。

不動産賃貸仲介のADの相場料金はいくら?

ADの料金について、法的な規定がなく上限はありません。一般的に不動産賃貸仲介のADは、家賃の1~2ヶ月分が相場だといわれています。特別なケースだと、家賃の3ヶ月分以上を支払うこともあります。

※上記はあくまで相場料金です。実際はエリア・時期・競合物件の有無などの要素で料金は変動します。上限がないので、積み上げすぎないように注意したいですね。

ADを支払う前に確認すべき事項

ADの利用を開始する前は、利用期間・金額・支払い先を事前に確認する必要があります。ADのメリットは成約までのスピードを早まらせる効果があることですが、利用方法を誤ると資金がマイナスになるデメリットもあり注意が必要です。

このセクションでは、ADで損をしないための基本となる3つの事前確認について紹介します。

確認事項①:設定するタイミング

まず、いつからいつまでADを利用するのか確認しましょう。6~8月は、梅雨や猛暑の影響で引越しする人が減り、オフシーズンに入るため、この2ヶ月間にADを設定するのも効果的です。また、ADが不要ともいわれている1~3月の新生活前の繁忙期がありますが、あえてこのハイシーズンにADをかけて素早く成約を獲得する戦略もあります。

オフシーズン・ハイシーズンに関係なく、退去者が出て1ヶ月以上経過した際にADを取り入れるなど、タイミングはケースバイケースです。過去の空室期間のデータも確認し「何月から何月まで、何ヶ月間空室が続いたか?」などの情報をもとに、ADの利用を開始するタイミングと期間を決定する必要があります。

確認事項②:支払い金額

費用対効果が見込める支払い金額になっているか確認しましょう。たとえば、過去空室期間の平均が3ヶ月間の賃貸物件を所有している場合、6ヶ月以上空室が続くことは考えにくいはずです。この場合、ADの利用期間を3ヶ月前後にすることで、支払いすぎてしまうリスクを回避できます。

また、郊外の入居者が集まりにくいエリアでは、それぞれの大家さんが高額なADを出し合うことで、業界が飽和状態になるケースも珍しくありません。相場である家賃の1~2ヶ月分を大きく超えてしまい、1ヶ月間ADを利用するのに家賃の4ヶ月分も支払うなどの事態も想定できます。必ず費用対効果が得られることを前提に、支払う金額を決めましょう。

確認事項③:支払い先

大家さんの支払った金額が、どれだけ不動産会社にわたるのか確認しましょう。管理会社を介してADの利用を申し込んだ場合、支払った金額の半分を管理会社が、残りの半分を不動産会社が受け取る形になることがあります。

1ヶ月間のAD契約で家賃2ヶ月分の料金が必要になった際、大家さんとしては2ヶ月分を支払っているのに、不動産会社は家賃1ヶ月分の働きしかしてくれないこともあるのです。認識のズレが生じないように、支払い先を把握し、支払った金額に見合ったリターンを受け取りたいですね。

AD設定を検討すべきケース

ADの効果を実感するには、必要な時期や状況を考慮してADを設定するのがポイントです。しばらく内見がなく空室が続く時期はもちろん、反対に繁忙期で入居者が決まりやすい時期にもADは効果があります。最後に、どのようなケースでAD設定が必要になるのか、確認していきましょう。

AD設定が当たり前になっている地域の場合

最寄り駅まで徒歩100分以上の郊外で、近くに大学や勤め口がないエリアでは、流動性が悪くAD設定で入居者を募る大家さんが多く存在します。このような地域では、同じエリアにある賃貸物件の大半がADを設定している可能性があり、AD設定が当たり前といっても過言ではありません。

もともと母数の少ないユーザーを、AD設定している大家さん同士で競合するため、AD設定をしていない大家さんは後回しにされてしまうことも考えられます。また、都市部でも例外があり、空室が出やすいタワーマンションではAD設定が必要です。

ずっと内見の申し込みがない場合

長期間にわたって内見に人が訪れない場合、ADの力で少しでも多くのユーザーに見てもらうのが改善策として第一に挙げられます。1~2ヶ月のADで入居者が決まれば、成果として申し分ありません。反対に、ADを利用しても成約が決まらなければ、ほかに問題点はないかチェックする必要があります。

たとえば、借主が見つからない理由が部屋の劣化なら、床や壁をリフォームして部屋の写真を撮り直すほうが、何ヶ月もADを利用するよりも最適な空室対策になるはずです。ADを申し込むことで、内見数を増やせるだけでなく、内見に来てくれない理由まで洗い出す事ができます。

賃貸ニーズ(需要)が高まっている場合

就職や入学の準備で忙しくなる1~3月は、賃貸ニーズ(需要)が高い時期です。本来であればAD設定がなくても成約が決まりやすいのですが、この繁忙期にあえてADを利用し、早期に成約を決める大家さんもいます。

資金豊富な法人オーナーさんの場合、このような賃貸ニーズが高い時期にADを有効活用し、空室を一気になくす手段をとることもあるのです。

空室率が改善できる可能性が高い場合

部屋のリフォーム工事が完了した・フリーレント期間を導入した・無料Wi-Fiを設置したなど、ユーザーにベネフィットがある状況を形成したうえで、AD設定するのも一策です。

ユーザーに「ここに住みたい」と思ってもらえる賃貸物件に改良するだけでも、十分効果が得られます。さらに追い打ちをかけるようにAD設定すれば、並み居る競合を差し置いてスムーズに成約を獲得できるはずです。

ADは収支バランスを意識して計画的に活用しよう

接客する営業マンの画像

ADは長期間かつ高額な広告費で設定すれば、その分の集客・成約に繋がります。ただし、ADに頼らなくても成約に困らないケースや、いくらADに資金をつぎこんでも成約に至らないケースがあり、費用対効果がマイナスになるリスクもあるのです。申し込む前にADの必要性を再確認し、最終的に黒字化を目指せるように調整しましょう。

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CHINTAI JOURNAL編集部

この記事を書いた人

CHINTAI JOURNAL編集部は、営業活動に役立つ情報や業務効率化するための工夫をはじめとして、賃貸仲介業務に「おもしろさ」と「ライフハック」を提供します。

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